ライフステージ別健康支援
生活習慣病リスクを見直す健康経営支援
従業員の健康支援では、メンタルヘルスだけでなく、肥満、糖尿病、運動不足、食生活の乱れといった生活習慣病リスクも見逃せません。
人事総務の担当者にとって大切なのは、生活習慣病を個人の自己管理だけの問題にしないことです。長時間のデスクワーク、残業、休憩の取りにくさ、食事時間の乱れ、慢性的なストレスは、職場環境とも関係しています。
この記事では、従業員の生活習慣病リスクを、健康経営の中でどのように見直し、職場支援につなげるかを紹介します。
生活習慣病リスクは職場でも見直せる
肥満や糖尿病などの生活習慣病リスクは、食事や運動だけで決まるわけではありません。勤務時間、休憩の取り方、座りっぱなしの時間、残業、ストレス、睡眠不足など、働き方とも深く関わります。
人事総務の担当者が注意したいのは、「自己管理してください」と伝えるだけでは、行動が変わりにくい点です。忙しい部署では昼食が遅くなり、残業が続くと運動時間が減り、疲労がたまると食事も簡単なものに偏りやすくなります。
健康経営では、生活習慣病リスクを本人の努力不足として扱わず、職場で支援できる部分を確認することが重要です。
平均寿命だけでは職場の健康課題は見えない
日本人の平均寿命は高い水準にあります。厚生労働省の令和6年簡易生命表では、男性の平均寿命は81.09年、女性は87.13年とされています。
ただし、長く生きることと、働きながら健康に過ごせることは同じではありません。企業が見るべきなのは、従業員が体調不良を抱えながら無理をしていないか、生活習慣病リスクが高まる働き方になっていないかです。
人事総務が健康経営を進めるときは、平均寿命の数字よりも、自社の健診結果、ストレスチェック、残業時間、休憩取得、運動習慣、食生活の乱れを合わせて見る必要があります。
運動不足と座りっぱなしは職場で起こりやすい
生活習慣病リスクを考えるうえで、運動不足と座りっぱなしの時間は重要です。デスクワーク中心の職場では、本人が意識しないうちに身体活動量が少なくなります。
令和5年国民健康・栄養調査では、20歳以上の平均歩数は男性6,628歩、女性5,659歩で、直近10年間で男女とも有意に減少しています。歩数の減少は、通勤、在宅勤務、移動の少なさ、業務のデジタル化とも関係している可能性があります。
職場では、特別な運動イベントを行う前に、座りっぱなしの時間を減らす、会議の合間に立ち上がる、昼休みを確保するなど、日常業務の中でできる支援から始められます。
肥満や糖尿病リスクを責めない
肥満や糖尿病リスクがある従業員に対して、注意や指導だけで対応すると、本人は相談しにくくなります。健康診断の結果を見て「自己管理ができていない」と受け取られると、健康支援が責められているように感じられることがあります。
人事総務が見るべきなのは、本人を責めることではなく、リスクが高まりやすい働き方がないかです。
- 残業が続き、夕食が遅くなっていないか
- 昼食を短時間で済ませる部署になっていないか
- 在宅勤務で歩数が減っていないか
- 休憩を取りにくい雰囲気がないか
- ストレスで間食や飲酒が増えていないか
- 健診後のフォローが本人任せになっていないか
生活習慣病対策は、個人を責める取り組みではありません。本人が行動を変えやすい職場環境を整えることが、健康経営の役割です。
ストレスは生活習慣病リスクにも関わる
ストレスが強い状態が続くと、睡眠が乱れたり、食事が偏ったり、運動する気力が落ちたりします。忙しさや不安が続くと、甘いものや脂っこい食事、夜遅い食事、飲酒に頼る人もいます。
このような状態では、本人が生活を整えたいと思っていても、行動に移しにくくなります。ストレス対策と生活習慣病対策は、別々に考えるより、一緒に見る方が実務に合っています。
健康経営では、健診結果だけを見るのではなく、ストレスチェック、残業時間、睡眠不足、相談しにくさも合わせて確認することが大切です。
人事総務が確認したい職場のサイン
生活習慣病リスクは、健診結果に出る前から、職場の様子に表れていることがあります。
- 昼食を抜く社員が多い
- 昼休みに席を離れない社員が多い
- 残業後の夜遅い食事が続いている
- 在宅勤務で歩く機会が減っている
- 運動施策に参加する社員が偏っている
- 健診後の再検査や受診勧奨が遅れている
- ストレスで間食・飲酒が増えている社員がいる
このようなサインがある場合、健康施策を一度きりのイベントで終わらせず、日常の働き方に組み込む必要があります。
生活習慣病支援で避けたい対応
企業が生活習慣病対策を行うとき、伝え方を間違えると社員の不信感につながります。
| 避けたい対応 | 見直したい対応 |
|---|---|
| 肥満や血糖値を本人の努力不足として扱う | 働き方、食事時間、運動機会、ストレスを合わせて確認する |
| 全員に同じ運動イベントを行う | 運動が苦手な社員も参加しやすい選択肢を用意する |
| 健診結果だけで注意する | 健診後の相談先と受診勧奨の流れを整える |
| 食事指導を理想論だけで伝える | 忙しい社員でもできる小さな見直しにする |
| 健康施策を人事評価と結びつける | 不利益につながらない支援として伝える |
職場で始めやすい生活習慣病対策
生活習慣病対策は、大きな制度変更をしなくても始められます。まずは、社員が日常の中で少し行動を変えやすくなる環境を作ります。
- 昼休みを取りやすい声かけを管理職から行う
- 長時間座った後に立ち上がる時間を作る
- 会議前後に短いストレッチを入れる
- 在宅勤務の日も歩く時間を意識できるよう案内する
- 健診後の再検査や受診勧奨の流れを明確にする
- 食事を抜かないための社内啓発を行う
- ストレスチェック結果と健診傾向を別々に見ず、職場課題として確認する
社員に完璧な生活習慣を求める必要はありません。今より少し動く、休憩を取る、食事を抜かない、相談できる。このような小さな行動を職場で支えることが大切です。
身体活動ガイドを職場で活かす
厚生労働省の健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023では、座りっぱなしの時間が長くなりすぎないよう注意することや、筋力トレーニングを週2〜3日行うことなどが示されています。
ただし、企業で活用するときは、全員に同じ運動量を求めるのではなく、職場の実情に合わせる必要があります。運動が苦手な社員、シニア層、在宅勤務者、長時間デスクワークの社員では、始めやすい支援が異なります。
職場では、座りっぱなしを減らす、短時間の身体活動を入れる、休憩の取り方を見直すなど、続けやすい形にすることが重要です。
参考:厚生労働省「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」
タニカワ久美子の企業研修で見えていること
タニカワ久美子の企業研修では、生活習慣病対策を「食べすぎ」「運動不足」という個人責任だけで扱いません。現場では、忙しさ、残業、休憩の取りにくさ、ストレス、在宅勤務による歩数減少が重なり、健康行動を取りにくくなっている社員がいます。
人事総務の担当者からは、「健診結果は気になるが、社員にどう伝えればよいかわからない」「肥満や血糖値の話題は本人を傷つけそうで扱いにくい」「運動施策を入れても参加者が偏る」という相談を受けます。
研修では、生活習慣病リスクを責めるのではなく、職場で行動を変えやすくする支援として扱います。短時間の身体活動、食事時間の見直し、健診後フォロー、ストレス管理を組み合わせ、人事総務が現場で説明しやすい形に落とし込みます。
健康経営で確認したい実務ポイント
従業員の生活習慣病リスクを健康経営で見直すときは、次の点を確認します。
- 健診結果を本人任せにしていないか
- 再検査や受診勧奨の流れが決まっているか
- 昼休みや休憩が実際に取れているか
- 座りっぱなしが続く部署に対策があるか
- ストレスと食生活の乱れを別々に見ていないか
- 健康施策が一部の社員だけのものになっていないか
- 社員を責めずに健康行動を支援する表現になっているか
生活習慣病対策は、医療職だけのテーマではありません。人事総務が働き方や職場環境と合わせて見ることで、健康経営の実効性が高まります。
まとめ
肥満や糖尿病などの生活習慣病リスクは、個人の食事や運動だけでなく、働き方、ストレス、休憩の取り方、座りっぱなしの時間とも関係します。
人事総務の担当者は、従業員を責めるのではなく、健康診断後のフォロー、身体活動の機会、食事時間、ストレス管理を職場で支える視点を持つことが大切です。
従業員の生活習慣病リスクを、健康経営の取り組みとして見直したい場合は、けんこう総研の健康経営フォローアップをご覧ください。
