健康経営
出社回帰と在宅勤務のストレス支援|人事総務が見るサイン
出社回帰が進む一方で、在宅勤務やハイブリッドワークを続けている職場もあります。
人事総務から見ると、働き方の選択肢が増えたように見えても、社員の中には「出社が負担」「在宅だと孤立する」「どちらの働き方でも疲れが抜けない」と感じている人がいます。
出社している社員は見えやすく、在宅勤務の社員は見えにくい。そう思われがちですが、実際にはどちらの働き方にも、周囲が気づきにくいストレスがあります。
この記事では、人事総務・健康経営担当者に向けて、出社回帰と在宅勤務が混在する職場で見落としやすいストレスと、働き方支援の考え方を紹介します。

出社回帰で見えやすくなるストレス、見えにくくなるストレス
出社回帰によって、職場のコミュニケーションが戻りやすくなる面があります。
顔を合わせて話せる、ちょっとした相談がしやすい、新人や若手の様子が見えやすい。こうした利点はあります。
一方で、出社が増えることで新たな負担が出る社員もいます。
| 出社回帰で起こりやすい負担 | 職場で見えやすいサイン | 人事総務が確認したいこと |
|---|---|---|
| 通勤疲労が戻る | 出社日の朝から疲れて見える | 通勤時間、出社頻度、休憩の取り方に無理がないか |
| 周囲の音や人の多さで疲れる | 集中しにくい、表情が硬い | 作業場所や集中できる時間が確保されているか |
| 対面の雑談や空気読みが負担になる | 会話後に疲れた様子がある | 対人負担が一部の社員に偏っていないか |
| 家庭や介護との両立が難しくなる | 遅刻・早退・休暇相談が増える | 働き方の選択肢が実際に使える状態か |
| 出社社員と在宅社員で情報差が出る | 「聞いていない」「知らなかった」が増える | 出社時の雑談情報が共有されているか |
出社そのものが悪いわけではありません。
大切なのは、出社回帰を「元に戻すこと」と考えず、今の社員の状態に合った働き方へ調整していくことです。
在宅勤務が続く社員にもストレスはある
在宅勤務は、通勤負担を減らし、集中しやすい環境を作れる場合があります。
しかし、在宅勤務にも見えにくいストレスがあります。
| 在宅勤務で起こりやすい負担 | 職場で見えにくい理由 | 人事総務が確認したいこと |
|---|---|---|
| 仕事と生活の切り替えが難しい | 勤務終了後の疲労が見えない | 勤務時間外の連絡や業務の持ち越しがないか |
| 相談のタイミングを逃しやすい | 雑談や声かけが減る | オンラインでも早めに相談できる入口があるか |
| 孤立感が出やすい | 画面越しでは表情の変化が分かりにくい | 会議以外のつながりや確認の場があるか |
| 成果だけで見られているように感じる | 働いている過程が見えにくい | 評価が成果物だけに偏っていないか |
| 長時間座りっぱなしになりやすい | 周囲が休憩状況に気づけない | 休憩、姿勢、軽い運動の機会があるか |
在宅勤務の社員は、画面越しでは元気に見えることがあります。
しかし、実際には疲労、不安、孤立感を抱えていても、表情や会話量の変化が周囲に届きにくくなります。
健康経営では、出社している社員だけでなく、在宅勤務の社員の状態も合わせて見る必要があります。
ハイブリッドワークで起こる情報差と不公平感
出社回帰と在宅勤務が混在する職場では、出社している社員と在宅勤務の社員の間で、情報や感覚のズレが生まれやすくなります。
| 起こりやすいズレ | 職場での見え方 | 人事総務が確認したいこと |
|---|---|---|
| 情報のズレ | 出社組だけが先に情報を知る | 会議外の情報共有が偏っていないか |
| 評価のズレ | 出社している人の方が頑張って見える | 働きぶりを勤務場所だけで判断していないか |
| 相談のズレ | 在宅勤務者が相談を後回しにする | オンラインでも相談しやすい入口があるか |
| 疲労のズレ | 出社社員は通勤疲労、在宅社員は孤立感を抱える | 働き方ごとの負担を分けて見ているか |
| 管理職負担のズレ | 出社組と在宅組の両方を見なければならない | 管理職が一人で調整を抱えていないか |
このズレを放置すると、不公平感や相談しにくさが強くなります。
健康経営では、どちらの働き方が正しいかを決めるよりも、働き方の違いで支援が届かなくなる場所を見つけることが重要です。
勤怠データだけで社員の状態を判断しない
勤怠データ、アンケート、面談記録、ストレスチェック結果などを使うことで、職場の状態を確認しやすくなることがあります。
ただし、データは最終判断そのものではありません。
たとえば、在宅勤務の社員の稼働時間やアンケート結果だけを見て、「問題ない」と判断するのは危険です。
データに表れにくい疲労、孤立感、相談しにくさもあります。
人事総務が見たいのは、数字だけではありません。
| 確認したい情報 | 見る理由 |
|---|---|
| 本人の言葉 | 疲労感や不安は、数値だけでは分かりにくいため |
| 管理職の気づき | 日々の変化に最初に気づきやすいため |
| 勤務状況 | 残業、休憩、出社頻度、在宅日数の偏りを見るため |
| 会議での発言量 | 孤立や相談しにくさのサインになることがあるため |
| 相談件数 | 相談しやすい状態か、相談が止まっている状態かを見るため |
| 仕事量の偏り | 出社社員や管理職に負担が寄っていないかを見るため |
| 休憩や休暇の取りやすさ | 回復できる働き方になっているかを見るため |
データは、職場の状態を考えるための材料です。
最終的には、社員の声と職場の実情を合わせて判断する必要があります。
人事総務が確認したい働き方支援のポイント
出社回帰と在宅勤務が混在する職場では、人事総務が確認したいポイントがあります。
| 確認項目 | 見るべき理由 |
|---|---|
| 出社日が増えたことで通勤疲労や家庭負担が強くなっていないか | 出社回帰が一部の社員に過度な負担になることがあるため |
| 在宅勤務者が孤立していないか | 会話量や相談機会が減り、不調が見えにくくなるため |
| 出社組と在宅組で情報共有に差が出ていないか | 不公平感や誤解につながるため |
| 管理職が部下の状態を見にくくなっていないか | 出社社員と在宅社員の両方を支える負担が増えるため |
| ストレスチェック後の対応を働き方別に見ているか | 出社・在宅でストレスの出方が違うため |
| 相談窓口が出社社員にも在宅社員にも使いやすいか | 勤務場所によって支援へのアクセスに差が出るため |
| 働き方の違いが評価や昇進の不公平感につながっていないか | 勤務場所が評価印象に影響しやすいため |
働き方の見直しは、制度を作るだけでは足りません。
社員が実際に安心して相談できるか、管理職が変化に気づけるか、人事総務が支援につなげられるかを合わせて見る必要があります。
管理職が見落としやすいサイン
この記事の主語は働き方支援ですが、現場の変化に最初に気づきやすいのは管理職です。
出社回帰や在宅勤務の中で、管理職が見落としやすいサインがあります。
| 見落としやすいサイン | 考えられる背景 | 管理職が確認したいこと |
|---|---|---|
| オンライン会議で発言が減った | 孤立感、不安、相談しにくさがある | 会議外で話せる機会があるか |
| 出社日に表情が硬い | 通勤疲労や対人負担がある | 出社頻度や業務量に無理がないか |
| 在宅勤務中の報告が遅れがちになった | 仕事量の偏りや相談遅れがある | 一人で抱え込んでいないか |
| 出社後に疲労感が強く見える | 出社そのものが負担になっている | 通勤・家庭事情・休憩状況を確認する |
| 勤務場所によって仕事量が偏っている | 出社社員に急な対応が集中している | 業務配分が公平かどうかを見る |
| 相談が減り、チャットだけで済ませるようになった | 話すきっかけがなくなっている | 短い面談や雑談の入口を作る |
| 休暇を取りにくそうにしている | 人手不足や遠慮がある | 休みやすさを管理職側から確認する |
管理職に必要なのは、勤務場所だけで社員を判断しないことです。
出社しているから元気、在宅だから楽、という見方は避ける必要があります。
出社回帰と在宅勤務の健康支援でよくある失敗
出社回帰やハイブリッドワークの健康経営では、よかれと思った対応が社員の負担になることがあります。
| よくある失敗 | なぜ問題か | 見直したい対応 |
|---|---|---|
| 出社を増やせば一体感が戻ると考える | 通勤疲労や家庭負担を見落とす | 出社目的と社員の負担を合わせて確認する |
| 在宅勤務は楽だと考える | 孤立感や相談しにくさを見落とす | 在宅勤務者の声と勤務状況を確認する |
| データだけで判断する | 数字に出ないストレスを見逃す | 本人の声、管理職の気づき、職場の実情を合わせて見る |
| 管理職に調整を任せきる | 管理職自身が疲弊する | 人事総務が相談先と判断基準を用意する |
| 全社員に同じ働き方を求める | 職種や家庭状況による違いを見落とす | 業務内容、役割、負担に応じて見直す |
働き方の正解は、会社ごと、職種ごと、社員の状況ごとに異なります。
人事総務は、制度の公平性だけでなく、社員が安心して働けるかどうかも見ていく必要があります。
タニカワ久美子の企業研修で伝えていること
タニカワ久美子の企業研修では、出社回帰や在宅勤務を「どちらが良いか」という二択で扱いません。
研修の現場では、人事総務の担当者から「出社を増やしたら社員の様子が見えるようになった一方で、疲れている社員も増えた」という相談を受けることがあります。
また、管理職からは「在宅勤務の部下の不調に気づきにくい」「オンラインでは雑談が少なく、相談のきっかけを作りにくい」という声が出ることもあります。
そのため研修では、勤務場所ではなく、社員の変化を見ることを重視します。
たとえば、発言量、相談の頻度、仕事量の偏り、疲労感、休み方などを確認し、出社社員にも在宅社員にも支援が届くように考えます。
健康経営では、働き方の制度を整えるだけでなく、社員が不安や疲労を早めに話せる状態を作ることが大切です。
働き方の変化を健康経営の視点で見る
出社回帰と在宅勤務が混在する職場では、社員のストレスの出方も変わります。
出社による通勤疲労や対人負担、在宅勤務による孤立感や相談しにくさ、ハイブリッドワークによる情報差や評価不安が起こることがあります。
人事総務・健康経営担当者は、働き方の制度だけでなく、社員の声、管理職の気づき、勤務状況、相談しやすさを合わせて見る必要があります。
勤怠データやアンケートは便利な材料ですが、社員の状態を決めつけるものではありません。
働き方の変化を健康経営として扱うには、社員を一人にせず、管理職と人事総務が早めに気づき、支援につなげる流れが必要です。
出社回帰と在宅勤務が混在する職場を、健康経営として見直したい方へ
けんこう総研では、働き方の変化で見えにくくなった社員のストレスを、人事総務が健康経営として支えられるようフォローアップを行っています。