「心」「カラダ」を支えるけんこう総研ストレスマネジメント 株式会社けんこう総研 - 運動と栄養指導による健康セミナー・健康経営コンサルティング

コラムColumn

/ HOME / コラム / 心拍変動でストレス度を計測する方法の課題 /

ストレス研究memo

心拍変動でストレス度を計測する方法の課題

2023年6月24日更新

おはようございます、けんこう総研代表講師のタニカワです。今日はきのうのつづきで、ストレス度をどうやって測るのがよいかということについて先行研究論文で解析していきます。

心拍の変動分析方法の問題点

心拍の変動を分析して、自律神経系の状態を理解するにはまず、心拍の間隔(R-R間隔)を計測する必要があります。しかしこのR-R間隔は、均等な間隔で取得できるデータではありません。そのままでは解析が難しいからです。そこで、スプライン補間などの方法を使ってデータを等間隔にすると、それを周波数解析にかけることができます。

しかし、そのままで適用すると、30秒程度の長いデータが必要となり、急な変化や短時間の反応を捉えることが難しくなります。そのため、ウェーブレット変換などniyoru
リアルタイム分析が行われています。

また、心拍変動の周波数成分には、LF(低周波)成分とHF(高周波)成分がありますLF(低周波)成分とHF(高周波)成分、は呼吸リズムの影響を受けやすく、解釈に注意が必要です。特に、HF(高周波)成分は呼吸リズムによってその値が変わってしまいます。そのため、呼吸が速くなったり、遅くなったりすると、正確な心拍変動の分析ができなくなります。さらに、一過性の大きな呼吸や会話によってもLF成分が増加することもあり、これらの影響を考慮する必要があります。

呼吸の周期を基準とした新しい指標

そこで、呼吸の周期を基準とした新しい指標を提案する研究も行われています。その中には、呼吸重心周波数(GF)の±0.05 Hzの帯域成分(RF)を使用し、LF(低周波)成分に対応する0.1 Hz付近の成分として0.08 ~ 0.12 Hzの帯域成分(MF)を用いる方法があります。

心拍変動のHF、LF分析には自律神経系の活動状態を理解するために適した解析手法やアプローチかもしれません。それでも、これはあくまで一部の情報であり、全体像を理解するためには他の要素も考慮する必要があります。

それらの数値から単純に自律神経系の活動に対する観察的な指標だからです。自律神経系の活動状態は、心拍変動を通じて間接的に推測できます。そのため交感神経系と副交感神経系のバランスについても洞察を得ることができます。

しかし、心拍変動の分析結果だけで絶対的な自律神経系の状態を判断することは適切ではありません。なぜなら心拍変動は、呼吸状態や身体の姿勢・体勢変化、ストレスによる反射などを多くの要素でも影響を受けます。そのため影響要因を考慮して、結果を解釈する必要があります。そして心理的ストレスの評価に適用する際には、よより慎重な解釈が必要となります。

心拍変動計測のまとめ

1.心拍の感覚R-R間隔は、均等な間隔で取得できるデータではない⇒2データを等間隔にする
2データを等間隔にすると短時間の反応が捉えられない⇒ウェーブレット変換などによるリアルタイム分析
3.心拍変動の高周波数成分は、呼吸リズムの影響を受けやすい
4.一過性の大きな呼吸や会話によってもLF(低周波)成分が増加する
5.呼吸状態や身体の姿勢・体勢変化、ストレスによる反射などを多くの要素により影響を受ける。

心拍変動評価の注意点

心拍変動とは、心臓が一分間に打つ回数が一定でないことを指します。これは健康な人でも起こりますが、特定の病気がある人では変動が小さくなることがあります。
(例)
・糖尿病や神経の病気を持つ人では心拍変動が小さくなることがあります。
・中年以上の人では、心拍が一定でないことが普通に見られます。

心拍変動は、人間がどのように感じているか、どのように反応しているかを測るための方法としても使われます。
これは、心拍変動が私たちの心と体の働きに影響を与えるからです。
(例)
・頭を使って仕事をしているとき、心拍変動が小さくなる。
・ストレスを感じているときは、心拍が速くなる。
・頭を使って難しい問題を解いているときは、心拍が速くなる。

心拍変動のデータ情報は、人々がどのように感じているか、またはどのように反応しているかを理解するのに役立つ

(例)
・車の運転中にドライバーが眠くなったかどうかを判断するためのツールとして使われます。ただし、これは一つの指標でしかないので、人の顔の表情や脳波など、他の方法と組み合わせて使われることが多いです。
・高齢者の健康管理
・ストレス評価
・バーチャルリアリティの評価

現在、この心拍変動を測る技術はとても進んでいます。小さなセンサーや大きなデータを扱うことも可能になりました。そのため、様々な場所で使われるようになっています。ただし、この技術を使った製品の中には、科学的な根拠が十分にないものもあるので注意が必要です。

出所:中川千鶴;人間工学のための計測手法,-自律神経系指標の計測と解析-,Vol.52, No.1(’16)

けんこう総研のセミナー情報や代表タニカワからのご案内などのメールマガジンを配信しています。
配信お申込み: info@kenkou-souken.co.jp

夜間・土日祝の無料相談も随時受け付けております。
まずはお気軽にお問い合わせください。