ストレス科学ラボ・用語バンク
睡眠障害の有病率と併存疾患|職場ストレス対策の研究整理
睡眠障害は、本人の生活習慣だけで片づけられる問題ではありません。
眠れない、途中で目が覚める、日中に強い眠気があるといった状態は、メンタルヘルス不調、身体疾患、職場ストレスと重なって現れることがあります。
本記事では、一般人口を対象にした睡眠障害の有病率と併存疾患に関する研究知見をもとに、人事総務・健康経営担当者が職場のストレス対策を考える際に押さえておきたい視点を整理します。
医療的な診断や治療を目的とするものではなく、社員研修や職場改善を検討するための研究整理記事です。
睡眠障害は、職場ストレスを考えるうえで重要な健康サイン
睡眠障害は、単独で起こる生活習慣の問題として見られがちです。
しかし、研究知見では、睡眠障害はメンタルヘルス不調や身体疾患と併存しやすい健康問題として扱われています。
職場で重要なのは、「眠れない社員がいる」という事実だけを見ることではありません。
その背景に、業務量、心理的負荷、長時間労働、シフト勤務、相談しにくい職場風土、仕事後も続く緊張がないかを合わせて見ることです。
睡眠障害は、本人の努力不足ではなく、職場ストレスが心身に影響しているサインとして現れることがあります。
そのため、人事総務・健康経営担当者は、睡眠を福利厚生の一部としてだけでなく、ストレス管理の重要指標として捉える必要があります。
睡眠障害の有病率と併存疾患に関する研究知見
Ohayonによる一般人口を対象とした睡眠障害の疫学的整理では、不眠、睡眠時無呼吸症候群、レストレスレッグス症候群、日中の過度な眠気など、複数の睡眠障害が一般人口の中で一定割合みられることが示されています。
また、睡眠障害は単独で存在するだけではなく、不安、抑うつ、心血管系疾患、高血圧などの身体疾患と併存することがあります。
この点は、職場のストレス対策を設計するうえで重要です。
| 研究で扱われる視点 | 読み取れる内容 | 職場施策への意味 |
|---|---|---|
| 不眠 | 寝つきにくい、途中で目が覚める、眠った感じがしないといった問題が、メンタルヘルス不調と重なりやすい。 | 社員の疲労感や集中力低下を、本人の気合いの問題として扱わない。 |
| 日中の眠気 | 睡眠の質の低下は、日中の眠気、注意力低下、判断力低下につながる可能性がある。 | ミス、事故、欠勤、業務効率低下の背景に睡眠不調がないかを見る。 |
| 睡眠時無呼吸症候群 | 身体疾患や心血管系リスクと関連して扱われることがある。 | 職場研修では診断ではなく、早期相談・受診勧奨につながる知識として扱う。 |
| 不安・抑うつとの併存 | 睡眠障害は、不安や抑うつと重なって現れることがある。 | 睡眠不調を、メンタルヘルス不調の早期サインとして見る。 |
| 身体疾患との併存 | 高血圧や心血管系疾患など、身体的健康問題と関連して検討されている。 | 健康経営では、睡眠をメンタルヘルスだけでなく、全身の健康管理にも関わる指標として扱う。 |
人事総務が押さえたい実務上のポイント
職場で睡眠障害を扱うとき、最も避けたいのは「早く寝ましょう」「生活習慣を整えましょう」だけで終わらせることです。
もちろん、個人の生活習慣は大切です。
しかし、職場ストレスが強い状態では、本人が努力しても睡眠が安定しにくいことがあります。
人事総務・健康経営担当者は、睡眠不調を次のような職場サインとして確認する必要があります。
- 退勤後も仕事のことを考え続けていないか
- 朝から疲労感が強く、集中力が落ちていないか
- ミス、遅刻、欠勤、表情の変化が増えていないか
- 長時間労働やシフト勤務で睡眠リズムが崩れていないか
- 相談しにくい職場風土が、緊張を長引かせていないか
このように見ると、睡眠障害は個人の健康問題だけではなく、職場の負荷構造を映すサインになります。
タニカワ久美子の企業研修ではどう扱うか
タニカワ久美子の企業研修では、睡眠障害を医学的に診断するテーマとしては扱いません。
社員本人には、ストレス反応と睡眠の関係をわかりやすく伝え、管理職には、眠れていない部下を責めるのではなく、業務量、心理的負荷、相談しやすさ、退勤後の連絡状況を見直す視点を伝えます。
現場では、本人が「疲れているだけ」と思っていても、睡眠不足、仕事後の反すう、朝の疲労感、集中力低下が重なっているケースがあります。
この段階で早めに気づくことができれば、メンタルヘルス不調の予防、離職防止、管理職の初期対応につなげやすくなります。
人事総務の担当者からは、睡眠を精神論ではなく、疲労感、集中力、職場での変化として整理できる点を評価されています。
睡眠を入口にすると、社員本人にも管理職にも伝わりやすく、健康経営施策として研修に組み込みやすくなります。
本ページの位置づけ
本ページは、睡眠障害の有病率と併存疾患に関する研究知見を、職場のストレス対策に活かすための参照記事です。
睡眠障害の診断や治療を目的とするものではありません。
人事総務・健康経営担当者が、社員研修や職場改善を検討する際の基礎資料としてご活用ください。
睡眠とストレスの関係を職場施策全体から整理したい場合は、
睡眠とストレスの関係
をご参照ください。
職場のストレス対策を、社員の自己努力だけで終わらせず、研修や職場改善につなげたい場合は、ストレスマネジメント研修をご覧ください。
参考文献
Ohayon, M. M. (2007).
Prevalence and comorbidity of sleep disorders in general population.
La Revue du praticien, 57(14), 1521-1528.