ストレス研究memo
ストレス測定に関する信頼性研究メモVol.88
2024年6月15日更新
ウェアラブルデバイスによるストレスレベルの測定に関する信頼性については、多くの研究が行われています。
ウェアラブルデバイの重要な点
市販の広く出回っているウェアラブルデバイスは、心拍変動(HRV)、皮膚電気活動(EDA)、および血液量脈波(BVP)などの生理学的信号を用いてストレスを評価しています。
しかし、ウェアラブルデバイスによるストレス測定の信頼性は、デバイスの種類や測定環境によって大きく異なります。
事例1.
EmpaticaのEDA測定は実験室条件下で高い一致率を示しましたが、日常生活環境での測定では、多くのアーティファクトが発生し、信頼性が低下しました。
<アーティファクト(artifact)とは
信号処理や画像処理の過程で発生するデータの誤りや信号の歪 (ゆが) み。人為的な作業によって意図せず生じるノイズを言います。
※参考文献
Veronica Dudarev,Oswald Barra,Chuxuan Zhang(2023)On the Reliability of Wearable Technology: A Tutorial on Measuring Heart Rate and Heart Rate Variability in the Wild:MDPI,24
<市販ウエアラブルデバイスと医療機器との比較研究
心拍心拍変動を用いたストレス測定に関しては、商業的なウェアラブルデバイスと信頼性の高い医療機器との比較研究が行われています。
事例2.
ウェアラブルデバイスは実験室環境での測定と比較して精度が低く、特にデータの欠落が多いことが報告されています。
※参考文献
Cheyenne Samson,Ahyeon Koh(2020)
Stress Monitoring and Recent Advancements in Wearable Biosensors frontiers,8
一方、最近のパイロットスタディでは、ストレス誘発タスク(ストループ色名テスト、トリア社会的ストレステスト、過呼吸誘発テスト)を実施し、心拍数および呼吸率の変化を記録することで、ストレスレベルの評価が行われました。
このストレスレベルの研究では、インタビューセッションが最も強いストレス刺激となり、参加者の77%が心拍数の有意な変動を示し、80%が呼吸率の変動を示しました。
ウェアラブルデバイスの利用によるストレス管理効果
さらに、ウェアラブルデバイスの利用によるストレス管理の効果に関するスコーピングレビューでは、様々なデバイスがストレス軽減に寄与することが確認されました。特に、スマートウォッチやスマートバンドなどの商業デバイスが広く利用されており、異なる介入方法が有意なストレス軽減をもたらすことが報告されています。
※参考文献
Talha Iqbal,Andrew J. Simpkin ,Davood Roshan,et al.(2022)Stress Monitoring Using Wearable Sensors: A Pilot Study and Stress-Predict Dataset:Sensors,22(21),8135
ウェアラブルデバイスは、ストレスレベルの評価に有用です。その一方で、その信頼性はデバイスの種類、使用状況、および測定環境によって変動するため、注意が必要です。信頼性を高めるためには、複数の生理学的指標を組み合わせて評価することや、個々のデバイスの特性を理解した上で適切に使用することが重要です。