意味焦点型対処とは|情動焦点型対処との違いと職場ストレス管理

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意味焦点型対処とは|情動焦点型対処との違いと職場ストレス管理

意味焦点型対処とは、つらい出来事やストレス状況に対して、「この経験をどう受け止めるか」「自分にとってどんな意味があるか」を見直すストレス対処法です。

ストレスの原因そのものをすぐに変えられないとき、人は感情を落ち着かせたり、考え方を整えたりしながら、その状況に向き合います。

ラザルスとフォルクマンのストレス対処理論では、基本的な対処として、問題焦点型対処と情動焦点型対処がよく知られています。
意味焦点型対処は、その後のストレス研究の中で、困難な状況の中に意味や価値を見出し、前向きな感情や行動を保つための考え方として重視されるようになりました。

本記事では、意味焦点型対処と情動焦点型対処の違いを整理し、職場のストレス管理、管理職の声かけ、健康経営研修でどのように活かせるかを解説します。

ストレスを抱えた人を表すイメージ

ストレス対処では、感情を落ち着かせることと、出来事の受け止め方を見直すことの両方が大切です。

意味焦点型対処とは

意味焦点型対処とは、ストレスを感じる出来事に対して、その意味や価値を見直す対処法です。

たとえば、仕事で失敗したときに、「自分はだめだ」と考えるだけでは、気持ちは重くなります。
一方で、「次に同じミスを防ぐために、手順を見直す機会になった」と受け止め直すことができれば、同じ出来事でも次の行動につながります。

ただし、意味焦点型対処は、つらい出来事を無理に良いことだと思い込む方法ではありません。
現実を否定せず、その中で自分ができること、学べること、守りたい価値を見つけることが重要です。

情動焦点型対処とは

情動焦点型対処とは、ストレス状況によって生じた感情を落ち着かせる対処法です。

ストレスの原因そのものをすぐに変えられないとき、不安、怒り、悲しみ、焦りなどの感情を整えることが必要になります。

たとえば、次のような方法です。

  • 深呼吸をする
  • 少しその場を離れる
  • 信頼できる人に話を聞いてもらう
  • 休憩を取る
  • 気持ちを書き出す
  • リラクゼーションを行う

情動焦点型対処は、「問題から逃げること」ではありません。
感情が強くなりすぎているときに、冷静に考えられる状態へ戻すための対処です。

問題焦点型対処との違い

ラザルスとフォルクマンのストレス対処理論では、問題焦点型対処と情動焦点型対処が基本的な対処として整理されています。

問題焦点型対処は、ストレスの原因そのものを変えようとする方法です。
たとえば、仕事量が多すぎる場合に、上司に相談して優先順位を見直す、業務分担を変える、手順を改善するなどがこれにあたります。

一方で、情動焦点型対処は、ストレスによって生じた感情を整える方法です。
意味焦点型対処は、出来事の意味や受け止め方を見直し、次の行動につなげる方法です。

対処法 主な目的 職場での例
問題焦点型対処 ストレスの原因を変える 業務量を調整する、相談する、手順を改善する
情動焦点型対処 感情を落ち着かせる 深呼吸する、休憩する、話を聞いてもらう
意味焦点型対処 出来事の意味や受け止め方を見直す 失敗を学びに変える、仕事の目的を再確認する

意味焦点型対処と情動焦点型対処の違い

意味焦点型対処と情動焦点型対処は、似ている部分があります。
どちらも、ストレスの原因そのものをすぐに取り除く方法ではありません。

しかし、見ているポイントが違います。
情動焦点型対処は、不安や怒りなどの感情を落ち着かせることを重視します。
意味焦点型対処は、その出来事をどう受け止め、次の行動にどうつなげるかを重視します。

項目 情動焦点型対処 意味焦点型対処
主な目的 感情を落ち着かせる 出来事の意味を見直す
使いやすい場面 感情が強くなっているとき 状況を前向きに整理したいとき
職場での例 深呼吸、休憩、相談 失敗から学びを見つける、仕事の目的を確認する
注意点 感情を抑え込むことではない 無理に前向きに考えることではない

意味焦点型対処は、無理なポジティブ思考ではない

意味焦点型対処を扱うときに注意したいのは、「何でも前向きに考えましょう」と伝えないことです。

つらい出来事、不公平な扱い、過重労働、ハラスメントまで、本人の受け止め方だけで解決しようとするのは危険です。
意味焦点型対処は、悪い状況を良いものだと思い込む方法ではありません。

現実のつらさを認めたうえで、その中で何を学べるか、何を守るか、誰に相談するか、次にどう行動するかを考える方法です。

職場では、本人の考え方を変えるだけでなく、仕事量、相談先、休憩、管理職の関わりも合わせて見直す必要があります。

職場で意味焦点型対処が役立つ場面

意味焦点型対処は、次のような職場場面で役立つことがあります。

  • 失敗やミスを次の改善につなげたいとき
  • 新しい役割に不安があるとき
  • 異動や昇進で環境が変わったとき
  • 顧客対応や介護・教育現場で感情的な負担が大きいとき
  • 忙しさの中で仕事の意味を見失いかけているとき

たとえば、クレーム対応で強いストレスを受けた社員に対して、「気にしないで」と言うだけでは不十分です。

何がつらかったのか、次に同じ状況が起きたときに何を確認するか、職場としてどのように支えるかを整理する必要があります。
その中で、「この経験を次の対応改善に使う」という意味づけができれば、ストレス体験は学びにつながりやすくなります。

意味焦点型対処とユーストレスの関係

意味焦点型対処は、ユーストレスを理解するうえでも重要です。
ユーストレスとは、成長や前向きな行動につながるストレスのことです。

同じ出来事でも、「自分には無理だ」と受け止めると、強い不安や回避につながることがあります。
一方で、「少し難しいけれど、準備すれば取り組めそうだ」「この経験は次の成長につながる」と受け止められると、行動しやすくなります。

ただし、ユーストレスに変えるには、本人の努力だけでは不十分です。
相談できる相手、仕事の進め方を選べる余地、休息、管理職の声かけが必要です。

ユーストレスとディストレスの違いについては、
ユーストレス(良性ストレス)とは
で詳しく整理しています。

管理職が注意したい声かけ

意味焦点型対処を職場で活かすには、管理職の声かけが大切です。
ただし、声かけを間違えると、本人に「つらさを理解してもらえない」と感じさせることがあります。

避けたい声かけ 問題点 望ましい声かけ
前向きに考えよう つらさを軽く扱われたと感じやすい 何が一番負担になっていますか
いい経験になったね 本人がまだ傷ついている段階では早すぎる 落ち着いたら、次に活かせる点を一緒に整理しましょう
考え方を変えれば大丈夫 職場側の問題を本人の受け止め方に押しつけやすい 仕事量や進め方も一緒に見直しましょう
成長のチャンスだよ 過重な負荷を正当化しやすい 今の負荷は対応できる範囲ですか

管理職に必要なのは、無理に前向きにさせることではありません。
本人のつらさを受け止めたうえで、次に何を整えるかを一緒に考えることです。

人事総務・健康経営担当者が確認したいこと

意味焦点型対処を健康経営に活かすには、個人の考え方だけに頼らないことが大切です。

人事総務・健康経営担当者は、次の点を確認する必要があります。

  • 社員に「前向きさ」を求めすぎていないか
  • 過重労働やハラスメントを、本人の受け止め方の問題にしていないか
  • 失敗後に、責めるだけでなく振り返りの場があるか
  • 管理職が、部下の感情を受け止める声かけを学んでいるか
  • ストレス体験を次の改善につなげる仕組みがあるか

意味焦点型対処は、職場改善をしなくてよい理由にはなりません。
むしろ、社員の受け止め方と職場の支援を両方見直すための考え方です。

タニカワ久美子の企業研修ではどう扱うか

タニカワ久美子の企業研修では、意味焦点型対処を「前向きに考えましょう」という精神論としては扱いません。
社員本人には、つらい感情を否定せず、感情を落ち着かせたうえで、次に取れる行動を整理する視点を伝えます。

管理職には、部下に「考え方を変えなさい」と求めるのではなく、まず何が負担になっているのかを確認し、仕事量、相談先、進め方、休息を一緒に見直す声かけを伝えます。

現場では、失敗やクレーム対応のあとに、本人が強く落ち込んでいるにもかかわらず、「いい経験だったね」と早くまとめられてしまうことがあります。
この声かけは、本人のつらさを置き去りにする場合があります。

研修では、感情を受け止める段階と、経験を次に活かす段階を分けて扱います。
この整理ができると、人事総務・健康経営担当者は、社員のセルフケア、管理職の声かけ、ストレスチェック後の職場改善をつなげやすくなります。

健康経営研修で扱う意味

健康経営研修で意味焦点型対処を扱うと、社員や管理職がストレスを整理しやすくなります。

社員にとっては、つらい出来事をそのまま抱え込まず、感情を整え、次の行動につなげる方法を学ぶ機会になります。

管理職にとっては、部下に「前向きに考えなさい」と言うのではなく、つらさを受け止めながら、仕事の進め方や支援を一緒に見直す声かけを学ぶ機会になります。

研修では、次のようなテーマと組み合わせると実務に使いやすくなります。

  • ストレス反応の理解
  • 情動焦点型対処と問題焦点型対処の違い
  • 意味焦点型対処の使い方
  • 管理職の声かけ
  • ストレス体験を職場改善につなげる方法

まとめ|意味焦点型対処は、つらい経験を次の行動につなげる考え方

意味焦点型対処とは、ストレス状況の意味や受け止め方を見直し、次の行動につなげる対処法です。

情動焦点型対処が感情を落ち着かせることを重視するのに対し、意味焦点型対処は、その経験をどう受け止め、何に活かすかを考える点に特徴があります。

ただし、意味焦点型対処は、無理なポジティブ思考ではありません。
つらさをなかったことにしたり、過重労働やハラスメントを本人の考え方の問題にしたりしてはいけません。

職場で大切なのは、本人の感情を受け止め、必要な支援を整えたうえで、経験を次の改善や行動につなげることです。

社員のセルフケア、管理職の声かけ、ストレスチェック後の職場改善をつなげて設計したい場合は、ストレスマネジメント研修をご覧ください。

引用・参考文献

文責:タニカワ久美子

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