健康経営
中小企業が健康経営を実施できない理由と進め方
健康経営という言葉は広がってきました。
しかし実際には、「取り組みたい気持ちはあるが、始められない」「何から手をつければよいかわからない」という中小企業は少なくありません。
この記事では、中小企業が健康経営を実施できない理由を扱います。
同じ中小企業の健康経営でも、本記事は始め方の手順ではなく、なぜ進まないのか、どこで止まりやすいのかに焦点を当てた記事です。
健康経営を福利厚生で終わらせず、人と組織の力を引き出すために、人事総務・健康経営担当者が導入前に確認したい考え方をお伝えします。
中小企業で健康経営が進まない理由
中小企業で健康経営が進まない理由は、関心がないからとは限りません。
多くの場合、やりたい気持ちはあっても、現場の人員、予算、時間、専門知識が足りず、動き出せない状態になっています。
- 担当者が他の業務と兼任している
- 健康経営に使える予算が限られている
- 経営層に必要性を説明しにくい
- 社員に自分ごととして伝わりにくい
- 何をすれば成果につながるのかわからない
この状態で新しい施策だけを増やすと、担当者の負担が大きくなります。
健康経営を進めるには、まず自社がどこで止まっているのかを見極めることが必要です。
理由1|人員と予算に余裕がない
中小企業では、健康経営だけを担当する専任者を置けないことが多くあります。
人事総務の担当者が、採用、労務、給与、社内対応を抱えながら、健康経営も担当しているケースもあります。
そのため、次のような問題が起きやすくなります。
- 健康経営の計画を作る時間がない
- 社員への案内や周知が後回しになる
- 外部サービスを導入する予算が取りにくい
- 研修や相談窓口を継続できるか不安になる
- 効果を見直す時間が取れない
中小企業の健康経営では、大きな制度を最初から作る必要はありません。
まずは、今ある健康診断、ストレスチェック、欠勤、離職、社員の声を使い、小さく始めることが現実的です。
理由2|経営層に健康経営の必要性が伝わっていない
健康経営が進まない会社では、経営層に「社員の健康が経営にどう関係するのか」が伝わっていないことがあります。
健康経営が、社員向けの福利厚生や良い会社づくりの話だけに見えてしまうと、優先順位は上がりにくくなります。
経営層に伝えるときは、健康を健康だけの話にしないことが重要です。
| 健康課題 | 経営に出やすい影響 | 確認したいこと |
|---|---|---|
| 疲労の蓄積 | 集中力低下、ミス、欠勤 | 繁忙期や部署ごとの負担を見る |
| ストレスの増加 | 相談遅れ、休職、離職 | 相談しやすさや管理職の抱え込みを見る |
| 健康診断後の未対応 | 不調の深刻化、突然の休職 | 再検査や受診勧奨の流れを見る |
| 管理職の疲弊 | 部下対応の遅れ、職場の不安定化 | 管理職が一人で抱えていないかを見る |
| 社員の無関心 | 施策が使われず形だけになる | 社員に届く言葉になっているかを見る |
健康経営は、単なる健康施策ではありません。
人が働き続けられる状態を守り、欠勤や離職、業務停滞を防ぐための経営判断です。
理由3|業種特性が健康経営を難しくしている
健康経営は、業種によって進めにくさが違います。
同じ中小企業でも、事務職中心の会社と、介護、医療、教育、物流、製造の現場では、負担の出方が異なります。
たとえば、次のような業種では健康経営が進みにくくなることがあります。
- 人手不足で一人あたりの負担が大きい職場
- 対人対応が多く、感情労働が続く職場
- 長時間勤務や不規則勤務が発生しやすい職場
- 安全確認や緊張状態が続く職場
- 休憩や相談の時間を取りにくい職場
このような職場では、一般的な健康施策をそのまま入れても機能しにくくなります。
業種ごとの負担を見たうえで、休憩、相談、管理職支援、ストレスケアを組み合わせる必要があります。
理由4|社員のヘルスリテラシーに差がある
健康経営では、社員の健康への関心に大きな差があります。
健康に関心の高い社員もいれば、忙しさの中で健康の話を後回しにする社員もいます。
この差を考えずに一斉に説明しても、社員には届きにくくなります。
- 健康経営が自分の仕事に関係すると感じない
- 健康情報が多すぎて何をすればよいかわからない
- 会社に健康を管理されるように感じてしまう
- 相談してよい内容がわからない
- 研修を受けても日常行動に戻らない
社員に伝えるときは、専門用語よりも日常の言葉が必要です。
「疲れがたまったときにどうするか」「休みにくいときに誰へ相談するか」「管理職がどう声をかけるか」まで落とし込むことで、健康経営は自分ごとになりやすくなります。
理由5|実施後の見直しが決まっていない
健康経営が進まない会社では、研修や施策を行った後に、何を見るのかが決まっていないことがあります。
実施して終わりになると、次年度も同じことを繰り返すだけになりやすくなります。
| 実施したこと | 実施後に見たいこと | 次につなげる判断 |
|---|---|---|
| 健康診断 | 再検査や生活改善につながったか | 受診勧奨や声かけを見直す |
| ストレスチェック | 高ストレス部署や相談しにくさが見えたか | 職場改善や管理職支援につなげる |
| 健康経営研修 | 受講後に行動や会話が変わったか | 研修後フォローを入れる |
| 相談窓口 | 社員が何を相談できるか知っているか | 相談例を具体的に伝える |
| 働き方の見直し | 休憩、残業、休暇取得に変化があるか | 部署ごとの負担を確認する |
健康経営は、やったかどうかではなく、実施後に何が見えたかで判断します。
この見直しがあることで、限られた予算でも続けやすくなります。
中小企業が健康経営を進める前に確認したいこと
中小企業が健康経営を始める前に、最初から大きな計画を作る必要はありません。
まずは、今の職場で何が一番困っているのかを一つ選ぶことです。
- 欠勤が増えているのか
- 離職が続いているのか
- 管理職が疲れているのか
- 社員が相談しにくいのか
- 健康診断やストレスチェックが活かせていないのか
課題を一つに絞ると、健康経営は進めやすくなります。
すべてを同時に変えようとすると、担当者も現場も負担が大きくなります。
タニカワ久美子が企業研修で見ている中小企業のつまずき
タニカワ久美子の企業研修では、中小企業の担当者から「健康経営の必要性はわかっているが、何から始めればよいかわからない」という相談を受けることがあります。
一方で、社員さんからは「健康経営と言われても、自分に何が関係するのかわからない」という声が出ることもあります。
このような職場では、制度や計画を大きく見せるよりも、まず日常の困りごとに近づけることが大切です。
疲れがたまる、休みにくい、相談しづらい、管理職が声をかけにくい。
こうした小さな場面から健康経営を始める方が、職場に届きやすくなります。
研修では、健康経営を難しい制度の話として扱いません。
社員が働き続けるために、今どこに無理が出ているのかを見て、人事総務と管理職が一人で抱え込まない流れを作ることを重視しています。
健康経営を実施できない状態から抜け出す流れ
中小企業が健康経営を進めるときは、次の流れで考えると動き出しやすくなります。
- 今いちばん困っている職場課題を一つ選ぶ
- その課題が欠勤、離職、疲労、相談しにくさのどれに近いかを見る
- 健康診断、ストレスチェック、社員の声など、今ある情報を確認する
- 最初に変える小さな行動を決める
- 社員に、なぜ行うのかを日常の言葉で伝える
- 管理職が声をかけやすい形にする
- 数週間後に、使われているかを見直す
この流れがあると、健康経営は大きな制度を作る前から始められます。
中小企業では、まず小さく始めて、続けながら形にすることが現実的です。
健康経営ができない理由は、始め方を変える手がかりになる
健康経営を実施できない理由は、会社の弱点ではありません。
どこから始めればよいかを見つけるための手がかりです。
人員や予算が限られているなら、小さく始める。
経営層に伝わっていないなら、欠勤や離職、管理職の負担と結びつけて説明する。
社員に届いていないなら、専門用語ではなく、日常の困りごとに近づけて伝える。
けんこう総研では、中小企業が健康経営を無理なく始められるよう、ストレス管理研修、管理職支援、健康経営フォローアップを組み合わせて支援しています。
人事総務・健康経営担当者が一人で抱え込まず、社内で説明しやすい形にすることを大切にしています。