健康経営
身体活動ガイド2023を健康経営に活かす方法
職場で運動や身体活動の取り組みを始めようとしても、「全員に同じことをお願いしてよいのか」「忙しい社員にどう声をかければよいのか」と迷うことがあります。
運動イベントを行っても、参加できる人だけが参加して終わってしまう。忙しい部署ほど参加できない。体力や年齢によって、同じ内容では負担が大きい人もいる。
健康経営で大切なのは、社員に無理をさせることではありません。日々の仕事の中で、少しでも体を動かしやすい職場に近づけることです。
この記事では、厚生労働省の「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」を、健康経営の運動施策や社内周知にどう活かすかを見ていきます。

身体活動ガイド2023は、職場で無理なく続けるための考え方として使える
厚生労働省は、身体活動や運動を健康づくりに活かすための資料として、健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023を公表しています。
このガイドは、単に「もっと運動しましょう」と呼びかける資料ではありません。
年齢、体力、健康状態、生活環境に応じて、無理のない形で身体活動を増やしていく考え方が示されています。
健康経営でこのガイドを使うときに重要なのは、運動量の数字だけを社員に伝えることではありません。
健康経営では、身体活動ガイドを「社員に守らせる基準」ではなく、「無理なく続けられる職場づくりの考え方」として使うことが大切です。
社員に同じ運動量を求めるのではなく、仕事の流れや職場環境に合わせて、できる範囲から始める考え方に置き換える必要があります。
「基準」ではなく「ガイド」として読むことが重要
身体活動ガイド2023では、身体活動や運動の目安が示されています。
ただし、健康経営の現場で注意したいのは、その数値だけを強く打ち出しすぎないことです。
社員には、年齢、体力、持病、勤務時間、家庭の事情、仕事内容の違いがあります。
そのため、全員に同じ運動量を求めると、参加しにくい人や負担を感じる人が出てきます。
健康経営で運動施策を行うときは、次の考え方が必要です。
- 全員に同じ運動量を求めない
- 参加できない人を責めない
- 短い時間でも体を動かせる選択肢を用意する
- 仕事の合間に取り入れやすい内容にする
- 体調に不安がある社員へ配慮する
健康経営で大切なのは、運動が得意な社員を増やすことではありません。
体を動かすことに苦手意識がある社員も、無理なく参加できる入口を作ることです。
職場の運動施策で失敗しやすいパターン
健康経営で運動施策を入れるとき、よくある失敗があります。
1. 元気な社員だけが参加して終わる
ウォーキングイベントや運動チャレンジは、関心のある社員には参加しやすい施策です。
一方で、体力に自信がない社員、忙しい部署の社員、健康不安を抱える社員は参加しにくいことがあります。
参加者が一部に偏ると、健康経営としては職場全体の取り組みになりにくくなります。
2. 数字だけを目標にしてしまう
歩数、運動時間、参加回数などの数字は、取り組みを確認するうえで役立ちます。
しかし、数字だけを強調すると、社員が「監視されている」「比べられている」と感じることがあります。
健康経営では、個人の数値を競わせるよりも、職場全体で体を動かしやすくなったかを見ることが重要です。
3. 忙しい部署ほど参加できない
健康施策は、余裕のある部署ほど参加しやすく、忙しい部署ほど参加しにくくなることがあります。
本当に支援が必要な部署ほど参加できない状態になると、健康経営の目的からずれてしまいます。
そのため、運動施策はイベント型だけでなく、短時間でできる内容や、仕事の合間に入れやすい形も用意します。
4. できない人への配慮が不足する
けが、持病、妊娠、介護、年齢、体力差などにより、同じ運動が難しい社員もいます。
健康経営の運動施策では、参加しないことが不利益に見えないようにする必要があります。
「できる人だけ参加してください」ではなく、「できる形を選べます」と伝えることが大切です。
身体活動ガイドを健康経営に活かす5つの視点
身体活動ガイド2023を職場で活かすときは、次の5つの視点で考えます。
1. 日常動作を身体活動として見る
健康経営では、運動教室やスポーツイベントだけを身体活動として扱う必要はありません。
通勤、階段利用、立ち上がる回数、職場内の移動、休憩中の軽いストレッチも、身体活動として考えられます。
社員にとって取り入れやすいのは、特別な時間を作ることよりも、今の仕事の中に少し足すことです。
2. 座りっぱなしを減らす
デスクワークや会議が多い職場では、長時間座りっぱなしになりやすくなります。
運動時間を新しく作る前に、座りっぱなしの時間を少し減らすだけでも、取り組みやすくなります。
- 会議の前後に立ち上がる
- コピーや資料確認で少し歩く
- 休憩時間に軽く体を伸ばす
- 長時間の座位を区切る
こうした小さな動きは、運動が苦手な社員にも取り入れやすい方法です。
3. 全員同じメニューにしない
職場には、体力差があります。
年齢や健康状態、仕事内容によって、無理なくできる身体活動は異なります。
健康経営では、全員同じメニューではなく、複数の選択肢を用意するほうが続きやすくなります。
- 座ったままできるストレッチ
- 立って行う軽い体操
- 短時間のウォーキング
- 昼休みにできる軽い運動
- 自宅でもできるセルフケア
選べる形にすると、社員は自分の状態に合わせて参加しやすくなります。
4. 強制ではなく、続けやすさを重視する
健康経営で運動施策を行うとき、強制的な参加は逆効果になることがあります。
「参加しなければならない」と感じると、健康施策そのものへの抵抗感が強くなります。
大切なのは、社員が自分の仕事や生活の中で取り入れやすい形にすることです。
無理なく続けられる内容にすると、健康施策が一時的なイベントで終わりにくくなります。
5. ストレス対策と組み合わせる
身体活動は、ストレス対策とも相性がよいテーマです。
ただし、ここでも「運動すればストレスがなくなる」と単純に伝えないことが重要です。
職場で扱う場合は、疲労、休憩、睡眠、気分転換、相談しやすさと合わせて見る必要があります。
軽く体を動かすことは、気分を切り替える入口になります。
一方で、疲れが強い社員に運動を勧めるだけでは、負担になることもあります。
そのため、健康経営では、身体活動をストレス管理の一部として、無理のない範囲で扱うことが重要です。
社内周知で使うときの表現
身体活動ガイドを社内で紹介するときは、言葉の選び方が重要です。
社員に「守らせる」表現にすると、抵抗感が出やすくなります。
次のように、選べる表現に変えると伝わりやすくなります。
| 避けたい表現 | 置き換えたい表現 |
|---|---|
| 毎日必ず運動しましょう | できる日から、少し体を動かしてみましょう |
| 歩数目標を達成してください | 今より少し歩く場面を増やしてみましょう |
| 全員参加です | 体調や仕事の状況に合わせて参加できます |
| 運動不足を改善しましょう | 座りっぱなしの時間を少し区切ってみましょう |
| できない人は個別に相談してください | 無理のない方法を一緒に選べます |
健康経営では、正しい情報を伝えるだけでは不十分です。
社員が「自分にもできそう」と感じる言葉に変えることが、参加しやすさにつながります。
タニカワ久美子の企業研修で見てきた運動施策の課題
タニカワ久美子の企業研修では、健康経営の一環として、ストレス管理と軽い身体活動を組み合わせて扱うことがあります。
企業の現場では、「運動が大切なのは分かっているけれど、全員に同じことは頼みにくい」「忙しい部署ほど参加できない」という声を聞きます。
また、運動が得意な社員は積極的に参加しても、体力に不安がある社員や、疲れが強い社員は遠慮してしまうことがあります。
そのため研修では、運動量を競うのではなく、仕事の合間にできる軽い動きや、呼吸、休憩、姿勢の見直しから始めます。
たとえば、座ったままできる肩まわりの動き、立ち上がって背中を伸ばす動き、短い時間で気分を切り替える方法などです。
人事総務の担当者からも、座学だけではなく、全員で実際にできる軽い運動がある点を評価されています。
健康経営で身体活動ガイドを使う前の確認表
身体活動ガイド2023を健康経営で使う前に、次の点を確認します。
| 確認項目 | 確認する問い |
|---|---|
| 目的 | この運動施策は、社員のどの負担を軽くするために行うのか |
| 対象者 | 参加しにくい社員や部署を想定しているか |
| 個人差 | 年齢、体力、健康状態に合わせて選べる内容になっているか |
| 実施方法 | 仕事の合間に取り入れやすい形になっているか |
| 言葉 | 社員に強制や評価のように伝わらない表現になっているか |
| フォロー | 実施後に、参加状況や社員の反応を確認する予定があるか |
| ストレス対策 | 疲労、休憩、睡眠、相談しやすさと合わせて見ているか |
この表に答えにくい項目がある場合、運動施策が一部の社員だけの取り組みになる可能性があります。
まずは、社員が無理なく参加できる形と、社内で使う言葉を見直す必要があります。
読後に確認してほしい問い
本記事を読んだあと、社内で次の問いを一つだけ確認してください。
今の運動施策は、体力や忙しさに差がある社員も、無理なく参加できる形になっているでしょうか。
この問いに答えられるなら、身体活動ガイド2023を健康経営の中で使いやすくなります。
逆に、この問いに答えにくい場合、運動量や参加率よりも、参加しやすい形と伝え方を先に見直す必要があります。
まとめ:身体活動ガイド2023は、健康経営の運動施策を無理なく続けるために使う
身体活動ガイド2023は、社員に同じ運動量を求めるための資料ではありません。
年齢、体力、健康状態、仕事内容の違いを踏まえ、できる範囲から身体活動を増やす考え方として使うことが重要です。
健康経営で運動施策を行うときは、イベントや歩数競争だけに頼らず、仕事の合間にできる軽い動きや、座りっぱなしを減らす工夫を取り入れます。
また、社員に伝えるときは、強制ではなく「自分にもできそう」と感じられる言葉を選ぶ必要があります。
身体活動は、疲労、休憩、睡眠、ストレス管理とも関係します。
そのため、健康経営では運動施策を単独で扱うのではなく、職場で無理が続いていないかを見つける取り組みとして活用します。
けんこう総研では、ストレス管理研修や健康経営フォローアップの中で、身体活動ガイド2023の考え方を踏まえ、社員が無理なく取り組める軽い運動や職場で続けやすい健康施策を扱っています。
運動施策を一部の社員だけの取り組みにせず、職場全体で無理なく続けたい場合は、健康経営フォローアップをご活用ください。