健康リーダー応援コラム
教員の感情労働/ ストレス研究ノートvol.1
2021年12月25日更新
教員のメンタルヘルス不調は過去最高
教職員のメンタルヘルス疾患での休職は、過去最高の4,675人(61.1%)と発表がありました。(2006年の文部科学省調べ)私も専門学校や大学に出講して教鞭をとっているので、教職員業務のストレスは痛いほどわかります。
そして、2020年から始まったCOVID19により、教育現場は、多様化して、問題は深刻化を極めてきています。仕事の物理的な忙しさだけでなく、精神面での疲労は尽きません。もちろん、それは教職員だけでなく、職域ごとの問題はどこでもあります。
このようなストレスは、教育や医療・福祉機関で働いている方々が多く、バーンアウトというメンタルヘルス不調に陥りやすいことは有名です。
「バーンアウト」をキーワードにした研究も数多くあります。
バーンアウトという高ストレス問題
バーンアウトは、学生さんや、PTAの要求に応えようと努力し続ける、実直真面目な方がなりやすいのが特徴です。極度の心とカラダからの疲
労から情緒的消耗感(emotional exhaustion)になってしまいます。とくに、人間を相手にする教職員や看護職、介護従事者など、本来の業務に加え、相手の心に寄り添わなければならない職業の燃え尽き率は、高くあります。他サービス業と比べて、無自覚な慢性ストレスにかっかっているからです。
教員のストレス状態には複数の要因が影響していると考えられます。最も強いストレッサー(ストレスの原因となるもの)は、大きく分けて2つです。(財団法人労働科学研究所調べ)
1.教育成果の見えにくさ
2.児童・生徒の授業態度の変容
教員のメンタルヘルスの悪化は、結果的に教育実践の低下に
教員のメンタルヘルスの維持・向上に対する支援は、リモートワークに伴い急務になってきています。
教員が直面する課題は、学生との交流です。そのため、教員を対象にしたストレス研究は、対人関係といった生徒との対話に着目した研究が多くあります。
こうした実情は、教員が自らに生じる感情をセンサーとして働かせて、仕事に活かし、生徒との対話でも感情を押し殺したりして聖職を遂行しています。教員は他のビジネスワーカーに比べて、対人ストレスが多い理由は、容易に理解していただけるでしょう。
ところで、多くのバーンアウト研究において対象とされる医療・教育・福祉領域で、当該領域の専門的知識技能を有しながら、他者の社会復帰、自立を支援する対人援助職の方々は、被援助者に対し暖かく人間的に、そして献身的に接することが求められます。その一方では、冷静で客観的な態度を堅持しなければなりません。
介護職/ 対人サービス・援助職の共通的特徴
Hochschild(ホックシールド)は、感情労働(emotional work ; labor)という労働を発言しました。
感情労働とは、「公的に観察可能な表情と身体表現を作るために行う感情の管理」を言います。そして、「相手に適切な心の状態を喚起させるように、自分自身の感情を引き起こしたり、抑制したりすることを要求する」と仕事です。
対人サービスは、感情規則という、職業によってふさわしいと考えられる場面に応じた感情があり、その職業的要請に従って、自らの感情や感情表出を意識的、無意識的に管理・コントロールすることが求められる、実にストレスフルな職業なのです。
すべての対人サービス業に従事している人々は、非常に高い頻度で感情労働を行っています。それなのに対人サービス業は、目に見えないが暗に期待された職務であり、いわば「自明のこと」として行われているため、誉められない、感謝されない、賃金に反映されないなど、その職務内容は正当に評価されていません。
さらに、対人援助職の場合、感情労働に対するマニュアルがありません。そのため感情の管理は経験的に学び、口伝的に受け継がれていくものであるとして、労働者個人の裁量に任されているのが現状です。つまり、適切な感情労働からの逸脱は、労働者個人の問題として処理されるため(崎山,2006)、感情労働を遂行する上で困難があり、職務上の良好な人間関係が維持できない場合などには精神的負担感が増大することが予測されます。
被援助者に対し感情面での高い関与と同時にそれを統制することが求められる対人援助職において、こうした感情労働の性質がバーンアウトに関与するとしばしば指摘されている問題が、対人援助職の職務の本質に迫ると考えられます。
しかしながら直接その査定を試みた研究は少なく感情労働そのものに関する研究の蓄積もいまだ十分ではありません。
現在の感情労働査定法
・看護師を対象とした感情労働尺度(片山・小笠原・辻・井村・永山,2005)が作成されています
・日本語版感情労働尺度(2004にFrankfurt Emotion Work Scale(FEWS;Zapf etal., 2001)を参考とした対人援助職就労者を対象のが作成)
教員の感情労働はその内容が明瞭になっていないません。
教員の感情労働の定性化、定量化を図るため、中学校教員用感情労働尺度の作成も喫緊に望まれます。
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文責:タニカワ久美子
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