ストレス研究memo
ソーシャルワーカーの感情労働/ストレス研究memo
2023年1月7日更新
まず最初に、ソーシャルワーカーについて基本的事項を書きます。
ソーシャルワーカーの職場
ソーシャルワーカーと呼ばれる職種は、医療・介護・福祉・教育と多業界で相談支援を行う専門職の総称です。
介護施設では、生活相談員や支援相談員。 病院クリニックでは医療ソーシャルワーカー(MSW)、精神科ソーシャルワーカー(PSW)と呼び方が変わりますが日常生活に困っている人やそのご家族のサポートをする役割は変わりません。その他に、学校でのスクールソーシャルワーカー(SSW)、児童相談所や自治体のケースワーカー(CW)に在籍されています。
国家資格
社会福祉士・精神保健福祉士・社会福祉主事
ソーシャルワーカーはまさに深層演技の感情労働職
ソーシャルワーカーの業務内容は、対象者が抱えている不安や問題、困りごとの相談業務です。対象者の抱える課題に対して策を導き出すのは、決してたやすくはありません。そのため頼りにされたり解決できたりするとやりがいを感じられるでしょう。特に、介護業界の生活相談員や支援相談員は、利用者さんが退所した後も対応が続くと聞きます。
利用者側や関係各所との連携を図る感情労働
ソーシャルワーカーは、関係各所とのコミュニケーションが必要不可欠です。仕事内容によっては自分一人のペースで進められません。そのためコミュニケーション能力が求められ、信頼を得ながら業務をスムースに遂行させなければならないという深層演技も必要となってきます。
ここからが本題です。
福祉事務所に所属している生活保護現業員(社会福祉主事、生活保護ケースワーカー)にのストレスについてわかりやすくまとめました。
<厚生労働省(2021)の被保護調査2020年12月>
被保護実人員は2,050,391人であり,被保護世帯数は約164万世帯。新型コロナウィルスの影響による失業等で貧困が深刻になってきている側面もあり、生保 CW の業務は逼迫している状況にある。このようななかで生保 CWは,生活保護受給者の精神的・経済的・社会的自立を目指して,支援を行っていくことが求められています。
<全国公的扶助研究会調査研究部会(2018)調査>
全体的に負担を感じている生保 CW は,8割強存在する。一般企業等のサラリーマン等と比較して,生保 CW の抑うつ得点ならびに抑うつ症候群の割合が高い。
・一般企業等のサラリーマン等と比較して,生保 CW の抑うつ得点ならびに抑うつ症候群の割合が高い(茨木(1995)
バーンアウトしている人数
1 一部の自治体の生保 CW >医療・教育職者
2 男性において生活保護業務のみを行うワーカー>生活保護を除いた高齢者及び母子世帯を支援するワーカー(Takeda, Ibaraki, Yokoyama,Miyake & Ohida.(2005)
3 生保 CW >業務内容が類似している地域包括支援センター専門職スタッフや障害福祉現場職員(赤間他(2014)
ストレッサーになりうる要因
・現在の部署が希望の部署でないこと(小澤,2017)
・事務的な困難さ(塚本・小嶋,2014)
・管理的側面が強調された査察指導
・生活保護への世論的なネガティブな評価
・公的機関内での低い評価(茨木,1995)
・生活保護受給者からの攻撃的なコミュニケーション
・生活保護法への疑問(髙井,2014)など業務内容以外にも職場内および職場外から様々なストレッサーに曝されている。
<個人要因>
1業務量、業務内容の違い ・業務量・事務的な困難さ・担当しているケースの複雑さ・家庭訪問に費やす時間
2業務意識の違い ・やりがいの低さ・仕事への嫌悪感・嫌煙されている職業と感じている
3知識量や専門性の違い ・知識・ノウハウ不足
4職業的特質 ・現金給付とケースワークに挟まれる・CWのもつ権限への怖さと難しさ
<職業要因>
1受給者とのコミュニケーション ・受給者への対応が困難・非自立的な受給者の存在・不正受給の疑念
2連携におけるコミュニュケーション・多職種との連携
3職場環境 ・管理的側面が強調された査察指導・ソーシャルサポートのあり方
4評判 ・一般世論における生活保護理解のされなさ・地域や役所内における評価の低さ
<制度要因>
1自立評価の難しさ ・福祉事務所とCWとの目標や方針のズレ・保護の長期化
2生活保護法の限界 ・制度への疑問
3専門性の曖昧さ ・CWや相談援助の専門性
生保 CW が抱える多様なストレス要因
「業務量」「受給者対応」「職場環境」「専門性・知識不足」「他機関との連携」「制度に対する疑念」の6次元
生保 CW が抱えるストレスは、知識不足や業務量といった個別的なものから、環境や組織,制度レベルにまで及んでいる。
生保 CW の仕事のやりがい感の支援方法
1生活保護受給者との関係において健康支援の観点を重視する
2支援困難事例の検討等のスーパーバイズを重視した職場環境づくり
3関係部門・機関との連携を図ることが重要であると報告。
つまり,裏を返せば生活保護受給者との関係や,サポーティブでない職場環境,消極的な他機関との連携がストレス要因に繋がってしまうともいえます。
文責:タニカワ久美子
本頁は、研究報告等の論文を、どなたにも解りやすくするため平易な文章で、自身の事例も踏まえながら執筆しています。
引用参考文献:二本松直人,若島孔文;生活保護ケースワーカーの成長段階と課題に関する文献検討;東北大学大学院教育学研究科研究年報,2021(69)265-277