ストレス管理
メンタルヘルス不調を招くストレス解消法|疲れのごまかしに注意
このストレス管理カテゴリーでは、職場で起こる心身の反応を、社員の不調予防につなげる視点で扱っています。本記事の焦点は、ストレス解消法を増やすことではありません。疲れているときに、カフェイン、甘いもの、飲酒などで一時的に元気になったように感じても、心身の回復につながっていない場合があります。人事総務・健康経営担当者が、社員の疲労をごまかす習慣を見落とさず、メンタルヘルス不調の予防につなげるための内容です。
メンタルヘルス不調につながりやすいストレス解消法とは
ストレスがたまったとき、人は何らかの方法で気持ちを楽にしようとします。コーヒーを飲む、エナジードリンクを飲む、甘いものを食べる、お酒を飲む、夜遅くまで動画を見るなど、身近な行動で気分を切り替えようとすることがあります。
これらの行動がすべて悪いわけではありません。問題は、疲労や不調のサインを見ないまま、毎日のように同じ方法でごまかし続けることです。
本当は休養が必要なのに、カフェインで眠気を押さえる。本当は仕事量を見直す必要があるのに、甘いもので気分をまぎらわせる。本当は相談が必要なのに、お酒で忘れようとする。この状態が続くと、メンタルヘルス不調のリスクが高まりやすくなります。
疲れをごまかすことと、疲労回復は違う
疲れているときに、コーヒーやエナジードリンクを飲むと、頭が少しはっきりしたように感じることがあります。これは、カフェインの覚醒作用によるものです。
ただし、目が覚めたように感じることと、身体が回復したことは違います。カフェインで眠気を感じにくくなっても、睡眠不足や疲労そのものが消えたわけではありません。
職場のストレス管理で重要なのは、「元気そうに見えるか」ではなく、「本当に回復できているか」を見ることです。疲れている社員が無理に働き続けている場合、表面上は仕事をこなしていても、集中力や判断力が落ちていることがあります。
コーヒーやエナジードリンクは疲労回復ではない
コーヒーやエナジードリンクには、カフェインが含まれています。カフェインには眠気を感じにくくさせる働きがあります。そのため、忙しい日や集中したい場面で、一時的に役立つことがあります。
しかし、疲れそのものを回復させるものではありません。むしろ、夕方以降や夜に多く取ると、寝つきにくさや眠りの浅さにつながる場合があります。
厚生労働省は、カフェインの過剰摂取について、不眠、頭痛、イライラ感、緊張感などの影響に注意を促しています。エナジードリンクには、1本でコーヒー数杯分に相当するカフェインを含むものもあるため、日常的に何本も飲む習慣には注意が必要です。
残業中のカフェイン習慣は見落とされやすい
職場で見落とされやすいのは、残業中のカフェイン習慣です。
夕方以降に疲れてきたとき、「もう少し頑張るために」とコーヒーやエナジードリンクを飲む社員は少なくありません。その場では眠気が軽くなったように感じても、夜の睡眠に影響すると、翌朝の疲労感が残りやすくなります。
その結果、翌日もまたカフェインに頼る流れが生まれます。これが続くと、疲れているのに休めない状態が習慣化し、心身の回復が追いつかなくなります。
甘いものやお酒も「回復した気分」になりやすい
疲れているときに甘いものを食べると、ほっとすることがあります。お酒を飲むと、緊張がゆるんだように感じることもあります。
しかし、これらも疲労やストレスの原因を解決するものではありません。仕事量、人間関係、睡眠不足、相談しにくさが残っている場合、一時的に気分が変わっても、翌日には疲れが戻ってくることがあります。
甘いものやお酒を楽しむこと自体を否定する必要はありません。ただし、それしか切り替え方法がない状態は注意が必要です。ストレス対処が一つの方法に偏ると、心身の負担を見落としやすくなります。
自覚がない疲労が危険な理由
疲労が強くなると、本人は自分の疲れに慣れてしまうことがあります。朝からだるい、眠れていない、集中しにくい状態が続いていても、「いつものこと」と思ってしまいます。
この状態では、本人が不調を訴えにくくなります。周囲から見ても、出勤している、仕事をしている、会話もできているため、問題が見えにくくなります。
しかし、疲れが取れない状態が続くと、ミス、遅刻、欠勤、感情の起伏、対人トラブルとして表れることがあります。メンタルヘルス不調は、突然始まるのではなく、疲労の積み重ねとして出ることがあります。
ストレスチェックや健康診断だけで安心しない
ストレスチェックや健康診断は、社員の状態を把握する大切な仕組みです。ただし、数値が大きく悪くないからといって、安心しきってよいわけではありません。
社員本人が疲れを自覚していない場合や、「これくらい普通」と思っている場合、表面には出にくいことがあります。また、健康診断で大きな異常がなくても、睡眠不足や慢性疲労が続いていることがあります。
人事総務・健康経営担当者は、検査結果だけではなく、日常の変化を見る必要があります。朝の表情、集中力、会話量、残業の続き方、休憩の取り方、カフェインや甘いものへの頼り方も、職場のストレスサインとして見ておくことが大切です。
企業研修で見える「カフェインで乗り切る社員」
タニカワ久美子の企業研修では、疲労とストレス対処の話をすると、社員さんから「夕方になるとエナジードリンクを飲まないと仕事が進まない」という声が出ることがあります。
ある研修では、若手社員の方が「眠気を飛ばすために飲んでいるだけで、ストレス対策とは思っていませんでした」と話しました。しかし、よく聞くと、残業が続き、夜の睡眠が浅くなり、翌朝から疲れている状態が続いていました。本人は頑張っているつもりでも、身体は回復できていなかったのです。
このときタニカワ久美子が伝えるのは、「カフェインをやめましょう」ではありません。まず、自分が何をごまかすために飲んでいるのかを見てみることです。眠気なのか、疲労なのか、仕事量の多さなのか、不安なのか。そこを分けて考えると、本当に必要な対策が見えてきます。
人事総務・健康経営担当者にとっても、この視点は重要です。社員がカフェインや甘いものに頼っていることを自己管理不足として責めるのではなく、残業、休憩不足、睡眠不足、相談しにくさが背景にないかを確認することで、職場としてできる支援が見えてきます。
間違ったストレス解消法に気づくポイント
ストレス解消法が本当に回復につながっているかは、行動のあとに心身がどう変わっているかで確認できます。
- 一時的に元気になるが、翌朝の疲れが強い
- 眠気をごまかすためにカフェインが増えている
- 甘いものやお酒がないと気持ちを切り替えにくい
- 休むより先に、刺激の強い飲食で乗り切っている
- 夜の睡眠が浅くなっている
- 仕事量や疲労の原因を見直さないまま続けている
このような状態が続く場合、そのストレス解消法は回復ではなく、疲労の先送りになっている可能性があります。
人事総務が確認しやすい声かけ
社員の疲労やストレス対処が気になるときは、「飲みすぎではありませんか」「自己管理できていますか」と聞くと、防衛的になりやすくなります。状態を確認する言葉の方が話しやすくなります。
- 最近、朝から疲れが残っていませんか
- 夕方以降にカフェインに頼ることが増えていませんか
- 眠れている感じはありますか
- 休憩を取る前に、飲み物や甘いもので乗り切っていませんか
- 仕事のあとに気持ちが休まる時間はありますか
- 疲れの原因を一緒に整理してみましょうか
このような声かけは、社員を責めるためではありません。疲労をごまかす習慣に早めに気づき、睡眠、休憩、業務量、相談先の見直しにつなげるための入口です。
職場でできる予防策
メンタルヘルス不調の予防では、社員本人の努力だけに頼らないことが重要です。職場側にもできることがあります。
- 残業が続く部署では、睡眠や疲労のサインを見る
- 休憩を取りやすい空気をつくる
- 夕方以降の長時間作業が続かないよう業務量を確認する
- 高ストレス者だけでなく、疲労が慢性化している社員にも声をかける
- ストレスチェック後に、結果だけでなく日常の変化を見る
- 管理職が「元気そうだから大丈夫」と判断しすぎない
- 必要に応じて産業医や保健師、外部相談窓口につなぐ
職場での予防は、特別な制度を増やすことだけではありません。日常の働き方の中で、疲労をため込みすぎない流れをつくることです。
本当に必要なストレス対処は回復につながること
ストレス解消法は、気分を一瞬変えるだけでは不十分です。本当に必要なのは、心身の回復につながる対処です。
睡眠を取る、短い休憩を入れる、仕事量を確認する、軽く身体を動かす、誰かに相談する、仕事の優先順位を整理する。こうした方法は地味ですが、疲労を先送りしにくくします。
カフェインや甘いもの、お酒を完全に否定する必要はありません。ただし、それだけで乗り切る状態が続いているなら、身体は休めていない可能性があります。
メンタルヘルス不調を防ぐには、疲れをごまかさないこと
メンタルヘルス不調のリスクを高めるストレスには、共通する特徴があります。それは、疲れているのに休めないこと、疲労を一時的な刺激でごまかしていること、原因を見直さないまま続けていることです。
カフェインで眠気を飛ばす、甘いもので気分を切り替える、お酒で忘れるといった行動は、一時的には楽に感じることがあります。しかし、それが毎日の習慣になると、心身の回復が追いつきにくくなります。
人事総務・健康経営担当者が見るべきなのは、社員がどのようにストレスを解消しているかだけではありません。その方法が本当に回復につながっているか、疲労を先送りしていないかです。
社員の疲労をごまかす習慣を見直し、メンタルヘルス不調の予防につなげたい場合は、ストレスマネジメント研修をご確認ください。