運動介入の効果測定|ウェアラブルで職場ストレスを見る

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健康経営戦略・KPI・エビデンス

職場で軽い運動やストレッチを取り入れたとき、「本当にストレス対策として効果があったのか」を何で判断すればよいのでしょうか。

ウェアラブルデバイスを使えば、心拍数やHRV、活動量などの変化を確認できます。
しかし、運動前後で数値が変わっただけでは、職場ストレス施策に効果があったとは判断できません。

この記事では、職場のデスクワーカーを対象とした測定と関連研究をもとに、ウェアラブルで運動介入の前後を測り、生理指標・心理的反応・本人の体感・行動変化をどう組み合わせて施策効果を評価するかを整理します。

運動介入の効果は「前後の数値」だけでは判断できない

職場で運動施策を実施すると、運動前後で心拍数、HRV、気分、疲労感などに変化が見られることがあります。

ただし、運動中には心拍数が上昇しますし、運動後には回復過程として身体反応が変化します。
そのため、「数値が下がったから改善」「上がったから悪化」と単純に読むことはできません。

運動施策の効果を評価するときは、少なくとも次の3つを分けます。

見るもの 例 確認すること
生理反応 HRV、心拍数など 運動前後で身体反応にどのような変化があったか
心理・体感 疲労感、気分、不安、緊張感 本人が変化を感じているか
行動 運動継続、休憩、セルフケア 施策後も職場で行動が続いているか

「生理反応が変わったか」と「健康経営施策として意味があったか」は同じ判断ではありません。

運動施策を「実施して終わり」にしないご担当者様へ

ウェアラブルの数値だけでなく、疲労感、行動変化、継続率、管理職の支援など、何をKPIとして施策効果を確認するのかを事前に整理する必要があります。

「健康経営KPI・施策評価設計シート」では、ストレス指標と行動変化を組み合わせ、施策を継続・修正するための評価項目を整理できます。


    送信いただいた情報は、社内検討用チェックシートの送付および本資料に関するご連絡のために利用します。
    個人情報の取扱いについてをご確認ください。


    職場のデスクワーカーを対象に何を確認したのか

    本記事で集約している調査では、デスクワーク中心の業務に従事する企業社員を対象に、ウェアラブルによる生理指標と、運動や心理状態との関係を確認しています。

    研究は倫理審査委員会の承認を得たうえで実施しました。

    職場のウェアラブル測定と運動介入研究に関する倫理審査結果

    主に確認したのは次の項目です。

    • 腕時計型ウェアラブルによる生理指標
    • 運動習慣の有無
    • 軽度から中強度の運動介入
    • HRV等の運動前後の変化
    • 心理的ストレス評価
    • 不安傾向とストレス反応との関係

    重要なのは、実際の職場で働く人を対象としていることです。

    職場では、睡眠、業務量、会議、納期、座位時間、体調など複数の条件が同時に変化します。
    そのため、研究室で条件をそろえた実験と同じようには結果を読めません。

    結果1|運動習慣の有無だけではストレス反応を説明できなかった

    今回のデータでは、運動習慣の有無だけによって、HRVやストレス反応に明確な差が確認できる結果にはなりませんでした。

    これは「運動に効果がない」という意味ではありません。

    職場のストレス反応には、

    • 睡眠
    • 疲労
    • 業務量
    • 勤務状況
    • 測定時の緊張
    • 体調
    • 普段の生活習慣

    など複数の要因が関係します。
    また、少人数の調査では、差が存在していても統計的に明確にならない場合があります。

    したがって、人事総務・健康経営担当者がここから導くべき判断は、「運動習慣がある社員ほどストレスが低い」と単純化しないことです。

    結果2|不安傾向だけでもストレス反応は決まらなかった

    顕在性不安度とストレス反応との関係についても確認しましたが、今回の調査では明確な差は確認されませんでした。

    同じ職場でも、緊張や不安の感じ方には個人差があります。
    しかし、不安傾向という一つの心理特性だけで、ウェアラブルに表れる身体反応を説明できるわけではありません。

    この結果からも、職場ストレスを一つの心理指標、一つの生理指標、一つの生活習慣だけで判断しないことが重要だと分かります。

    結果3|運動前後では「心理」と「生理」を分けて見る

    運動とストレス反応に関する関連研究では、運動前後の心理状態と、生理指標を同時に測定する方法が用いられています。

    たとえば、健康な成人を対象とした先行研究では、中等度運動の前後で心理状態と、唾液・血液などから得られる生理活性指標が確認されています。

    評価するもの 例 見る意味
    心理的変化 気分、不安、疲労感 本人がどのように感じたか
    自律神経関連指標 HRV、心拍など 身体反応の変化
    唾液指標 コルチゾール、αアミラーゼなど 運動やストレスに関連する生理反応

    ここから重要なのは、「どの指標が正しいか」ではありません。

    本人は楽になったと感じているのか、身体反応にはどのような変化が出たのかを分けて確認することです。

    唾液指標そのものの読み方については、
    唾液ストレス測定|何が分かり何が分からないか
    で整理しています。

    中強度運動の直後は「ストレス値が上がった」と誤解しない

    運動中には、身体活動に対応するため心拍数や血圧などが一時的に上昇します。

    そのため、運動直後の数値を日常の安静時と比較して、「ストレスが高くなった」と判断することは適切ではありません。

    測定場面 起こり得る変化 評価するときの考え方
    運動前 開始前の状態 比較基準として確認する
    運動中 心拍や呼吸が上昇する 運動による自然な身体反応と分ける
    運動直後 回復過程に入る 安静時と単純比較しない
    一定時間後 身体反応や体感が変化する 心理指標などと組み合わせて見る

    運動介入を評価するなら、「いつ測った数値なのか」まで含めて比較する必要があります。

    同じ運動でも、全員に同じ反応は出ない

    同じ運動を行っても、生理指標や本人の体感が全員同じ方向へ変わるとは限りません。

    たとえば、

    • HRV等には変化があったが本人は変化を感じない
    • 生理指標に大きな変化はないが気分が切り替わった
    • 運動そのものを負担に感じる
    • 体力や体調によって適切な運動量が違う

    といった違いがあります。

    したがって、平均値だけで「社員全員に効果があった」と判断するのではなく、反応には個人差があることを前提に施策を評価します。

    数値と本人の実感が一致しない場合もある

    運動施策の効果測定で特に重要なのが、生理指標と本人の体感が一致しない場合です。

    数値に変化があっても、本人が「特に変わらない」と感じることがあります。
    反対に、数値には大きな変化がなくても、「気分が切り替わった」「身体が軽くなった」と感じる場合があります。

    この場合、どちらかを間違いと考える必要はありません。

    生理指標は身体反応、主観評価は本人の実感という異なる情報です。
    両方を施策評価の材料にします。

    ウェアラブル測定の誤差も、効果判定から分ける

    運動前後の比較では、装着状態、身体活動、発汗、測定時間などによってウェアラブルの値が変化する場合があります。

    したがって、「数値が変わった」という事実だけで介入効果と判断する前に、測定条件が比較可能だったかを確認します。

    ウェアラブル測定の信頼性や、体動・装着状態・発汗などによる誤差については、
    ウェアラブルのストレス測定は信頼できる?|誤差と判断条件
    で詳しく整理しています。

    運動施策のKPIはHRVだけにしない

    HRVは、運動介入の前後を考える一つの生理指標として利用できます。

    しかし、HRVだけを成果KPIにすると、施策の評価を誤る可能性があります。

    KPIの例 確認すること
    HRV・心拍など 身体反応にどのような変化があったか
    疲労感・気分 本人が体感として変化を感じたか
    運動実施率 実際に取り組めたか
    継続率 施策後も無理なく続けられたか
    休憩・セルフケア 関連する回復行動が増えたか
    職場側の支援 運動や休憩を取りやすい環境になったか

    運動施策の効果は、生理指標 → 本人の体感 → 行動 → 継続 → 職場環境を組み合わせて確認します。

    「有意差がなかった」を「効果がない」と読まない

    職場研究では、対象人数が少ない場合や、睡眠、業務量、体調など複数の条件が影響する場合があります。

    そのため、統計的な有意差が確認されなかったことだけから、「運動施策に意味がない」と判断することはできません。

    一方で、差が確認できなかったにもかかわらず、「必ず効果がある」と結論づけることもできません。

    人事総務・健康経営担当者が確認したいのは、

    • 対象者は誰だったか
    • どの運動を実施したか
    • 測定条件はそろっていたか
    • どの指標を評価したか
    • 本人の体感や行動に変化はあったか

    です。

    研究結果を「効く・効かない」の二択にせず、自社施策を設計する材料として読むことが重要です。

    研究結果をそのまま自社へ当てはめない

    今回の調査や関連研究で得られた結果が、すべての職場や社員に同じように当てはまるとは限りません。

    対象者、職種、運動内容、測定期間、職場環境などが異なるためです。

    研究結果を別の職場へどこまで当てはめられるかについては、
    実験室データと職場データの違い|ストレス測定の読み方
    で整理しています。

    運動施策を職場で評価する5つの判断軸

    判断軸 確認すること
    1. 施策目的 何を変えるための運動介入なのか
    2. 生理指標 HRV等にどのような変化があったか
    3. 心理・体感 疲労感、気分、緊張などが変化したか
    4. 行動 運動やセルフケアが継続したか
    5. 職場条件 実行しやすい環境へ変化したか

    この5つを組み合わせることで、「HRVが上がったか」だけではなく、施策として職場にどのような変化が残ったかを判断しやすくなります。

    タニカワ久美子の企業研修では「続けられるか」まで見る

    タニカワ久美子の企業研修では、軽い運動やストレッチを実施して、その場で身体の変化を体験するだけでは終わらせません。

    受講者には、

    • 身体の緊張に気づいたか
    • 気分が切り替わったか
    • 仕事中のどこなら実施できるか
    • 無理なく続けられる方法か

    まで振り返ってもらいます。

    運動介入の施策効果は、その場で身体反応が変化したかだけでなく、翌日以降も職場で実行できる行動になったかを見ることが重要です。

    健康経営施策全体の効果測定とは分けて考える

    このページが扱うのは、ウェアラブルを使って運動介入前後を測り、運動施策の効果をどう評価するかです。

    運動施策以外も含め、健康経営施策全体の効果をストレス指標と行動変化からどう評価するかについては、
    健康経営の効果測定|ストレス指標と行動変化で見るKPI
    で整理しています。

    まとめ|運動介入は「前後の数値」ではなく複数の変化で評価する

    ウェアラブルを使えば、運動介入前後のHRVや心拍などを確認できます。

    しかし、それだけで「運動施策に効果があった」と判断することはできません。

    確認したいのは、

    • 生理指標がどう変化したか
    • 本人の疲労感や気分がどう変化したか
    • 実際に運動を続けられたか
    • 休憩やセルフケア行動へつながったか
    • 職場側が継続しやすい環境を整えたか

    という複数の変化です。

    運動介入の効果測定は、「数値が改善したか」ではなく、「身体・体感・行動・職場のどこに変化が起きたか」を確認して、次の施策を判断するために行います。

    参考文献

    • 川島聡子ほか(2006)運動前後の精神的変化とストレス応答物質の関連,千葉大学教育学部研究紀要,54,263-270.

    運動施策やストレス管理研修の効果を、KPIで確認したいご担当者様へ

    けんこう総研では、HRVなどの生理指標だけでなく、本人の体感、行動変化、継続状況、職場支援を組み合わせた健康経営の効果測定を支援しています。

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    HRV、心拍、唾液指標、ウェアラブルデバイスなどによる測定情報は、医学的な診断や治療を行うものではありません。運動実施に際しては、本人の体調や安全面に配慮し、必要に応じて専門職へご相談ください。

    文責:タニカワ久美子

    研修テーマが未定でも、対象者・職場状況・実施時期に合わせて整理します。

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