高年齢社員の運動支援|強制参加が心理的負担になる理由

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高年齢社員の運動支援|強制感が心理的負担になる理由

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シニア層(キャリア後期の健康支援)

高年齢社員の運動支援|強制感が心理的負担になる理由

職場で健康づくりのために運動をすすめたい。けれども、社員さんから「運動が苦手です」「みんなの前で体を動かすのは気が重い」という反応が出ることはありませんか。

運動は、心身の健康に役立つ可能性があります。Ben Singhらの2023年のレビュー研究でも、身体活動はうつ、不安、心理的苦痛の改善に有益であることが示されています。

ただし、職場で運動支援を行う場合は、運動そのものの効果だけを見てはいけません。参加のさせ方、声のかけ方、強度、周囲の目、本人の体力差によっては、健康支援のつもりが心理的な負担になることがあります。

特に高年齢社員への運動支援では、「健康のためだから全員でやりましょう」という進め方が、かえって参加しにくさを生むことがあります。この記事では、人事総務の担当者が職場で運動支援を考えるときに、強制感を出さず、安心して参加しやすい形にする視点を紹介します。

高年齢社員の運動支援と心理的負担に配慮した健康経営

高年齢社員への運動支援では、運動量よりも「安心して参加できるか」を見る視点が重要です

運動支援で問題になるのは、運動そのものではなく参加のさせ方です

職場の健康施策では、ストレッチ、ウォーキング、軽い体操、筋力維持の運動などが取り入れられることがあります。どれも健康づくりに役立つ可能性がありますが、実施方法によって受け止め方は大きく変わります。

本人が納得して参加できる運動は、気分転換や交流の機会になります。一方で、半ば強制のように感じる運動は、「断りにくい」「できないところを見られたくない」「ついていけないかもしれない」という不安につながります。

高年齢社員の場合、体力差、関節の痛み、持病、疲れやすさ、周囲への遠慮が重なりやすくなります。本人が何も言わなくても、内心では「この内容は少し不安だ」と感じていることがあります。

人事総務が見るべきなのは、運動メニューの正しさだけではありません。社員さんが安心して参加できる空気になっているか、断る自由や動きを小さくする選択肢があるかを確認する必要があります。

強制感のある運動が心理的負担になりやすい理由

運動が心理的負担になりやすい場面には、いくつかの共通点があります。

  • 参加しないと協調性がないように見える
  • 周囲の前で体力差が見えてしまう
  • できない動きがあることを言い出しにくい
  • 運動が苦手なのに、明るく参加することを求められる
  • 体調に不安があっても、途中で休みにくい

このような状況では、運動が健康支援ではなく、評価されているような時間に変わってしまいます。本人にとっては、体を動かすことよりも「周囲からどう見られるか」のほうが大きな負担になることがあります。

自己決定理論の研究では、運動を続けるうえで、自分で選べる感覚や納得感が重要だとされています。職場の運動支援でも、社員さんが「やらされている」と感じるか、「自分に合う形で試せる」と感じるかで、参加のしやすさは変わります。

高年齢社員には、体力差と自尊心への配慮が必要です

高年齢社員への運動支援で見落としやすいのが、自尊心への配慮です。

長く働いてきた社員さんほど、周囲に弱みを見せたくないことがあります。体力の低下や痛みがあっても、「迷惑をかけたくない」「年齢のせいだと思われたくない」と感じて、言い出せない場合があります。

そのような場で、全員一律の運動を行うと、本人は無理をして参加してしまうことがあります。無理をした結果、身体的な負担だけでなく、「できなかった」という気持ちが残ることもあります。

職場の健康支援では、年齢を理由に一方的に配慮するのではなく、選べる形を用意することが重要です。立って行う方法、座って行う方法、動きを小さくする方法、見学や休憩ができる形を最初から示しておくと、参加の心理的なハードルが下がります。

運動を嫌いにさせないために、人事総務が見るポイント

職場で運動支援を行うときは、参加率だけを見ると失敗しやすくなります。参加人数が多くても、社員さんが内心では負担を感じている場合があるからです。

人事総務の担当者は、次の点を確認しておくと安全です。

確認する点 見落としやすいリスク 職場でできる対応
参加の自由度 断りにくく、強制参加のように感じる 参加、見学、途中休憩を選べるようにする
運動強度 体力差が大きく、無理をする人が出る 低負荷の動きから始め、座位でもできる内容を入れる
周囲の目 できない姿を見られることが負担になる 競争や比較ではなく、自分の範囲で行う時間にする
声かけ 「頑張りましょう」が圧力になる 無理をしない、休んでよい、選んでよいと伝える
実施後の確認 楽しかった人の声だけで判断してしまう 負担感や参加しにくさも確認する

運動支援は、元気な社員さんをさらに元気にするだけでは不十分です。ふだん運動に前向きではない社員さんも、「これなら少しできそう」と思える設計にすることが大切です。

タニカワ久美子の企業研修で大切にしていること

タニカワ久美子の企業研修では、運動を「頑張る時間」として扱いません。特に高年齢社員を含む職場では、全員に同じ動きを求めるよりも、自分の体調に合わせて選べることを大切にしています。

研修の現場では、最初から笑顔で体を動かす社員さんもいます。一方で、腕を上げるだけでも周囲の目を気にしている社員さん、膝や腰に不安がありながら黙っている社員さんもいます。

そこで、タニカワ久美子の企業研修では、「立って行う方法」「座って行う方法」「小さな動きで行う方法」を同時に伝えます。社員さんが自分で選べるようにすると、運動が苦手な人も参加しやすくなります。

人事総務の担当者からも、座学だけではなく、全員で実際にできる軽い運動がある点を評価されています。健康支援で大切なのは、社員さんを動かすことではありません。安心して試せる場をつくることです。

運動を義務ではなく、参加しやすい機会に変える方法

職場の運動支援では、「全員参加」を目標にする前に、参加しやすさを整える必要があります。

たとえば、次のような工夫があります。

  • 最初から強い運動ではなく、呼吸、肩回し、軽いストレッチから始める
  • 座ったまま参加できる動きを入れる
  • 回数や速さを競わせない
  • 「できる範囲で大丈夫です」と最初に伝える
  • 途中で休んでも目立たない進行にする
  • 運動後に、感想を無理に発表させない

これだけでも、社員さんの受け止め方は変わります。運動が苦手な人にとっては、動きそのものよりも、「無理をしなくてよい」と分かることが安心につながります。

高年齢社員の運動支援は、健康経営の信頼にも関わります

健康経営では、社員の健康を守る施策が、社員にどう受け止められているかを見る必要があります。

運動支援が一方的に行われると、社員さんは「会社が健康を押しつけている」と感じることがあります。反対に、本人の体調や不安に配慮した形で行われると、「会社は無理をさせようとしているのではなく、働き続けるための支援をしている」と伝わりやすくなります。

高年齢社員にとって、運動支援は体力づくりだけではありません。自分の状態を否定されず、職場の中で安心して健康づくりに参加できるかどうかにも関わります。

人事総務が健康経営として運動支援を行うなら、参加率だけでなく、参加後の安心感、相談のしやすさ、継続のしやすさまで見ていくことが必要です。

まとめ:運動支援は、強制ではなく選べる形にする

運動は、心身の健康に役立つ可能性があります。しかし、職場での運動支援は、実施方法を間違えると心理的な負担になることがあります。

特に高年齢社員への支援では、体力差、持病、痛み、周囲の目、自尊心への配慮が欠かせません。全員に同じ動きを求めるよりも、本人が安心して選べる形にするほうが、健康経営として続きやすくなります。

人事総務の担当者は、「運動をさせる」ことを目的にするのではなく、「社員さんが無理なく参加できる健康支援になっているか」を見てください。強制感を減らし、選択肢を用意することが、職場の運動支援をストレス対策として活かす第一歩になります。

高年齢社員の運動支援を、無理なく参加しやすい健康経営施策にしたい人事総務の方へ。

けんこう総研では、社員の年齢構成、体力差、職場の雰囲気に合わせた健康経営フォローアップを行っています。研修後の行動変化や、現場で続けやすい健康支援の設計までご相談いただけます。

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参考文献

  • Singh, B., Olds, T., Curtis, R., et al. (2023). Effectiveness of physical activity interventions for improving depression, anxiety and distress: an overview of systematic reviews. British Journal of Sports Medicine.
  • Teixeira, P. J., Carraça, E. V., Markland, D., Silva, M. N., & Ryan, R. M. (2012). Exercise, physical activity, and self-determination theory: A systematic review. International Journal of Behavioral Nutrition and Physical Activity.

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