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元気そうな疲労を見落とさない職場対応|高揚感と判断ミス予防

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ユーストレス(良性ストレス)

元気そうな疲労を見落とさない職場対応|高揚感と判断ミス予防

「本人は元気そうに見えるのに、確認漏れが増えている」

「夜勤明けや長時間対応後なのに、本人が“大丈夫です”と言い続けている」

「テンションが高く、やる気があるように見えるので、管理職も止めにくい」

人事総務・健康経営担当者として、このような場面に心当たりはありませんか。

職場では、疲れている社員が必ずしも疲れて見えるとは限りません。

むしろ、強い負荷のあとに一時的に気分が高まり、「まだできます」「今なら一気に終わります」と言い続けることがあります。

このような状態を、この記事では元気そうな疲労として扱います。

ランナーズハイは、長時間のランニングや強い運動のあとに、苦しさが軽くなり、気分が高まったように感じる状態として知られています。

この言葉はスポーツの話として使われることが多いのですが、職場の疲労を考える入口にもなります。

強い負荷のあとに「元気そうに見える」「まだできそうに見える」「本人も大丈夫と言っている」という場面では、気分の高まりと回復を分けて見ることが大切です。

人事総務・管理職が見たいのは、「元気そうかどうか」だけではありません。

疲労感が鈍っていないか。判断ミスが起こりやすくなっていないか。休憩や交代が本人任せになっていないか。

ここを見ておくことで、長時間労働、夜勤・交代勤務、クレーム対応、システム障害対応、介護・教育現場の感情労働などで起こる疲労サインを拾いやすくなります。

元気そうに見える疲労と職場の判断ミスリスクを示すイメージ画像
元気そうに見える状態でも、疲労感が鈍り、確認力や判断力が落ちていることがあります。

元気そうに見える疲労が、職場で見落とされやすい理由

疲労というと、表情が暗い、口数が少ない、動きが遅いという姿を想像しやすいかもしれません。

けれども、実際の職場では逆の見え方をすることがあります。

長時間対応のあとに話し方が早くなる。夜勤明けに妙に明るくふるまう。クレーム対応後に休まず次の業務へ入る。締切前に「大丈夫です」と言い続ける。

このような状態は、一見すると前向きに見えます。

管理職も、「本人がやる気だから」「まだ動けそうだから」と受け止めやすくなります。

しかし、気分が高まっていることと、身体や脳が回復していることは同じではありません。

疲労感が鈍っていると、本人も自分の限界に気づきにくくなります。

周囲も「元気そうだから大丈夫」と判断しやすくなります。

ここに、職場で疲労サインが見落とされる理由があります。

ランナーズハイを、職場の疲労サインを考える入口にする

ランナーズハイは、長距離走や持久運動のあとに起こる、一時的な高揚感や快感を伴う状態です。

走り始めは苦しさや疲労を感じていても、一定時間を超えると、痛みやつらさが軽くなり、気分が安定したり、爽快感が出たりすることがあります。

ただ、ここで大切なのは、ランナーズハイを「気分がよい現象」とだけ見ないことです。

身体には強い負荷がかかっています。

その負荷に対応するために、脳や身体が痛みや不快感をやわらげ、行動を続けやすくしている面があります。

職場でも似た見落としが起こります。

長時間対応後の社員が元気そうに見える。夜勤明けの職員が明るく話している。締切前に社員が「まだできます」と言い続けている。

その姿だけを見ると、やる気があるように見えます。

でも、職場で見たいのは、その人が本当に回復しているかどうかです。

気分の高まりと、回復している状態は分けて考えます

ランナーズハイには、運動中の痛み、不安、疲労感を調整する脳内の仕組みが関わります。

運動中は、筋肉、心肺機能、呼吸、体温調節、痛みの感覚、集中力が同時に働きます。

身体にとっては高い負荷がかかっている状態です。

その負荷を乗り切るために、脳は痛みや不快感をやわらげ、行動を続けやすくする反応を起こします。

代表的には、内因性オピオイド系やエンドカンナビノイド系が関係すると考えられています。

この仕組みは、ランナーズハイを理解するうえでは大切です。

ただし、人事総務・管理職が職場で使うときは、脳内物質の名前を覚えることが目的ではありません。

使いたい視点は、もっと実務的です。

気分が高まっているからといって、疲労が回復しているとは限らない。

この見方を持てると、元気そうに見える社員の疲労サインを見落としにくくなります。

「まだできます」が続くときに見たい職場サイン

高負荷のあとに「まだできます」「大丈夫です」と言う社員がいると、管理職は止める判断をしにくくなります。

本人も本当にそう感じていることがあります。

ただ、その言葉だけで安心するのは危うい場合があります。

本人や周囲に見える状態 隠れているかもしれないこと 職場で見たいこと
元気そうに話している 疲労感が鈍っている 勤務時間、睡眠、休憩状況を確認する
まだできると言い続ける 切り上げ判断がしにくくなっている 管理職が終了や交代の合図を出せているか見る
判断が速く見える 確認が浅くなっている 重要判断を一人に任せすぎていないか見る
休憩を取ろうとしない 回復不足が続いている 短い休憩や交代を入れられるか見る
翌日にミスややり直しが出る 前日の高負荷が影響している 翌日の業務品質まで含めて見る

気分がよいことと、安全に働ける状態であることは同じではありません。

運動でも仕事でも、強い負荷のあとは、休息、水分補給、睡眠、身体の違和感の確認が大切になります。

徹夜明けや夜勤明けの高揚感は、好調のサインとは限りません

徹夜明け、夜勤明け、長時間の集中作業のあとに、「眠っていないのに妙に元気」「頭が冴えている」「まだ動けそう」と感じることがあります。

この状態は、感覚としてはランナーズハイに似ています。

ただし、運動によるランナーズハイと、徹夜明けや高負荷業務後の高揚感を同じように扱うと、職場では危うくなります。

徹夜明けや夜勤明けでは、睡眠不足、疲労、緊張、ストレスが重なっています。

本人は「調子がよい」と感じていても、注意力、反応速度、記憶、判断力が落ちていることがあります。

人事総務・管理職としては、「元気そうに見える」ことを安心材料にしすぎないことです。

むしろ、疲労を感じにくくなっている状態かもしれない、と見ておく方が安全です。

職場で問題になるのは、高揚感そのものより判断ミスです

企業、医療・介護施設、教育機関、運輸、製造、警備、情報システム対応などでは、疲労した状態での判断ミスが、事故、クレーム、確認漏れ、対人トラブルにつながることがあります。

特に注意したいのは、疲れている人が必ずしも「疲れて見える」とは限らない点です。

高負荷業務のあとにテンションが高い。話し方が早い。休憩を取ろうとしない。判断が速く見える。

このような状態は、一見すると前向きに見えます。

しかし、実際には疲労感が鈍り、確認力やリスク判断が落ちている場合があります。

職場で見える場面 担当者が見落としやすいこと 管理職が持ちたい対応
夜勤明けや徹夜明けの社員に重要判断が集まっている 元気そうでも判断力が落ちている可能性 重要判断を一人に任せすぎない
高揚感や過集中を「やる気」とだけ見ている 休憩不足や確認漏れが隠れている可能性 短い休憩と確認工程を入れる
疲労を申告しにくい雰囲気がある 「大丈夫です」と言わせる空気 管理職側から切り上げや交代を提案する
休憩・交代・確認体制が本人任せになっている 本人が止め時を判断できない可能性 職場側で交代基準を持つ
管理職が疲労サインを学ぶ機会がない 高揚感と疲労の違いを見分けにくい ラインケア研修で疲労サインを扱う

ランナーズハイの知識は、社員に無理をさせるためのものではありません。

高揚感の裏にある疲労や判断力低下を見落とさないために使う知識です。

ユーストレスと混同しやすいところ

ランナーズハイは、ユーストレスを考えるときの身近な入口になります。

ただし、ランナーズハイそのものをユーストレスと同じ意味で使わない方が安全です。

ユーストレスは、成長、達成、集中、前向きな行動につながる良性のストレス反応を指します。

一方で、ランナーズハイは、強い運動や負荷のあとに起こる一時的な高揚感や痛みの感じにくさを含む反応です。

つまり、ランナーズハイは「ストレス反応が必ずしも悪いものではない」と知る具体例にはなります。

けれども、睡眠不足や過労を背景にした高揚感までユーストレスと見なすと、疲労やリスクの見落としにつながります。

ユーストレスとディストレスの違いについては、ユーストレス(良性ストレス)とは|職場で活かすストレス資源の全体像で紹介しています。

人事総務・管理職が自社で見直しやすい場面

このテーマで大切なのは、ランナーズハイという言葉を覚えることではありません。

自分の職場で、元気そうな疲労を見落としていないかを考えることです。

職場で見える状態 隠れているかもしれないリスク 管理職が見直したいこと
夜勤・交代勤務後に元気そうに見える 疲労感の鈍化、判断力低下 重要判断や単独対応を任せすぎていないか
長時間労働後にテンションが高い 過集中、確認漏れ、反応の遅れ 休憩・交代・ダブルチェックがあるか
クレーム対応後に休まず次の業務へ入る 感情疲労、対人反応の悪化 短い回復時間を確保できているか
本人が「大丈夫です」と言い続ける 疲労申告のしにくさ、抱え込み 相談しやすい雰囲気があるか
翌日以降にミスややり直しが増える 高負荷後の回復不足 当日だけでなく翌日の状態も見ているか

夜勤・交代勤務・長時間労働・感情労働など、疲労と判断ミスが重なりやすい職場では、個人の努力だけでは限界があります。

管理職が疲労サインに気づけること、休憩や交代を本人任せにしないこと、重要判断を分散することが、職場の安全配慮につながります。

専門職でも迷うポイント

元気そうな疲労は、専門職でも判断に迷うことがあります。

理由は、本人の訴えと身体の状態がずれて見えるからです。

本人は「大丈夫です」と言います。周囲から見ても、明るく話しているように見えます。管理職も、本人の意欲を止めてよいのか迷います。

けれども、確認漏れが増えている、反応が遅い、判断が雑になっている、休憩を取ろうとしない、翌日に疲労が強く出ている場合は、好調とは言い切れません。

専門職でも迷うのは、疲労が必ずしも「疲れた顔」で現れないからです。

だからこそ、勤務時間、睡眠、休憩、業務品質、翌日の状態まで合わせて見ることが大切になります。

社内で動かしにくい理由

元気そうな疲労を職場で扱うときに難しいのは、本人、管理職、人事総務で見ているものが違うことです。

本人は「まだできます」と感じています。

管理職は「やる気がある」「助かる」と受け止めます。

人事総務は、残業時間やストレスチェックの結果で把握しようとします。

専門職は、睡眠不足、疲労蓄積、判断力低下のリスクを見ます。

それぞれの見方は間違いではありません。

ただ、同じ場面を別の言葉で見ていると、職場改善に進みにくくなります。

たとえば、本人の「大丈夫です」を尊重した結果、休憩や交代が入らないことがあります。

管理職の「助かる」という受け止めが、本人の疲労申告をさらに言いにくくしていることもあります。

ここをそろえるには、疲労感の鈍化、過集中、判断ミス、回復不足を、職場で話せる言葉にしておくことが役立ちます。

タニカワ久美子の企業研修での伝え方

タニカワ久美子の企業研修では、ランナーズハイをスポーツの雑学として終わらせません。

強い負荷のあとに気分が高まること、痛みや疲労を感じにくくなることを、職場の過集中や疲労感の鈍化に置き換えて伝えます。

研修の現場では、「本人は元気そうに見えるが、ミスが増えている」「夜勤明けに大事な判断を任せていた」「クレーム対応後に休ませる発想がなかった」という相談が出ることがあります。

管理職からは、「元気そうに見えたので止めなかった」「本人の“大丈夫です”をそのまま受け取っていた」という反応が出ることがあります。

一方で、社員側からは「休みたいと言いにくい」「自分が止めると迷惑がかかると思った」「テンションが高い時ほど疲れに気づかなかった」という声が出ることがあります。

このズレは、資料だけでは見えにくいものです。

研修では、社員を責めるのではなく、勤務時間、睡眠、疲労サイン、休憩の取り方、確認体制を一緒に見ます。

そのうえで、管理職が「大丈夫?」で終わらせず、休憩・交代・確認を入れられる声かけを扱います。

よくある声かけ 現場で起きやすいこと 研修でそろえたい声かけ
大丈夫? 「大丈夫です」で終わる ここで10分休憩を入れて、次の判断は一緒に確認しましょう
まだいけそう? 本人が引き受け続ける ここから先は交代し、記録だけ引き継ぎましょう
助かるよ 止まりにくくなる 助かっています。だからこそ、次の確認は二人で見ましょう
元気そうだね 疲労申告がしにくくなる 元気そうに見えても、長時間対応後なので休憩を先に入れましょう

このように、声かけを「励まし」だけで終わらせず、休憩、交代、確認、引き継ぎに接続していきます。

けんこう総研が大切にしている考え方

けんこう総研では、ストレスをすべて悪いものとは考えません。

働く人が無理なく回復し、前向きに働き続けるための力として見ることも大切にしています。

ただし、元気そうに見える高揚感を、無条件によい状態とは見ません。

大切なのは、負荷のあとに回復があるか、判断ミスを防ぐ仕組みがあるか、管理職が疲労のサインに気づけるかです。

職場で必要なのは、社員にさらに頑張らせることではありません。

疲労感が鈍っている時にも、休憩・交代・確認を入れられる仕組みです。

まとめ|元気そうに見える疲労は、職場の判断ミス予防につながります

ランナーズハイは、長時間の運動や強い負荷のあとに起こる、一時的な高揚感や痛みの感じにくさを含む反応です。

この現象は、ストレスが常に悪いものではないことを知る手がかりになります。

一方で、徹夜明け、夜勤明け、長時間労働後の高揚感まで、安易によい反応として見ると危うくなります。

職場で大切なのは、社員が「元気そうに見えるか」だけではありません。

負荷と回復のバランスが保たれているか、判断ミスを防ぐ体制があるか、管理職が疲労サインを見極められるかです。

元気そうな疲労を見落とさない職場では、本人の「大丈夫です」だけに頼りません。

休憩、交代、ダブルチェック、翌日の状態確認まで含めて、疲労を職場で扱える形にしていきます。

元気そうに見える疲労を、管理職研修で見落とさないために

けんこう総研では、ユーストレスとディストレスの考え方をもとに、管理職が部下の疲労サインに気づき、必要な声かけと職場改善につなげるラインケア研修を行っています。

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参考文献

文責:タニカワ久美子

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