デスクワーカーの健康支援
在宅勤務の姿勢とメンタルヘルス|デスクワーカーの健康支援
在宅勤務が続くと、仕事と休憩の切り替えがあいまいになり、座りっぱなしの時間が長くなりやすくなります。通勤や移動が減ることで体を動かす機会も少なくなり、前かがみの姿勢が続くと、肩こりや腰痛だけでなく、気分の落ち込みや集中力の低下につながることがあります。
このデスクワーカーの健康支援カテゴリーでは、在宅勤務中の姿勢とメンタルヘルスの関係を見直します。同じデスクワーカー対策でも、本記事はオフィス環境の椅子や机の選び方ではなく、在宅勤務で起こりやすい前かがみ姿勢と身体不活動に注目します。人事総務・健康経営担当者が、在宅勤務者への声かけや研修設計に活かせる視点で見ていきます。
在宅勤務で前かがみ姿勢が続きやすい理由
在宅勤務には、通勤時間が減る、家庭の予定と仕事を調整しやすい、自分のペースで作業しやすいという利点があります。一方で、仕事の始まりと終わりが見えにくくなり、気づかないうちに長時間座り続けてしまうことがあります。
自宅の机や椅子は、長時間の仕事を前提に作られていない場合があります。ノートパソコンを低い位置で使い続けると、頭が前に出て、背中が丸まり、胸が閉じた姿勢になりやすくなります。この姿勢が毎日続くと、体の疲れだけでなく、呼吸の浅さや気分の重さを感じる社員さんも出てきます。
人事総務の担当者から見ると、在宅勤務中の不調は見えにくいものです。本人も「少し疲れているだけ」「運動不足かもしれない」と受け止め、相談が遅れることがあります。だからこそ、在宅勤務者への健康支援では、メンタルヘルスだけを切り離して考えるのではなく、座り方、休憩、身体活動を合わせて見る必要があります。
座りっぱなしとNEAT低下が心身に与える影響
在宅勤務で見落とされやすいのが、NEATの低下です。NEATとは、運動として行うトレーニング以外の日常的な身体活動のことです。通勤で歩く、階段を使う、会議室へ移動する、昼食を買いに外へ出るといった小さな動きも、体の調子を保つうえで大切な活動です。
在宅勤務では、この小さな動きが一気に減ります。朝から夕方まで同じ椅子に座り、休憩中もスマートフォンを見るだけで終わってしまうと、体を起こす機会が少なくなります。体を動かさない時間が長くなるほど、肩や背中のこわばり、腰の重さ、眠気、集中力の低下が起こりやすくなります。
ここで注意したいのは、「運動不足だから本人が努力すればよい」と片づけないことです。在宅勤務中の身体不活動は、個人の意識だけでなく、働き方そのものの影響を受けます。人事総務・健康経営担当者が支援する場合は、社員個人を責めるのではなく、仕事の合間に体を動かしやすい仕組みを作ることが重要です。
前かがみ姿勢で起こりやすい体の変化
長時間座っていると、だんだん頭が前に出て、背中が丸まりやすくなります。頭は体の中でも重い部分です。頭が前に出るほど、首や肩、背中の筋肉に負担がかかります。
前かがみ姿勢が続くと、次のような変化が起こりやすくなります。
- 首や肩の筋肉が常に引っ張られ、肩こりを感じやすくなる
- 胸の前側が縮こまり、深く息を吸いにくくなる
- 目線が下がり、気分まで沈みやすくなる
- 肩が前に出て、巻き肩になりやすくなる
- 骨盤が後ろに倒れ、腰や背中に負担がかかる
- 座っているだけでも疲れやすくなる
姿勢の悪さがそのまま病気につながると断定することはできません。しかし、前かがみ姿勢と座りっぱなしが続くと、体の重さ、呼吸の浅さ、疲労感、集中力の低下を感じやすくなります。その状態が長く続けば、仕事への意欲や気分にも影響が出やすくなります。
在宅勤務中にできる姿勢チェック
在宅勤務者への健康支援では、難しい測定をしなくても、まずは本人が気づけるチェック項目を用意することが有効です。次の項目を確認してみてください。
- 立って腕を自然に下げたとき、手の甲が前を向きやすい
- 壁に背中をつけて立ったとき、肩が壁につきにくい
- 深呼吸をしたとき、胸が広がりにくい
- 座っていると、無意識に背中が丸くなる
- 仕事中に首や肩の重さを感じることが多い
- 午後になると集中力が落ちやすい
一つでも当てはまる場合は、在宅勤務中の姿勢が固定されている可能性があります。「姿勢が悪い」と注意するよりも、「同じ姿勢が長く続いていないか」を確認する方が、社員さんは受け止めやすくなります。
骨盤を立てて座るだけでも体の使い方は変わる
椅子に座るときは、骨盤を後ろに倒さず、座面に対してまっすぐ立てる意識を持ちます。骨盤が立つと、背中が丸まりにくくなり、頭が前に出る姿勢も防ぎやすくなります。
ただし、骨盤を立てて座る姿勢は、見た目よりも体を使います。腹部や背中の筋肉を働かせる必要があるため、慣れていない人にとっては長時間続けるのが難しいこともあります。最初から一日中正しい姿勢を保とうとするのではなく、会議前、メール返信前、休憩後など、タイミングを決めて座り直す方が現実的です。
人事総務の健康施策としては、「正しい姿勢を守りましょう」と伝えるだけでは行動につながりにくくなります。たとえば、オンライン会議の開始前に一度座り直す、午前と午後に1回ずつ立ち上がる、昼休み前に肩を回すなど、仕事の流れに組み込める形で伝えることが大切です。
在宅勤務中に取り入れやすい猫背対策ストレッチ
前かがみ姿勢に気づいたときは、首や肩まわりをゆっくり動かします。痛みを我慢して強く伸ばす必要はありません。呼吸を止めずに、気持ちよく伸びる範囲で行います。
- 右肩を左手のひらで軽く押さえます。
- 頭をゆっくり左側へ倒します。
- 真横ではなく、少し斜め前へ倒すと首から肩にかけて伸びを感じやすくなります。
- 呼吸を止めずに、20秒から30秒ほど保ちます。
- ゆっくり戻し、反対側も同じように行います。
強く押したり、痛みを感じるまで伸ばしたりする必要はありません。肩甲骨まわりの大きな筋肉がゆるむと、上半身の力みが抜け、背中を丸めた姿勢から戻りやすくなります。
タニカワ久美子の企業研修で伝えていること
タニカワ久美子の企業研修では、在宅勤務のメンタルヘルス対策を「気持ちの持ち方」だけで説明しません。実際の研修現場では、長時間のパソコン作業で肩が上がったままの社員さんや、オンライン会議中に背中が丸くなって呼吸が浅くなっている管理職の方を多く見てきました。
そのため、研修では「姿勢を正しましょう」と一方的に伝えるのではなく、座り直す、立ち上がる、肩を動かす、深呼吸をするという小さな動きを、仕事中にどう入れるかまで扱います。人事総務の担当者からも、座学だけではなく、全員で実際にできる軽い運動がある点を評価されています。
在宅勤務者の不調は、画面越しでは見えにくいものです。だからこそ、健康経営の施策では、メンタルヘルスの相談窓口を用意するだけでなく、毎日の働き方の中で体を動かすきっかけを作ることが必要になります。
人事総務担当者が在宅勤務者へできる健康支援
在宅勤務中の姿勢と運動不足への対策は、大がかりな制度を作らなくても始められます。人事総務・健康経営担当者ができる支援として、次のような方法があります。
- オンライン会議の前に座り直しを促す
- 長時間会議では途中に短い休憩を入れる
- 在宅勤務者向けに姿勢チェック項目を共有する
- 昼休みや午後の時間帯に軽いストレッチを案内する
- メンタルヘルス研修に身体活動の内容も組み込む
- 管理職に、在宅勤務者の疲労サインを見逃さない視点を持ってもらう
在宅勤務の健康支援では、「社員に運動してもらう」だけでは不十分です。働く時間の中で、自然に体を動かせる設計にすることが重要です。姿勢、休憩、身体活動、メンタルヘルスを別々に扱わず、一つの健康支援としてつなげることで、社員にとっても受け入れやすい施策になります。
在宅勤務の健康支援は姿勢から見直せる
在宅勤務で前かがみ姿勢が続くと、肩こりや腰痛だけでなく、呼吸の浅さ、疲労感、集中力の低下、気分の落ち込みにつながることがあります。メンタルヘルス不調を本人の性格や気合いの問題にせず、働き方と体の使い方から見直すことが大切です。
健康経営の中で在宅勤務者を支えるには、相談窓口や制度だけでなく、日々の仕事中にできる小さな行動を増やす必要があります。骨盤を立てて座る、一定時間ごとに立ち上がる、肩や首をゆるめる。こうした小さな動きの積み重ねが、デスクワーカーの心身の負担を軽くする第一歩になります。
在宅勤務者のメンタルヘルス対策やデスクワーカーの健康支援を、健康経営の施策として見直したい企業様へ。
けんこう総研では、姿勢・身体活動・ストレス管理を組み合わせた健康経営支援を行っています。
