ストレス管理
ストレス耐性で社員を評価しない|職場負荷と回復の見方
人事総務の健康経営ご担当者として、「あの社員はストレスに弱いのでは」「最近、打たれ弱くなったのでは」と感じる場面に出会ったことはありませんか。
以前は普通に対応できていた業務で疲れやすくなっている。注意を受けたあとに落ち込みが長い。忙しい時期になると、表情が硬くなり、相談や報告も遅れがちになる。
こうした状態を、すぐに「ストレス耐性が低い」と見てしまうと、職場で確認すべき負荷や回復不足を見落とします。
この記事では、ストレス耐性を社員評価の言葉にせず、業務量、睡眠、休憩、相談しにくさ、回復の不足から、人事総務・健康経営ご担当者がどう受け止めればよいかを整理します。
ストレス耐性で社員を評価しない
ストレス耐性とは、ストレスを受けたときに心身のバランスを保ち、必要な行動を続ける力として使われる言葉です。
ただし、職場でこの言葉を使うときは注意が必要です。「あの人はストレス耐性が低い」「この人は打たれ強い」といった見方になると、社員の不調が個人の弱さとして扱われやすくなります。
実際には、同じ人でも、睡眠が取れている時期と、残業や対人対応が続いている時期では、受け止められる負荷が変わります。相談できる上司がいるか、休憩が取れているか、仕事量を調整できるかによっても、心身の反応は変わります。
職場が見るべきなのは、「その社員が強いか弱いか」ではありません。どの負荷が続き、どこで回復できなくなっているかです。
我慢できる社員ほど見落とされやすい
職場では、いつも明るい社員、頼まれた仕事を断らない社員、忙しくても弱音を吐かない社員が「ストレスに強い」と見られることがあります。
しかし、外から平気そうに見えることと、負担がかかっていないことは別です。責任感が強い社員ほど、疲れていても無理を続けることがあります。管理職やリーダー層では、周囲に心配をかけないように不調を隠すこともあります。
人事総務が確認したいのは、本人が強く見えるかどうかではありません。以前より表情が硬くなっていないか、残業が続いていないか、休憩を取れているか、睡眠や体調の話が増えていないかです。
一般的な精神論では動かない理由
「もっと前向きに考えましょう」「気にしすぎないようにしましょう」「ストレスに強くなりましょう」という言葉は、職場では慎重に扱う必要があります。
仕事量が多すぎる、休憩が取れない、上司に相談しにくい、勤務時間が長い状態が続いている場合、考え方だけを変えようとしても限界があります。
社員に強さを求める前に、職場側で見直せる負荷がないかを確認する必要があります。本人の受け止め方と、職場の環境要因を分けて見なければ、支援が精神論で止まります。
専門職でも迷う判断構造
ストレス耐性が下がったように見える背景には、疲労、睡眠不足、業務量、家庭負担、相談しにくさが重なります。本人の性格だけで判断せず、回復できない状態が続いていないかを見る必要があります。
社内で動かす難しさ
ストレス耐性を個人評価にしないためには、人事総務、管理職、産業保健が同じ見方を持つ必要があります。誰が弱いかではなく、どの負荷が続き、どこで支援に変えるかを社内でそろえることが重要です。
タニカワ久美子の研修では「強い・弱い」で分けません
タニカワ久美子の企業研修では、ストレス耐性を「強い人・弱い人を分ける言葉」として扱いません。社員を評価するためではなく、どのような負荷が続くと不調につながりやすいのかを整理するために扱います。
研修現場では、「自分はストレスに弱いのだと思っていました」と話す社員さんがいます。けれど話を聞くと、残業が続いている、休憩を取れていない、上司に相談する前に自分で抱えている、睡眠が浅いという状態が重なっていることがあります。
管理職の方からは、「本人の打たれ弱さなのか、業務量の問題なのか分からなかった」という迷いが出ます。人事総務の方からは、「ストレス耐性という言葉を使うと、本人の問題にしてしまいそうで難しい」という違和感も聞かれます。
ここで必要なのは、社員に「もっと強くなりましょう」と伝えることではありません。社員の反応、管理職の迷い、人事総務の違和感を、業務負荷、休憩、睡眠、相談導線、回復不足という判断材料に変えることです。
タニカワの研修では、社員が自分の疲れに早めに気づき、管理職が責めずに声をかけ、人事総務が職場の負荷を見直せるように設計します。ストレス耐性を個人の性格に閉じ込めず、職場支援の入口として扱います。
適度な負荷と回復できない負荷を分ける
ストレスは、すべて悪いものではありません。締め切り、目標、発表、面談など、ほどよい緊張があることで集中しやすくなる場合があります。
ただし、緊張が強すぎたり、長く続きすぎたりすると、心身の回復が追いつかなくなります。肩や首に力が入る、眠りが浅くなる、イライラしやすくなる、頭が働きにくくなるといった反応が出やすくなります。
職場で見るべきなのは、社員に常に高い負荷を求めることではありません。集中できる程度の負荷に収まっているか、負荷が高すぎて回復できない状態になっていないかです。
医療的な対応が必要な場合
この記事は、職場のストレス管理と不調予防の視点から書いたものです。医学的な診断や治療を行うものではありません。
強い不眠、不安や落ち込み、出勤困難、食欲低下、涙が止まらない、動悸や息苦しさ、仕事や日常生活への支障が続く場合は、自己判断せず、医療機関や専門職につなぐ必要があります。
職場は診断するのではなく、以前との違いに気づき、本人が相談しやすい状態を作り、必要な支援先につなぐことが役割です。
ストレス耐性を職場支援の視点で見るために
ストレス耐性は、本人の性格だけで決まるものではありません。仕事の量、責任の重さ、相談しやすさ、睡眠、休憩、周囲の支援によって、同じ人でも耐えられる状態は変わります。
人事総務・健康経営ご担当者が確認したいのは、「誰がストレスに弱いか」ではありません。社員が無理を続けなくても働ける状態になっているか、疲労や緊張を回復できる職場になっているかです。
ストレス耐性を社員個人の問題にせず、業務負荷・睡眠・休憩・相談しやすさを含めて職場の不調予防につなげたい場合は、けんこう総研の企業向けストレスマネジメント研修をご確認ください。
文責:タニカワ久美子
研修テーマが未定でも、対象者・職場状況・実施時期に合わせて整理します。