健康経営戦略マップの作り方|施策とKPIのつなげ方

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健康経営戦略マップの作り方|施策とKPIのつなげ方

健康診断、ストレスチェック、研修、運動施策、職場改善など、健康経営で行うことは年々増えています。

けれども、施策が増えるほど、人事総務・健康経営担当者は「それぞれの取り組みが、会社の何に役立っているのか」を説明しにくくなることがあります。

健康経営戦略マップは、健康課題、実施する施策、KPI、成果指標を一本の流れでつなぐための図です。

本記事では、健康経営戦略マップを使って、施策をやりっぱなしにせず、社内で説明しやすい形にする考え方を見ていきます。


健康経営戦略マップで健康課題とKPIをつなぐ図
健康経営戦略マップは、健康施策を経営課題・健康課題・KPI・成果指標へつなげるための実務ツールです。

健康経営戦略マップとは何か

健康経営戦略マップとは、会社の経営課題と、社員の健康課題、健康施策、KPI、成果指標をつなげて見るための図です。

健康経営では、施策を一つずつ行っているだけでは、全体の意味が見えにくくなります。

たとえば、ストレスチェックを行う。健康セミナーを開く。運動イベントを行う。管理職研修を実施する。

これらは大切な取り組みですが、「なぜその施策を行うのか」「何を確認するのか」「次にどう活かすのか」が決まっていないと、実施記録だけが残りやすくなります。

健康経営戦略マップは、健康施策を増やすためではなく、施策と会社の課題をつなげて見るために使います。

人事総務が社内で説明するときにも、戦略マップがあると、施策の目的とKPIを共有しやすくなります。


健康経営戦略マップでつなぐ5つの項目

健康経営戦略マップでは、次の5つをつなげて見ます。

項目 見る内容 社内で確認したい問い
経営課題 会社として困っていること 離職、欠勤、生産性、採用、休職、管理職負担など、何を減らしたいのか
健康課題 経営課題に関係する社員の状態 疲労、ストレス、睡眠不足、運動不足、相談しにくさなど、何が関係しているのか
施策 健康課題に対して行う取り組み 研修、面談、職場改善、情報提供、管理職支援など、何を行うのか
KPI 施策の進み具合や行動変化を見る指標 参加率、理解度、相談行動、面談実施率、セルフケア実施率など、何を見るのか
成果指標 会社全体の変化を見る指標 欠勤率、休職率、離職率、プレゼンティーズム、職場満足度など、何が変わったか

この5つがつながっていると、健康施策を「やったかどうか」だけでなく、「何のために行い、何を見て、次にどうするか」で考えやすくなります。


健康経営戦略マップが必要になる理由

健康経営が止まりやすい理由は、施策が足りないからとは限りません。

むしろ、いろいろな施策を行っているのに、それぞれの目的や成果の見方がつながっていないことがあります。

たとえば、次のような状態です。

  • ストレスチェックを実施しているが、職場改善につながっていない
  • 健康セミナーを行っているが、次年度計画に反映されていない
  • 運動イベントを行っているが、参加者が一部に偏っている
  • 管理職研修を実施しているが、研修後の行動変化を見ていない
  • 健康施策は多いが、経営層に成果を説明しにくい

この状態では、人事総務の担当者が一生懸命に進めても、健康経営が担当者任せになりやすくなります。

健康経営戦略マップを作ると、施策の目的、対象者、KPI、成果指標、見直し時期を一つの流れで見られます。

そのため、経営層、管理職、現場担当者に「この施策は何につながるのか」を伝えやすくなります。


戦略マップを作るときに役立つ6つの見方

健康経営戦略マップでは、難しい経営理論をすべて使う必要はありません。

人事総務が実務で使うなら、次の6つの見方を押さえておくと十分です。

1. BSCの見方:健康施策を会社の成果につなげる

BSCは、会社の成果を一つの数字だけで見ず、複数の視点から見る考え方です。

健康経営では、社員の健康、職場環境、管理職支援、学び、サービス品質などを、会社の成果とつなげて考えるときに役立ちます。

見る視点 健康経営での見方 指標例
お金や損失 欠勤、休職、離職による負担を減らす 欠勤率、休職率、離職率
サービス品質 社員の疲労やストレスが顧客対応に影響していないかを見る クレーム件数、対応品質、事故件数
職場の動き 業務負担、相談しやすさ、管理職支援を見る 面談実施率、職場改善件数、相談件数
学びと成長 社員や管理職が健康行動を学び、続けられているかを見る 研修受講率、理解度、セルフケア実施率

この見方を使うと、健康経営を「社員によいこと」だけでなく、会社の安定を支える取り組みとして説明しやすくなります。

2. PDCAの見方:やって終わりにしない

健康経営は、施策を実施して終わりではありません。

計画し、実施し、結果を見て、次に変えることを決める必要があります。

流れ 健康経営で行うこと 注意したい点
計画 経営課題と健康課題を確認し、施策を決める 施策ありきで始めない
実施 研修、面談、職場改善、社内周知を行う 対象者、時期、担当者を決める
確認 KPIと成果指標を見る 参加率だけでなく、行動変化を見る
見直し 結果をもとに施策を変える 担当者だけで抱えず、経営層や管理職にも共有する

大切なのは、確認を「実施報告」で終わらせないことです。

研修を何回行ったかではなく、社員や管理職の行動にどのような変化があったかを見ます。

3. ROIの見方:費用だけでなく、放置した場合の負担も見る

健康経営は、費用だけで判断すると続きにくくなります。

研修費や施策費だけでなく、欠勤、離職、休職、採用、教育、管理職の負担なども合わせて見る必要があります。

施策 途中で見る指標 長く見たい成果
ストレス管理研修 受講率、理解度、セルフケア実施率 疲労感、欠勤、休職、職場満足度
管理職研修 面談実施率、声かけ、早期相談件数 部下対応の負担軽減、離職予防、職場の安定
職場改善 改善提案件数、実施件数、社員の反応 欠勤率、離職率、事故・ミス、働きやすさ

健康経営の投資対効果は、すべてを短期間で金額に直せるわけではありません。

それでも、施策の費用だけでなく、放置した場合に起こる負担も見ておくと、経営層へ説明しやすくなります。

4. KPIの見方:成果指標と混ぜない

KPIは、施策が進んでいるか、行動が変わっているかを見るための指標です。

一方、成果指標は、会社全体として何が変わったかを見る指標です。

この2つを混ぜると、施策の評価が分かりにくくなります。

健康課題 KPI 成果指標
ストレス反応が高い 研修受講率、セルフケア実施率、相談行動 高ストレス者割合、休職率、疲労感
管理職支援が弱い 管理職研修受講率、面談実施率、声かけ 早期相談件数、部下対応の負担感、離職率
生活習慣が乱れている 睡眠改善の参加率、運動習慣の継続率 疲労感、健診結果、欠勤率

KPIは多ければよいわけではありません。

担当者が追える数に絞り、次の施策判断に使えるものを選びます。

5. 役割分担の見方:経営層・人事総務・管理職・社員をつなげる

健康経営が現場に広がらないときは、誰が何を担うのかが見えにくくなっていることがあります。

戦略マップでは、経営層、人事総務、管理職、社員の役割を分けて考えます。

立場 役割 健康経営で行うこと
経営層 健康経営の目的を示す なぜ会社として取り組むのかを伝える
人事総務 施策とKPIを運用する 研修、社内周知、データ確認、フォローを行う
管理職 現場で部下の変化に気づく 声かけ、業務量確認、相談しやすい雰囲気づくりを行う
社員 自分の状態に気づき、必要なときに相談する セルフケア、休憩、相談行動を実践する

役割が見えると、健康経営が人事総務だけの仕事になりにくくなります。

6. 人的資本の見方:健康経営を長く働ける職場づくりにつなげる

健康経営は、単年度の施策ではありません。

社員が長く働き続けられる職場を作るための取り組みです。

次のような視点を入れると、健康経営を人的資本の取り組みとして見やすくなります。

  • 社員が無理なく働き続けられる職場か
  • 管理職が健康課題に早めに気づけるか
  • メンタルヘルス不調や離職を予防できているか
  • 世代や職種ごとの健康課題を見ているか
  • 健康施策が人材の定着に役立っているか

この視点があると、健康経営は一時的なイベントではなく、会社の持続性を支える取り組みとして説明しやすくなります。


健康施策を戦略マップに落とし込む手順

健康経営戦略マップを作るときは、施策から始めないことが重要です。

先に、会社として困っていることと、社員の健康課題を確認します。

手順 行うこと 注意したい点
1. 経営課題を決める 離職、休職、欠勤、生産性、採用、管理職負担などを見る 健康施策ありきで始めない
2. 健康課題を見る ストレス、疲労、睡眠、生活習慣、相談しにくさを見る データと職場の声の両方を見る
3. 施策を選ぶ 研修、面談、職場改善、社内周知、管理職支援を選ぶ 課題とつながらない施策を増やさない
4. KPIを決める 受講率、理解度、相談行動、面談実施率などを見る 測れるだけで意味が薄い指標は避ける
5. 成果指標を決める 休職率、離職率、欠勤率、疲労感、職場満足度などを見る 短期で見る指標と長期で見る指標を分ける
6. 見直し時期を決める 四半期、半期、年度単位で確認する 作って終わりにしない

この手順で作ると、健康経営戦略マップは資料作成で終わらず、施策の見直しに使いやすくなります。


健康経営戦略マップでよくある失敗

健康経営戦略マップは便利ですが、作り方を誤ると、運用に使えない資料になります。

特に多いのは、施策を並べただけで、経営課題やKPIとのつながりが弱い状態です。

よくある失敗 起きる問題 見直し方
施策一覧になっている 何のために行う施策か説明しにくい 経営課題と健康課題から考える
KPIが多すぎる 担当者が追いきれず、改善に使いにくい 重点課題に関係する少数の指標に絞る
KPIと成果指標が混ざっている 進み具合と成果の区別がつきにくい 中間の指標と、長く見る成果を分ける
現場の役割が見えない 人事総務だけの取り組みになりやすい 管理職と社員の行動まで決める
見直し時期がない 作成後に放置される 四半期、半期、年度単位で確認する

健康経営戦略マップは、きれいな図を作るためのものではありません。

経営課題、健康課題、施策、KPI、成果をつなぎ、次の判断に使うためのものです。


タニカワ久美子の企業研修で見てきた戦略マップの課題

タニカワ久美子の企業研修では、健康経営に熱心に取り組んでいる企業ほど、施策が増えすぎて説明しにくくなっている場面を見てきました。

健診、ストレスチェック、研修、運動施策、面談、職場改善など、取り組み自体は多くても、「この施策は何のためか」「次に何を見ればよいか」が曖昧になることがあります。

たとえば、ストレス管理研修を行う場合でも、目的が「研修を実施すること」になってしまうと、研修後の行動変化が見えにくくなります。

研修では、受講率や満足度だけでなく、社員が自分の疲れに気づけたか、管理職が声をかけやすくなったか、人事総務が次年度施策に反映できるかまで確認します。

人事総務の担当者からも、健康施策を経営課題、KPI、研修後フォローにつなげて見直せる点を評価されています。


健康経営戦略マップを作る前の確認表

健康経営戦略マップを作る前に、次の点を確認します。

確認項目 確認する問い
経営課題 会社として、離職、欠勤、休職、管理職負担など何を減らしたいのか
健康課題 社員の疲労、ストレス、睡眠、相談しにくさなど、何が関係しているのか
施策 今行っている施策は、どの課題につながっているのか
KPI 施策の進み具合や行動変化を、何で見るのか
成果指標 短期ではなく、長く見ていく成果指標は何か
役割分担 経営層、人事総務、管理職、社員がそれぞれ何を担うのか
見直し いつ、誰と、どの指標を見て施策を見直すのか

この表に答えにくい項目が多い場合、健康経営の施策が一覧化しているだけになっている可能性があります。

まずは、今ある施策を、会社の課題とKPIにつなげて見直すことが必要です。


読後に確認してほしい問い

本記事を読んだあと、社内で次の問いを一つだけ確認してください。

今行っている健康施策は、どの経営課題とつながり、どのKPIで次の判断に使えるでしょうか。

この問いに答えられるなら、健康経営戦略マップは、資料ではなく実務で使える道具になります。

逆に、この問いに答えにくい場合、施策を増やす前に、経営課題、健康課題、KPI、成果指標のつながりを見直す必要があります。


まとめ:健康経営戦略マップは、施策を次の判断につなげるために使う

健康経営戦略マップは、健康施策を一覧にする資料ではありません。

経営課題、健康課題、施策、KPI、成果指標をつなぎ、健康経営を社内で説明しやすくするための道具です。

健康経営では、施策を実施するだけでなく、何のために行い、どの指標で見て、次に何を変えるかを決める必要があります。

BSC、PDCA、ROI、KPI、役割分担、人的資本の見方は、難しい理論として覚えるものではありません。

人事総務が、健康施策を経営課題や次年度計画につなげるために使う考え方です。

健康経営戦略マップを作ることで、担当者だけに負担が集まりにくくなり、経営層、管理職、社員が同じ方向を見やすくなります。

けんこう総研では、健康経営戦略マップの考え方をもとに、健康課題の確認、KPI設計、ストレス管理研修、管理職支援、研修後フォローを実務につなげています。

健康経営戦略マップを作ったものの運用が止まっている場合や、施策とKPIのつながりを見直したい場合は、健康経営フォローアップをご活用ください。

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