健康経営
在宅勤務で疲れが取れない社員への疲労回復支援
在宅勤務をしている社員から、「寝たはずなのに朝からぐったりする」「休日も休んだ気がしない」「以前より疲れが取れにくくなった」という声が出ることがあります。
出社しているときより移動は少ないはずなのに、なぜか疲れが残る。本人も「年齢のせいでしょうか」「体力が落ちたのでしょうか」と不安になります。人事総務の担当者にとっても、在宅勤務者の疲れは見えにくく、声をかけるタイミングをつかみにくい職場課題です。
在宅勤務の疲労回復では、単に「よく寝てください」「運動してください」と伝えるだけでは不十分です。仕事と生活の切り替え、画面を見続ける負担、相談しにくさ、勤務終了後も仕事が頭から離れない状態を、職場支援として見る必要があります。
在宅勤務で疲れが取れにくくなる理由
在宅勤務では、通勤や職場内の移動が減ります。その一方で、仕事を始める場所も終える場所も自宅になるため、気持ちの切り替えが弱くなりやすい働き方です。
パソコンを閉じても、すぐ近くに仕事道具がある。勤務時間外でも連絡が気になる。家事や家族の用事を挟みながら働いている。このような状態が続くと、体は休んでいるつもりでも、頭の中では仕事の緊張が残りやすくなります。
出社勤務では、通勤、昼休み、同僚との短い会話、帰宅という流れが、自然な区切りになっていました。在宅勤務ではその区切りが薄くなるため、本人が気づかないうちに「ずっと仕事モード」が続いてしまいます。
休んでも疲れが抜けないときに起きていること
疲労は、体をたくさん使ったときだけに起こるものではありません。長時間の画面作業、オンライン会議の連続、相手の表情を画面越しに読み取る緊張、家庭内の役割との切り替え不足も、疲労感につながります。
特に在宅勤務では、疲れていることを周囲に気づいてもらいにくくなります。出社していれば、表情、声の調子、動作の遅さなどから周囲が変化に気づくことがあります。しかし在宅勤務では、画面に映る短い時間だけで判断されやすく、疲れが表面化しにくいのです。
そのため、人事総務が在宅勤務者を支援するときは、勤務時間や成果だけでなく、「回復できているか」「相談できているか」「仕事の終わりを作れているか」を見ることが大切です。
在宅勤務者の疲労回復は個人任せにしない
在宅勤務の疲れを、本人の生活習慣だけの問題にしてしまうと、支援が遅れます。もちろん睡眠、食事、軽い身体活動は大切です。しかし、社員が自分だけで整えようとしても、会議の入れ方、連絡のルール、業務量、相談先が変わらなければ、疲労感は戻りやすくなります。
人事総務が見直したいのは、社員に努力を求める前の職場側の条件です。
- 勤務終了後も連絡を確認し続けていないか
- オンライン会議が連続しすぎていないか
- 昼休みに画面から離れられているか
- 疲れや睡眠の不調を相談できる雰囲気があるか
- 管理職が在宅勤務者の変化に気づく機会を持てているか
このような確認がないまま、「疲れたら休んでください」と伝えるだけでは、社員はますます自分の問題として抱え込みます。在宅勤務者の疲労回復は、個人のセルフケアと職場のしくみを合わせて考える必要があります。
軽いリセット行動を勤務の中に入れる
在宅勤務で疲れが取れにくい社員には、激しい運動を勧める必要はありません。大切なのは、仕事中の緊張を短く切ることです。
たとえば、会議が終わった後に深呼吸をする、窓の外を見る、肩や首をゆっくり動かす、昼休みに仕事用の画面から離れる。こうした小さな行動でも、仕事に向き続けていた意識を一度切り替えやすくなります。
ここで重要なのは、運動量を増やすことそのものではありません。在宅勤務の中に、回復のきっかけを入れることです。疲労回復を本人の根性や気合いに任せず、勤務の流れの中で自然にリセットできるようにすることが、健康経営の支援になります。
管理職が気づきたい在宅勤務者の疲れのサイン
在宅勤務者の疲れは、本人からはっきり申告されるとは限りません。「大丈夫です」と言いながら、実際には疲労感を抱え込んでいることもあります。
管理職が気づきたいのは、次のような小さな変化です。
- 返信が遅くなった
- 会議での発言が減った
- 表情や声に元気がない
- 小さな確認漏れが増えた
- 以前より判断に時間がかかっている
- 勤務時間外の連絡にもすぐ反応しようとしている
これらは、本人のやる気が下がったという単純な話ではありません。回復する時間が足りていない、仕事と生活の切り替えができていない、相談しにくい状態が続いている可能性があります。
管理職には、原因を決めつけずに「最近、疲れが残っていませんか」「仕事の終わりを作れていますか」と確認する姿勢が求められます。人事総務は、こうした声かけを管理職任せにせず、職場全体の支援として位置づけることが必要です。
タニカワ久美子の企業研修で伝えていること
タニカワ久美子の企業研修では、在宅勤務者の疲労を「本人の体力不足」や「年齢の問題」だけで見ないように伝えています。
実際に、企業の総務部長とのオンライン打ち合わせ前に、「最近、朝からぐったりしている」「よく眠れない」「年齢のせいかもしれない」と不安そうに話されたことがあります。けれども話を聞いていくと、仕事を終える区切りがなく、勤務後も連絡を気にし続け、家庭内の役割との切り替えも難しい状態でした。
このような疲れは、本人だけに「休んでください」と言っても解決しにくいものです。研修では、社員自身が疲れに気づく方法だけでなく、管理職が見逃しやすいサイン、人事総務が整えたい勤務ルール、短いリセット行動をあわせて扱います。
人事総務の担当者からも、在宅勤務者の疲労を個人の問題にせず、職場の支援として考えられる点を評価されています。
在宅勤務の疲労回復を健康経営につなげる
在宅勤務者の疲労感を放置すると、集中力の低下、確認漏れ、会議での反応の鈍さ、相談の遅れにつながります。表面上は業務が進んでいても、社員の回復力が落ちていれば、職場全体の生産性にも影響します。
健康経営の視点では、在宅勤務者の疲れを「本人が何とかすること」として終わらせないことが大切です。勤務時間の区切り、連絡ルール、会議の組み方、相談しやすい声かけ、短いリセット行動を組み合わせることで、疲れを翌日に持ち越しにくい職場へ近づけます。
ただし、強い疲労が長く続く、睡眠の問題が続く、日常生活に支障が出る、気分の落ち込みが目立つ場合は、職場だけで抱え込まない判断も必要です。産業保健スタッフや医療機関につなぐ視点を持つことも、人事総務の大切な役割です。
在宅勤務者の疲労感を、個人任せにしない職場づくりへ
けんこう総研では、在宅勤務者の疲労感、回復感の低下、仕事と生活の切り替えにくさを、健康経営の職場支援につなげるフォローアップを行っています。