職場の呼吸法は深く吸わせない|安全に整える条件

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職場の呼吸法は深く吸わせない|安全に整える条件

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ストレス性痛み・コリ改善(セルフケア/タニカワメソッド)

職場の呼吸法は深く吸わせない|安全に整える条件

職場のストレス対策で、呼吸法を取り入れたいと思うことはありませんか。

呼吸法は、特別な道具がいらず、短時間で実施しやすい方法です。
会議前、電話対応後、クレーム対応後、長時間のパソコン作業のあとなど、職場の中でも使いやすいセルフケアです。

ただし、呼吸法は「やれば必ず効く」ものではありません。
深く吸おうとして、かえって苦しくなる人もいます。
静かに座ることが苦手な人もいます。
全員一斉に行うことで、義務感や恥ずかしさが先に立つこともあります。

人事総務・健康経営担当者が見るべきなのは、呼吸法そのものを良い方法として広めることではありません。
浅くなった呼吸と、肩・首・腰のこわばりを、職場の中で短く安全に戻せる条件が整っているかです。

この記事では、職場で呼吸法をストレス管理に使うときに、逆効果にしないための見方を確認します。
精神論ではなく、普通の社員が安心して実践できるセルフケアとして扱います。

呼吸法は「深く吸うこと」から始めない

ストレスが強い時、呼吸は浅く、速くなりやすくなります。

会議前、報告前、電話対応後、締切に追われている時ほど、本人が気づかないうちに息を止めたり、肩で呼吸したりします。
この状態が続くと、肩や首に力が入り、背中や腰も固まりやすくなります。

呼吸法というと、「深く吸う」ことを思い浮かべる人が多いかもしれません。
しかし、緊張している状態で無理に深く吸おうとすると、胸や肩に力が入り、息苦しさが強くなる場合があります。

職場で使う呼吸法では、まず深く吸わせるのではなく、細くゆっくり吐くことから始めます。
吐く息が少し長くなると、身体の力みに気づきやすくなります。

職場で起こりやすい状態 呼吸に出る変化 身体に出やすい反応
会議や発表の前 息が浅くなる 肩・首に力が入る
上司への報告前 息を止めやすい 胸の詰まり、背中のこわばり
電話・窓口対応後 呼吸が速くなる 落ち着かなさ、疲労感
締切前 吐く息が短くなる 焦り、判断ミス、腰の重さ
長時間の画面作業 呼吸に意識が向かなくなる 肩こり、首こり、集中低下

呼吸法の役割は、難しい技法を覚えることではありません。
浅くなった呼吸と、固まった身体に気づき、短く整えることです。

呼吸法は「戻れる状態」をつくるセルフケアです

禅的呼吸法を用いた研究では、呼吸法の前後で、ストレスに関係する生理的・心理的な変化が検討されています。
評価には、唾液アミラーゼ、血圧、脈拍、気分状態などが使われています。

ここで大切なのは、「呼吸法をすれば必ずストレスが下がる」と読まないことです。
職場で見るべきなのは、呼吸法によって、身体が過緊張から戻りやすい条件が作られた可能性です。

研究で見られた指標 職場での見方
唾液アミラーゼ 緊張やストレス反応の変化を見る手がかり
血圧 身体の緊張状態を知る手がかり
脈拍 興奮や緊張の強さを知る手がかり
気分状態 不安・疲労・混乱などの変化を見る手がかり
自由記述 本人がどう感じたかを把握する手がかり

健康経営では、数値だけを見るのではなく、社員が「息を止めていた」「肩に力が入っていた」「少し落ち着いた」と気づけるかも重要です。

呼吸法は、特別な人だけが行う技法ではありません。
ただし、職場で使うなら、社員が安心して実践できる形に変える必要があります。

静かに座るだけでも意味がある場合があります

研究では、呼吸法を行った群と、静かに座る群との比較が行われることがあります。
ここで差がはっきり出ない場合、それは「呼吸法に意味がない」という話ではありません。

静かに座り、外からの刺激を減らし、身体に注意を向けること自体にも、一定の意味があると考えられます。
この点は、職場実務ではとても重要です。

結果の読み方 職場での意味
呼吸法だけが特別に効くわけではない 技法より、緊張から戻れる条件を整える
静かに座ることにも意味がある 刺激を減らす時間を職場に入れる
深く吸うことだけが重要ではない まず吐く息をゆっくり整える
やり方で反応が変わる 義務・評価・競争を入れない
人によって合う方法が違う 見学・中止・代替方法を認める

職場で呼吸法を入れる時は、「どの呼吸法が一番よいか」だけを考えると失敗します。
社員が安全に緊張を下げられる条件を整えることが先です。

職場で呼吸法が効きにくくなる条件

呼吸法がうまく機能しない職場には、共通点があります。
手順を覚えることが目的になっている。
深く吸おうとして力んでいる。
全員一斉にやらされている。
上司が見ていて、うまくできているか気になる。

このような状態では、呼吸法そのものが新しいプレッシャーになります。
ストレス対策のはずが、社員にとって「ちゃんとやらなければならないこと」になってしまうのです。

効きにくくなる条件 起こりやすいこと 修正する視点
深く吸うことを頑張る 胸や肩に力が入る まず細くゆっくり吐く
正しいやり方を求めすぎる できない不安が出る 苦しくない範囲でよいと伝える
全員同じ形で行う 体調差が無視される 見学・中止・代替を認める
義務として実施する 心理的抵抗が出る 選べるセルフケアとして扱う
長く行わせる 集中が切れ、続きにくい 1分から3分で区切る

呼吸法は、押しつけるとストレス対策ではなくなります。
短く、静かに、選べる形にすることが必要です。

職場では「禅」よりも身体の反応として伝える

禅的呼吸法の研究は参考になります。
ただし、職場研修で禅や坐禅の世界観をそのまま導入する必要はありません。

宗教性や精神論を前面に出すと、参加しにくい社員が出ることがあります。
職場では、呼吸を「身体の反応」として説明した方が伝わります。

避けたい伝え方 職場で伝わりやすい言い換え
心を無にしましょう 息を止めていないか確認しましょう
深く正しく呼吸しましょう まず細くゆっくり吐きましょう
集中して坐りましょう 椅子に座ったまま、肩の力を確認しましょう
雑念をなくしましょう 今の身体のこわばりに気づきましょう
毎日続けましょう 会議後や電話対応後に1分だけ使いましょう

職場で必要なのは、修行ではありません。
仕事中に高まった緊張を、安全に短く戻す方法です。

職場で実践しやすい呼吸セルフケア

職場で使う呼吸法は、短く、わかりやすく、苦しくないことが条件です。
会議前後、電話対応後、長時間座ったあと、締切前などに使える形にします。

手順 行うこと 目的
1 椅子に座り、足裏を床につける 身体を安定させる
2 肩・首・腰に力が入っていないか確認する 緊張に気づく
3 鼻から軽く吸う 頑張って吸わない
4 口から細くゆっくり吐く 吐く息を主役にする
5 吐いたあと、自然に息が入るのを待つ 無理に操作しない
6 3回から5回で終える 短時間で切り替える

この方法は、禅的呼吸法そのものではありません。
職場で無理なく使えるように、呼吸、姿勢、身体感覚への注意を簡単にしたセルフケアです。

注意が必要な社員への配慮

呼吸法は安全性が高い方法として扱われることが多いですが、全員に同じ方法が合うわけではありません。
めまい、動悸、息苦しさ、不安感が強い社員には、無理に続けさせないことが必要です。

注意したい状態 起こりやすいこと 職場での対応
息苦しさがある 呼吸に意識が向きすぎる 中止して通常の呼吸に戻す
めまいがある 不安が高まりやすい 無理に続けない
動悸が気になる 身体感覚が不安材料になる 短時間で終える
呼吸器疾患がある 負担になる場合がある 個別配慮を行う
人前での実技が苦手 恥ずかしさがストレスになる 目立たない動きにする

呼吸法は、無理に頑張るものではありません。
苦しくない範囲で行い、合わない時は中止できる設計にします。

人事総務が見るべき運用条件

呼吸法を職場に導入する時、人事総務・健康経営担当者は、方法名よりも運用条件を見ます。
「どの呼吸法を行うか」よりも、「社員が安心して緊張を戻せる環境になっているか」が重要です。

確認すること 見る理由 職場での対応
呼吸法が義務になっていないか 強制感があると逆効果になりやすいため 参加・見学・中止を選べるようにする
深く吸わせすぎていないか 力みや息苦しさが出ることがあるため 吐く呼吸を中心にする
実施時間が長すぎないか 忙しい職場では続きにくいため 1分から3分で完結させる
管理職が理解しているか 実践しやすい雰囲気に関わるため 呼吸セルフケアをサボりではなく回復行動として伝える
痛みや不調がある社員への配慮があるか 無理な実践を防ぐため 代替動作や見学を認める

職場での呼吸法は、個人の努力に任せるだけでは続きません。
短く整える時間を、職場の中で認めることが必要です。

タニカワ久美子の企業研修ではどう扱うか

タニカワ久美子の企業研修では、呼吸法を精神論や修行のように扱いません。
研究で示されている「静かに座る」「呼吸に気づく」「過緊張から戻る」という考え方を、職場で使いやすい軽いセルフケアに置き換えます。

研修では、椅子に座ったままできる吐く呼吸、肩回し、背中を伸ばす動き、足首の上下運動、姿勢リセットなどを行います。
座学だけでなく、全員参加型の軽い運動を必ず取り入れています。

研修の現場では、短い演習のあとに「息を止めていた」「肩に力が入っていた」「少し吐くと気持ちが切り替わる」と気づく社員がいます。
この低いハードルの実技が、呼吸法を職場のストレス管理として使えるものにします。

人事総務の担当者からも、座学だけではなく、全員で実際にできる軽い運動がある点を評価されています。
普通の社員が仕事中に使える呼吸、姿勢、軽い運動としてストレス管理を扱うことが、研修後の実践につながります。

管理職には、「社員に落ち着けと言う前に、呼吸が浅くなる場面を減らし、短く整える時間を職場の中で認めてください」と伝えます。

ストレス管理の制度設計へつなげる

呼吸法を職場のストレス管理に活かすには、個人のセルフケアだけで終わらせないことが重要です。
研修、休憩設計、会議設計、長時間座位の見直し、管理職の声かけ、痛みや不調がある社員への配慮と組み合わせることで、健康経営の施策として機能しやすくなります。

職場のストレス対策を、個人のセルフケアだけで終わらせず、制度設計・役割分担・KPI運用まで見直したい場合は、こちらも確認してください。

ストレス管理とは|人事・総務が進める制度設計・役割分担・KPI運用

呼吸法は、効く条件を整えてこそ職場で使えます

呼吸法は、魔法のようにストレスを消す方法ではありません。
浅くなった呼吸と、肩・首・腰のこわばりを、短く、安全に、過緊張から戻せる条件が整った時に、職場のストレス管理として機能します。

職場では、禅や坐禅をそのまま導入するより、椅子に座ったままできる吐く呼吸、肩回し、姿勢リセットなどに置き換える方が現実的です。

大切なのは、正しい呼吸法を覚えさせることではありません。
社員が自分の呼吸の浅さや身体のこわばりに気づき、仕事中に短く整えられる状態をつくることです。

呼吸の浅さ、肩こり、腰の重さ、座りっぱなしによる身体のこわばりを、健康経営のストレス対策として扱いたい場合は、研修内容をご確認ください。


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参考文献

  • 奥野元子「禅的呼吸法によるストレス低減効果」京都大学学術情報リポジトリ,2016

文責:タニカワ久美子

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