ラインケア・管理職支援
疲憊期(ひはいき)とは、ハンス・セリエの一般適応症候群で示された段階の一つです。
強いストレスや負荷が長く続き、心身の回復が追いつきにくくなった状態を考えるときに使われます。
ただし、職場で重要なのは「疲憊期」という用語を覚えることではありません。
社員が限界になるまで、働けてしまうことです。
「出勤している」
「成果も出している」
「本人が大丈夫と言っている」
「責任感が強いから任せられる」
こうした状態だけを見ていると、管理職は消耗の進行を見落とすことがあります。
このページでは疲憊期を、病気を判断するためではなく、まだ働けている社員に管理職がいつ声をかけ、業務を調整するかという職場支援の判断に置き換えて考えます。

疲憊期より前の「まだ働ける時期」が職場では見えにくい
セリエの一般適応症候群では、ストレスへの反応を警告反応期、抵抗期、疲憊期という流れで説明します。
| 段階 | 職場で考えると |
|---|---|
| 警告反応期 | 強い負荷への反応が表れ始める |
| 抵抗期 | 負荷があっても、何とか働き続けている |
| 疲憊期 | 回復が追いつかず、不調や業務への影響が表れやすくなる |
職場支援で特に見落としやすいのは抵抗期です。
タニカワ久美子の研修でも、人事総務や管理職から、
「いつも頑張る社員ほど急に休む」
「本人から何も言われなかった」
「仕事ができていたので大丈夫だと思った」
という声が出ます。
つまり、支援を遅らせているのは知識不足だけではありません。
“成果が出ていること”と“回復できていること”を分けて見る判断が、職場側にないことが問題になります。
管理職が見るのは「頑張り」ではなく変化です
| 見える変化 | 管理職が確認したいこと |
|---|---|
| 疲れが抜けない | 残業・休日対応・休憩不足が続いていないか |
| ミスや確認漏れが増えた | 注意不足と決めつけず、業務量と疲労を見る |
| 表情や会話量が変わった | 最近の負荷や困りごとを早めに確認する |
| 「大丈夫です」を繰り返す | 本人の申告だけで勤務継続を判断していないか |
| 仕事を抱え込み始めた | 優先順位・担当・期限を管理職側で調整できるか |
一つの変化だけで疲憊期を判断するものではありません。
職場で必要なのは診断ではなく、以前との変化に気づき、声をかけ、負荷を調整し、必要なら専門職へつなぐことです。
AIで疲憊期を理解した後、自社で実行する方が難しい
AIで調べれば、「慢性的なストレスでは回復が重要」「早期支援が必要」という情報はすぐ得られます。
しかし人事担当者が実際に会社で動かそうとすると、次の問題が残ります。
誰が最初に声をかけるのか。
どの変化を確認するのか。
いつ業務量を減らすのか。
本人が「大丈夫」と言ったとき、どこまで管理職が介入するのか。
人事・管理職・産業保健スタッフのどこへつなぐのか。
制度があっても、この判断が管理職ごとに違えば早期支援は動きません。
AIは疲憊期を説明できますが、御社の管理職が使う声かけと業務調整の判断まで職場に実装してくれるわけではありません。
まず、御社の管理職判断を確認してください
「頑張れている社員」をどの段階で支援するかが曖昧な企業向けに、けんこう総研では長時間労働・疲労時の管理職対応判断シートをご用意しています。
本人の自己申告だけに頼らず、勤務負荷・疲労の変化・声かけ・業務調整を管理職が判断できているか確認するための資料です。
長時間労働・疲労時の管理職対応判断シート
研修を検討する前に、御社で「誰が気づき、誰が声をかけ、どこで業務を調整するか」が決まっているか確認してください。
御社の場合、この状態なら管理職ラインケア研修で変えます
もし御社で、
・成果が出ている社員は問題ないと判断している
・本人から相談が来るまで管理職が動かない
・ミスや遅れを本人の注意不足として処理している
・管理職によって声かけや業務調整の判断が違う
のであれば、これは疲憊期についての知識不足だけの問題ではありません。
管理職が「気づく → 声をかける → 負荷を確認する → 業務を調整する → 必要な相談先へつなぐ」という行動を共通化できていない問題です。
タニカワ久美子の管理職ラインケア研修では、セリエ理論を説明して終わりません。
「まだ働けているから大丈夫」という管理から、変化を早く拾い、本人を責める前に業務負荷を調整できる管理へ変えます。
研修が引き受けるのは、知識提供ではなく、管理職が現場で迷う声かけ・業務調整・相談接続の判断を共通行動にすることです。
参考文献
- Selye, H. The Stress of Life. McGraw-Hill, 1956.
- Selye, H. The general adaptation syndrome and the diseases of adaptation. Journal of Clinical Endocrinology. 1946.
文責:タニカワ久美子
研修テーマが未定でも、対象者・職場状況・実施時期に合わせて整理します。