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職場の運動施策が続かない理由|参加者が偏る健康経営を見直す

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ユーストレス(良性ストレス)

職場の運動施策が続かない理由|参加者が偏る健康経営を見直す

職場で運動を取り入れる企業は増えています。

ウォーキングイベント、ストレッチ、体操、運動セミナー、朝礼での身体ほぐしなどは、社員の健康づくりのきっかけになります。

ただ、運動イベントを行えば、それだけでストレス対策や健康経営の成果につながるわけではありません。

現場では、最初は参加者が集まっても、しだいに参加する人が偏ることがあります。

健康意識の高い社員だけが続ける。忙しい部署ほど参加できない。運動が苦手な社員は遠ざかる。管理職が声をかけても、研修後の日常行動には残らない。

このような状態は、社員の意識が低いから起きるのではありません。

職場の運動施策が、業務時間、参加しやすさ、体力差、心理的な抵抗感、休憩の取りやすさとつながっていないと起こりやすくなります。

職場の運動は、社員を鍛えるためのものではありません。

社員が自分の体調に気づき、気分を切り替え、ストレスをため込みにくくするための取り組みとして設計することが大切です。

 

タニカワ久美子が骨格モデルを持ちながら職場の運動施策とストレス管理について説明している様子

職場の運動施策は、社員を鍛えるためではなく、無理なく回復しやすい行動を職場に置くために設計します。

職場の運動施策が続かない理由

職場の運動施策は、導入そのものはしやすい取り組みです。

ストレッチ動画を共有する。歩数イベントを行う。研修で体操を入れる。昼休みにウォーキングを案内する。

これらは始めやすく、健康経営の取り組みとしても説明しやすいものです。

しかし、現場では続かないことがあります。

理由は、運動の内容が悪いからとは限りません。

職場の働き方や参加しやすさに合っていないと、健康施策が日常行動に残りにくくなります。

職場で起きやすいこと 続きにくい理由 設計で見直したいこと
参加者がいつも同じになる 健康意識の高い人だけの施策になっている 運動が苦手な人も選べる内容にする
忙しい部署ほど参加できない 健康施策が追加予定になっている 会議前後や勤務中に短く入れられる形にする
最初だけ盛り上がる イベント後の日常行動に戻っていない 研修後に続ける行動を決めておく
参加しない社員が目立つ 暗黙の強制感が出ている 自由参加と代替行動を明確にする
ストレス対策につながらない 運動と休憩・相談・業務量が切り離されている ストレス管理研修と一体で設計する

職場の運動施策で見たいのは、参加者数だけではありません。

社員が自分の疲れに気づき、短い回復行動を職場で使えるようになっているかです。

運動は、やればよい施策ではありません

健康経営の一環として、ウォーキングイベント、ストレッチ、体操、運動セミナーなどを行う企業があります。

こうした取り組みは、社員が自分の体に目を向けるきっかけになります。

座りっぱなしの時間に気づく。肩や首のこわばりに気づく。仕事の合間に気分を切り替える時間を持つ。

このような効果は、職場のストレス管理にとって大切です。

一方で、職場の運動施策には注意もあります。

参加を強制したり、運動が得意な人だけが目立ったり、忙しい部署にさらにイベント参加を求めたりすると、健康施策のはずが負担になることがあります。

職場の運動は、社員に運動をさせるためのものではありません。

社員が自分の体調に気づき、気分を切り替え、無理なく回復できる選択肢を増やすためのものです。

人事総務・健康経営担当者の、実際の困りごと

  • 運動施策を始めたが、参加者が偏っている
  • 健康意識の高い社員だけが参加している
  • 忙しい部署ほど参加できない
  • 体操やストレッチを入れても、研修後に続かない
  • 参加しない社員に配慮した設計になっていない
  • 運動施策が、休憩や相談しやすさにつながっていない

 

運動が心理的ストレスに関係する理由

運動には、気分転換、緊張のゆるみ、睡眠の改善、体力維持、達成感などにつながる可能性があります。

体を動かすと、呼吸、血流、筋肉の緊張、姿勢、注意の向きが変わります。

その結果、仕事で高まった緊張や疲労感を切り替えやすくなることがあります。

ただし、すべての社員に同じ効果が出るわけではありません。

運動が好きな社員には気分転換になります。

けれども、運動が苦手な社員、体力に不安がある社員、すでに疲れ切っている社員にとっては、運動そのものが負担になる場合があります。

そのため、職場では「運動は良いこと」と一律に考えないことです。

社員が選べる形にしておくことで、運動は押しつけではなく、自分の体調に気づくきっかけになります。

ランナーズハイを職場施策に使わない

運動とストレスを考えるとき、「ランナーズハイ」という言葉が使われることがあります。

ランナーズハイは、長時間のランニングなどで、苦しさや痛みが軽くなり、気分が高まったように感じる状態として知られています。

 

職場の運動施策で大切なのは、ランナーズハイではありません。

職場で必要なのは、強い運動による高揚感ではなく、日常業務の中で使える小さな回復行動です。

会議の前に肩を回す。長時間座った後に立ち上がる。呼吸を整える。クレーム対応後に短い休憩を入れる。

このような小さな行動の方が、職場のストレス管理には残りやすくなります。

ランナーズハイのような高揚感を健康施策の成功イメージにしてしまうと、運動が得意な人だけの話になりやすくなります。

職場の運動施策では、高揚感よりも、回復感、参加しやすさ、継続しやすさを見ます。

職場で使うときに気をつけたいこと

運動と心理的ストレスに関する研究では、学校場面を対象にしたものもあります。

たとえば、体育授業の中での対人ストレスや、児童の体力、スクリーンタイム、心理的ストレス反応との関係が検討されています。

こうした研究は、運動や身体活動が心理的ストレスと関係する可能性を考えるうえで参考になります。

ただし、学校での研究結果を、そのまま職場に当てはめることはできません。

職場には、業務量、役割、評価、上司部下関係、部署間の温度差、顧客対応、シフト勤務など、学校とは異なる条件があります。

人事総務が職場で運動施策を考えるときは、研究知見をそのまま持ち込むのではなく、自社の働き方に合わせて使いやすい形に変える必要があります。

職場運動で起こりやすい失敗

職場の運動施策がうまくいかない場合、内容そのものよりも設計に原因があることがあります。

失敗しやすい設計 起こりやすい問題 見直すポイント
全員参加にする 運動が苦手な社員や体調不安のある社員の負担になる 自由参加にし、別の回復方法も用意する
歩数や順位を競わせる 参加しない人が疎外感を持つ 競争より、続けやすさを重視する
忙しい時期にイベントを増やす 健康施策が追加負担になる 繁忙期や部署状況を確認する
運動だけでストレス対策にする 業務量や相談しにくさが放置される 休息、相談、仕事量調整と組み合わせる
効果を参加率だけで見る 本当に職場の状態が変わったか分かりにくい 疲労感、相談行動、休憩の取りやすさも見る

職場の運動施策は、実施することが目的ではありません。

社員が無理なく使えるか。ストレス管理につながっているか。参加しない社員にも配慮できているか。そこまで見ていきます。

職場の運動を設計するときの5つの視点

人事総務・健康経営担当者が職場運動を設計するときは、次の5つを確認しておくと、単発イベントで終わりにくくなります。

1. 目的を明確にする

まず、「なぜ運動を取り入れるのか」をはっきりさせます。

体力づくりなのか、座りっぱなし対策なのか、気分転換なのか、ストレス管理なのか、部署間交流なのかによって、必要な内容は変わります。

目的があいまいなまま運動イベントを行うと、単発の福利厚生で終わりやすくなります。

2. 強制しない

職場の運動は、強制すると逆効果になることがあります。

体調、年齢、持病、運動経験、心理的な抵抗感は人によって違います。

参加しない社員を「健康意識が低い」と見ないことが大切です。

自由参加であることに加えて、参加しない人が目立たない設計にしておくと安心です。

3. 強度を選べるようにする

同じ運動でも、人によって感じる負荷は違います。

立って行う運動、座ってできる運動、短時間のストレッチ、深呼吸、軽い散歩など、複数の選択肢を用意すると参加しやすくなります。

「できる人に合わせる」のではなく、「無理なく参加できる人を増やす」設計が必要です。

4. 仕事の状況と合わせて考える

職場のストレスは、運動だけで解決するものではありません。

仕事量、休憩の取りやすさ、相談しやすさ、上司の声かけ、シフトの組み方も関係します。

運動施策は、業務改善や管理職支援と切り離さずに考えます。

5. 実施後に確認する

運動施策は、実施して終わりではありません。

社員が使いやすかったか、負担になっていないか、休憩や気分転換につながったかを確認します。

参加率だけでなく、職場での変化を見ることが大切です。

職場で取り入れやすい運動の例

職場で取り入れやすいのは、短時間で、準備が少なく、強度を選べる運動です。

方法 取り入れやすい場面 注意点
椅子に座ったストレッチ 研修中、会議前、休憩時間 痛みがある人は無理をしない
肩回し・首まわりの軽い運動 長時間のPC作業後 強く回しすぎない
昼休みの自由参加ウォーキング 昼休み、就業後 参加を強制しない
深呼吸と姿勢調整 会議前、クレーム対応後 呼吸法を押しつけない
短時間の体ほぐし 研修冒頭、職場朝礼 服装や場所に配慮する

大切なのは、社員が「これならできる」と感じられることです。

健康経営の運動施策は、きつい運動を増やすことではなく、回復しやすい行動を職場に置くことです。

運動はユーストレスになる場合があります

運動は、心と体に一定の負荷をかけます。

その負荷が本人に合っていて、気分転換、達成感、回復感につながる場合、ユーストレスとして考えることができます。

ユーストレスとは、成長や前向きな行動につながる良いストレスです。

ただし、運動が強すぎる、強制される、体力差が配慮されない、休息がない場合は、ディストレスになることがあります。

つまり、運動をユーストレスにするには、負荷と回復のバランスが必要です。

ユーストレスの意味やディストレスとの違いについては、ユーストレス(良性ストレス)とは|職場で活かすストレス資源の全体像で詳しく紹介しています。

人事総務・健康経営担当者が確認したいこと

職場運動をストレス管理に活かすには、次の点を確認しておきたいところです。

  • 運動施策の目的が明確か
  • 参加を強制していないか
  • 運動が苦手な社員にも別の選択肢があるか
  • 忙しい部署に追加負担をかけていないか
  • 仕事量や休憩の取りやすさも見直しているか
  • 実施後に社員の反応を確認しているか
  • 参加者が固定化していないか
  • 管理職が部下の疲労や不安に気づけているか

運動施策は、健康イベントではなく、職場のストレス管理の一部として設計することが大切です。

専門職でも迷うポイント

職場の運動施策は、専門職でも判断に迷うことがあります。

理由は、運動そのものが健康によいイメージを持たれやすいからです。

運動した方がよい。歩いた方がよい。ストレッチは体によい。

これらは間違いではありません。

ただ、職場で扱う場合は、社員の体調、疲労、心理的抵抗、参加しやすさ、業務量まで合わせて見ます。

専門職でも迷うのは、よい施策に見えるほど、参加しにくい人や疲れている人の負担が見えにくくなるからです。

だからこそ、運動量だけではなく、運動後に回復感があるか、職場で続けやすいか、参加しない人が不利益を感じていないかを見ていきます。

社内で動かしにくい理由

職場の運動施策が社内で動かしにくいのは、人事総務、管理職、社員本人、社内支援者が見ているものが違うからです。

人事総務は、健康経営やストレス対策として見ています。

管理職は、業務時間、参加しやすさ、現場の忙しさを見ています。

社員は、自分の体調、周囲の目、運動への得意不得意、参加しない時の見られ方を気にしています。

社内支援者や専門職は、疲労、体調、心理的安全性、強制感の有無を見ています。

それぞれの見方は、どれも間違いではありません。

ただ、同じ言葉で話せていないと、運動施策が「よいことだから参加しましょう」で止まりやすくなります。

職場で運動を扱うときは、参加率だけを共通目標にしないことです。

社員が自分の疲労に気づけるか。短い回復行動を選べるか。運動が苦手な人も参加しやすいか。忙しい部署にも負担になっていないか。

ここまでそろえると、運動施策は健康イベントではなく、職場のストレス管理になります。

タニカワ久美子が企業研修で見てきたこと

タニカワ久美子の企業研修では、ストレス対策として軽い運動や身体ほぐしを取り入れることがあります。

人事総務の担当者からも、座学だけではなく、全員で実際にできる軽い運動がある点を評価されることがあります。

ただし、現場で大切にしているのは、社員に「もっと運動しましょう」と求めることではありません。

研修の場には、運動が好きな社員もいれば、人前で体を動かすことに抵抗がある社員もいます。

体力に自信がある社員もいれば、疲れが強くて本当は休みたい社員もいます。

また、職場で運動施策を実施すると、参加者が固定化することがあります。

最初は全体に案内しても、続けて参加するのは健康意識の高い社員だけになる。忙しい部署の社員は参加できない。管理職は「いい取り組みだ」と言うけれど、現場では時間が取れない。

こうした場面は、研修現場でもよく見えます。

このときに必要なのは、「もっと参加してください」と言うことではありません。

なぜ参加者が偏るのか。忙しい部署でも使える形になっているか。運動が苦手な社員にも別の選択肢があるか。そこを設計から見直すことです。

そのため、研修では椅子に座ったままできる動き、呼吸を整える方法、短時間で体の緊張に気づく方法を中心にしています。

社員が「やらされている」と感じるのではなく、「今日は少し動く」「今日は呼吸だけ整える」「今日は休む」と選べることが、職場のストレス管理では大切です。

研修後には、「肩に力が入っていたことに気づいた」「座ったままなら参加しやすかった」「運動というより、仕事中の切り替えとして使えそう」という反応が出ることがあります。

この小さな反応が、職場で続く行動につながります。

健康経営研修で扱いたい内容

職場の運動施策を研修で扱う場合は、運動のやり方だけでは足りません。

社員が自分の体調に気づき、管理職が職場で続けやすい環境を整えるところまで扱うと、実務につながりやすくなります。

研修で扱う内容 職場で変えたい行動
ストレス反応と身体のこわばり 疲労や緊張に早めに気づく
座ったままできる軽い運動 運動が苦手な社員も参加しやすくする
呼吸と姿勢のリセット 会議前後やPC作業後に短く整える
参加しやすい運動施策の設計 参加者の偏りや強制感を減らす
管理職の声かけ 休憩や回復行動を取りやすい空気をつくる

職場の運動施策は、社員の自己努力だけに任せると続きにくくなります。

人事総務、管理職、社員が同じ視点で、無理なく続けられる形を共有することが大切です。

まとめ|職場の運動施策は、設計次第でストレス管理に活かせます

職場の運動は、社員の身体的健康だけでなく、心理的健康を支える取り組みにもなります。

しかし、運動を導入するだけでは成果につながりません。

目的を明確にし、強制せず、強度を選べるようにし、仕事量や休憩、相談しやすさと合わせて考えることが大切です。

人事総務・健康経営担当者にとって大切なのは、社員に運動をさせることではありません。

社員が自分の体調に気づき、無理なく回復できる職場をつくることです。

参加者が偏る、続かない、忙しい部署ほど参加できないという課題がある場合は、運動施策を責めるのではなく、設計を見直すタイミングです。

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参考文献

  • 佐々木万丈, 西田保, 渋倉崇行. 体育授業中の友人ストレッサーとコーピング. 体育学研究. 2007;52(6):453–463.
  • 長野真弓, 足立稔ほか. 児童の体力ならびにスクリーンタイムと心理的ストレス反応との関連性 −地方都市郊外の公立および都市部私立小学校における検討−. 体力科学. 2015;64(1):195–206.

文責:タニカワ久美子

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