朝の疲労感を職場で見落とさない|HRVを参考にした社員支援

ストレス・セルフケアを組み合わせた健康経営研修

朝の疲労感を職場で見落とさない|HRVを参考にした社員支援

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朝の疲労感を職場で見落とさない|HRVを参考にした社員支援

「眠ったはずなのに、朝から疲れている」「寝たのに体が重い」「午前中から集中しにくい」。職場のストレス管理では、このような社員さんの声を聞くことがあります。

人事総務・健康経営担当者が注意したいのは、この状態をすぐに気合い不足や自己管理不足として受け止めないことです。

睡眠時間が確保されていても、本人が回復した感じを持てないことがあります。前日の業務負荷、対人ストレス、緊張の持ち越し、睡眠中の身体反応が重なると、朝の健康感は下がりやすくなります。

睡眠中HRVは、社員の状態を判定する数字ではなく、翌朝の疲労感や回復感を見落とさないための参考情報です。

職場で大切なのは、HRVの数値を社員評価に使うことではありません。社員が「眠ったのに回復しない」と感じている背景を、睡眠、疲労、業務負荷、相談しやすさと合わせて見ることです。


「朝から疲れている」は職場の不調予防で見逃しやすい

社員の不調は、最初から大きな欠勤や休職として表れるとは限りません。

初期には、朝の小さな変化として出ることがあります。

  • 朝から体が重い
  • 寝たのに疲れが抜けていない
  • 午前中の集中が立ち上がらない
  • 出社前から気持ちが重い
  • 会議や対人対応の前に身構える
  • 休んでも回復した感じが少ない

この段階では、本人も「まだ働ける」「休むほどではない」と考えがちです。周囲から見ても、明らかな不調としては見えにくい場合があります。

しかし、朝の疲労感が続くと、日中の集中力、判断力、対人対応、ミスの増加に影響することがあります。

人事総務が拾いたいのは、深刻化してからの不調だけではありません。社員が「眠ったのに戻らない」と感じ始めた時点で、早めに支援へつなげる視点です。


HRVは、朝の疲労感を聞くための補助情報にとどめる

心拍変動HRVとは、心拍と心拍の間隔に生じる細かなゆらぎのことです。

心臓は一定のリズムで動いているように見えますが、実際には呼吸、緊張、疲労、睡眠、体調の影響を受けて、心拍の間隔がわずかに変化しています。

この変化には、自律神経の働きが関係します。自律神経には、活動や緊張に関わる働きと、休息や回復に関わる働きがあります。

睡眠中は、仕事中の会話、移動、会議、スマートフォン操作などの影響が少なくなります。そのため、睡眠中のHRVは、身体が休息に向かっているかを考える参考情報になります。

ただし、HRVだけで健康状態やストレス状態を決めることはできません。

  • 睡眠時間
  • 睡眠の深さ
  • 中途覚醒
  • 飲酒
  • 運動後の疲労
  • 体調不良
  • 服薬
  • 測定機器の装着状態
  • ウェアラブル端末ごとの算出方法

これらの影響を受けるため、HRVは「良い社員」「悪い社員」を分ける数字ではありません。

職場では、HRVを診断や評価に使わず、社員本人が回復状態に気づくきっかけとして扱う必要があります。


翌朝の健康感は、本人の主観として確認する

翌朝の健康感とは、朝起きたときに本人が感じる心身の状態です。

医学的な診断ではなく、本人がその朝に「回復しているか」「体が動きそうか」「仕事に入れそうか」をどう感じているかです。

職場では、次のような言葉で表れます。

社員の言葉 職場で見る視点
眠ったのに疲れが残っています 睡眠時間だけでなく、回復感を見る
朝から体が重いです 前日の業務負荷や休息不足を確認する
午前中から集中しにくいです タスク量、優先順位、睡眠不足を確認する
気持ちは大丈夫ですが体がつらいです 心の状態と身体疲労を分けて見る
休んでも戻った感じがありません 慢性的な負荷や回復機会の不足を確認する

翌朝の健康感は、数値だけでは見えません。HRVに大きな変化がなくても、本人が強い疲労感を感じていることがあります。

反対に、HRVが低めでも、本人が緊張感で動けてしまうこともあります。その場合、午後や週末に強い疲労が出ることがあります。

職場では、数値と本人の言葉を対立させず、両方を見て支援につなげる必要があります。


HRVの数値だけで社員の状態を判断しない

ウェアラブル端末で睡眠中HRVが見えるようになると、数値で社員の状態を把握できるように感じることがあります。

しかし、職場でこの読み方をすると危険です。

避けたい判断 職場での安全な見方
HRVが低いからストレスが高い 睡眠、疲労、体調、業務負荷と合わせて見る
HRVが高いから問題ない 本人の疲労感や朝のつらさも確認する
数値が悪い社員は自己管理不足 休息不足や職場負荷の影響も見る
部署ごとにHRVを比較する 個人特定を避け、職場環境の見直しに使う
HRVを人事評価に使う 本人のセルフケア支援に限定する

人事総務・健康経営担当者が見るべきなのは、個人の数値の高低ではありません。

社員が朝から疲れている状態が続いていないか、睡眠不調を訴えていないか、午前中の集中低下が増えていないかという変化です。


研究からの実務は、数値化ではなく朝の聞き取り設計

心拍変動HRVに関する研究は、身体の回復状態や認知機能、情動調整を考えるうえで参考になります。職場で睡眠中HRVを見る場合も、翌朝の疲労感や回復感を考える補助情報として慎重に扱う必要があります。

この研究では、ウェアラブル端末によって睡眠中のHRVを測定し、翌朝に本人が感じる身体的・精神的な健康感との関係を確認しています。

研究結果からは、睡眠中HRVが翌朝の身体的な健康感と小さいながら関係する可能性が示されています。

つまり、眠っている間の身体の回復状態が、翌朝の体の軽さや疲労感と関係する可能性があります。

一方で、精神的な健康感との関係は単純ではありません。

朝の気分や不安は、睡眠中の身体反応だけで決まりません。仕事の心配、人間関係、前日の出来事、家庭の負担、朝の予定など、複数の要因が関わります。

HRVは翌朝の健康感を考える材料になりますが、心と体の状態を一つの数値で読み切ることはできません。


研究結果を職場にそのまま当てはめない

HRV研究は、職場のストレス管理に役立つ視点を与えてくれます。

ただし、研究結果をそのまま社員管理に使うことは避ける必要があります。

研究には、対象者、測定期間、測定機器、睡眠検出方法、HRVの算出方法などの条件があります。ウェアラブル端末による測定は便利ですが、医療機器と同じ精度で判断できるわけではありません。

また、翌朝の健康感は本人の自己申告です。自己申告は非常に大切な情報ですが、その日の気分、忙しさ、性格、職場環境によって答え方が変わることがあります。

職場で活かす場合は、研究結果を「社員を分類する基準」として使わないことが重要です。

研究から持ち帰るべきなのは、朝の疲労感や回復感を、気分だけの問題にせず、睡眠中の身体反応や職場負荷と合わせて見る視点です。


人事総務が確認したい朝のサイン

朝の健康感が下がっている社員さんには、いきなりメンタル不調を疑うより、日常の状態から確認するほうが話しやすくなります。

人事総務や管理職が確認しやすいのは、次のようなサインです。

  • 最近、朝から疲れが残っていないか
  • 眠ったのに体が重い日が続いていないか
  • 午前中に集中しにくいことが増えていないか
  • 夜中に目が覚めることが増えていないか
  • 仕事のあとも緊張が抜けにくくないか
  • 休んでも回復した感じが少なくなっていないか
  • 週の後半になるほど反応が鈍くなっていないか

この確認は、社員を評価するためではありません。

睡眠と疲労のサインを早めに拾い、必要に応じて業務負荷の確認、休息の取り方、相談先の案内につなげるための入口です。


管理職の声かけは、朝の疲れを責めない形にする

管理職が「ちゃんと寝ていますか」「自己管理できていますか」と聞くと、社員は責められているように感じることがあります。

特に、睡眠や疲労の悩みは、本人も言い出しにくいものです。「自分の生活が悪いと思われるのではないか」「仕事への意欲が低いと思われるのではないか」と不安になることがあります。

声かけは、評価ではなく支援につながる形に変える必要があります。

避けたい声かけ 安全な声かけ
ちゃんと寝ていますか? 眠ったあとも疲れが残る日が続いていませんか。
体調管理できていますか? 朝の体の重さが、いつもより強く出ていませんか。
気合いで乗り切れそうですか? 午前中の優先順位を少し絞ったほうが動きやすいですか。
睡眠データを見せてもらえますか? 睡眠時間と回復した感じにずれはありませんか。
ストレスが高いのでは? 仕事のあとも緊張が残る感じはありますか。

管理職が見るべきなのは、社員のHRV数値ではありません。

朝の疲労感、午前中の集中、相談のしやすさ、業務量の偏りです。数値を聞き出すより、仕事の進め方を調整できる声かけが必要です。


ストレス管理研修では、数値より本人の気づきを重視する

タニカワ久美子の企業研修では、HRVの数値を「良い」「悪い」で判定する材料として使いません。

研修で大切にしているのは、社員さんが自分の身体の変化に気づけることです。

たとえば、次のような状態を、気合いや根性の問題にしない視点を伝えています。

  • 朝から疲れている日が続く
  • 眠ったはずなのに回復感がない
  • 日中に集中しにくい
  • 会議後に体がぐったりする
  • 仕事のあとも緊張が抜けない
  • 休んでも戻った感じが薄い

研修現場では、「眠れていると思っていたけれど、回復した感じまでは見ていませんでした」「朝の疲れを自分の怠けだと思っていました」という反応が出ることがあります。

この気づきが出ると、社員は自分の状態を早めに言葉にしやすくなります。人事総務や管理職も、疲労を本人の努力不足として片づけず、業務負荷や休息の取り方を一緒に見直しやすくなります。


健康経営では、朝の疲労感を相談と業務調整につなげる

健康経営で睡眠やHRVを扱う場合、数値の平均値だけを追うと施策の目的がずれます。

見るべきなのは、社員と職場の行動が変わったかです。

見たい変化 職場での意味
社員が朝の疲労感を言葉にできる 不調の早期サインに気づきやすくなる
睡眠時間だけでなく回復感を見る 「寝たから大丈夫」という見落としを減らせる
管理職が責めない声かけをする 相談しやすさが上がる
午前中の業務量を調整しやすくなる 無理な立ち上がりを防ぎやすくなる
業務負荷と休息をセットで見る 個人努力だけにしない職場改善につながる

データを取ること自体が健康経営ではありません。

社員が自分の疲労に早く気づき、管理職が責めずに支援し、人事総務が職場改善につなげられることが重要です。


朝の疲れを見落とさない職場支援へつなげる

睡眠中HRVは、身体が休息中にどのような状態にあったのかを考える手がかりになります。

研究では、翌朝の身体的な健康感との関係が示されていますが、その関係は大きなものではなく、慎重に読む必要があります。

HRVは便利な指標ですが、社員の状態を一つの数値で判断するものではありません。

睡眠時間、疲労感、朝の体調、仕事中の集中、職場の負担感、相談しやすさと合わせて見ることで、職場のストレス管理に使いやすい情報になります。

人事総務・健康経営担当者に求められるのは、社員の睡眠データを管理することではありません。社員が「眠ったのに疲れている」と言える職場をつくり、その声を業務負荷や休息の見直しにつなげることです。

けんこう総研では、睡眠、疲労、自律神経、心拍変動HRVに関する研究知見を、職場のストレス管理研修に活用しています。

社員の睡眠不調や朝の疲労感を、気合いや自己管理だけの問題にせず、職場の支援につなげたい場合は、以下のページをご覧ください。

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参考文献

  • Thayer, J. F., & Lane, R. D. (2000). A model of neurovisceral integration in emotion regulation and dysregulation. Journal of Affective Disorders, 61(3), 201–216.
  • Thayer, J. F., Hansen, A. L., Saus-Rose, E., & Johnsen, B. H. (2009). Heart rate variability, prefrontal neural function, and cognitive performance. Annals of Behavioral Medicine, 37(2), 141–153.

文責:タニカワ久美子

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