ライフステージ別健康支援
女性従業員の運動不足とストレスを支える運動強度設計
女性従業員の運動不足やストレス対策を考えるとき、「短時間で効果が出る運動」を選びたくなることがあります。けれども、健康経営の現場では、効率だけで運動施策を決めると、参加しにくい社員や続けにくい社員が出てしまいます。
とくに、普段あまり運動をしていない女性従業員にとって、最初から強度の高い運動は負担になりやすいものです。きつい、恥ずかしい、疲れが残る、次も参加したくないと感じれば、健康施策は一度きりで終わってしまいます。
この記事では、運動不足の女性従業員に対して、企業がどのような運動強度を選べばストレス改善と継続につながりやすいかを、研究知見と健康経営の視点から紹介します。

運動不足の女性従業員への健康支援では、短時間で強い運動よりも、無理なく続けやすい強度設計が大切です。
運動不足対策は「きつければ効果的」とは限らない
企業の健康施策では、短時間で効果が期待できる運動プログラムに注目が集まることがあります。高強度インターバル運動は、短い時間で心肺機能や代謝に刺激を入れやすい方法として知られています。
しかし、健康経営で大切なのは、運動効果だけではありません。社員が参加できること、嫌にならないこと、次も続けられることが重要です。
普段あまり運動をしていない女性従業員に、最初から高強度の運動を求めると、「自分には無理」「ついていけない」「恥ずかしい」と感じさせてしまうことがあります。結果として、運動への苦手意識がさらに強くなる場合もあります。
研究が示した「楽しさ」と継続の問題
今回の研究では、低活動で肥満のある女性を対象に、高強度インターバル運動と中強度の連続運動を比較しています。運動中の快・不快感と、運動後の楽しさを測定したところ、中強度の連続運動の方がよい結果でした。
この研究が健康経営に示しているのは、「短時間で効率的な運動」が、必ずしも続けやすい運動とは限らないという点です。
職場の運動施策では、効果の高さだけでなく、参加した社員がどう感じるかを見る必要があります。運動後に「これならまたできそう」と感じられることが、継続の第一歩になります。
研究の詳細は、Decker and Ekkekakisによる高強度インターバル運動と中強度連続運動の比較研究で確認できます。
女性従業員の運動不足に強すぎる運動が合わない理由
運動不足の社員にとって、高強度の運動は身体的な負担だけでなく、心理的な負担にもなります。
- 息が上がりすぎて不安になる
- 周囲についていけず、恥ずかしさを感じる
- 筋肉痛や疲労が残り、次回の参加を避けたくなる
- 運動が苦手だった過去の経験を思い出す
- 体型や体力を見られているように感じる
- 「できない自分」を確認する時間になってしまう
このような感情が残ると、運動は健康づくりではなく、ストレス源になります。健康経営の運動施策では、運動を始める前の心理的な負担まで見ておく必要があります。
中強度の運動が職場に向いている理由
中強度の運動は、きつすぎず、会話が完全にできなくなるほど追い込まない運動です。職場では、軽い息弾みを感じる程度のウォーキング、ストレッチ、椅子を使った体操、ゆっくりした筋力トレーニングなどが取り入れやすい内容になります。
中強度の運動が職場に向いている理由は、次の通りです。
- 運動が苦手な社員でも参加しやすい
- 疲労や筋肉痛が残りにくい
- 人前で失敗する不安が少ない
- 短時間でも気分転換になりやすい
- 座りっぱなし対策として職場に入れやすい
- 管理職や人事総務も一緒に参加しやすい
大切なのは、社員を追い込むことではありません。運動後に「少し体が軽くなった」「これなら続けられそう」と感じてもらうことです。
厚生労働省のガイドから見た職場の運動支援
厚生労働省の「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」では、個人差を踏まえて強度や量を調整し、可能なものから取り組むことが示されています。また、座りっぱなしの時間が長くなりすぎないようにすることも推奨されています。
企業の健康経営では、この考え方を職場に合わせて使うことが大切です。全員に同じ運動量を求めるのではなく、今より少し動ける環境をつくります。
たとえば、会議前の1分ストレッチ、昼休み前の肩回し、長時間作業後の立ち上がり、階段利用の促しなど、小さな行動でも職場に定着すれば意味があります。詳しくは、健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023の推奨事項も参考になります。
人事総務が避けたい運動施策の設計
運動不足対策を進めるとき、人事総務が避けたいのは、参加できる社員だけが目立つ設計です。
- 最初から強度の高い運動を入れる
- 体力差が見えやすいメニューにする
- 参加率だけを成果として見る
- 運動が苦手な社員の心理的負担を考えない
- 業務時間外の参加を当然にする
- 「短時間で効果がある」と効率だけを強調する
- 参加しない社員を健康意識が低いと見る
こうした設計では、運動が得意な社員や健康意識の高い社員だけが参加し、支援が必要な社員に届かないことがあります。
女性従業員に届きやすい運動施策の作り方
運動不足の女性従業員に届く施策にするには、強度を下げるだけでは不十分です。参加しやすい空気と、続けやすい仕組みが必要です。
- 初回は低めの強度から始める
- 人前で大きく動かなくてもよい内容にする
- 座ったままできる運動を入れる
- 体型や運動能力に触れないルールを共有する
- 運動後の疲労感や感想を確認する
- 参加しない社員にも別の選択肢を用意する
- 管理職が強制ではなく参加しやすさを伝える
女性従業員の運動不足対策では、本人の努力を引き出す前に、参加への不安を減らすことが先です。安心して始められる設計があって、初めて継続につながります。
ストレス改善としての運動は「心地よさ」が重要
運動はストレス改善に役立つ方法のひとつです。ただし、本人がつらい、恥ずかしい、きつすぎると感じる運動では、ストレス対策になりにくいものです。
職場で運動を取り入れるなら、達成感や心地よさが残る内容にする必要があります。少し体が温まる、肩や首が楽になる、気分が切り替わる、深呼吸しやすくなる。そのような実感があると、社員は次も参加しやすくなります。
運動不足の改善は、強い運動を短期間で行うことより、無理なく続く行動を職場に入れることが重要です。
タニカワ久美子の企業研修で見えていること
タニカワ久美子の企業研修では、運動を社員に押しつける形では進めません。現場では、運動不足を自覚していても、強い運動は不安、体型を見られたくない、人前で動くのが苦手という女性従業員がいます。
人事総務の担当者からは、「健康施策を入れても同じ社員しか参加しない」「運動系の研修に抵抗を持つ社員がいる」「短時間でできる内容を入れたいが、きつすぎると続かない」という相談を受けます。
研修では、全員を同じ強度で動かすことを目的にしません。座ったままできるストレッチ、呼吸法、短時間の身体リセットなど、運動が苦手な社員も参加しやすい内容から始めます。社員が「これならできる」と感じられることを、健康経営の入口として重視しています。
職場で続けやすい運動支援の例
健康経営の運動施策は、大きなイベントにしなくても始められます。日常業務の中に小さく組み込む方が、継続しやすい場合があります。
- 朝礼後に30秒だけ肩を回す
- 会議前に深呼吸を入れる
- 長時間座った後に立ち上がる時間を作る
- 昼休み前に首・肩のストレッチを行う
- 階段利用や短い歩行を無理なく促す
- オンライン会議の前後に姿勢を整える
- 研修で、運動後の疲労感と心地よさを確認する
このような小さな取り組みは、派手さはありません。けれども、運動不足の社員が無理なく始める入口としては有効です。
まとめ
女性従業員の運動不足やストレス改善を考えるとき、短時間で効率的な高強度運動だけを選ぶと、続けにくい社員が出ることがあります。特に普段あまり運動をしていない社員には、きつさや恥ずかしさがストレスになる場合があります。
健康経営では、運動効果だけでなく、参加しやすさ、心地よさ、継続しやすさを見て運動強度を設計することが大切です。中強度の運動や短時間の身体リセットを取り入れることで、運動が苦手な女性従業員にも届きやすくなります。
女性従業員の運動不足とストレス改善を、職場で続く健康経営の取り組みにしたい場合は、けんこう総研の健康経営フォローアップをご覧ください。