健康経営
健康経営を評価できない理由|判断軸と見直し方
健康経営に取り組んでいるのに、「成果が見えない」「評価の仕方が分からない」と感じる企業は少なくありません。
これは、健康経営そのものが間違っているという意味ではありません。
多くの場合、問題は、何を成果として見るのか、どの情報をもとに続けるか見直すかを判断するのかが決まっていないことにあります。
この記事では、健康経営を評価できない理由と、人事総務・健康経営担当者が持っておきたい判断軸を扱います。
同じ健康経営でも、本記事は「健康経営が続かない理由」の記事ではありません。取り組みを続けるか、見直すか、経営層へどう説明するかを判断するための評価の見方に焦点を当てます。
健康経営を評価できないと感じる理由
健康経営は、売上や利益のように短期間で分かりやすく結果が出る取り組みではありません。
研修を実施した。ストレスチェックを行った。健康診断の結果を確認した。相談窓口を案内した。
こうした取り組みは大切ですが、それだけでは「健康経営として成果があったのか」を判断しにくいことがあります。
評価できないと感じる企業では、次のような状態が起こりやすくなります。
- 何を成果として見るのかが決まっていない
- 短期間で大きな数値変化だけを求めている
- 研修後の行動変化を見ていない
- 健康診断やストレスチェックの結果を経営課題と結びつけていない
- 経営層に説明する材料が実施報告だけになっている
- 次年度に何を見直すかが決まらない
健康経営を評価するには、実施したかどうかだけでは足りません。
実施後に、社員や職場に何が残ったかを見る必要があります。
短期的な成果だけで見ると評価しにくい
健康経営の成果は、すぐに大きな数字として表れるとは限りません。
たとえば、メンタルヘルス研修を行った翌月に休職者数が大きく減るとは限りません。健康診断後の研修を行っても、翌年すぐに有所見率が下がるとは限りません。
だからといって、取り組みが無意味だったとは言えません。
健康経営では、短期の大きな成果だけでなく、次のような小さな変化を見る必要があります。
- 社員が相談先を知るようになった
- 管理職が部下の変化に気づきやすくなった
- 研修後に職場で話し合う機会ができた
- ストレスチェック後の職場改善につながった
- 健診後の受診勧奨や保健指導につながった
- 人事総務担当者が経営層へ説明しやすくなった
大きな数値だけを見ると、健康経営の途中経過を見落とします。
人事総務・健康経営担当者は、短期で出る変化と、中長期で見る変化を分けて考える必要があります。
評価対象が曖昧だと判断材料にならない
健康経営を評価できない理由の一つは、評価する対象が曖昧なことです。
「健康意識を高める」「働きやすい職場にする」「メンタルヘルスを改善する」という言葉だけでは、何を見ればよいかが分かりません。
評価対象を決めるときは、次のように具体化します。
- 社員が相談先を知っているか
- 管理職が声かけを実施しているか
- ストレスチェック後に職場改善が行われたか
- 健診後の再検査受診につながっているか
- 研修後に各部署で実行する行動が決まったか
- 休職や離職の前段階にあるサインを見られているか
評価対象が具体的になると、健康経営は「何となく良かった」ではなく、続けるか見直すかを判断できる取り組みになります。
健康と業務を切り離すと経営判断に使えない
健康経営を評価できない企業では、健康と業務が切り離されていることがあります。
健康は健康管理部門の仕事、業務改善は現場の仕事、人材定着は経営の仕事というように分けてしまうと、健康経営の成果が見えにくくなります。
しかし実際には、社員の健康状態は業務と深く関係しています。
- 睡眠不足が集中力低下につながる
- 強いストレスがミスや確認漏れにつながる
- 体調不良が欠勤や休職につながる
- 相談しにくい職場が離職につながる
- 管理職の負担がチーム全体の働き方に影響する
健康経営を経営判断に活かすには、健康施策を業務の外側に置かないことです。
社員の健康、職場の行動、人材定着、業務継続をつなげて見ることで、健康経営は判断材料になります。
健康経営の評価で見るべき判断軸
健康経営を評価するときは、数値だけを見ても十分ではありません。
もちろん、ストレスチェック結果、健康診断の有所見率、休職者数、離職率などの数値は重要です。
ただし、それだけでなく、行動や職場の変化を見る必要があります。
人事総務・健康経営担当者が確認したい判断軸は、次の3つです。
- 社員や管理職の行動に変化が起きているか
- 職場の状態に変化が見られるか
- 経営課題との接点が明確になっているか
この3つを見れば、健康経営は「やったかどうか」ではなく、「次に何を判断するか」で扱えるようになります。
判断軸1:行動に変化が起きているか
健康経営の取り組みは、社員や管理職の行動に残っているかを見ることが重要です。
たとえば、次のような変化です。
- 社員が自分のストレスサインに気づきやすくなった
- 管理職が部下に声をかける回数が増えた
- 相談先を確認する社員が増えた
- 研修後に部署内で話し合いが行われた
- 健康診断後に再検査を受ける社員が増えた
- 休憩や業務調整について話しやすくなった
こうした行動変化は、すぐに大きな経営指標には出ないかもしれません。
しかし、健康経営が職場に残り始めているサインとして見ることができます。
判断軸2:職場の状態に変化が見られるか
健康経営では、個人の健康だけでなく、職場の状態を見る必要があります。
社員一人ひとりが頑張っても、職場の負担が大きいままでは健康経営は進みません。
職場の状態を見るときは、次の点を確認します。
- 相談しやすい雰囲気があるか
- 特定の社員に負担が偏っていないか
- 休憩や業務調整がしやすいか
- 管理職が部下対応を一人で抱えていないか
- ストレスチェック後に職場改善の話し合いが行われているか
- 健康に関する情報が社員に届いているか
健康経営の評価では、社員個人の努力だけでなく、職場として支える形になっているかを見ることが大切です。
判断軸3:経営課題との接点が明確か
健康経営を経営層に説明するには、経営課題との接点を示す必要があります。
健康施策だけを単独で説明すると、「大切なのは分かるが、経営とどう関係するのか」が伝わりにくくなります。
次のように結びつけると、判断材料になります。
- メンタルヘルス対策と休職予防
- 健康診断後の行動変容と生活習慣病予防
- 管理職研修と部下対応の負担軽減
- 職場改善と人材定着
- ストレスチェック後の対応と業務継続
- 健康行動の定着とパフォーマンス維持
健康経営を経営判断に使うには、「健康によい取り組み」ではなく、「会社のどの課題に関係しているのか」を示すことが必要です。
評価は、続けるか見直すかを決めるために行う
健康経営の評価は、成果を誇示するためだけのものではありません。
大切なのは、続けるか、やり方を変えるか、次に何を見るかを決めることです。
たとえば、研修後に社員の理解度は上がったが、職場での行動につながっていない場合、研修内容そのものよりも研修後フォローを見直す必要があります。
ストレスチェック結果に大きな変化はなくても、管理職が職場改善の話し合いを始めているなら、その動きを続ける価値があります。
評価とは、点数をつけることではありません。
次の判断に使える情報を見つけることです。
タニカワ久美子の企業研修で見てきたこと
タニカワ久美子の企業研修では、「健康経営の成果をどう見ればよいか分からない」という相談を受けることがあります。
多くの担当者は、研修やストレスチェック、健康診断後の対応を真面目に進めています。
しかし、経営層へ説明するときに「研修を実施しました」「アンケートでは満足度が高かったです」だけでは、次の判断につながりにくいことがあります。
研修では、担当者に「満足度だけで終わらせず、社員や管理職の行動に何が残ったかを見てください」と伝えています。
管理職には、「健康経営は人事総務の報告書を増やすためではありません。部下が無理を重ねる前に気づき、職場で調整できるようにするための取り組みです」と話します。
健康経営の評価は、難しい分析を増やすことではありません。職場で何が変わったかを、経営層が判断できる言葉に変えることです。
健康経営担当者が確認したい評価項目
健康経営を評価するとき、人事総務・健康経営担当者は次の点を確認してください。
- この取り組みで何を変えたかったのか
- 社員や管理職の行動に変化があったか
- 職場の状態に小さな変化があったか
- 経営課題と結びつけて説明できるか
- 次年度に続けること、やめること、変えることが見えているか
- 経営層へ実施報告ではなく判断材料として出せるか
この確認ができると、健康経営の評価は難しいものではなくなります。
取り組みを採点するのではなく、次に何を判断するかを見るための材料になります。
まとめ:健康経営を評価するには判断軸が必要
健康経営を評価できないと感じる理由は、成果が出ていないからとは限りません。
多くの場合、何を成果として見るのか、どの情報を経営判断に使うのかが決まっていないことが原因です。
短期的な数値だけでは、健康経営の途中経過を見落とします。
社員や管理職の行動変化、職場の状態、経営課題との接点を見ることで、健康経営は評価しやすくなります。
評価は、続けるか、見直すか、次に何を行うかを決めるためのものです。
健康経営に取り組んでいるのに、成果の見方や評価の仕方に迷っている方へ。
けんこう総研では、現在の取り組みを確認しながら、健康経営を経営判断に使える形へ変える進め方を一緒に確認しています。
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