ラザルス ストレス理論で見る社員の受け止め方の違い

ストレス・セルフケアを組み合わせた健康経営研修

ラザルス ストレス理論で見る社員の受け止め方の違い

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ストレス研究ノート|研修現場から読むストレス科学

ラザルス ストレス理論で見る社員の受け止め方の違い

同じ業務変更があっても、社員の反応は同じではありません。

「新しい経験になりそう」と受け止める人もいます。反対に、「自分には対応できないかもしれない」と感じる人もいます。

この違いを、性格や気持ちの強さだけで見てしまうと、職場の支援はずれます。

必要なのは、社員がその出来事をどう受け止めているのか。対応できるだけの情報、時間、相談先、裁量があるのか。そこを見ることです。

ラザルスのストレス理論は、職場のストレスを「出来事そのもの」だけで見ない考え方です。

同じ出来事でも、本人の受け止め方と、使える支援によってストレス反応は変わります。

職場で大切なのは、理論名を覚えることではありません。

社員の反応を責めずに見て、管理職の声かけや人事総務の支援につなげられるか。そこが実務の分かれ目です。

同じ出来事でも社員の反応が違う理由

職場では、同じ出来事に対して反応が分かれる場面があります。

  • 新しい業務を任された
  • 上司から修正を求められた
  • 急な予定変更が入った
  • クレーム対応を任された
  • 部署異動や体制変更があった
  • 繁忙期に業務量が増えた

ある社員は、負担を感じながらも前に進めます。

別の社員は、同じ場面で強い不安や緊張を抱えます。

ここで「前向きな人」「気にしすぎる人」と分けてしまうと、職場は大事な条件を見落とします。

受け止め方の違いには、経験、体調、睡眠、相談先、上司との関係、業務の見通し、失敗したときの安心感が関係します。

本人だけの問題ではありません。

職場側の条件も、反応の違いを生みます。

ラザルス理論で見る認知的評価

ラザルスのストレス理論では、ストレスを出来事そのものだけで決めません。

人は出来事に直面したとき、その出来事が自分にとってどのような意味を持つのかを判断します。

これが認知的評価です。

職場で言えば、同じ出来事でも次のように受け止め方が分かれます。

出来事 負担としての受け止め 対応できそうな受け止め 職場が確認したい条件
新しい業務を任される 自分には無理かもしれない 手順を確認すれば進められそう 手順、相談先、期限、練習機会
上司から修正を求められる 否定されたように感じる 改善点を整理すればよい 伝え方、フィードバックの場、次の行動
急な予定変更がある 混乱して対応できない 優先順位を組み直せば対応できる 優先順位、調整権限、周囲の協力
クレーム対応が入る 怖い、逃げたいと感じる 手順と相談先があれば対応できる 対応マニュアル、同席者、報告ルート

大切なのは、社員に「前向きに考えましょう」と求めることではありません。

対応できると思える材料があるかどうかです。

情報が足りない。相談先がない。時間がない。失敗できない空気がある。

この状態では、どれだけ前向きな言葉をかけても、本人の負担は軽くなりません。

一次的評価と二次的評価を職場場面に置き換える

ラザルス理論では、出来事に対する評価を大きく二つに分けて考えます。

一つ目は、その出来事が自分にとって脅威なのか、損失なのか、挑戦なのかを判断する評価です。

二つ目は、その出来事に対して、自分に対応できる手段や資源があるかを判断する評価です。

評価 職場での意味 見落としやすい点
一次的評価 この出来事は自分にとって負担か、危険か、挑戦かを判断する 本人がどう受け止めたかを確認せず、職場側の意図だけで進める
二次的評価 自分に対応できる情報、時間、経験、相談先があるかを判断する 支援があるつもりでも、本人には使いにくい状態になっている

職場で特に重要なのは、二次的評価です。

社員が「自分だけでは対応できない」と感じているとき、相談先や支援が見えるだけで受け止め方は変わります。

ただし、支援制度があるだけでは十分ではありません。

誰に相談してよいのか。どの段階で声を上げてよいのか。相談したあと業務がどう動くのか。

ここが見えないと、社員は支援を使いにくくなります。

受け止め方を本人の性格で片づけない

職場では、「あの人は気にしすぎる」「あの人は打たれ弱い」と見られてしまうことがあります。

しかし、反応の違いは性格だけでは説明できません。

睡眠不足が続いている。過去に似た場面で失敗経験がある。上司に相談しにくい。仕事の全体像が見えていない。期限だけが迫っている。

こうした条件が重なると、同じ出来事でも大きな負担として受け止めやすくなります。

管理職にとっても、ここは判断が難しいところです。

励ましたつもりの言葉が、本人には「もっと頑張れ」に聞こえることがあります。確認のつもりの質問が、責められているように受け取られることもあります。

研修現場では、「どこまで聞いてよいのか」「本人が大丈夫と言ったら見守るべきなのか」という声が出ます。

この迷いを放置すると、社員は抱え込み、管理職も踏み込めなくなります。

コーピングは対処法の一覧ではなく順番の判断

コーピングは、ストレスを受けたときに行う考え方や行動の工夫です。

問題の原因に働きかける対処もあります。不安や怒りなどの感情を整える対処もあります。一時的に距離を置く対処が必要な場面もあります。

対処の方向 職場での意味 別記事に渡す範囲
問題焦点型対処 業務量、手順、期限、相談先など原因に働きかける 具体的な業務調整の進め方
情動焦点型対処 不安、怒り、緊張などの感情を落ち着ける 感情調整やセルフケアの具体法
距離を置く対処 一時的に離れ、心身の反応を落ち着かせる 休息や切り替えの具体策

ここで大切なのは、どれか一つを正解にしないことです。

原因を変えられる場面では、問題焦点型対処が役立ちます。

一方で、強い不安や怒りがあるときに、いきなり問題整理を求めると、本人はさらに追い込まれることがあります。

まず落ち着く時間が必要な場面もあります。

職場のストレス管理では、対処法の名前よりも順番が重要です。

今は原因を整理する段階なのか。感情の負担を軽くする段階なのか。職場側の支援につなげる段階なのか。

この判断は、社内資料だけでは定着しにくい部分です。

管理職の声かけが受け止め方を変える

同じ出来事でも、管理職の声かけによって社員の受け止め方は変わります。

たとえば、「期待しているから任せた」という言葉。

社員にとっては力になることがあります。けれども、支援や相談先がないまま言われると、断れない重圧になることもあります。

「なぜできないの?」という問いも、確認のつもりでも責められているように響きます。

受け止め方を支える声かけには、順番があります。

  • まず状況を確認する
  • 本人の受け止め方を決めつけない
  • 業務量や期限を一緒に見る
  • 相談先や支援を具体的に示す
  • 次に何をすればよいかを小さくする

ただし、この順番を表で渡すだけでは、現場では使いにくいものです。

忙しい部署でいつ声をかけるのか。会議中に聞くのか、個別に聞くのか。本人が「大丈夫です」と言ったとき、どこまで確認するのか。

ここで判断が止まりやすくなります。

職場支援に変えるために見たい条件

ラザルス理論を職場で活かすなら、社員の受け止め方だけを見て終わらせないことです。

受け止め方を変えるには、対応できる条件が必要です。

確認したい条件 職場で見るポイント 止まりやすい場面
情報 目的、手順、期限、判断基準が見えているか 指示は出ているが、優先順位が見えない
時間 対応する時間、休憩、確認の余白があるか すべて急ぎになり、考える時間がない
相談先 誰に何を相談してよいか明確か 窓口はあるが、使うタイミングがわからない
裁量 進め方や順番を調整できる余地があるか 責任だけが重く、決める権限がない
回復 負荷のあとに休める時間があるか 終わっても次の業務が続き、疲労が残る

この条件が整うと、社員は「対応できるかもしれない」と感じやすくなります。

反対に、条件が不足したまま前向きな受け止め方だけを求めると、負担は増えます。

ここを見誤らないことが、健康経営の実務では重要です。

タニカワ久美子の研修では理論を職場の行動に変える

タニカワ久美子のストレス管理研修では、ラザルス理論を専門用語の説明だけで終わらせません。

認知的評価は、「同じ出来事でも、人によって受け止め方が違うこと」として職場場面に置き換えます。

コーピングは、「ストレスを受けたときに、自分でできる工夫と周囲に頼る行動」として伝えます。

問題焦点型対処は、「原因を分けて、動かせる部分を探すこと」。

情動焦点型対処は、「不安や怒りを落ち着けて、次の行動を考えやすくすること」。

ただし、ここで大切なのは、社員本人にすべてを背負わせないことです。

研修現場では、社員から「相談してよいのかわからない」という声が出ます。管理職からは「受け止め方の違いをどう見ればよいのか」という相談もあります。

人事総務としても、個人のセルフケアで終えるのか、管理職研修へつなげるのか、職場改善として扱うのかで迷いやすい場面です。

このズレを、職場場面に合わせてほどく必要があります。

理論を、社員の言葉、管理職の声かけ、人事総務の判断へつなげる。ここに研修設計の価値があります。

まとめ|ラザルス理論は反応の違いを支援につなげる視点

ラザルスのストレス理論は、ストレスを出来事そのものだけで説明しません。

本人がその出来事をどう受け止めるか。自分に対応できる手段があると感じられるか。どのような対処を選べるか。

この視点からストレス反応を見ます。

職場で大切なのは、社員の反応を「性格」「弱さ」「気にしすぎ」で片づけないことです。

同じ出来事でも、情報、時間、相談先、裁量、回復の条件によって受け止め方は変わります。

理論を知るだけでは、職場は変わりません。

社員が自分の状態に気づき、管理職が責めずに確認し、人事総務が支援につなげられる形にすること。

そこまで設計して、ラザルス理論は職場のストレス管理に活きます。

職場のストレス管理研修への活用

けんこう総研では、企業・介護施設・教育機関向けに、認知的評価、コーピング、問題焦点型対処、情動焦点型対処を、職場で使える言葉に置き換えたストレスマネジメント研修を行っています。

同じ業務でも社員の反応が違う理由を、本人の性格だけで見てしまうと、必要な支援に届きません。

受け止め方、相談先、業務量、裁量、管理職の声かけをつなげて見ることで、ストレス対策は実務に近づきます。

ラザルス理論を、自社の職場場面に合わせて研修に取り入れたい場合は、以下のページをご覧ください。


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参考文献

  • Lazarus, R. S., & Folkman, S. Stress, Appraisal, and Coping. Springer, 1984.

文責:タニカワ久美子

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