健康経営戦略・KPI・エビデンス
社員の疲労は、欠勤や休職のように、すぐ数字として表れるとは限りません。
その前に、確認漏れ、判断の遅れ、やり直し、相談の減少、仕事の停滞など、日常業務の変化として現れることがあります。
健康経営で重要なのは、「疲れている社員が何人いるか」だけを見ることではありません。
疲労が仕事の質、確認時間、業務の進み方にどう関係しているのか。そして、職場側で何を変えられるのか。
この2つをセットで考える必要があります。
けんこう総研では、ストレス管理を社員個人のセルフケアだけで終わらせず、管理職の声かけ、業務負荷の調整、職場での行動変化につなげることを重視しています。
この記事では、人事総務・健康経営担当者が、社員の疲労を個人の体調問題だけで終わらせず、生産性や業務コストに関係する健康経営KPIとしてどう捉え、次の職場改善へつなげるかを解説します。
なお、業務ミスや生産性低下の原因を疲労と断定するものではありません。仕事の負荷、作業環境、システム、人員配置など、複数の要因を確認することが前提です。
社員の疲労は「体調」だけでなく業務の変化として現れる
社員の疲労は、必ずしも大きなトラブルとして現れるわけではありません。
職場では、まず次のような小さな変化として見えることがあります。
- 確認漏れや入力ミスが増える
- 仕事の優先順位を決めるまでに時間がかかる
- 書類や資料の差し戻しが増える
- 同じ作業を何度も確認する
- 困りごとの相談や共有が遅れる
- 特定の社員や管理職に仕事が集中する
- 休憩を取れない状態が続く
一つひとつは小さな変化でも、長期間続いたり複数の業務に広がったりすると、職場全体の負担につながる可能性があります。
例えば、ある社員の作業が遅れたとき、その仕事を別の社員が引き受けたり、管理職が追加で確認したりすれば、当初の作業時間以外にも負担が発生します。
ただし、その遅れが疲労によるものとは限りません。
健康経営では、仕事にどのような変化が起きているかを把握し、その背景に疲労や職場の負荷が関係していないかを検討することが重要です。
本記事でいう「疲労コスト」とは何か
本記事では、社員の疲労と重なって生じる可能性がある、仕事の手戻り、再確認、処理遅延、業務調整、周囲のフォローなどの負担を、実務上の「疲労コスト」と呼びます。
これは会計上の正式な費目ではありません。
健康課題と業務上の負担を関連づけて考えるための整理方法です。
| 職場で見える変化 | 業務上の影響 | 確認したい負担 |
|---|---|---|
| 確認漏れが増える | 修正や再確認が必要になる | 追加の確認時間、差し戻し件数 |
| 判断に時間がかかる | 決裁や作業が停滞する | 処理時間、待機時間 |
| 相談が遅れる | 問題が大きくなってから対応する | 追加対応、関係者の調整時間 |
| 仕事が偏る | 特定の社員や管理職へ負荷が集中する | 残業、応援工数、業務再配分 |
| 休憩が取れない | 疲労が蓄積しやすい勤務状況になる | 休憩環境、勤務計画、業務量 |
ここで確認するのは、社員個人の能力の優劣ではありません。
業務のどの部分に追加負担が発生し、その負担を減らすために職場として何ができるのかを検討します。
疲労コストの目的は、社員の疲れに値段を付けることではなく、改善すべき業務上の負担を見つけることです。
社員の疲労と業務リスクが重なったときの管理職判断
疲労と業務上の変化が同時に見られる場合、管理職は対応に迷うことがあります。
「重要な判断を任せてよいのか」「どこまで業務を調整すべきか」「本人が大丈夫と言っている場合はどうするのか」などです。
こうした場面では、本人の申告だけで判断したり、管理職が健康状態を診断したりすることは避け、業務上のリスクと職場で必要な対応を分けて確認します。
長時間労働・疲労時の管理職対応判断シート
社員の疲労が、確認漏れ、判断の遅れ、業務上の負担として見え始めたときに、管理職が確認したい項目を整理するためのシートです。
業務を続ける条件、休息や業務調整の必要性、専門職への相談など、次に確認すべき対応を整理する際にご活用ください。
健康経営KPIでは健康指標と業務指標を分けて見る
疲労を健康経営KPIとして扱う場合、一つの指標ですべてを判断することはできません。
本人の状態に関する情報、日常業務で確認できる情報、職場として実施した対応を分けて整理します。
| 領域 | 確認項目の例 | 何を判断するか |
|---|---|---|
| 健康・回復 | 適切に収集した疲労感、睡眠、休息に関する集団情報 | 疲労回復を妨げる条件がないか |
| 業務品質 | 差し戻し、手戻り、再確認件数 | 作業のどこに追加負担があるか |
| 業務時間 | 処理時間、滞留時間、残業時間 | 時間がかかる工程や負荷の集中がないか |
| 職場環境 | 休憩の取りやすさ、応援体制、業務分担 | 疲労対策を実践できる環境か |
| 管理職の行動 | 業務負荷の確認、業務調整、相談先の共有 | 必要な支援につながっているか |
重要なのは、健康情報と業務情報を無制限に結びつけないことです。
個人の疲労感や睡眠情報を管理職の業務評価に利用する必要はありません。
職場の業務データは業務改善に用い、健康に関する情報は必要性・本人の権利・法令・適切な管理体制を確認したうえで取り扱います。
KPIは測定できるから設定するのではなく、その結果を見てどの業務条件を改善するのかまで決めて設定します。
疲労コストを可視化するための4つの手順
社員の疲労と業務影響を整理するときは、最初から高度な健康測定機器を導入する必要はありません。
まず、既存の業務データと職場で起きている問題を整理することから始めます。
手順1|業務上の変化を具体的にする
「最近ミスが多い」「仕事が遅い」といった印象だけでは、改善すべき問題が明確になりません。
次のように、業務のどの工程で何が起きているかを確認します。
- 書類の差し戻しが増えている
- 確認に必要な工程が増えている
- 決裁までの時間が長くなっている
- 同じ担当者への依頼が集中している
- 急な応援や手直しが発生している
業務上の変化が確認できれば、原因を一つに決めつけず、改善すべき工程を検討できます。
手順2|疲労につながる職場条件を確認する
次に、業務上の変化が見られる時期や工程で、どのような負荷が発生しているかを確認します。
- 残業や連続した勤務が続いていないか
- 休憩を取りにくい時間帯がないか
- 急ぎの仕事が特定の人に集中していないか
- 問い合わせや確認業務が一部の社員に偏っていないか
- 仕事の手順やシステムに問題がないか
この段階で、疲労だけを原因と決めないことが重要です。
人員不足、作業手順、教育体制、システムの不具合なども併せて確認します。
手順3|職場で変えられる条件を決める
確認した結果をもとに、職場として実施できる改善を検討します。
例えば、業務の再配分、確認工程の見直し、休憩時間の確保、管理職による早めの声かけなどです。
重要なのは、社員へ「もっと注意するように」と求めるだけで終わらせないことです。
業務負荷や仕事の仕組みに課題がある場合は、組織として対応する必要があります。
手順4|改善後に同じ指標を確認する
改善を実施したら、事前に確認した業務指標を再び確認します。
差し戻し件数、再確認工数、処理遅延などがどう変わったかを見ます。
ただし、業務量や担当人数が変わっている場合は、単純な件数比較では判断できません。
可能な範囲で、処理件数や対象期間などの条件をそろえて比較します。
| 手順 | 確認すること | 次の判断 |
|---|---|---|
| 1. 業務変化 | どこで手戻り・遅延が発生しているか | 優先して確認する業務を選ぶ |
| 2. 背景条件 | 疲労、業務量、作業環境などの関連 | 改善する職場条件を選ぶ |
| 3. 改善実施 | 業務配分、休憩、手順、支援体制 | 誰が何を変更するか決める |
| 4. 再確認 | 手戻り、確認負担、業務停滞の変化 | 継続・修正・追加対応を判断する |
疲労コストはどのように試算するのか
業務上の負担を経営層に説明するときは、追加で発生している作業時間を金額に換算すると、規模感を共有しやすくなる場合があります。
例えば、ある部署で月40件の差し戻しがあり、1件につき平均15分の追加確認が必要だったと仮定します。
| 項目 | 仮の条件 |
|---|---|
| 差し戻し件数 | 月40件 |
| 1件当たりの追加時間 | 15分 |
| 追加確認時間 | 40件×15分=600分=10時間 |
| 時間当たりの換算額 | 3,000円 |
| 追加工数の換算額 | 10時間×3,000円=30,000円 |
この例では、差し戻しに対応するための追加工数を、月3万円相当と試算しています。
ただし、この3万円をそのまま「疲労による損失」と判断することはできません。
差し戻しの原因が疲労なのか、作業手順なのか、確認体制なのかは、別途検討する必要があります。
また、追加工数の金額換算は、必ずしも会社から追加で支払われた現金支出を意味しません。
改善によって作業時間が短縮されても、その時間を別の業務に利用する場合などは、現金支出の削減とは区別して扱います。
この試算の目的は、疲労の損失額を証明することではなく、職場で見直す価値のある追加業務がどの程度発生しているかを把握することです。
疲労KPIは件数だけでなく業務量に対する比率で見る
業務が増えれば、差し戻しや確認作業の件数が増えることがあります。
そのため、改善前後を比較するときは、件数だけでなく業務量に対する比率も確認します。
| 指標 | 計算・確認方法の例 | 注意点 |
|---|---|---|
| 差し戻し率 | 差し戻し件数÷処理件数×100 | 案件の難易度や確認基準の変更を考慮する |
| 追加確認時間 | 追加確認に要した時間の合計 | 何を追加確認と数えるか統一する |
| 平均処理時間 | 対象業務の処理時間÷処理件数 | 案件内容や担当範囲の違いを考慮する |
| 業務集中 | 特定工程への依頼件数や担当者の負荷 | 特定社員の能力評価に使わない |
| 業務調整の実施 | 負荷確認後に調整できた業務や工程 | 実施件数だけでなく調整の内容を見る |
例えば、差し戻し件数が減っても、処理件数が大きく減少していれば、業務品質が改善したとは限りません。
一方、業務量が増えているにもかかわらず、再確認時間が減少していれば、手順の改善が関係している可能性があります。
こうした確認を重ねることで、職場改善の方向性を判断しやすくなります。
疲労と生産性の関係を単純な因果で決めつけない
仕事の遅れやミスが増えたからといって、原因がすべて疲労とは限りません。
同じ現象でも、背景には複数の要因が考えられます。
| 職場で起きていること | 考えられる要因 | 確認する内容 |
|---|---|---|
| 入力ミスが増えた | 疲労、手順の複雑化、システム変更、教育不足 | どの工程・どの時期に集中しているか |
| 判断が遅くなった | 疲労、承認手順、情報不足、権限の曖昧さ | どこで判断が止まっているか |
| 相談が減った | 業務負荷、相談体制、職場風土、連絡手段 | 相談しにくい条件がないか |
| 管理職の確認時間が増えた | 人員不足、役割集中、業務量の増加 | 業務分担や確認方法に問題がないか |
健康経営では、「疲労があるから生産性が落ちた」と一つの原因に決めつけるよりも、疲労と業務上の変化が重なる状況を確認し、改善可能な条件を探すことが重要です。
社員個人の体調を原因として扱う前に、業務の仕組みや職場環境を確認する姿勢が求められます。
管理職は疲労の兆候をどう業務調整につなげるか
管理職が社員の疲労に気づいたとき、最初から健康状態を判断する必要はありません。
まず、業務上の安全や負荷を確認し、必要な対応を検討します。
| 確認する場面 | 管理職の対応例 | 次に確認すること |
|---|---|---|
| 確認漏れが続いている | 作業工程、納期、確認手順を見直す | 作業量や手順に問題がないか |
| 残業が続いている | 業務量と優先順位を確認する | 仕事の再配分や休息が必要か |
| 相談が遅れている | 業務について困っていることを確認する | 相談しやすい環境や支援があるか |
| 判断を要する業務が集中している | 確認者や担当の配置を見直す | 必要な判断体制が確保されているか |
| 強い疲労や不調が疑われる | 会社の安全確保手順に従い、必要な業務調整や相談先への接続を行う | 産業保健・医療機関など専門職の支援が必要か |
「大丈夫?」だけで終わらせない声かけ
タニカワ久美子の管理職向け研修では、部下の健康状態を問いただすのではなく、業務上の負担を具体的に確認する声かけを重視します。
例えば、次のような言葉です。
- 「最近、急ぎの案件が続いていますが、仕事の優先順位を調整する必要はありますか」
- 「確認作業が増えていますが、どの工程に時間がかかっていますか」
- 「休憩を取りにくい時間帯はありますか」
- 「一人で抱え込んでいる業務はありませんか」
管理職に求められるのは、部下の疲労を診断することではありません。
必要な業務調整を検討し、本人の意思とプライバシーに配慮しながら、必要な場合は人事総務や産業保健スタッフにつなぐことです。
安全上のリスクがある業務では、本人の「大丈夫」という申告だけで可否を判断せず、会社の安全管理手順や専門職の助言に従って対応します。
仕事の偏りと休憩環境も健康経営KPIに含める
社員の疲労は、本人の体力やセルフケアだけで決まるものではありません。
仕事の配分や職場の運用条件も関係します。
例えば、次のような状況があります。
- 急ぎの案件が同じ社員に集中する
- 経験者への問い合わせが集中する
- 管理職が判断や調整業務を抱え込む
- 休んだ社員の業務が特定の人に集まる
- 休憩を取ると仕事が滞るため、休みにくくなる
こうした状況では、セルフケアの方法を社員に伝えるだけでは十分ではありません。
仕事を分担できるか、応援体制をつくれるか、確認手順を改善できるかを検討します。
疲労対策として、短い休憩や軽運動を取り入れることも考えられますが、それによって過重な業務負荷を正当化してはいけません。
社員が疲労回復の行動を選べることと、その行動を実践できる職場環境があることの両方が必要です。
タニカワ久美子のストレス管理研修では何を確認するか
タニカワ久美子の企業研修では、疲労を「本人がつらいと感じているか」だけで捉えません。
研修の場では、呼吸、肩や首まわりのこわばり、疲労感、休憩の取り方など、日常業務で気づきやすい身体の反応を取り上げます。
座学だけでなく、短い軽運動などをその場で試すことで、受講者が自分に取り入れられそうな方法を考える機会を設けます。
ただし、研修中に軽運動ができたことだけで、疲労が改善したと判断するわけではありません。
職場へ戻ったあとに、実践できる時間や環境があったかを確認することが重要です。
管理職・人事総務と確認する職場の変化
研修や事前の相談では、次のような職場課題が挙がることがあります。
- 最近、仕事のやり直しが増えている
- 特定の社員へ仕事が偏っている
- 相談が遅くなっている
- 管理職の確認負担が増えている
- 休憩を取れない業務がある
このような場合、疲れている社員を探し出して評価するのではありません。
どの工程に負担が集中し、職場として何を変えればよいのかを検討します。
例えば、短い休憩の取り方を学んでも、現場で休憩が取れないのであれば、仕事の割り振りや勤務計画を見直す必要があります。
また、管理職が部下の疲労に気づいても、業務を調整する権限や支援体制がなければ、対応は続きません。
けんこう総研では、ストレス管理の知識を、社員の行動、管理職の対応、職場環境の改善へつなげることを重視しています。
疲労対策の成果は疲労感の数値だけで判断しない
疲労対策や研修を実施したあと、疲労感の数値だけを確認しても、何が改善したのか分からない場合があります。
例えば、研修後に疲労への理解が深まっても、業務の負荷が変わらなければ、職場全体の問題は残ります。
そのため、次のような変化も確認します。
| 改善の対象 | 確認する変化 | 次に判断すること |
|---|---|---|
| 社員のセルフケア | 休憩や軽運動などを試せる環境があるか | 実践を妨げる条件はないか |
| 管理職の対応 | 早めに業務負荷を確認できたか | 業務調整や相談支援が必要か |
| 業務品質 | 差し戻しや手戻りの状況 | 作業手順に改善が必要か |
| 業務負荷 | 残業や仕事の集中状況 | 人員配置や仕事の配分を見直すか |
| 職場環境 | 相談や休憩の取りやすさ | 制度や運用方法を調整するか |
評価では、社員個人のストレス耐性や疲労感を比較しません。
また、単に「ミスが減ったから疲労対策が成功した」と断定することも避けます。
業務量や人員配置、作業環境などを踏まえ、どの改善が関係している可能性があるかを検討します。
疲労KPIの運用では個人の健康情報を業務評価に使わない
疲労に関する情報を扱う場合は、個人情報やプライバシーへの配慮が欠かせません。
疲労感、睡眠、ストレスチェック結果などを、社員の能力評価や配置の優劣判定に利用することは避けます。
職場の業務改善には、必要な範囲の業務データを活用します。
健康情報については、収集目的、同意、閲覧権限、保管方法、集計単位などを明確にし、法令や社内規程に従って管理します。
特に少人数部署では、集計結果から個人が推測されないよう注意が必要です。
健康経営KPIは、社員個人を監視するためではなく、職場の負荷や支援体制を改善するために使用します。
経営層へは疲労そのものではなく業務影響と改善策を説明する
経営層に疲労対策の必要性を説明するとき、「社員が疲れています」という報告だけでは、優先すべき施策を判断しにくいことがあります。
その場合は、業務で確認できている変化と、実施したい改善策をセットで説明します。
| 現場からの報告 | 経営判断につなげる説明 |
|---|---|
| 社員の疲労が気になる | 業務負荷が集中している工程がないか確認する |
| ミスが増えている | 差し戻しや再確認に必要な工数を把握する |
| 休憩が取れていない | 業務計画や人員配置を見直す必要があるか判断する |
| 管理職の負担が大きい | 確認業務や調整権限の集中を見直す |
| 健康経営を強化したい | 健康課題と業務品質の両面から改善計画を立てる |
このように説明すると、健康経営は福利厚生だけの話ではなく、仕事の質と職場環境を維持・改善する取り組みとして共有しやすくなります。
ただし、業務損失がすべて健康施策で削減できるという意味ではありません。
経営層へは、確認できた事実、考えられる要因、改善案、今後の検証方法を分けて示すことが重要です。
疲労コストの把握と研修ROIの判断は分けて考える
本記事で扱う疲労コストは、職場で生じている手戻り、確認負担、業務の停滞などを把握するための考え方です。
一方、健康経営研修のROIを検討する場合は、研修に必要な総投資額と、合理的に確認・推定できる便益を比較する必要があります。
手戻りの追加工数が月3万円相当と試算されたからといって、研修を実施すれば月3万円の費用を削減できるとは限りません。
疲労コストはどの業務を改善するかを判断する材料です。
研修ROIはその改善のために研修へ投資する妥当性があるかを判断する材料です。
健康経営研修の総投資額、ROIの計算方法、助成金の考え方、稟議での説明については、
健康経営研修の費用対効果|稟議で説明するROIの考え方
で解説しています。
人事総務が疲労KPIを設計するときの5つの問い
社員の疲労を健康経営の施策判断につなげる場合は、次の5点を確認してください。
| 確認項目 | 判断するための問い |
|---|---|
| 1. 業務上の変化 | どの工程に、どのような手戻りや遅延があるか |
| 2. 背景にある負荷 | 疲労、業務量、人員配置、作業環境など何が関係しているか |
| 3. 追加負担 | 確認時間、手戻り、応援工数など何が増えているか |
| 4. 改善行動 | 管理職や組織として何を変更できるか |
| 5. 再確認 | 改善後にどの業務指標と職場条件を見直すか |
この5点を整理すると、疲労への対応を個人任せにせず、業務改善として扱いやすくなります。
KPIの数を増やすことよりも、確認結果を受けて誰が何を判断するのかを明確にすることが重要です。
疲労コストと健康経営KPIについてよくある質問
Q. 疲労コストは必ず金額に換算する必要がありますか?
必ずしも必要ありません。
差し戻し件数、追加確認時間、業務集中などの実態を把握するだけでも、職場改善の判断材料になります。
金額換算をする場合は、算定条件を明示し、疲労による損失額だと断定しないことが重要です。
Q. 業務ミスが増えたら疲労が原因と考えてよいですか?
業務ミスの増加だけで疲労が原因とは判断できません。
作業手順、業務量、システム、人員配置、教育体制など、複数の条件を確認する必要があります。
Q. 疲労KPIを設定するために社員全員の疲労度を測定する必要がありますか?
必ずしも必要ありません。
既存の業務データや職場環境の確認から、改善すべき課題を整理することができます。
健康情報を取り扱う場合は、必要性とプライバシー保護を十分に検討する必要があります。
Q. 管理職は疲れている社員をどう評価すればよいですか?
疲労の程度を人事評価するのではなく、業務の安全性や負荷を確認し、必要な調整や支援を検討します。
管理職が健康状態を診断する必要はありません。必要に応じて人事総務や産業保健スタッフなどの専門職と連携します。
Q. 疲労対策の研修を実施したあと、何を評価すればよいですか?
研修の理解度や満足度に加え、社員が実践できたセルフケア、管理職の声かけや業務調整、休憩の取りやすさ、業務上の手戻りなどを確認します。
ただし、業務指標の変化を研修だけの成果と断定せず、職場環境やほかの施策の影響も考慮します。
まとめ|疲労コストは「仕事に何が起き、何を変えるか」で判断する
社員の疲労は、欠勤や休職になる前から、確認漏れ、手戻り、判断の遅れ、相談の減少、管理職の確認負担などと重なって現れることがあります。
健康経営で重要なのは、疲労している社員を探すことではありません。
業務上の変化を確認し、その背景にある負荷を整理し、職場として改善できる条件を見つけることです。
けんこう総研では、ストレス管理の知識を社員個人のセルフケアだけで終わらせず、管理職の声かけ、業務調整、休憩環境、職場改善へつなげることを重視しています。
健康経営KPIも、社員個人の健康状態を評価するためではなく、仕事の質と働きやすさを守るための改善判断に活用します。
疲労・ストレスによる職場課題を、改善につながるKPIへ整理したい方へ
けんこう総研では、疲労やストレスへの気づき、社員向けストレス管理研修、管理職の声かけ、業務負荷の見直し、研修後の行動変化を結びつけた健康経営支援を行っています。
現在の職場課題に合わせて、何を確認し、どの改善を優先するかを整理します。
文責:タニカワ久美子
\n著者・実績・研修依頼
研修テーマが未定でも、対象者・職場状況・実施時期に合わせて整理します。