ストレス性痛み・コリ改善(セルフケア/タニカワメソッド)
身体活動ユーストレスが仕事とメンタルに与えるプラス効果
本記事は、
「ストレス管理(Self-Management)とは|健康経営・職場実装のための制度設計・評価・KPIガイド」
の知識体系に基づき、
身体活動によって生じる「ユーストレス(適正負荷)」が
仕事・メンタルヘルスにプラスの効果をもたらす神経生物学的メカニズムを整理した
ドメインAuthority解説です。
こんにちは。産業ストレス管理の専門家、けんこう総研代表 タニカワ久美子です。
「運動はストレスに良い」と言われますが、健康経営の現場ではこの一言が誤解を生みます。
ポイントは、運動そのものではなく“適正な負荷=身体活動ユーストレス”が成立したときに、脳とメンタルに何が起きるかです。
本記事では、運動によってストレス耐性(resilience)が高まる仕組みをまとめた総説論文
Nowacka-Chmielewska ら(2022)
「Running from Stress: Neurobiological Mechanisms of Exercise-Induced Stress Resilience」
を軸に、職場のストレス管理に必要な“理屈の土台”を整理します。

定期的な身体活動は、ストレス耐性を支える中枢神経に多くのプラス効果をもたらします
1. 前提|慢性ストレスが「脳の働き」を落としていく
慢性的なストレスは、メンタル不調のリスク要因であるだけでなく、
脳機能(注意・意思決定・感情制御)に影響し、仕事のパフォーマンスにも波及します。
ここでいう問題は「気分」だけではなく、脳が“ストレス状態に最適化される”ことです。
2. 身体活動ユーストレス|なぜ「プラスのストレス」になり得るのか
身体活動は、負荷をかける行為です。つまりストレス反応のスイッチを入れます。
しかし適正負荷であれば、その反応はダメージではなく回復・適応(resilience)の学習として働きます。
この「適正負荷で適応が起きる」という構造が、身体活動ユーストレスの核です。
3. 中枢神経で起きる主要メカニズム(論文の要点)
3-1. 気分・認知の改善を支える“神経栄養システム”
定期的な身体活動は、気分や認知機能に関わる神経回路の働きを支えます。
論文では、神経栄養因子の増加やシナプス可塑性(学習・適応のしやすさ)に関わる変化が整理されています。
3-2. 炎症・ストレス反応の“過剰化”を抑える方向に働く
ストレスが長引くと、炎症系やストレスホルモン系のバランスが崩れやすくなります。
身体活動は、この“過剰化した反応”を回復側へ戻す方向に寄与し得る、という整理です。
(※「運動すれば必ず炎症が下がる」という単純化ではなく、適正負荷と回復が前提です)
3-3. 細胞エネルギー代謝と“掃除機能”が、ストレス耐性の土台になる
論文では、運動によるエネルギー代謝の改善や、損傷成分の除去(老廃物処理)、
炎症プロセスの抑制などが整理されています。
ここが重要で、ストレス耐性は「気合」ではなく、回復できる身体・脳の状態に依存するという結論に接続します。
4. 反対側のリスク|座位中心はレジリエンスを削る
座位中心の生活が続くと、適応機会が減り、ストレス耐性が落ちやすくなる――
この方向性も論文内で議論されています。
健康経営での本質は「運動を推奨する」より、座位の固定化を解除できる職場設計です。
5. 健康経営への示唆
このページが提供するのは、運動メニューではなく判断軸です。
- 身体活動は「適正負荷」であれば、回復・適応を学習させる(ユーストレス)
- 効果は“脳の回路・炎症・代謝”など複数機構の合流として理解すべき
- 健康経営では、個人任せより「座位固定を解除する環境・運用」が効く
制度・専門職運用と接続する場合
ストレスチェック後の支援設計や、産業保健職・人事の運用と接続する場合は、
「産業ストレスマネジメントとは?」
の枠組み(制度・評価・運用)と合わせて設計すると、職場実装の再現性が上がります。