ラインケア・管理職支援
メンタル不調が気になる社員への声かけQ&A|管理職と人事総務の対応
部下や社員の様子がいつもと違うとき、管理職や人事総務は「声をかけた方がいいのか、そっとしておいた方がいいのか」で迷いやすいものです。
急に理由を聞き出そうとすると、相手に負担をかけてしまうことがあります。けれども、何もしないままでは、疲れや不調のサインを見過ごしてしまうこともあります。
ここでは、メンタル不調が気になる社員に最初にどう声をかけ、どの時点で人事総務や専門職につなげばよいのかを見ていきます。

メンタル不調は、本人から言い出せないことがある
職場でメンタル不調が起きていても、本人から「つらいです」と言えるとは限りません。
責任感が強い社員ほど、周囲に迷惑をかけたくないと考え、疲れていても普段通りに振る舞おうとすることがあります。管理職に評価される立場であれば、なおさら弱音を見せにくくなります。
そのため、ラインケアでは「本人が言ってこないから大丈夫」と判断しないことが大切です。出勤しているかどうかだけでなく、表情、話し方、仕事の進み方、人との関わり方の変化を見る必要があります。
声をかける前に見ておきたい変化
声をかけるときは、いきなり心の状態を聞くのではなく、まず仕事や様子の変化に目を向けます。
- 以前より表情が硬い
- あいさつや返事が少なくなった
- 会議で発言しなくなった
- 小さなミスや確認漏れが増えた
- 仕事の締め切りが遅れがちになった
- 休憩を取らず、いつも忙しそうにしている
- 周囲との会話を避けるようになった
- 急に涙もろくなった、または怒りっぽくなった
これらの変化は、すぐにメンタル不調と決めつけるためのものではありません。大切なのは、「最近、何か負担が重なっているのかもしれない」と気づくことです。
人事総務や管理職がこの変化を早めに見つけられると、本人が限界まで我慢する前に支援につなげやすくなります。
Q1. 最初の声かけは、どうすればよいですか?
最初の声かけでは、原因を聞き出そうとしないことが重要です。
「何があったの」「どうしてできないの」と聞くと、相手は責められているように感じることがあります。まずは、こちらが見えている事実を静かに伝えます。
たとえば、次のような言い方です。
- 「最近、少し忙しそうに見えます」
- 「このところ、疲れているように見えました」
- 「いつもより元気がないように感じたので、少し気になりました」
- 「今の仕事量で、負担が大きくなっていませんか」
このような声かけなら、相手を責めずに話の入口をつくれます。
声かけの目的は、原因をその場で解決することではありません。本人が「気にかけてもらえている」と感じられることが、次の相談につながります。
Q2. 聞いてはいけない言い方はありますか?
メンタル不調が気になる社員に対して、強い確認や決めつけは避けます。
- 「メンタルが弱いのでは」
- 「やる気がないのですか」
- 「みんな忙しいのに、なぜできないのですか」
- 「何が原因か、今ここで話してください」
- 「休むほどではないですよね」
こうした言い方は、本人を追い詰めることがあります。
特に人事総務や管理職は、相手にとって評価や処遇に関わる立場です。何気ない一言でも、本人には強く響くことがあります。
声をかけるときは、本人の性格や努力不足に結びつけず、「今の仕事量」「最近の負担」「休めているか」といった、具体的な状況から確認する方が安全です。
Q3. 管理職はどこまで関わればよいですか?
管理職が一人で抱え込みすぎる必要はありません。
部下の様子が気になるとき、管理職は「自分が何とかしなければ」と考えやすくなります。しかし、メンタル不調の可能性がある場合、管理職だけで判断し続けることは危険です。
管理職ができることは、次の3つです。
- 変化に気づく
- 責めない声かけをする
- 必要に応じて人事総務や産業保健スタッフにつなぐ
管理職は医療的な判断をする立場ではありません。本人の話をすべて聞き取ろうとしたり、解決策を一人で背負ったりする必要はありません。
むしろ、「これは自分だけで抱えない方がよい」と判断できることが、ラインケアでは重要です。
Q4. 人事総務につなぐ目安は何ですか?
次のような状態が続く場合は、管理職だけで対応せず、人事総務や産業保健スタッフにつなぐ必要があります。
- 遅刻、早退、欠勤が増えている
- 仕事のミスが明らかに増えている
- 表情や会話の変化が長く続いている
- 本人が「眠れない」「食べられない」と話している
- 涙が出る、強い不安を訴えるなどの様子がある
- 周囲との関係が急に悪くなっている
- 業務を続けることが本人の負担になっているように見える
人事総務につなぐときは、「問題社員として報告する」のではなく、「支援につなげる」という姿勢が大切です。
本人に伝える場合も、「心配なので人事に言います」ではなく、「一人で抱えなくてよいように、人事総務にも相談できる形にしましょう」と伝える方が受け入れられやすくなります。
Q5. 本人が話したがらないときは、どうすればよいですか?
声をかけても、本人がすぐに話してくれるとは限りません。
その場合、無理に聞き出す必要はありません。大切なのは、「話したくなったときに相談できる」と伝えておくことです。
たとえば、次のように伝えます。
- 「今すぐ話さなくても大丈夫です」
- 「必要なら、あとで時間を取りましょう」
- 「仕事量の調整が必要なら、一緒に考えます」
- 「人事総務にも相談できるので、一人で抱えないでください」
本人が話さないからといって、放置してよいわけではありません。様子を見ながら、仕事量、勤務状況、周囲との関係に変化がないかを確認します。
本人の話を待つことと、職場として何もしないことは違います。人事総務や管理職は、本人の尊厳を守りながら、必要な支援につなげる準備をしておく必要があります。
人事総務が準備しておきたい受け皿
声かけだけでは、職場のメンタルヘルス対策は成り立ちません。
管理職が声をかけた後に、どこへ相談すればよいのかが決まっていないと、管理職も本人も困ってしまいます。
人事総務が準備しておきたいのは、次のような受け皿です。
- 管理職が相談できる人事総務の窓口
- 産業医、保健師、外部相談窓口とのつなぎ方
- 業務量や勤務時間を見直す手順
- 本人の情報をどこまで共有するかのルール
- 休職や復職に進む前の早めの相談ルート
声かけを管理職任せにすると、管理職も疲弊します。健康経営では、メンタル不調が気になる社員だけでなく、声をかける側の管理職も支える必要があります。
タニカワ久美子が企業研修で伝えていること
タニカワ久美子の企業研修では、メンタル不調への声かけを「特別な対応」としてではなく、日常の職場で起こる迷いとして扱います。
研修の場では、管理職から「部下の様子が気になるけれど、どこまで聞いてよいのかわからない」という質問を受けることがあります。人事総務の担当者からも、「管理職によって声かけの仕方がばらばらで、社員を傷つけないか心配です」という相談があります。
そのため研修では、原因を追及する言い方ではなく、見えている変化を静かに伝える声かけを確認します。「最近少し疲れているように見えます」「仕事量が重なっていませんか」といった言い方なら、相手を責めずに話の入口をつくれます。
また、管理職が一人で抱え込まないことも重視しています。部下を支える管理職にも、相談先が必要です。人事総務が受け皿を用意しておくことで、声かけが個人任せにならず、職場全体の支援につながります。
まとめ|メンタル不調への声かけは、早めの支援につなげる入口
メンタル不調が気になる社員への声かけでは、原因を聞き出すよりも、まず見えている変化を静かに伝えることが大切です。
「最近忙しそうですね」「少し疲れているように見えました」といった一言が、本人にとって相談の入口になることがあります。
管理職は、部下の不調を一人で抱え込む必要はありません。変化に気づき、責めない声かけをし、必要に応じて人事総務や産業保健スタッフにつなぐことが、ラインケアの大切な役割です。
人事総務・健康経営担当者は、声かけを管理職任せにせず、相談先や業務調整の流れを用意しておく必要があります。社員が安心して相談できる職場は、管理職にとっても安心して支えられる職場になります。