ストレス計測・行動変容
スマートウォッチのデータは、職場のストレスをどう捉えているのか
AIを用いたストレス評価の現状と実務での読み取り方
ストレスは「見える」のか、それとも「読み取る」ものか
企業の健康経営において、
ストレスを「どう把握するか」は長年の課題です。

アンケートによるストレスチェックは定着しましたが、
人事・総務の現場では、
- 日々の変化が分かりにくい
- 本人の自覚と結果が一致しない
- 変化を説明しづらい
といった声も少なくありません。
こうした課題への新しいアプローチとして、
スマートウォッチなどの装着型デバイスとAIを用いたストレス評価が注目されています。
本記事では、
2024年に発表された研究レビューをもとに、
職場でこの技術をどう理解すべきかを整理します。
研究が示しているのは「自動判定」ではない
今回取り上げる研究では、
心拍数、皮膚電気活動(EDA)、脈波(PPG)などの生理データと、
AIによる解析を組み合わせたストレス評価の可能性が整理されています。
重要なのは、
この研究が 「AIが正確にストレスを判定できる」
と結論づけているわけではない点です。
示されているのは、
- 生理データには、ストレス状態を反映する傾向がある
- AIは、そのパターンを整理・予測する補助になる
という位置づけです。
つまり、
AIは判断を代替するものではなく、解釈を助ける道具です。
スマートウォッチで何が測られているのか
スマートウォッチ等のデバイスでは、
主に次のような生理指標が取得されます。
- 心拍数や心拍変動(HRV)
- 皮膚電気活動(緊張や覚醒の指標)
- 活動量や睡眠の状態
これらのデータは、
身体がどの程度「緊張モード」にあるかを間接的に示します。
ただし、
数値が高い・低いだけで
「ストレスが多い」「少ない」と断定できるものではありません。
AI解析が得意なこと、苦手なこと
AIは、大量のデータから
傾向や変化のパターンを見つけることに長けています。
たとえば、
- いつもより心拍変動が下がっている
- 活動量が落ち、回復が遅れている
といった 変化の兆しを捉えることは可能です。
一方で、
- その原因が仕事なのか
- 人間関係なのか
- 体調や生活習慣なのか
といった 文脈の判断は、AIにはできません。
ここに、
人事・総務や管理職が関与する余地があります。
職場で起こりやすい誤解
実務で特に注意したいのは、次の点です。
- ストレスが「数値で確定する」と誤解する
- 個人を比較・評価するために使ってしまう
- データが示す変化を、そのまま指示につなげる
研究が示しているのは、
ストレス評価は単独で完結するものではないという事実です。
スマートウォッチとAIは、
「問題を見つける装置」ではなく、
対話や振り返りのきっかけを与える材料として位置づける必要があります。
本記事で整理している視点
本記事は、
スマートウォッチやAIによるストレス評価を
「導入すべき」「使えば解決する」と勧めるものではありません。
目的は、
- 職場でこの技術を使うと
- どのような情報が得られやすく
- どこで誤解が生じやすいのか
を、事前に理解することにあります。
スマートウォッチ × AI × 職場環境
この3つが交わる場面で、
何が分かり、何が分からないのかを整理するための内容です。
次に人事・総務が考えるべきこと
ここまでを踏まえると、
次に人事・総務が検討すべきなのは、
- これらのデータを、誰がどう説明するのか
- 管理職は、どこまで関与するのか
- 学習や対話の場を、どの段階で設けるのか
といった 運用前の判断です。
次の記事では、
スマートウォッチやAIを
「個人任せ」にしないために、企業として何を設計すべきかを、
判断の視点から具体的に整理します。