ランナーズハイとストレス解消|職場の運動セルフケアの注意点

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ランナーズハイとストレス解消|職場の運動セルフケアの注意点

健康経営の一環として、社員に運動をすすめたい。

でも、仕事で疲れている社員に「もっと身体を動かしましょう」と伝えてよいのか、迷うことはありませんか。

ランニングが好きな社員は、「走ると気分がすっきりします」と話すことがあります。たしかに、運動のあとに気分が軽くなったり、頭が切り替わったりすることはあります。

一方で、疲れているのに無理に走る、休むより運動を優先する、運動しない自分を責めてしまう社員もいます。

人事総務・健康経営担当者が見たいのは、「運動が良いか悪いか」ではありません。

その運動が、社員の回復につながっているか。それとも、疲労を先送りしていないかです。

ランナーズハイは、長く走ったあとに気分が高まり、苦しさが軽くなったように感じる反応として知られています。

ただし、職場のストレス管理では、ランナーズハイを「最高のストレス解消法」としてすすめるのは危険です。

ランナーズハイとストレス解消感の違いを知っておくと、職場で運動セルフケアをすすめる時に、社員へ無理をさせにくくなります。

社員にもっと頑張らせるのではなく、無理なく回復しながら働ける形にしていくことが大切です。


ランナーズハイとストレス解消感を職場の運動セルフケアとして説明するタニカワ久美子
ランナーズハイは、ストレス反応を理解する手がかりになります。ただし、職場のストレス管理では、運動だけでなく休息と睡眠も重要です。

運動をすすめる前に、担当者が確認したいこと

健康経営の施策として、ウォーキング、ストレッチ、ランニングイベント、運動習慣づくりを取り入れる職場があります。

その方向性自体は悪くありません。身体を動かすことは、気分転換や生活リズムづくりに役立つことがあります。

ただし、人事総務担当者が最初に確認したいのは、「社員に運動させること」ではありません。

その運動が、社員の回復につながっているかです。

担当者が感じやすい迷い 確認したい視点 職場での扱い方
運動をすすめればストレス対策になるのか 運動だけで職場ストレスを解決しようとしていないか 業務量、休息、睡眠、相談体制とセットで考える
ランニング好きな社員をモデルにしてよいか 運動が苦手な社員にも合う施策か 歩く、伸ばす、座って動かすなど選べる形にする
運動後に元気そうなら効果があるのか 翌日の疲労感や睡眠状態はどうか 気分の高まりだけで判断しない
運動イベントを実施してよいか 参加しない社員が責められる雰囲気にならないか 強制ではなく、自分に合う参加方法を認める
ストレス解消を個人努力に任せていないか 職場側の負荷要因が残っていないか 管理職の声かけと勤務設計も見直す

運動施策は、社員をさらに頑張らせるためのものではありません。

社員が自分の身体の状態に気づき、無理なく回復へ向かうための入口として設計する必要があります。

ランナーズハイとは何か

ランナーズハイとは、長時間のランニングや持久運動のあとに、苦しさが軽くなり、気分が高まったように感じる状態を指します。

走り始めは息苦しさや疲れを感じていても、一定時間を超えると、気分が安定したり、身体が軽く感じられたりすることがあります。

この感覚を、一般にランナーズハイと呼びます。

ランナーズハイには、痛み、不安、疲労感、報酬感覚に関わる脳内反応が関係すると考えられています。

以前はエンドルフィンがよく知られていましたが、現在ではエンドカンナビノイド系を含む複数の仕組みが関わるとされています。

つまり、ランナーズハイは単なる気分の問題ではありません。

運動負荷に対して、脳と身体が反応している状態です。

ランナーズハイはストレス解消に役立つのか

ランナーズハイは、一時的なストレス軽減感や気分の改善に関係することがあります。

仕事で頭がいっぱいになっている時でも、身体を動かすことで、気分が切り替わりやすくなることがあります。

ランニング、ウォーキング、軽い体操、ストレッチのあとに、「少しすっきりした」「気持ちが切り替わった」と感じる社員もいます。

ただし、ここで担当者が注意したいことがあります。

気分がよくなったとしても、職場のストレス要因そのものが消えたわけではありません。

睡眠不足、長時間労働、人間関係、業務量、評価への不安が残っていれば、ストレスは再び蓄積します。

運動はセルフケアの一つです。

しかし、職場の問題を個人の運動努力だけで解決しようとしないことが大切です。

運動で期待できること 運動だけでは解決しにくいこと
気分の切り替え 業務量の過多
身体のこわばりへの気づき 長時間労働の常態化
生活リズムづくり 休憩を取りにくい職場風土
達成感や前向きな気持ち 管理職の声かけ不足
セルフケアの入口 相談しにくい人間関係

人事総務担当者が見るべきなのは、「運動が良いか悪いか」ではありません。

その運動が、社員の回復を助けているのか、それとも疲労を先送りしているのかです。

ランナーズハイとユーストレスは同じではない

ランナーズハイは、ストレス反応が必ず悪いものではないことを説明する手がかりになります。

適度な運動負荷は、達成感、集中、気分の安定、自信につながることがあります。

この意味では、運動によるストレス反応には、心身を前向きに動かす面があります。

ただし、ランナーズハイそのものをユーストレスと断定しない方が安全です。

ユーストレスは、成長、達成、集中、前向きな行動につながる良性のストレス反応です。

一方、ランナーズハイは、強い運動や長時間の運動のあとに起こる一時的な高揚感や痛みの感じにくさを含みます。

すべての高揚感をユーストレスと見なすと、疲労や過負荷を見落とす危険があります。

ユーストレスとディストレスの違いについては、ユーストレス(良性ストレス)とは|職場で活かすストレス資源の全体像で整理しています。

ランナーズハイと徹夜ハイは違う

徹夜明けや深夜残業のあとに、「眠っていないのに妙に元気」「頭が冴えている」「まだ働けそう」と感じることがあります。

この状態は、感覚としてランナーズハイに似ていることがあります。

しかし、運動後のランナーズハイと、睡眠不足や過労による徹夜ハイは分けて考える必要があります。

徹夜ハイでは、睡眠不足、疲労、緊張、締切へのプレッシャーが重なっています。

本人は元気に感じていても、注意力、判断力、反応速度、感情の調整力が落ちている可能性があります。

深夜残業による高揚感については、深夜残業のランナーズハイは危険?健康リスクと管理職対策で扱っています。

本記事では、運動後のランナーズハイとストレス解消感の関係を中心に見ていきます。

運動はストレス対策になるが、やりすぎは逆効果になる

運動は、ストレス対策として有効な選択肢の一つです。

身体を動かすことで、気分が切り替わり、睡眠や生活リズムの改善につながることもあります。

しかし、運動を頑張りすぎると、かえって疲労が強くなることがあります。

仕事で疲れている社員に、さらに強い運動を求めると、回復ではなく追加の負担になる場合があります。

人事総務担当者としては、「運動しなければならない」と社員に感じさせない設計が必要です。

運動が得意な人もいれば、苦手な人もいます。

走ることが合う人もいれば、短い散歩、椅子に座ったままの体操、肩回し、深呼吸の方が合う人もいます。

避けたい運動施策 職場で扱いやすい運動セルフケア
全員に同じ運動量を求める 体調や経験に合わせて選べる形にする
ランニングできる社員を基準にする 歩く、伸ばす、座って動く選択肢を用意する
運動しない社員を消極的と見る 参加しない理由や体調不安にも配慮する
疲れている社員にさらに運動を求める まず睡眠、休息、業務負荷を確認する
イベント実施で終わる 日常業務の中で短く続けられる形にする

職場の運動セルフケアは、頑張る社員を増やすための施策ではありません。

疲労に気づき、回復しながら働くための施策として設計することが重要です。

職場のストレス管理に活かすなら運動だけでは足りない

ランナーズハイや運動習慣は、社員のセルフケアを考えるうえで役立ちます。

ただし、職場のストレス管理を個人の運動努力だけに任せると、根本的な課題が見えにくくなります。

職場で起こりやすい課題 運動だけに任せるリスク 人事総務が確認したいこと
深夜残業や休日対応が続いている 疲労を運動でごまかす 勤務実態と回復時間を確認する
高負荷業務が特定の社員に集中している 個人の頑張りで処理される 業務配分と属人化を見る
休憩を取りにくい雰囲気がある セルフケアの時間が確保できない 管理職が休憩を認めているか見る
管理職が疲労サインを見落としている 運動できる社員だけが評価される 疲労感の鈍化や過集中も研修で扱う
健康経営施策が現場の勤務実態と結びついていない イベントだけで終わる 施策後の疲労感、睡眠、参加しやすさを見る

このような職場では、「運動しましょう」と伝える前に、業務量、休息、睡眠、管理職の声かけ、勤務設計を見直す必要があります。

タニカワ久美子の企業研修で見える「走ると楽になる社員」と「走りすぎる社員」

タニカワ久美子の企業研修では、ストレス対処法を話し合う場面で、「走ると気分が切り替わります」と話す社員がいます。

ランニングが習慣になっている方にとって、運動は大切なセルフケアになっていることがあります。

一方で、別の社員から「疲れているのに、走らないと自分がだめになる気がします」という声が出ることもあります。

この場合、運動が回復のためではなく、自分を追い込む方法になっている可能性があります。

このときタニカワ久美子が伝えるのは、「運動は良い」「運動は悪い」という二択ではありません。

走ったあとに本当に回復しているのか、眠れているのか、翌日の疲れが減っているのかを確認することです。

気分が高まったとしても、身体が回復していなければ、ストレス解消ではなく疲労の先送りになっている場合があります。

人事総務・健康経営担当者にとっても、この視点は重要です。

社員に運動習慣をすすめるときは、運動が得意な人だけを基準にしないことです。

運動が苦手な社員、体調に不安がある社員、疲労が強い社員にも無理なく取り入れられる形にすることで、職場全体のストレス管理につながります。

健康経営で運動施策を扱うときの注意点

健康経営で運動施策を行う場合、目的は社員をさらに頑張らせることではありません。

社員が自分の心身の状態に気づき、無理な高揚感に頼らず、回復しながら働ける状態をつくることです。

運動施策を取り入れるときは、次の点を確認します。

確認項目 見落としたくないリスク 職場での扱い方
運動習慣の推奨 長時間労働の埋め合わせになる 勤務時間や休息の問題と切り離さない
ストレス解消 個人任せになる 業務量、休憩、相談体制も確認する
ランニング習慣 疲労を先送りする 翌日の疲労感や睡眠状態を見る
運動イベント 苦手な社員に負担になる 強制せず、選べる形にする
管理職の関わり セルフケア任せになる 部下の疲労サインも確認する

ランナーズハイは、ストレスを「悪いもの」とだけ見ないための教材になります。

ただし、職場で活用する場合は、必ず休息と回復の考え方をセットにする必要があります。

ストレスマネジメント研修で扱うべきポイント

ランナーズハイとストレス解消の関係は、ストレスマネジメント研修の中で扱いやすいテーマです。

ただし、研修では「運動すればストレスが消える」と伝えないことが重要です。

社員向けには、セルフケアとしての運動、睡眠、休息の意味を扱います。

管理職向けには、部下の過集中、疲労感の鈍化、深夜残業後の判断ミスを見極める視点が必要です。

研修で扱う内容 担当者が確認したい意味
ストレス反応には適応的な面もある ストレスを悪者にするだけで終わらせない
一時的な高揚感と持続的な回復は違う ランナーズハイや徹夜ハイを混同しない
運動習慣はセルフケアの一部である 運動だけで職場課題を解決しようとしない
過労による高揚感はストレス解消ではない 疲労サインを見落とさない
職場のストレス管理には管理職の支援も必要である セルフケアとラインケアをつなげる

人事総務が使いやすい声かけ

社員に運動をすすめるときは、「もっと運動しましょう」だけでは、かえって負担になることがあります。

運動が回復につながっているかを確認する声かけが必要です。

声かけ 確認したいこと
運動したあと、翌日の疲れは軽くなっていますか 回復につながっているか
走ったあとに眠りやすくなっていますか 睡眠を妨げていないか
疲れているのに無理に運動していませんか 疲労を先送りしていないか
運動以外にも気持ちを切り替える方法はありますか セルフケアが一つに偏っていないか
仕事の疲れを運動だけで解消しようとしていませんか 職場側の負荷要因を見落としていないか
無理なく続けられる強さになっていますか 運動が負担になっていないか

このような声かけは、社員の運動を否定するためではありません。

運動が本当に回復につながっているか、疲労を先送りしていないかを確認するための入口です。

この記事を読んだ方によくある質問

ランナーズハイはストレス解消に役立ちますか?

一時的な気分改善やストレス軽減感に関係する可能性があります。ただし、ストレス要因そのものを解決するものではありません。職場では、運動習慣だけでなく、業務量、休息、睡眠、管理職の支援まで含めて考える必要があります。

徹夜明けの高揚感もランナーズハイですか?

同じではありません。徹夜明けや深夜残業後の高揚感は、疲労感が鈍っている状態として見る必要があります。注意力や判断力が低下している可能性があります。

社員に運動習慣をすすめればストレス対策になりますか?

運動習慣はセルフケアの一部として役立ちます。ただし、長時間労働や過重負荷が残ったままでは、根本的なストレス対策にはなりません。勤務設計や管理職の支援と組み合わせる必要があります。

研修ではどのように扱えますか?

社員向けには、ストレス反応、運動、睡眠、休息のセルフケアとして扱えます。管理職向けには、部下の疲労サイン、過集中、深夜残業後の判断ミスを見極めるラインケアとして扱えます。

ランナーズハイは職場の運動セルフケアを考える入口になる

ランナーズハイは、運動後に起こる一時的な高揚感や気分改善を理解するうえで重要な現象です。

適切な運動習慣は、ストレス対処や心身の健康づくりに役立つ可能性があります。

しかし、ランナーズハイを万能のストレス解消法と考えるべきではありません。

特に職場では、徹夜ハイや深夜残業後の高揚感を、健康的なストレス解消と混同しないことが重要です。

企業のストレス管理では、個人の運動努力だけでなく、勤務実態、睡眠、休息、管理職の声かけ、回復機会の設計まで含める必要があります。

人事総務・健康経営担当者が運動施策を考える時は、「社員にもっと頑張らせる施策」ではなく、「社員が回復しながら働ける施策」として設計することが大切です。

運動セルフケアを職場のストレス管理研修に取り入れたいご担当者へ

けんこう総研では、ランナーズハイのような身近なテーマを入口に、運動、睡眠、休息、疲労サインを組み合わせたストレスマネジメント研修を行っています。社員に無理な運動を求めるのではなく、職場で続けやすいセルフケアとして設計できます。

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参考文献

文責:タニカワ久美子

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