ラザルスのストレス理論とは|認知的評価とコーピング

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ストレス科学ラボ・用語バンク

ラザルスのストレス理論とは|認知的評価とコーピング

このストレス科学ラボ・用語バンクカテゴリーでは、ラザルスのストレス理論について解説します。

同じストレス管理でも、本記事は具体的な対処法の紹介ではなく、ストレスをどのように受け止め、どのように対処するかを整理したラザルス理論に焦点を当てています。

人事総務・健康経営担当者が、職場改善や研修設計に活かせる視点で整理します。

ラザルスのストレス理論とは何か

ラザルスのストレス理論は、ストレスを「出来事そのもの」だけで説明しない考え方です。

同じ出来事が起きても、人によってストレスの感じ方は異なります。

たとえば、同じ業務変更でも、「新しい経験になる」と受け止める人もいれば、「自分には対応できない」と感じる人もいます。

この違いを考えるうえで重要になるのが、認知的評価とコーピングです。

ラザルス理論では、人は出来事を受けたときに、その出来事が自分にとってどの程度の負担なのか、自分で対応できるのかを評価し、そのうえで対処行動を選ぶと考えます。

ストレスを身体反応として見る視点

ストレス研究には、身体反応としてストレスを見る視点があります。

強い負荷がかかると、心拍が速くなる、呼吸が浅くなる、筋肉に力が入る、汗をかく、胃腸の調子が変わるといった反応が起こることがあります。

これは、体が負荷や危険に対応しようとする反応です。

職場でも、クレーム対応、締め切り、評価面談、人間関係の緊張などによって、こうした身体反応が起こることがあります。

この視点を持つと、ストレスは「気持ちの問題」だけではなく、体にも表れる反応として理解しやすくなります。

ストレスを受け止め方として見る視点

一方で、ラザルス理論では、ストレスを本人と環境との関係として捉えます。

つまり、ストレスは出来事そのものだけで決まるのではなく、その出来事を本人がどう受け止めるかによって変わります。

同じ仕事量でも、支援があり、相談しやすい環境にいる人は「対応できる」と感じやすくなります。

反対に、相談先がなく、失敗できない雰囲気が強い職場では、同じ仕事量でも大きなストレスとして感じられることがあります。

この考え方は、職場のメンタルヘルス対策でとても重要です。

社員のストレスを本人の性格だけで判断せず、業務量、裁量、支援、相談しやすさ、職場の雰囲気も含めて見る必要があるからです。

認知的評価とは何か

認知的評価とは、出来事を自分にとってどのような意味を持つものとして受け止めるかを判断する過程です。

職場で言えば、同じ出来事でも次のように受け止め方が分かれます。

出来事 負担としての受け止め 対応可能としての受け止め
新しい業務を任される 自分には無理かもしれない 手順を確認すれば進められそう
上司から修正を求められる 否定されたように感じる 改善点を整理すればよい
急な予定変更がある 混乱して対応できない 優先順位を組み直せば対応できる
クレーム対応が入る 怖い、逃げたいと感じる 手順と相談先を確認して対応する

ここで大切なのは、前向きに考えればよいという話ではありません。

本人が「対応できる」と感じるには、情報、経験、相談先、時間、上司の支援などの条件が必要です。

一次的評価と二次的評価

ラザルス理論では、出来事に対する評価を大きく分けて考えます。

一つは、その出来事が自分にとって脅威なのか、損失なのか、挑戦なのかを判断する評価です。

もう一つは、その出来事に対して自分がどの程度対応できるかを判断する評価です。

評価 意味 職場での例
一次的評価 その出来事が自分にとってどのような意味を持つか この仕事は危険か、負担か、成長機会かと判断する
二次的評価 自分に対応できる手段や資源があるか 相談できる人、時間、情報、経験があるかを判断する

職場のストレス管理では、二次的評価が特に重要です。

社員が「自分だけでは対応できない」と感じているときに、相談先や支援があると、ストレスの受け止め方は変わりやすくなります。

コーピングとは何か

コーピングとは、ストレスに対して行う考え方や行動の工夫です。

ラザルス理論では、ストレスを感じたときに、人は何らかの対処を行うと考えます。

代表的なコーピングには、問題焦点型対処と情動焦点型対処があります。

コーピング 意味 職場での例
問題焦点型対処 ストレスの原因そのものに働きかける 業務量を調整する、手順を見直す、相談する
情動焦点型対処 不安や怒りなどの感情を整える 深呼吸をする、気持ちを書き出す、信頼できる人に話す
回避・逃避型対処 問題から距離を取る 一時的に離れる、休憩する、関わりを減らす

どの対処がよいかは、状況によって異なります。

変えられる問題には問題焦点型対処が役立ちますが、すぐには変えられない状況では、情動焦点型対処が必要になることもあります。

ラザルス理論を職場で活かす意味

ラザルス理論を職場で活かす意味は、社員のストレスを一面的に判断しないことにあります。

同じ部署、同じ業務、同じ上司のもとで働いていても、社員のストレス反応は同じではありません。

その背景には、本人の経験、体調、睡眠、職場での支援、相談しやすさ、過去の失敗経験、現在の業務量などが関係します。

人事総務・健康経営担当者は、社員のストレスを「弱い」「気にしすぎ」と判断するのではなく、次の視点で整理する必要があります。

  • 本人はその出来事をどのように受け止めているか
  • 対応できるだけの情報や時間があるか
  • 相談できる相手がいるか
  • 業務量や役割が過剰になっていないか
  • 感情を落ち着ける時間や休息があるか
  • 同じ問題が繰り返されていないか

この視点を持つことで、職場のストレス対策は精神論ではなく、支援と行動に結びつきやすくなります。

人事総務が研修で押さえたいポイント

人事総務・健康経営担当者がラザルス理論を研修に活かす場合、理論名の暗記を目的にする必要はありません。

大切なのは、社員が自分のストレスを整理し、管理職が部下の変化を責めずに見られるようにすることです。

研修で扱う視点 目的 期待できる実務上の効果
認知的評価 同じ出来事でも受け止め方が異なると知る 社員の反応を一方的に責めにくくなる
コーピング ストレスへの対処には複数の方法があると知る 相談、休息、業務整理などの選択肢が増える
問題焦点型対処 変えられる問題を整理する 業務量や手順の見直しにつながる
情動焦点型対処 感情の負担を整える 不安や怒りを抱えたまま行動することを防ぎやすい
職場支援 本人だけに対処を背負わせない 管理職や人事総務の支援につながる

タニカワ久美子の研修では、理論を職場の行動に変える

タニカワ久美子のストレス管理研修では、ラザルス理論を専門用語の説明だけで終わらせません。

認知的評価は、「同じ出来事でも、人によって受け止め方が違うこと」として伝えます。

コーピングは、「ストレスを受けたときに、自分でできる工夫や周囲に頼る行動」として整理します。

問題焦点型対処は、「原因を分けて、具体的に動かせる部分を探すこと」として扱います。

情動焦点型対処は、「不安や怒りを落ち着けて、次の行動を考えやすくすること」として説明します。

企業研修の現場では、理論を理解するだけでなく、受講者が自分の仕事に置き換えて考える時間を入れます。

人事総務の担当者からも、理論を職場で実際に使える言葉に置き換えて伝える点を評価されています。

研修で使える問い

ラザルス理論を研修で扱うときは、受講者が自分の職場に置き換えられる問いにすることが重要です。

  • いま自分が負担に感じている出来事は何か
  • その出来事を、自分はどのように受け止めているか
  • 自分で変えられる部分はどこか
  • 自分だけでは変えられない部分はどこか
  • 相談できる人や窓口はあるか
  • まず感情を落ち着ける必要がある場面か
  • 同じ問題を繰り返さないために、職場で見直せることは何か

このような問いを使うことで、ストレス理論は学術用語ではなく、職場で使えるストレス管理の考え方になります。

まとめ:ラザルス理論は、職場のストレスを整理する土台になる

ラザルスのストレス理論は、ストレスを出来事そのものだけで説明しません。

本人がその出来事をどう受け止めるか、そしてどのように対処するかによって、ストレス反応は変わると考えます。

この視点を持つことで、職場のストレス管理は、社員本人の気持ちだけに閉じなくなります。

業務量、相談体制、支援、本人の受け止め方、対処行動を合わせて整理できるようになります。

人事総務・健康経営担当者にとって重要なのは、ラザルス理論を暗記することではありません。

社員が自分の状態に気づき、管理職が部下の反応を責めずに見られ、職場として支援できる研修設計につなげることです。

ラザルス理論にもとづくストレス対処を、職場研修に活かしたいご担当者様へ

けんこう総研では、認知的評価、コーピング、問題焦点型対処、情動焦点型対処を、社員が理解しやすい言葉に置き換えたストレスマネジメント研修を行っています。理論を職場の行動に変え、セルフケアと職場改善の両方につなげます。

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参考文献

  • Lazarus, R. S., & Folkman, S. Stress, Appraisal, and Coping. Springer, 1984.

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