価値観ワークでストレス対処を行動に変える職場研修

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ストレス管理

価値観ワークでストレス対処を行動に変える職場研修

職場のストレス対策では、「ストレスを減らしましょう」「気分転換をしましょう」と伝えるだけでは、社員の行動につながりにくいことがあります。

その理由の一つは、本人にとって何が大切なのか、どのような場面で無理をしやすいのかが整理されていないからです。

人は、自分にとって大切なものが関係している場面ほど、強くストレスを感じます。

たとえば、仕事への責任感、家族、仲間、健康、信頼、成長、誠実さなどです。

価値観ワークは、ストレスを無理に前向きに考える方法ではありません。

自分が何を大切にしているから苦しくなっているのかを整理し、今できる小さな行動を選びやすくする方法です。

本記事では、人事総務・健康経営担当者に向けて、価値観ワークを職場研修で安全に扱う方法を解説します。

価値観ワークとは

価値観ワークとは、自分が大切にしていることを言葉にして整理する方法です。

ここでいう価値観とは、「自分にとって大切な考え方」「守りたいもの」「こうありたいと思う姿」のことです。

価値観は、普段はあまり意識されません。

しかし、ストレスを感じる場面では、価値観が強く関係しています。

大切にしているものが傷つきそうになると、人は不安、怒り、悲しさ、焦りを感じます。

反対に、自分が大切にしていることを思い出せると、つらい状況の中でも「何を大切にして、どう行動するか」を選びやすくなります。

価値観の例 ストレスと関係しやすい場面
責任感 仕事を任された時、断れない時
信頼 評価や人間関係が気になる時
家族 仕事と家庭の両立で悩む時
健康 疲労や不調を感じても休めない時
成長 新しい役割や挑戦に不安がある時
誠実さ 相手の期待に応えようとして無理をする時

価値観ワークの目的は、立派な答えを書くことではありません。

自分のストレスの背景にある「大切にしたいこと」を見つけることです。

ストレス対処で価値観を見る理由

職場のストレス対処では、気分転換、休養、相談、問題解決などがよく扱われます。

これらは大切ですが、職場にはすぐに解決できないストレスもあります。

忙しさ、人間関係、評価への不安、異動、昇進、顧客対応、介護や教育の現場での感情的な負担などです。

このような場面では、「ストレスをなくす」だけでは対応しきれません。

そこで必要になるのが、価値観を整理する視点です。

よくあるストレス対処 限界 価値観ワークで補える点
気分転換する 一時的には楽になるが、同じ悩みが戻りやすい 自分が何を大切にしているかを整理できる
問題を解決する すぐに変えられない状況もある 変えられない状況で、どう行動するかを考えやすい
前向きに考える 無理なポジティブ思考になりやすい 自分にとって意味のある行動を選びやすい
我慢する 疲労や不調をため込みやすい 我慢ではなく、必要な支援や調整に気づきやすい

価値観ワークは、ストレスを美化する方法ではありません。

つらい状態を無理に良いことだと思い込むのではなく、自分が何を大切にしたいのかを確認し、次の行動を選びやすくする方法です。

最初に大切にしていることを書き出す

最初に、自分が大切にしていることを書き出します。

短い言葉でかまいません。

次の問いを使うと、書き出しやすくなります。

  • 今、自分が大切にしていることは何ですか
  • 守りたい人や関係はありますか
  • 仕事で大切にしたい姿勢は何ですか
  • 今、目標にしていることはありますか
  • 自分が「こうありたい」と思う姿は何ですか

答えは一つに絞らなくてかまいません。

思い浮かんだ言葉を、できるだけ多く書き出します。

たとえば、家族、健康、誠実、信頼、成長、仲間、自由、挑戦、安心、学び、貢献、思いやり、責任、楽しみなどです。

職場研修では、ここで深く考えさせすぎないことが大切です。

短い時間で、書ける範囲にとどめます。

今の自分に合う価値観を3つ選ぶ

次に、書き出した言葉の中から、今の自分にとって特に大切だと感じるものを3つ選びます。

次のような言葉を参考にしてもかまいません。

人間関係に関する価値観 仕事に関する価値観 自分自身に関する価値観
家族 責任 健康
信頼 成長 安心
仲間 挑戦 自由
協力 貢献 学び
思いやり 誠実 楽しみ

大切なのは、立派な言葉を選ぶことではありません。

他人から見て良さそうな言葉ではなく、自分にとってしっくりくる言葉を選びます。

職場研修で実施する場合も、正解を求めないことが重要です。

選んだ価値観について短く書く

3つ選んだら、その中から一つを選び、短く書きます。

長い文章でなくてかまいません。

次の問いに答える形で進めると、書きやすくなります。

  • その価値観を大切だと思う理由は何ですか
  • その価値観は、日常生活や仕事でどのように表れていますか
  • 最近、その価値観に沿って行動できた場面はありますか
  • ストレスを感じたとき、その価値観を守るためにできる小さな行動は何ですか

1行でも、箇条書きでもかまいません。

大切なのは、自分の言葉で書くことです。

人事総務・健康経営担当者が研修でこのワークを扱う場合、書いた内容を無理に回収したり、上司に見せたりしないことが重要です。

ストレスを見直す問い

価値観を書き出したら、今感じているストレスと照らし合わせます。

次の問いを使います。

  • 今のストレスは、どの価値観と関係していますか
  • 何を守りたいから、つらく感じているのでしょうか
  • その価値観を大切にするために、今日できる小さな行動は何ですか
  • 一人で抱えず、誰に相談できそうですか
  • 今すぐ変えられないことと、少し変えられることは何ですか

この問いを使うと、ストレスを「ただ苦しいもの」として見るだけでなく、自分が何を大切にしているから苦しいのかを整理しやすくなります。

ただし、これは苦しさを正当化するためのものではありません。

過重労働、ハラスメント、強い不安、休めない状態がある場合は、本人の受け止め方ではなく、職場側の調整や支援が必要です。

価値観ワークとユーストレスの関係

ユーストレスとは、成長や前向きな行動につながる良性のストレスです。

価値観ワークは、ストレスをユーストレスとして扱える条件を考えるときに役立ちます。

人は、自分にとって意味のある目標や大切な価値観と結びついているとき、負荷をただの苦痛ではなく、取り組む理由のある課題として受け止めやすくなります。

ただし、価値観があるからといって、どんな負荷でも耐えられるわけではありません。

ユーストレスとして働くためには、次の条件が必要です。

必要な条件 理由
本人にとって意味がある 納得感のない負荷はストレス反応を強めやすいため
自分で選んでいる感覚がある 強制されるとプレッシャーになりやすいため
負荷が本人に合っている 過剰な負荷はディストレスになりやすいため
相談できる人がいる 一人で抱えると回復しにくいため
休息と回復がある 回復がなければ良性ストレスとして機能しにくいため

ユーストレスの定義やディストレスとの違いについては、固定ページ「ユーストレスとは|職場での活用と科学的エビデンス解説」で詳しく整理しています。

職場研修で扱うときの注意点

価値観ワークは、職場研修でも活用できます。

ただし、進め方を間違えると、参加者に負担をかけることがあります。

価値観や大切な人に触れるワークは、個人の深い経験に関係する場合があります。

そのため、職場では次の点に注意が必要です。

注意点 理由 研修での対応
強制しない 個人的な内容に触れるため 書ける範囲でよいと伝える
発表を求めない 職場の評価や人間関係に影響する可能性がある 共有は任意にする
正解を作らない 価値観は人によって違うため 良い・悪いで評価しない
評価と切り離す 本音を書きにくくなるため 人事評価や上司評価とは無関係に行う
つらい経験を書かせすぎない 感情的な負担が強くなる場合がある 安全な範囲で、今できる行動に戻す

研修で大切なのは、参加者を深く掘り下げることではありません。

自分にとって大切なことを確認し、ストレス時に取れる小さな行動を見つけることです。

管理職が使うときの注意点

管理職が部下に価値観ワークを使う場合は、さらに注意が必要です。

部下の価値観を聞くことは、信頼関係がなければ負担になります。

また、価値観を聞いたあとに「それならもっと頑張れるね」と負荷を増やしてはいけません。

避けたい声かけ 問題点 望ましい声かけ
あなたの価値観なら頑張れるはず 負荷を正当化しやすい 大切にしたいことを守るために、何を調整しましょうか
前向きに考えよう つらさを軽く扱われたと感じやすい 今一番負担になっていることは何ですか
書いた内容を共有してください 個人的な情報を出させすぎる 共有できる範囲だけで大丈夫です
それは仕事にどう活かせますか 評価面談のように感じられる 今の働き方で大切にしたいことはありますか

管理職に必要なのは、部下の価値観を利用して働かせることではありません。

部下が大切にしていることを尊重し、無理なく働ける条件を一緒に整えることです。

人事総務・健康経営担当者が確認したいこと

価値観ワークを健康経営に取り入れる場合、個人ワークだけで終わらせないことが重要です。

社員が自分の価値観を確認できても、職場の負荷が過重で、相談できず、休めない状態であれば、ストレス対策にはなりません。

確認すること 確認する理由
ストレス対策が知識提供だけで終わっていないか 行動につながらなければ研修効果が見えにくいため
社員が自分の状態を振り返る時間があるか 忙しい職場ほど自分の状態に気づきにくいため
ワークの内容が評価や人事情報と切り離されているか 本音を書けなくなるため
管理職が、部下の価値観を押しつけずに聴けるか 価値観を利用した負荷増加を防ぐため
職場環境に原因がある場合、業務調整につながるか 個人の受け止め方だけでは解決できないため
研修後に、相談行動や職場改善へつながる仕組みがあるか 一度の研修で終わらせないため

価値観ワークは、社員に「考え方を変えなさい」と求めるためのものではありません。

社員が自分の状態を整理し、必要な支援や行動を選びやすくするための方法です。

タニカワ久美子の企業研修での扱い方

タニカワ久美子の企業研修では、価値観ワークを深い自己開示の場にはしません。

職場で扱う以上、個人の内面を掘り下げすぎることは避けます。

研修では、価値観の言葉を選び、自分がストレスを感じやすい場面と結びつけ、今日できる小さな行動に戻す形で進めます。

たとえば、「信頼」を大切にしている人なら、無理に抱え込むのではなく、早めに共有する。「健康」を大切にしている人なら、疲労が強い日の働き方を調整する。「成長」を大切にしている人なら、完璧を求めすぎず、次の一歩を決める。こうした行動へつなげます。

また、価値観ワークだけで終わらせず、呼吸、肩回し、姿勢リセットなどの軽い実技も組み合わせます。

ストレスを頭で理解するだけではなく、身体のこわばりや呼吸の浅さにも気づけるようにするためです。

過去に実施したセミナーでは、座学だけでなく、全員参加型の軽い運動を必ず取り入れてきました。

研修の現場では、短いワークや軽い実技のあとに「自分は責任感で無理をしやすい」「頼ることも行動の一つだとわかった」「肩に力が入っていた」と気づく社員がいます。

この低いハードルのワークと実技が、ストレス対処を現場で使えるものにします。

人事総務の担当者からも、座学だけではなく、全員で実際にできる軽い運動がある点を評価されています。

管理職には、「部下の価値観を利用して頑張らせるのではなく、大切にしたいことを守るために何を調整できるかを一緒に考えてください」と伝えます。

価値観ワークを研修で使いやすくする工夫

職場研修では、書くことが苦手な人、深く考えることに抵抗がある人、個人情報を出したくない人もいます。

そのため、ワークは一つの方法に固定しないことが大切です。

  • 言葉を選ぶだけの形式にする
  • 書く量を少なくする
  • 個人で考える時間を短く区切る
  • 発表は任意にする
  • 職場で言いやすいテーマに限定する
  • 最後は「今日できる小さな行動」に戻す

書ける人だけが評価される研修にしないことが重要です。

参加者それぞれが、自分の範囲で気づきを持ち帰れる設計にします。

まとめ|価値観ワークは、ストレス時の行動を選びやすくする

価値観ワークは、自分にとって大切なことを言葉にして整理する方法です。

ストレスを感じる場面には、自分が大切にしているものが関係していることがあります。

その価値観を確認すると、つらい状況の中でも「何を大切にして、どう行動するか」を選びやすくなります。

ただし、価値観ワークは、ストレスを本人の考え方だけで解決させるためのものではありません。

職場では、強制しない、評価と切り離す、つらい経験を書かせすぎない、必要に応じて業務量や支援を見直すことが重要です。

人事総務・健康経営担当者に必要なのは、個人ワークと職場環境の両方を見ることです。

社員が自分のストレスを整理し、管理職が安全に支援できるように、研修設計の段階で進め方を整える必要があります。

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文責:タニカワ久美子

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