ストレス管理
健康経営のストレスマネジメント|一次予防につなげる職場実践
健康経営でストレス対策を進めるとき、「社員にストレス解消法を伝えること」と「会社としてストレスが高まりにくい職場をつくること」は、別の施策として考える必要があります。
社員一人ひとりのセルフケアは大切です。しかし、業務量、上司との関係、相談しやすさ、勤務時間、感情労働、職場の雰囲気が変わらないままでは、社員だけに負担が残ってしまいます。
この記事では、人事総務・健康経営担当者が、ストレスマネジメントを一次予防として職場に根づかせるために、どこを確認すればよいかを見ていきます。
健康経営におけるストレスマネジメントとは
健康経営におけるストレスマネジメントとは、社員のストレス反応を本人任せにせず、職場全体で不調を防ぐ取り組みです。
たとえば、社員に「気分転換をしましょう」「深呼吸をしましょう」と伝えるだけでは、職場のストレス要因そのものは変わりません。
一方で、業務の偏り、相談しにくい雰囲気、管理職の声かけ不足、退勤後も仕事を考え続ける状態を見直すと、ストレス対策は職場改善につながります。
健康経営で成果につながるストレスマネジメントは、個人の対処法と職場環境の見直しを切り離さずに進めることが重要です。
ストレス管理を制度設計や役割分担から見直したい場合は、ストレス管理とは|人事・総務が進める制度設計・役割分担・KPI運用もあわせて確認すると、自社の施策の位置づけが見えやすくなります。
ストレスマネジメントで起きやすい失敗
企業の現場では、ストレスマネジメント研修を実施しても、職場の行動が変わらないことがあります。
その原因は、研修内容だけではありません。ストレス対策が、健康経営の中でどの役割を持つのかが曖昧なまま進んでいるケースがあります。
- ストレスチェック後の職場改善につながっていない
- 社員向けのセルフケアだけで終わっている
- 管理職が何をすればよいか分からない
- 一度きりの研修で終わり、職場に定着しない
- 健康経営の目的とストレス対策の関係が社内に伝わっていない
人事総務が苦労しやすいのは、ストレス対策の必要性は理解されても、現場の行動に落ちにくいことです。
そのため、最初から「知識を増やす研修」として進めるのではなく、「職場で使える判断基準をそろえる研修」として設計する必要があります。
一次予防として見るべき3つの領域
健康経営のストレスマネジメントでは、社員本人、管理職、職場環境の3つを分けて見ると、施策の抜けが見えやすくなります。
| 領域 | 見るべき内容 | 人事総務が確認すること |
|---|---|---|
| 社員本人のセルフマネジメント | 疲労、睡眠、緊張、感情の乱れ、考えすぎなど | 社員が自分のストレス反応に早く気づける内容になっているか |
| 管理職の関わり方 | 声かけ、業務配分、相談対応、部下の変化への気づき | 管理職が精神論ではなく、具体的な初期対応を学べているか |
| 職場環境の見直し | 業務量、人間関係、心理的負荷、感情労働、休みにくさ | ストレスチェック結果を職場改善につなげる流れがあるか |
この3つのうち、どれか一つだけを強化しても、ストレス対策は十分に機能しません。
社員本人のセルフケア、管理職の対応、職場環境の見直しをつなげることで、一次予防として動きやすくなります。
職場で進めやすいストレスマネジメントの方法
人事総務がストレスマネジメントを進めるときは、いきなり大きな制度変更を目指すよりも、現場で実行できる順番に分けることが大切です。
社員が自分のストレス反応に気づけるようにする
最初に必要なのは、社員が自分のストレス反応に早く気づけることです。
イライラ、疲労感、睡眠の乱れ、肩こり、集中力の低下などは、本人が「いつものこと」と見過ごしやすい反応です。
研修では、ストレスを悪いものとして一方的に伝えるのではなく、負荷が高まりすぎたときに心身へどのような変化が出るのかを確認します。
この理解があると、社員は早めに相談したり、休息を取ったり、働き方を見直したりしやすくなります。
管理職が部下の変化に気づけるようにする
ストレスマネジメントは、社員本人だけの問題ではありません。
管理職が、部下の表情、遅刻や欠勤の増加、ミスの増加、反応の遅さ、孤立などに気づけることも重要です。
ただし、管理職に専門家の役割を求める必要はありません。
必要なのは、早めに気づき、責めずに声をかけ、必要に応じて人事総務や産業保健スタッフにつなぐ判断です。
ストレスチェック結果を職場改善に使う
ストレスチェックは、実施するだけでは健康経営の成果につながりません。
大切なのは、集団分析の結果を見て、どの部署で負荷が高いのか、どの職場で相談しにくさがあるのかを確認することです。
結果を個人の問題として扱うのではなく、職場の状態を見直す材料として使うことで、ストレスチェックは一次予防の施策になります。
感情労働や対人対応の負荷を見えるようにする
医療、介護、教育、接客、窓口対応などでは、感情を抑えながら働く負荷が大きくなります。
この負荷は、本人の性格や我慢強さの問題として扱われやすい一方で、離職やバーンアウトにつながることがあります。
対人対応が多い職場では、感情労働ストレスを前提にした研修設計が必要です。感情を整える方法だけでなく、職場として無理な対応を抱え込ませない仕組みも確認します。
感情労働ストレスを別テーマとして確認したい場合は、感情労働ストレスのページも参考になります。
ユーストレスを活かす視点も必要になる
ストレスマネジメントでは、ストレスをすべて悪いものとして扱わないことも大切です。
適度な緊張感や挑戦は、集中力や成長につながることがあります。このように良い方向に働くストレスは、ユーストレスと呼ばれます。
一方で、同じ仕事量でも、本人の裁量がない、相談できない、評価が不透明、休めないといった条件が重なると、ストレスは不調につながりやすくなります。
健康経営では、社員に負荷をかけないことだけを目指すのではなく、成長につながる負荷と、不調につながる負荷を分けて考える必要があります。
ユーストレスを職場で活かす考え方は、ユーストレス(良性ストレス)とは|職場で活かすストレス資源の全体像で確認できます。
タニカワ久美子の企業研修で重視していること
タニカワ久美子の企業研修では、ストレスマネジメントを「社員が自分で頑張るための方法」としては扱いません。
社員本人には、自分のストレス反応に早く気づく視点を伝えます。管理職には、部下の変化に気づき、責めずに声をかけ、必要な相談先につなぐ視点を伝えます。
企業の現場では、ストレス対策が「個人のメンタルの問題」として片づけられてしまうことがあります。
しかし実際には、業務量、人間関係、感情労働、相談しにくい職場の雰囲気が重なっているケースが多くあります。
研修中にも、「相談してよいと言われても、どの段階で相談すればよいかわからない」「部下に声をかけたいが、どこまで踏み込んでよいか迷う」という声が出ることがあります。
そのため研修では、社員向けのセルフケアと、管理職向けの職場マネジメントを切り離さず、健康経営の一次予防として職場で使える形に落とし込みます。
健康経営担当者が確認したい実践チェック
自社のストレスマネジメント施策を見直すときは、次の点を確認してください。
- 社員が自分のストレス反応を説明できる内容になっているか
- 管理職が部下の変化に気づく視点を持てているか
- ストレスチェック結果を職場改善に使えているか
- 感情労働や対人対応の負荷を見落としていないか
- 一度きりの研修で終わらず、職場で使える言葉として残っているか
- 健康経営の目的とストレス対策のつながりを社内に説明できるか
この確認ができると、ストレスマネジメントは単なるメンタルヘルス対策ではなく、健康経営の実行施策として位置づけやすくなります。
健康経営のストレスマネジメントは一次予防として設計する
健康経営で成果につながるストレスマネジメントは、社員の自己努力だけに頼るものではありません。
社員本人のセルフマネジメント、管理職の関わり方、職場環境の見直しをつなげて進めることが重要です。
ストレスチェック、研修、職場改善を別々に行うのではなく、一次予防の流れとしてつなげることで、社員の不調予防、管理職の対応力向上、働きやすい職場づくりに結びつきます。
健康経営の一環として、ストレスマネジメント研修を職場に根づかせたいご担当者様へ
けんこう総研では、社員のセルフケア、管理職の声かけ、職場改善をつなげるストレスマネジメント研修を行っています。健康経営を一度きりの施策で終わらせず、現場で使える行動に変える内容で設計します。