ライフステージ別健康支援
学生・若手社員のストレスを支える生活習慣支援
学生や若手社員のストレス対策では、運動や食生活の改善がよく取り上げられます。けれども、本人が疲れているときに「もっと運動しましょう」「食生活を整えましょう」と伝えるだけでは、支援にならないことがあります。
特に、運動習慣がない学生や若手社員にとっては、運動を始めること自体が負担になる場合があります。健康によいことでも、本人の状態に合わなければ、追加のストレスになることがあるのです。
この記事では、大学生の学業ストレスに関する研究をもとに、教育機関や企業が学生・若手従業員の生活習慣支援をどのように設計すればよいかを紹介します。

学生や若手社員のストレス支援では、運動や食生活を押しつけず、本人が続けやすい形にすることが大切です。
学生・若手社員のストレスは生活習慣に表れやすい
学生や若手社員は、学業、就職活動、配属、研修、人間関係、生活リズムの変化など、短い期間に多くの変化を経験します。
この時期は、睡眠時間が不規則になったり、食事が簡単なものに偏ったり、運動する時間が減ったりしやすくなります。本人は「まだ若いから大丈夫」と思っていても、生活習慣の乱れがストレス反応として出ることがあります。
教育機関や企業の人事総務が見たいのは、成績や業務成果だけではありません。遅刻、欠席、表情の硬さ、集中力の低下、食事や睡眠の乱れなど、日常の小さな変化も健康支援の入口になります。
研究で扱われた学業ストレスと生活習慣
2023年に発表された「Academic Stress in University Students: The Role of Physical Exercise and Nutrition」では、大学生の学業ストレスと身体活動、食生活の関係が調べられました。
対象は大学生742名で、学業ストレス、運動時間、食事パターンなどが質問票で確認されています。研究では、身体活動と学業ストレスには関係が見られましたが、地中海式食事の遵守とは明確な関係が確認されていません。
この研究は、教育機関や企業の健康支援にとって、「運動や食事は大切だが、単純に勧めればよいわけではない」という視点を与えてくれます。
参考:Academic Stress in University Students: The Role of Physical Exercise and Nutrition
運動不足の人に運動を勧めるときの注意点
運動はストレス対策に役立つことがあります。しかし、運動習慣がない人に対して、急に運動量を増やすよう求めると、本人にとっては負担になることがあります。
たとえば、次のような状態です。
- 運動が苦手で、人前で動くことに抵抗がある
- 疲れているのに、さらに運動を求められてつらい
- 体力差が見える場面を避けたい
- 運動後の疲労で、学業や仕事に集中しにくくなる
- 「健康のため」と言われるほど、できない自分を責めてしまう
- 忙しさの中で、運動時間を確保すること自体がストレスになる
健康支援で大切なのは、正しいことを一方的に伝えることではありません。本人が無理なく始められる形に変えることです。
学生と若手社員に共通するストレスサイン
学生と若手社員は立場が違いますが、ストレスが生活に表れやすい点は共通しています。
| 見えやすい変化 | 支援で確認したいこと |
|---|---|
| 遅刻や欠席が増える | 睡眠不足、生活リズムの乱れ、通学・通勤負担 |
| 集中力が続かない | 課題量、業務量、食事、休憩の取り方 |
| 表情が硬くなる | 人間関係、相談しにくさ、孤立感 |
| 食事が簡単なものに偏る | 忙しさ、経済的負担、食事時間の確保 |
| 運動や健康企画に参加しない | 苦手意識、疲労感、人前で動く抵抗感 |
このような変化がある場合、本人のやる気不足と見ないことが重要です。生活習慣の乱れは、ストレスが高まっているサインとして出ている場合があります。
食生活支援は「正しい食事」の押しつけにしない
食生活の支援では、栄養バランスの大切さを伝えることは必要です。ただし、学生や若手社員に対して、理想的な食事だけを示しても実行しにくいことがあります。
一人暮らし、アルバイト、就職活動、研修、残業、経済的な制約があると、食事は簡単なものに偏りやすくなります。本人も「本当はよくない」とわかっていても、整える余裕がないことがあります。
支援では、完璧な食事を求めるより、朝食を抜かない、飲み物を見直す、昼食に一品足す、夜遅い食事を軽くするなど、小さな行動から始める方が現実的です。
教育機関でできる生活習慣支援
教育機関では、学業成績だけでなく、学生が学び続けられる心身の状態を支えることが大切です。
- 授業やガイダンスで、睡眠・食事・運動とストレスの関係を扱う
- 運動が苦手な学生も参加しやすい軽い身体活動を用意する
- 課題量や試験期間中の生活リズムについて声をかける
- 相談窓口を、成績不振だけでなく生活面の相談にも使えるよう案内する
- 食事や運動の改善を、本人の責任だけにしない
- 教職員が、学生の変化に早めに気づける視点を共有する
学生支援では、本人が相談に来るのを待つだけでなく、生活の乱れが出やすい時期に先に情報を届けることが大切です。
企業で若手社員にできる健康支援
企業では、新入社員や若手社員が配属後に生活リズムを崩すことがあります。研修期間は元気に見えても、配属後に業務量、人間関係、通勤、緊張感が重なり、疲れが出ることがあります。
人事総務が確認したいのは、若手社員が自分から「つらい」と言える状態になっているかです。
- 配属後1か月、3か月の面談で睡眠や食事の状態を確認する
- 運動不足対策を、強制参加のイベントにしない
- 座ったままできるストレッチや呼吸法を研修に入れる
- 残業や休日対応が続いていないか確認する
- 一人暮らしの社員が食事を抜いていないか気づけるようにする
- 上司以外にも相談できる窓口を知らせる
若手社員の健康支援は、離職防止だけでなく、仕事に慣れていく力を支える取り組みです。
運動支援は「できる人向け」にしない
健康施策でよくある失敗は、もともと運動が好きな人だけが参加しやすい内容にしてしまうことです。
学生や若手社員の中には、運動が苦手な人、体型を見られたくない人、人前で動くことに抵抗がある人もいます。そうした人にとって、明るく元気な運動イベントは、かえって参加しにくい場になることがあります。
運動支援では、次のような設計が向いています。
- 短時間でできる内容にする
- 座ったままできる動きを入れる
- 体力差が見えにくい内容にする
- 運動後に疲れすぎない強度にする
- 参加しない人を責めない
- 気分転換や集中力の回復として伝える
運動を「評価される行動」にすると、苦手な人は離れます。健康支援として使うなら、安心して試せる内容にすることが必要です。
タニカワ久美子の企業研修で見えていること
タニカワ久美子の企業研修では、生活習慣の改善を本人任せにしません。学生や若手社員は、元気に見えても、睡眠不足、食事の乱れ、運動不足、緊張感を抱えていることがあります。
教育機関や企業の担当者からは、「学生に健康行動を勧めても響きにくい」「新入社員が配属後に疲れやすくなっている」「運動を入れたいが、苦手な人に負担にならないか心配」という相談を受けます。
研修では、運動や食事を正論として伝えるのではなく、本人が生活の中で取り入れやすい形に変えます。短時間の身体リセット、食事の小さな見直し、相談しやすい声かけを、教育機関や職場で使える形にしています。
健康支援で見直したい実務ポイント
学生・若手社員の生活習慣支援では、次の点を確認すると実務に落とし込みやすくなります。
- 運動や食事の改善を、本人の努力だけにしていないか
- ストレスが高い時期に、生活習慣が乱れやすいことを伝えているか
- 運動が苦手な人も参加できる内容になっているか
- 食事支援が理想論になっていないか
- 相談窓口が生活面の悩みにも対応しているか
- 教職員や管理職が、生活習慣の乱れをストレスサインとして見られているか
- 健康支援が一回のイベントで終わっていないか
生活習慣の支援は、正しい知識を伝えるだけでは定着しません。本人の忙しさ、疲れ、不安、苦手意識を踏まえて、続けやすい形にすることが重要です。
まとめ
学生や若手社員のストレス支援では、運動や食生活を整えることが大切です。ただし、運動不足の人に急に運動を求めたり、理想的な食事を押しつけたりすると、支援ではなく追加の負担になることがあります。
教育機関や企業では、生活習慣の乱れを本人の自己管理不足として見るのではなく、ストレスサインとして受け止める視点が必要です。
学生・若手社員のストレスと生活習慣支援を、教育機関や職場で実践できる形にしたい場合は、けんこう総研の健康経営フォローアップをご覧ください。