社員に合う対処法を選べる職場研修へ|ラザルス ストレス対処法

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ストレス研究ノート|研修現場から読むストレス科学

社員に合う対処法を選べる職場研修へ|ラザルス ストレス対処法

社員向け研修で、ストレス対処法を一覧で伝えることがあります。

深呼吸をする。相談する。業務量を整理する。気持ちを書き出す。考え方を見直す。

どれも大切な対処です。

けれども、職場で難しいのは「どの対処法を知っているか」ではありません。

今の社員に必要なのは、感情を落ち着けることなのか。業務量や期限を見直すことなのか。相談先や職場支援につなげることなのか。

この順番を見誤ると、ストレス対処法は社員本人に負担を戻す言葉になります。

ラザルスのストレス対処法は、出来事そのものだけでなく、本人の受け止め方と対処行動に注目する考え方です。

ただし、職場で大切なのは理論名を覚えることではありません。

社員が一人で抱え込まないように、対処法を職場の支援、管理職の声かけ、人事総務の判断につなげることです。

ストレス対処法とコーピングを考えるビジネスパーソン

ストレス対処法は、知識として覚えるだけでなく、今の状況に合わせて選べる形にする必要があります。

ストレス対処法を一覧で教えても動かない理由

職場では、ストレス対処法を伝えているのに、社員がうまく使えないことがあります。

本人に意欲がないからではありません。

感情が強く揺れているときに、いきなり問題解決を求められる。業務量が多すぎるのに、深呼吸だけで乗り切るように聞こえる。相談したくても、誰に何を話せばよいのかわからない。

こうした状態では、対処法を知っていても使えません。

研修で必要なのは、対処法の数を増やすことだけではありません。

  • 今は感情を落ち着ける段階なのか
  • 原因を整理して動かす段階なのか
  • 本人だけではなく職場支援につなぐ段階なのか
  • 休息を優先すべき段階なのか
  • 管理職が声をかけるべき場面なのか

この判断があって、ストレス対処法は実務に近づきます。

ラザルスの考え方は受け止め方と対処を分けて見る

ラザルスのストレス理論では、ストレスを出来事そのものだけで決めません。

同じ出来事でも、本人がどう受け止めるか、対応できる手段があると感じられるかによって、ストレス反応は変わります。

たとえば、急な仕事の依頼があったとき、受け止め方は分かれます。

  • 自分には無理だと感じる
  • 成長の機会だと感じる
  • 上司に相談すれば対応できそうだと感じる
  • 業務量が限界なので危険だと感じる

ここで重要なのは、社員に前向きな受け止め方を求めることではありません。

対応できる条件があるかどうかです。

時間、情報、経験、相談先、裁量、休息。これらが不足していると、同じ仕事でも強い負担として受け止められます。

この視点は、ラザルス理論の詳しい解説記事ではなく、職場で対処法を選ぶための土台として使います。

認知評価は「対応できそうか」を見る視点

認知評価は、出来事が自分にとってどのような意味を持つかを判断する働きです。

職場では、一次評価と二次評価に分けて見ると実務に使いやすくなります。

認知評価 職場での意味 確認したいこと
一次評価 この出来事は負担か、脅威か、挑戦かを判断する 本人は何を重く受け止めているか
二次評価 自分に対応できる資源や手段があるかを判断する 時間、情報、相談先、裁量、支援があるか

たとえば、難しい業務を任されたとき、本人が「大きな負担だ」と感じていても、相談先や期限調整の余地があれば、対処可能感は変わります。

反対に、支援が見えない状態では、同じ業務でも強い不安につながります。

職場研修では、この認知評価を、理論として説明するだけでは不十分です。

社員が「何が不安なのか」「何が足りないのか」を言葉にできるようにすること。管理職がそれを責めずに確認できるようにすること。

ここまでつなげる必要があります。

コーピングは対処法の名前ではなく選び方

コーピングは、ストレスを受けたときに行う考え方や行動の工夫です。

代表的には、問題焦点型対処と情動焦点型対処があります。

対処の方向 職場での意味 選ぶときの注意
問題焦点型対処 業務量、期限、役割、手順、相談先など原因に働きかける 本人だけで変えられない場合は職場支援が必要
情動焦点型対処 不安、怒り、落ち込み、焦りなどの感情を整える 感情を抑え込ませる目的で使わない
意味づけを見直す対処 出来事をどう受け止め、次に何を活かすかを考える つらさを無理に前向き化しない

この表を見せるだけなら、社内資料でもできます。

難しいのは、現場での順番です。

感情が強く揺れている社員に、いきなり原因整理を求めると負担になります。業務量が限界の社員に、気分転換だけをすすめても根本の負荷は残ります。

今どの対処が必要か。

ここを見分けることが、職場研修では重要です。

問題焦点型対処が必要になる場面

問題焦点型対処は、ストレスの原因に働きかける対処です。

職場では、次のような場面で必要になります。

  • 業務量が多すぎる
  • 期限が現実的ではない
  • 役割分担があいまい
  • 情報共有が不足している
  • 相談先がわからない
  • 作業手順が複雑すぎる
  • 同じトラブルが繰り返されている

このような場合、本人の感情を落ち着けるだけでは不十分です。

業務量、期限、支援体制、手順、役割を見直す必要があります。

ストレス原因 本人ができる整理 職場側が必要になる支援
業務量が多い 抱えている業務を書き出す 管理職が優先順位と配分を見直す
期限が厳しい 必要作業と残り時間を確認する 期限調整、応援、作業範囲の見直し
役割があいまい 自分の担当範囲を確認する 責任範囲と判断基準を明確にする
相談できない 何を相談したいか言葉にする 相談の場と受け止める人を決める

問題焦点型対処の詳しい職場調整は、社員のストレス原因を業務調整につなげる|問題焦点型対処で扱います。

この投稿では、どの段階で問題焦点型対処へ進むかを見ます。

情動焦点型対処が先に必要な場面

情動焦点型対処は、ストレスによって生じた感情を整える対処です。

強い不安、怒り、落ち込み、焦りがあるときは、すぐに問題解決へ入れないことがあります。

本人の中では、すでに余裕がありません。

その段階で「では、どう解決しますか」と聞かれると、さらに追い込まれる場合があります。

場面 起こりやすい反応 先に必要な対応
結果を待つしかない 不安、焦り、落ち着かなさ 呼吸を整える、話を聞く、待つ時間を区切る
相手をすぐに変えられない 怒り、無力感、疲労感 距離を置く、気持ちを言葉にする、支援者に話す
失敗後に落ち込んでいる 自責、恥ずかしさ、不安 出来事と人格を分けて確認する
疲労が強い 考えがまとまらない、涙が出る、反応が鈍い 休息、業務の一時停止、安心できる場での確認

情動焦点型対処は、問題を放置する方法ではありません。

次の行動を選べる状態に戻るための対処です。

ここを理解せずに「気持ちを整えましょう」とだけ伝えると、社員には我慢を求められているように聞こえます。

対処法の使い分けで職場が止まりやすいところ

ラザルスのストレス対処法を職場で扱うとき、止まりやすいのは使い分けです。

どの対処法が正しいかではありません。

今、どの段階なのかです。

社員の状態 優先したい対処 職場で必要な判断
感情が強く揺れている 情動焦点型対処 まず落ち着く時間と安心できる確認を入れる
原因が明確で動かせる 問題焦点型対処 業務量、期限、役割、相談先を見直す
本人だけでは変えられない 職場支援への接続 管理職や人事総務につなげる流れを作る
少し落ち着いて振り返れる 意味づけを見直す対処 次に活かせる点を一緒に考える
疲労が蓄積している 休息と回復の確保 対処法を増やす前に負荷を下げる

この順番は、一覧表を配るだけでは定着しません。

管理職がいつ声をかけるか。どの言葉なら責められていると受け取られにくいか。人事総務へつなぐ判断をどこで行うか。

ここで実務の迷いが出ます。

管理職の声かけが対処法の選び方を左右する

社員がどの対処法を選べるかは、管理職の声かけにも左右されます。

たとえば、「自分で考えてみて」と言われると、余裕がある社員には自律的な促しになります。

けれども、すでに疲れている社員には、突き放されたように聞こえることがあります。

「相談して」と伝えていても、本人は何を相談してよいかわからないかもしれません。

必要なのは、対処法を選びやすくする声かけです。

  • 今いちばん負担になっていることはどれですか
  • まず感情を落ち着ける時間が必要ですか
  • 業務量や期限で動かせる部分を一緒に見ましょう
  • 一人で判断しなくてよいところを分けましょう
  • 相談先をこちらで明確にします

ただし、文例を覚えるだけでは足りません。

社員の表情が硬いとき、沈黙が長いとき、「大丈夫です」と返ってきたとき。そこでどう受け止め、次にどの対処へ進むのか。

ここは、職場場面に合わせた研修で扱う必要があります。

ストレスチェック後の職場改善にもつながる視点

ストレスチェック後の職場改善でも、ラザルスのストレス対処法は使えます。

結果だけを見ると、「ストレスが高い部署」「不調者が多い部署」と数値で終わりがちです。

けれども、実務で必要なのは背景の確認です。

  • 業務量が多すぎるのか
  • 裁量が少ないのか
  • 上司支援が不足しているのか
  • 相談しにくい風土があるのか
  • 役割があいまいなのか
  • 社員が対処できないと感じているのか
  • 感情を落ち着ける時間もない状態なのか

原因に手を入れるのか。感情面の消耗を軽くするのか。相談導線を整えるのか。

ストレスチェック後の施策も、この使い分けが曖昧なままだと、一般的な研修で終わります。

職場ごとの場面に置き換えて、対処法を選べる形にする必要があります。

タニカワ久美子の企業研修で扱う視点

タニカワ久美子の企業研修では、ラザルスのストレス対処法を「ストレスに強くなりましょう」という精神論として扱いません。

出来事そのもの、本人の受け止め方、感情の状態、使える支援、職場側の調整を分けて考えます。

社員本人には、ストレスを感じたときに、まず何を重く感じているのか、何が足りないのか、今どの対処が必要なのかを見直す視点を伝えます。

管理職には、部下のストレスを本人の弱さとして見ず、業務量、期限、相談先、裁量、休息を一緒に整える声かけを伝えます。

人事総務には、セルフケア研修だけで終わらせず、管理職の声かけ、相談導線、ストレスチェック後の職場改善へつなげる視点を共有します。

研修現場では、本人が「自分の能力不足です」と思い込んでいても、実際には期限が短すぎる、役割があいまい、相談先がない、情報が不足しているというケースがあります。

この整理ができると、対処法は社員任せではなく、職場で支えるストレス管理に変わります。

まとめ|ラザルスのストレス対処法は選び方まで設計して活きる

ラザルスのストレス対処法は、ストレスを出来事そのものだけで見ず、本人の受け止め方と対処行動に注目する考え方です。

認知評価では、その出来事が自分にとって脅威なのか、挑戦なのか、対応できるのかを判断します。

コーピングには、原因に働きかける問題焦点型対処と、感情を整える情動焦点型対処があります。さらに、落ち着いたあとに意味づけを見直す対処が役立つ場面もあります。

ただし、職場で大切なのは、対処法の名前を覚えることではありません。

今の社員に必要なのは、感情を整えることなのか。業務量や期限を動かすことなのか。相談先や職場支援につなげることなのか。

この選び方まで設計して、初めてストレス対処法は職場の実務に近づきます。

職場のストレス管理研修への活用

けんこう総研では、企業・介護施設・教育機関向けに、認知評価、コーピング、問題焦点型対処、情動焦点型対処を、職場で使える言葉に置き換えたストレスマネジメント研修を行っています。

社員に対処法を教えるだけでは、職場は変わりにくいものです。

感情を整える段階、原因を動かす段階、職場支援につなぐ段階を見分け、管理職の声かけや人事総務の判断までつなげる必要があります。

ラザルスのストレス対処法を、自社の職場場面に合わせて研修に取り入れたい場合は、以下のページをご覧ください。


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引用・参考文献

  • Lazarus, R. S., & Folkman, S. (1984). Stress, Appraisal, and Coping. Springer.
  • Lazarus, R. S. (1999). Stress and Emotion: A New Synthesis. Springer.

文責:タニカワ久美子

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