ストレス概念の歴史|感情と身体反応の理解の変遷

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ストレス科学ラボ・用語バンク

ストレス概念の歴史|感情と身体反応の理解の変遷

このストレス科学ラボ・用語バンクカテゴリーでは、ストレス概念の歴史について解説します。

同じストレス管理に関する記事でも、本記事は具体的な対処法の紹介ではなく、感情やストレスがどのように理解されてきたかという考え方の変遷に焦点を当てています。

人事総務・健康経営担当者が、職場のメンタルヘルス研修やストレス管理研修を理解するための基礎知識として整理します。

ストレス概念の歴史を知る意味

職場のストレス管理では、「ストレスを減らしましょう」「気持ちを切り替えましょう」といった言葉がよく使われます。

しかし、ストレスという言葉は、最初から現在のように使われていたわけではありません。

感情、身体反応、病気、環境からの刺激、本人の受け止め方など、時代によって説明の枠組みは変化してきました。

人事総務・健康経営担当者がこの流れを知っておくと、社員のストレスを「気分の問題」だけで捉えず、心身の反応、職場環境、本人の受け止め方を分けて考えやすくなります。

かつて感情は、宗教的・神秘的な枠組みで説明されていた

歴史的には、人の感情や不調は、宗教的、神秘的、道徳的な枠組みで説明されることがありました。

怒り、不安、恐怖、落ち込みのような感情も、本人の内面や心のあり方だけで説明されることが多くありました。

このような見方では、感情の背景にある身体反応や環境要因は十分に扱われません。

現代の職場でも、似たような見方が残ることがあります。

たとえば、社員が不安を訴えたときに、「気にしすぎ」「弱い」「考え方を変えればよい」とだけ捉えてしまう場合です。

ストレス概念の歴史を知ることは、このような単純化を避けるためにも役立ちます。

身体反応として感情を捉える考え方が広がった

近代以降、感情は心だけの問題ではなく、身体反応と結びついて理解されるようになりました。

不安を感じると心拍が速くなる、緊張すると汗をかく、怒りを感じると筋肉に力が入る、恐怖を感じると呼吸が浅くなる。

このように、感情は身体の変化を伴うものとして考えられるようになっていきました。

職場のストレス管理でも、この視点は重要です。

社員が「気持ちがつらい」と言わなくても、睡眠不調、肩こり、疲労感、胃腸の不調、ミスの増加、会話の減少としてストレス反応が表れることがあります。

つまり、感情と身体反応を分けすぎずに見ることが、職場の早期対応につながります。

キャノンの研究は、危機に備える身体反応を示した

ストレス研究の歴史では、Walter Cannonの研究が重要です。

Cannonは、危険や強い刺激に直面したときに、体がすばやく反応する仕組みに注目しました。

よく知られているのが、闘争・逃走反応です。

これは、危険を感じたときに、体が「戦う」または「逃げる」ための準備をする反応です。

心拍が速くなる、呼吸が変化する、筋肉に血液が集まりやすくなる、発汗するなどの反応は、短期的には危険に対応するために役立ちます。

しかし、職場で強い緊張状態が長く続くと、体は休まりにくくなります。

クレーム対応、納期への圧迫、評価への不安、人間関係の緊張が続くと、社員は危機対応のような緊張状態を長く抱えることがあります。

セリエは、ストレスを全身の反応として整理した

Hans Selyeは、ストレスを心だけの問題ではなく、外部からの刺激に対する全身の反応として整理しました。

Selyeの考え方は、ストレスを医学や生理学の領域で考える土台になりました。

この視点では、ストレスは単なる気分ではなく、体全体に影響する反応として捉えられます。

職場で考えると、強い負荷が続くことで、疲労感、睡眠不調、集中力の低下、体調不良、感情の不安定さが表れることがあります。

人事総務・健康経営担当者は、社員の不調を「やる気の問題」とだけ見ず、心身の反応として確認する必要があります。

ラザルスは、受け止め方と対処に注目した

その後、Richard LazarusとSusan Folkmanは、ストレスを本人と環境との関係で捉えました。

同じ出来事でも、人によってストレスの感じ方が異なることがあります。

この違いを考えるうえで重要なのが、認知的評価とコーピングです。

概念 意味 職場での例
認知的評価 出来事を自分にとってどの程度の負担と見るか 同じ業務変更でも、「対応できる」と感じる人と「無理だ」と感じる人がいる
コーピング ストレスに対して行う考え方や行動の工夫 相談する、優先順位を整理する、休息を取る、気持ちを書き出す
ストレス反応 ストレスによって表れる心身や行動の変化 不安、イライラ、睡眠不調、疲労感、ミスの増加

この考え方により、ストレスは「出来事そのもの」だけで決まるのではなく、本人の受け止め方、使える支援、対処方法によって変わると理解されるようになりました。

ストレスの理解は、個人要因から職場環境へ広がった

現在の職場ストレス対策では、本人の性格や考え方だけでなく、職場環境も重要視されます。

業務量、裁量の少なさ、評価の不公平感、上司との関係、同僚との支援、休憩の取りやすさ、相談しやすい雰囲気などが、ストレス反応に影響します。

つまり、ストレスは個人の中だけで起こるものではありません。

本人と職場環境の関係の中で生じるものです。

この視点を持つことで、職場のメンタルヘルス対策は、社員本人へのセルフケア教育だけでなく、管理職の関わり方や職場改善にも広がります。

時代によってストレスの説明枠組みは変わってきた

ストレスや感情の説明は、時代によって変化してきました。

時代・視点 主な見方 職場研修での活かし方
宗教的・神秘的な説明 感情や不調を内面や運命として捉える 不調を本人の責任だけにしない視点を持つ
身体反応としての理解 感情には心拍、発汗、筋緊張などが伴う 心と体の反応を合わせて見る
生理学的ストレス 外部刺激に対する全身の反応として捉える 疲労や睡眠不調もストレス反応として見る
心理学的ストレス 本人の受け止め方や対処行動に注目する 認知的評価とコーピングを研修に入れる
職場環境としてのストレス 業務量、裁量、支援、評価、人間関係を見る セルフケアと職場改善を組み合わせる

この流れを見ると、ストレス対策は「個人の心を強くすること」だけでは不十分だとわかります。

心身の反応、本人の受け止め方、職場環境を合わせて見る必要があります。

職場のメンタルヘルス研修で歴史を扱う意味

企業研修では、ストレス理論の歴史を細かく暗記する必要はありません。

しかし、ストレスの考え方が変化してきたことを知ると、社員の不調を単純に責めにくくなります。

たとえば、社員が不安や疲労を訴えたときに、「気持ちが弱いから」と判断するのではなく、次のように考えられます。

  • 身体反応として緊張が続いていないか
  • 本人はその状況をどのように受け止めているか
  • 相談できる相手や支援があるか
  • 職場環境に負荷が集中していないか
  • 休息や回復の時間が確保されているか

この視点があると、ストレス管理研修は精神論ではなく、職場の実務に使える内容になります。

タニカワ久美子の研修では、理論史を現場の言葉に置き換える

タニカワ久美子のストレス管理研修では、ストレス理論や感情の歴史を、専門用語のまま説明するのではなく、職場で使える言葉に置き換えます。

たとえば、闘争・逃走反応は「体が危険に備えて活動モードになること」と説明します。

認知的評価は「同じ出来事でも、人によって受け止め方が違うこと」と説明します。

コーピングは「ストレスを受けたときに、自分でできる工夫や周囲に頼る行動」として整理します。

このように言い換えることで、社員は専門用語を覚えるのではなく、自分の心身に起きていることとして理解しやすくなります。

人事総務の担当者からも、理論を職場の言葉に変えて説明する点を評価されています。

人事総務が押さえたいポイント

ストレス概念の歴史を、職場研修に活かすときに押さえたい点は次のとおりです。

  • 感情やストレスの理解は、時代によって変化してきた
  • ストレスは、心だけでなく身体反応としても表れる
  • 同じ出来事でも、本人の受け止め方によって反応は異なる
  • ストレス対策は、セルフケアだけでなく職場環境の見直しも必要である
  • 研修では、理論を専門用語ではなく職場の言葉に置き換えることが重要である

この視点を持つことで、人事総務・健康経営担当者は、社員の不調を一面的に判断せず、支援の方向性を整理しやすくなります。

まとめ:ストレスの歴史を知ると、職場支援の見方が変わる

ストレスや感情の理解は、宗教的・神秘的な説明から、身体反応、生理学的反応、認知的評価、職場環境との関係へと広がってきました。

この流れを知ることで、職場のストレス対策は「本人の気持ちの問題」だけではなくなります。

社員の心身の反応、受け止め方、対処行動、職場環境を合わせて見ることが重要になります。

人事総務・健康経営担当者に求められるのは、理論史を細かく説明することではありません。

社員が自分の状態に気づき、管理職が部下の変化を責めずに見られ、職場として支援できる研修設計につなげることです。

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けんこう総研では、ストレス概念の歴史、認知的評価、コーピング、心身のストレス反応を、社員が理解しやすい言葉に置き換えたストレスマネジメント研修を行っています。精神論ではなく、職場の実務に活かせる内容として設計します。

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参考文献

  • Cannon, W. B. Bodily Changes in Pain, Hunger, Fear and Rage. Appleton, 1915.
  • Selye, H. The Stress of Life. McGraw-Hill, 1956.
  • Lazarus, R. S., & Folkman, S. Stress, Appraisal, and Coping. Springer, 1984.

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