ランナーズハイとは|職場で見落とす疲労感と判断ミス

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ランナーズハイとは|職場で見落とす疲労感と判断ミス

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ランナーズハイとは|職場で見落とす疲労感と判断ミス

ランナーズハイとは、長時間のランニングや強い運動のあとに、苦しさが軽くなり、気分が高まったように感じる状態のことです。

走り始めは息が苦しく、足も重いのに、ある時点から「まだ走れる」「気分が軽い」「痛みを感じにくい」と感じることがあります。このような一時的な高揚感が、一般にランナーズハイと呼ばれています。

ランナーズハイは、「エンドルフィンが出るから気持ちよくなる」と説明されることが多い現象です。しかし実際には、エンドルフィンだけでなく、痛み、不安、報酬感、疲労感に関わる複数の脳内反応が関係していると考えられています。

大切なのは、ランナーズハイを単なる「よい気分」として扱わないことです。気分が高まっているからといって、身体の負荷や疲労が消えているわけではありません。むしろ、痛みや疲れを感じにくくなっている状態として見る必要があります。

この記事では、ランナーズハイの意味と科学的な仕組みを確認したうえで、職場で起こる過集中、疲労感の鈍化、判断ミスのリスクにどう活かせるかを見ていきます。人事総務・管理職が、長時間労働や夜勤明けの「元気そうに見える疲労」を見落とさないための記事です。

ランナーズハイに似た高揚感と職場の疲労感の見落としを示すイメージ画像
強い負荷のあとに感じる高揚感は、必ずしも好調のサインではありません。

ランナーズハイとは何か

ランナーズハイは、長距離走や持久運動のあとに起こる、一時的な高揚感や快感を伴う状態です。

走り始めは苦しさや疲労を感じていても、一定時間を超えると、痛みやつらさが軽くなり、気分が安定したり、爽快感が出たりすることがあります。

ただし、ランナーズハイは単なる「気分がよくなる現象」ではありません。身体に強い負荷がかかっている状況で、脳と身体がその負荷に対応しようとして起こす反応です。

この点を理解しないまま、ランナーズハイを「よい状態」とだけ捉えると、疲労や過負荷のサインを見落とす危険があります。

ランナーズハイはなぜ起こるのか

ランナーズハイには、運動中の痛み、不安、疲労感を調整する脳内の仕組みが関わります。

運動中は、筋肉、心肺機能、呼吸、体温調節、痛みの感覚、集中力が同時に働きます。身体にとっては高い負荷がかかっている状態です。

その負荷を乗り切るために、脳は痛みや不快感をやわらげ、行動を続けやすくする反応を起こします。この反応に関わる代表的な仕組みが、内因性オピオイド系とエンドカンナビノイド系です。

エンドルフィンとの関係

ランナーズハイは、長い間エンドルフィンによって説明されてきました。

エンドルフィンは、痛みをやわらげる働きに関係する体内物質です。強い運動のあとに痛みを感じにくくなったり、気分が高まったように感じたりする反応には、この仕組みが関係していると考えられています。

ただし、ランナーズハイをエンドルフィンだけで説明するのは不十分です。

エンドカンナビノイド系との関係

近年は、ランナーズハイにエンドカンナビノイド系も関わる可能性が重視されています。

エンドカンナビノイドは、気分、不安、痛み、報酬感などに関係する体内物質です。強い運動のあとに、気分が軽くなったり、不安がやわらいだり、痛みを感じにくくなったりする反応に関係すると考えられています。

つまり、ランナーズハイは「エンドルフィンだけで起こる気分の高まり」ではなく、複数の脳内反応が重なって起こる状態として理解するほうが正確です。

ランナーズハイは良いストレスなのか

ランナーズハイは、ストレス反応が必ずしも悪いものではないことを考えるうえで、わかりやすい現象です。

一定の負荷によって集中力が高まり、気分が前向きになり、達成感につながることがあります。

しかし、ランナーズハイをそのまま「良いストレス」と判断するのは危険です。

良いストレスであるユーストレスは、負荷のあとに回復があり、行動の質や成長につながる状態です。一方で、疲労や睡眠不足が重なったまま高揚感だけが続いている場合は、本人が元気に見えても、判断力や注意力が低下している可能性があります。

つまり、ランナーズハイはユーストレスを説明する入口にはなりますが、ユーストレスそのものではありません。重要なのは、高揚感ではなく、負荷と回復のバランスです。

ランナーズハイの危険性

ランナーズハイで注意したいのは、痛みや疲労を感じにくくなることです。

「まだ走れる」「痛くない」「調子がよい」と感じていても、身体には負荷がかかり続けています。そのまま無理を続けると、けが、脱水、過労、回復不足につながる可能性があります。

ランナーズハイは、本人にとって気持ちのよい体験になることがあります。しかし、気分がよいことと、身体が安全な状態であることは同じではありません。

運動でも仕事でも、強い負荷のあとは、休息、水分補給、睡眠、身体の違和感の確認が必要です。

徹夜明けや高負荷業務後の高揚感とは違うのか

徹夜明け、夜勤明け、長時間の集中作業のあとに、「眠っていないのに妙に元気」「頭が冴えている」「まだ動けそう」と感じることがあります。

この状態は、感覚としてはランナーズハイに似ています。

しかし、運動によるランナーズハイと、徹夜明けや高負荷業務後の高揚感を同じものとして扱うのは適切ではありません。

徹夜明けや夜勤明けでは、睡眠不足、疲労、緊張、ストレスが重なっています。本人は「調子がよい」と感じていても、注意力、反応速度、記憶、判断力が低下していることがあります。

そのため、職場では「元気そうに見える」ことを安心材料にしてはいけません。むしろ、疲労を感じにくくなっている状態として、慎重に見る必要があります。

職場で問題になるのは高揚感より判断ミス

企業、医療・介護施設、教育機関、運輸、製造、警備、情報システム対応などでは、疲労した状態での判断ミスが、事故、クレーム、確認漏れ、対人トラブルにつながることがあります。

特に注意すべきなのは、疲れている人が必ずしも「疲れて見える」とは限らない点です。

高負荷業務のあとにテンションが高い、話し方が早い、休憩を取ろうとしない、判断が速く見える。このような状態は、一見すると前向きに見えます。しかし、実際には疲労感が鈍り、確認力やリスク判断が低下している場合があります。

管理職や人事総務は、次のような視点を持つ必要があります。

  • 夜勤明けや徹夜明けの社員に重要判断を集中させていないか
  • 高揚感や過集中を「やる気」とだけ評価していないか
  • 疲労を申告しにくい職場になっていないか
  • 休憩、交代、確認体制が本人任せになっていないか
  • 管理職が疲労サインを見極める知識を持っているか

ランナーズハイの科学的理解は、職場のストレス管理や疲労管理にも応用できます。ただし、その目的は社員に無理をさせることではありません。高揚感の裏にある疲労や判断力低下を見落とさないために使う知識です。

ユーストレスとランナーズハイの違い

ランナーズハイは、ユーストレスを理解するうえで参考になる現象です。しかし、ランナーズハイそのものをユーストレスと同じ意味で使うべきではありません。

ユーストレスは、成長、達成、集中、前向きな行動につながる良性のストレス反応を指します。

一方で、ランナーズハイは、強い運動や負荷のあとに起こる一時的な高揚感や痛みの感じにくさを含む反応です。

つまり、ランナーズハイは「ストレス反応が必ずしも悪いものではない」ことを説明する具体例にはなります。しかし、睡眠不足や過労を背景にした高揚感までユーストレスと見なすと、疲労やリスクの見落としにつながります。

ユーストレスとディストレスの違いについては、ユーストレス(良性ストレス)とは|職場で活かすストレス資源の全体像で紹介しています。

人事総務・管理職が確認したいこと

人事総務、管理職、健康経営担当者がこのテーマを読む場合、重要なのは「ランナーズハイという現象そのもの」だけではありません。

職場で次のような状態を見落としていないかを確認することが大切です。

職場で見える状態 見落としやすいリスク 管理職が確認したいこと
夜勤・交代勤務後に元気そうに見える 疲労感の鈍化、判断力低下 重要判断や単独対応を任せすぎていないか
長時間労働後にテンションが高い 過集中、確認漏れ、反応の遅れ 休憩・交代・ダブルチェックがあるか
クレーム対応後に休まず次の業務へ入る 感情疲労、対人反応の悪化 短い回復時間を確保できているか
本人が「大丈夫です」と言い続ける 疲労申告のしにくさ、抱え込み 相談しやすい雰囲気があるか

ランナーズハイに似た高揚感を理解することは、社員のメンタルヘルスだけでなく、安全配慮、管理職教育、ストレスマネジメント研修の設計にも関わります。

夜勤・交代勤務・長時間労働・感情労働など、疲労と判断ミスが重なりやすい職場では、個人の努力だけでなく、管理職が疲労サインを見極める教育が必要です。

タニカワ久美子の企業研修での扱い方

タニカワ久美子の企業研修では、ランナーズハイをスポーツの雑学として扱いません。強い負荷のあとに気分が高まること、痛みや疲労を感じにくくなることを、職場の過集中や疲労感の鈍化に置き換えて説明します。

研修の現場では、「本人は元気そうに見えるが、ミスが増えている」「夜勤明けに大事な判断を任せていた」「クレーム対応後に休ませる発想がなかった」という相談が出ることがあります。

そのため、けんこう総研では、社員のやる気や元気そうな様子だけで判断しません。勤務時間、睡眠、疲労サイン、休憩の取り方、確認体制を一緒に見て、管理職が早めに声をかけられる状態をつくります。

けんこう総研が大切にしている考え方

けんこう総研では、ストレスを「悪いもの」と決めつけるのではなく、働く人が無理なく回復し、前向きに働き続けるための力として考えます。

ただし、ランナーズハイのような高揚感を、無条件によい状態とは考えません。大切なのは、負荷のあとに十分な回復があるか、判断ミスを防ぐ仕組みがあるか、管理職が疲労のサインに気づけるかです。

職場で必要なのは、社員にさらに頑張らせることではありません。疲労感が鈍っているときにも、休憩・交代・確認を入れられる仕組みです。

まとめ|ランナーズハイは職場の疲労管理を考える手がかりになる

ランナーズハイは、長時間の運動や強い負荷のあとに起こる、一時的な高揚感や痛みの感じにくさを含む反応です。

その背景には、エンドルフィンなどの内因性オピオイド系だけでなく、エンドカンナビノイド系を含む複数の脳内反応が関わると考えられています。

この現象は、ストレスが常に悪いものではないことを理解する手がかりになります。しかし、徹夜明け、夜勤明け、長時間労働後の高揚感まで、安易によい反応として扱うべきではありません。

職場で重要なのは、社員が「元気そうに見えるか」ではなく、負荷と回復のバランスが保たれているか、判断ミスを防ぐ体制があるか、管理職が疲労サインを見極められるかです。

けんこう総研では、ユーストレスとディストレスの考え方をもとに、管理職が部下の疲労サインに気づき、必要な声かけと職場改善につなげるラインケア研修を行っています。


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参考文献

文責:タニカワ久美子

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