ライフステージ別健康支援
若手社員の健康行動を支える職場教育と同期の影響
学生や若手社員の健康行動は、本人の意識だけで決まるわけではありません。友人、同期、同じ部署の仲間、先輩の行動に影響を受けることがあります。
たとえば、周囲が夜遅くまで残っていると帰りにくい、同期が昼食を抜いていると自分も簡単に済ませてしまう、飲み会や喫煙などを断りにくい。こうした小さな同調が、生活習慣やストレスの蓄積につながることがあります。
この記事では、高校生の健康行動と友人関係に関する研究をもとに、教育機関や企業が若手層の健康行動をどのように支援できるかを紹介します。

学生や若手社員の健康行動は、友人や同期の影響を受けやすいため、本人任せにしない教育と職場環境づくりが大切です。
若手層の健康行動は周囲の影響を受けやすい
学生や若手社員は、自分の健康に関心がないわけではありません。ただ、周囲の行動に合わせることで、自分の生活習慣が崩れていくことがあります。
特に、入学直後、入社直後、配属直後は、周囲に合わせようとする気持ちが強くなります。友人関係や同期との関係を大切にするほど、食事、睡眠、飲酒、喫煙、運動、休み方が周囲の影響を受けやすくなります。
教育機関や企業の人事総務が見るべきなのは、個人の健康意識だけではありません。本人が健康的な行動を選びやすい集団の空気があるかどうかです。
学校健康教育の研究から見えること
元の研究では、高校生を対象に、友人関係が健康行動にどのように関わるか、学校の健康教育プログラムがその影響をどのように変える可能性があるかを調べています。
研究では、友人の行動が生徒本人の健康行動と関連していることが示されています。たとえば、友人が飲酒や喫煙をしている場合、生徒本人も同じ行動をとりやすくなる可能性があります。
一方で、学校の健康教育プログラムに参加した生徒は、友人の影響を受けにくく、健康的な行動を選びやすい傾向が見られたとされています。
ただし、この結果を「健康教育をすれば必ず行動が変わる」と単純に読むのは危険です。健康教育の内容、実施方法、学校の雰囲気、家庭環境、友人関係などが重なって、行動に影響していると考える必要があります。
企業の若手社員にも同じ構造がある
この研究は高校生を対象にしていますが、企業の若手社員にも応用できます。新入社員や若手社員は、職場で「普通」とされる行動に影響を受けやすい時期です。
たとえば、次のような職場では、健康行動が崩れやすくなります。
- 先輩が休憩を取らないため、自分も休みにくい
- 同期が残業していると、先に帰りにくい
- 昼食を短時間で済ませる雰囲気がある
- 飲み会を断りにくい空気がある
- 睡眠不足や忙しさを「頑張っている証拠」と見る文化がある
- 健康施策に参加することを、まじめすぎるとからかう空気がある
若手社員の健康行動は、本人の自己管理だけでは守れません。職場の当たり前が、健康行動を支える場合もあれば、妨げる場合もあります。
健康教育は知識だけでは行動に変わらない
健康教育では、睡眠、食事、運動、飲酒、喫煙、ストレス管理について正しい知識を伝えることが大切です。しかし、知識だけでは行動は変わりません。
本人が「健康に悪い」とわかっていても、周囲が同じ行動をしていれば、断りにくくなります。反対に、周囲に健康的な行動を選ぶ人がいると、自分も取り入れやすくなります。
そのため、学校や企業の健康教育では、個人に正しい知識を与えるだけでなく、集団の空気を変える設計が必要です。
若手社員の健康行動を妨げる職場のサイン
人事総務が見ておきたいのは、若手社員が健康行動を選びにくくなっているサインです。
- 新入社員が休憩を取らずに働いている
- 昼食を抜く社員が多い
- 残業している同期に合わせて帰れない
- 体調不良でも休まず出勤している
- 健康研修を受けても、部署で実践されない
- 飲酒や喫煙を断りにくい雰囲気がある
- 睡眠不足や疲労を冗談で済ませる文化がある
このような状態では、健康行動を本人任せにしても定着しにくくなります。研修内容と職場の空気がずれていないかを確認する必要があります。
教育機関でできる健康行動支援
教育機関では、健康教育を授業や講義だけで終わらせないことが大切です。学生同士の関係性や、学校生活の中で選びやすい行動まで見る必要があります。
- 飲酒・喫煙・睡眠・食事について、友人の影響も含めて扱う
- 「断り方」や「周囲に流されない選び方」を授業に入れる
- 健康行動を真面目すぎるものとして扱わない
- 学生が相談しやすい窓口を明確にする
- 部活動やゼミ、実習先での健康行動も確認する
- 教職員が学生の生活リズムの乱れに気づけるようにする
学生の健康行動は、本人の知識だけでなく、友人関係や学校の空気に左右されます。教育プログラムは、生活の中で実際に使える内容にすることが重要です。
企業でできる若手社員の健康行動支援
企業では、新入社員研修や若手社員研修の中に、健康行動を選びやすくする内容を入れることができます。
- 睡眠不足や疲労を我慢の証拠にしないと伝える
- 昼食、休憩、退勤の取り方を具体的に案内する
- 同期同士で無理を競わないルールを共有する
- 上司や先輩が休憩を取る姿を見せる
- 飲み会や喫煙を断っても不利益にならないことを伝える
- 健康研修後に、部署で実践できる小さな行動を決める
- 配属後の面談で、生活リズムや疲労感を確認する
若手社員に健康行動を促すには、「自己管理してください」だけでは足りません。職場で健康的な選択をしても浮かない環境を作ることが必要です。
友人・同期の影響を悪者にしない
友人や同期の影響は、悪い方向にだけ働くわけではありません。健康的な行動が周囲に広がることもあります。
たとえば、昼休みに短く歩く、早めに帰る日を作る、疲れている同期に声をかける、健康研修で学んだストレッチを一緒に試す。こうした小さな行動は、集団の中で広がりやすくなります。
人事総務が考えたいのは、若手社員同士のつながりを制限することではありません。健康的な選択が自然に広がるように、職場のルールや管理職の声かけを整えることです。
健康教育プログラムを行動変容につなげる設計
健康教育を行動変容につなげるには、知識、環境、周囲の行動をセットで考えます。
| 設計項目 | 確認すること |
|---|---|
| 知識 | 睡眠、食事、運動、飲酒、喫煙、ストレス管理をわかりやすく伝えているか |
| 選びやすさ | 健康的な行動を選んでも、周囲から浮かない環境になっているか |
| 同僚・友人の影響 | 無理な同調ではなく、よい行動が広がる仕組みがあるか |
| 管理職・教職員の関与 | 上の立場の人が、健康行動を妨げる空気を作っていないか |
| 継続 | 一度の授業や研修で終わらず、面談や日常行動につながっているか |
健康教育は、正しい情報を配るだけでは効果が残りにくくなります。日常の中で選びやすい行動に変えることで、若手層の健康支援として機能します。
タニカワ久美子の企業研修で見えていること
タニカワ久美子の企業研修では、健康行動を本人の意識だけに任せません。現場では、若手社員が上司や同期に合わせすぎて、休憩、睡眠、食事、相談を後回しにしていることがあります。
人事総務の担当者からは、「新入社員に健康教育をしても、配属後に実践されない」「若手社員が同期に合わせて無理をしている」「健康研修を職場の行動変容につなげたい」という相談を受けます。
研修では、睡眠や食事、運動の知識だけでなく、職場で健康的な行動を選びやすくする声かけや仕組みも扱います。若手社員本人だけでなく、管理職や先輩社員がどのような空気を作るかまで確認します。
人事総務が確認したい実務ポイント
若手社員の健康行動を支えるには、次の点を確認すると実務につなげやすくなります。
- 若手社員が健康的な行動を選びにくい職場の空気がないか
- 同期同士で無理を競う雰囲気がないか
- 上司や先輩が休憩・退勤・相談の見本を示しているか
- 健康研修の内容が配属後の行動につながっているか
- 飲酒・喫煙・睡眠不足を軽く扱う文化がないか
- 若手社員が相談できる窓口を複数持っているか
- 健康行動を評価や根性論と結びつけていないか
若手社員の健康行動は、本人の意志だけでなく、周囲の行動や職場の雰囲気によって変わります。人事総務は、個人教育と職場環境の両方を見る必要があります。
まとめ
学生や若手社員の健康行動は、友人や同期、職場の集団から影響を受けます。飲酒、喫煙、睡眠、食事、休憩、運動などの行動は、本人の健康意識だけでなく、周囲に合わせる気持ちによって変わることがあります。
教育機関や企業では、健康教育を知識提供だけで終わらせず、健康的な行動を選びやすい環境づくりにつなげることが大切です。
若手社員の健康行動支援を、研修や健康経営施策として職場に定着させたい場合は、けんこう総研の健康経営フォローアップをご覧ください。