良いストレスと悪いストレスの違い|職場で見分ける支援と回復の条件

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良いストレスと悪いストレスの違い|職場で見分ける支援と回復の条件

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ストレス管理

良いストレスと悪いストレスの違い|職場で見分ける支援と回復の条件

ストレスには、集中や成長につながるものと、心身を消耗させるものがあります。

一般には、前者を「良いストレス」、後者を「悪いストレス」と呼ぶことがあります。専門的には、良いストレスはユーストレス、悪いストレスはディストレスと呼ばれます。

ただし、同じ出来事がすべての社員にとって良いストレスになるわけではありません。

ある社員には成長の機会でも、別の社員には大きな負担になることがあります。仕事の内容だけでなく、本人の状態、相談できる相手、仕事の進め方を選べるか、終わったあとに回復できるかによって、ストレスの意味は変わります。

この記事では、良いストレスと悪いストレスの違いを、人事総務・健康経営担当者が職場で見分けやすいように、支援・裁量・回復の視点から見ていきます。

良いストレスと悪いストレスの違いを考えるイメージ

良いストレスと悪いストレスの違いは、出来事そのものではなく、受け止め方・支援・回復の有無によって変わります。

良いストレスと悪いストレスの違い

良いストレスとは、緊張や負荷があっても、本人が「何とか対応できそう」「成長につながりそう」と感じられるストレスです。

悪いストレスとは、負荷が強すぎたり、支援がなかったり、休んでも回復できなかったりして、心身を消耗させるストレスです。

項目 良いストレス 悪いストレス
専門用語 ユーストレス ディストレス
受け止め方 挑戦、成長機会、達成への緊張 脅威、不安、消耗、先が見えない負担
身体反応 一時的な緊張や集中が起こる 緊張が長引き、疲労や不調につながる
行動への影響 準備、集中、行動、達成感につながりやすい 回避、ミス、意欲低下、対人不調につながりやすい
回復 終わった後に休める、達成感が残る 休んでも疲れが抜けにくい
職場での例 支援のある新しい業務、適度な責任、成長課題 過重労働、孤立、ハラスメント、慢性的な人手不足

重要なのは、良いストレスと悪いストレスを、出来事の種類だけで決めないことです。

同じプレゼンでも、準備時間があり、相談できる上司がいて、本人が成長機会と受け止められるなら、良いストレスになりやすくなります。

一方で、準備不足のまま強い責任だけを負わされる場合は、悪いストレスになりやすくなります。

ユーストレスとは、成長につながる良いストレスです

ユーストレスとは、前向きな行動や成長につながるストレスです。

まったく緊張がない状態では、人は集中しにくくなります。適度な緊張があることで、準備をしたり、注意力を高めたり、目標に向けて行動しやすくなったりします。

たとえば、次のような場面です。

  • 重要な発表に向けて準備を進める
  • 新しい仕事に挑戦して成長を感じる
  • 適度な期限があることで集中できる
  • 責任ある役割を任され、やりがいを感じる
  • 困難を乗り越えた後に達成感が残る

ユーストレスは、単に「楽しいストレス」ではありません。

緊張や負荷はあります。けれども、その負荷が本人にとって対処できる範囲であり、意味や成長につながると感じられる点が特徴です。

ディストレスとは、心身を消耗させる悪いストレスです

ディストレスとは、心身を消耗させるストレスです。

負荷が強すぎる、長く続く、支援がない、仕事の進め方を選べない、回復できない状態では、ストレスはディストレスになりやすくなります。

職場では、次のような状態が当てはまります。

  • 長時間労働が続いている
  • 業務量が多すぎて終わりが見えない
  • 相談しても支援が得られない
  • 失敗を強く責められる
  • 人間関係の緊張が続いている
  • 休んでも疲れが取れない
  • 仕事への意欲や達成感が下がっている

ディストレスが続くと、疲労、睡眠不調、不安、気分の落ち込み、集中力低下、バーンアウトなどにつながることがあります。

悪いストレスは、本人の我慢や気合いで処理させるものではありません。

人事総務や管理職は、業務量、役割、支援体制、相談しやすさを職場の問題として確認する必要があります。

同じ出来事でも良いストレスにも悪いストレスにもなります

良いストレスと悪いストレスの違いを考えるとき、最も大切なのは、同じ出来事でも人によって意味が変わることです。

たとえば、管理職への昇進は、ある社員にとっては成長の機会かもしれません。

しかし、支援がなく、業務量が過大で、家庭の介護や育児も重なっている社員にとっては、大きな負担になることがあります。

出来事 良いストレスになりやすい条件 悪いストレスになりやすい条件
新しい仕事を任される 目的が明確で、相談先があり、学習機会がある 説明不足で、責任だけが増え、支援がない
プレゼンを担当する 準備時間があり、練習でき、評価基準が明確 急に任され、失敗への圧力が強い
管理職になる 役割教育と上位者支援がある 部下対応も業務責任も一人で抱える
繁忙期を迎える 期間が限定され、応援体制と休息がある 慢性的に続き、終わりが見えない
異動する 期待役割と引き継ぎが明確 孤立し、相談先がなく、成果だけ求められる

ストレスの良し悪しは、出来事そのものではなく、本人の受け止め方、対処できそうという感覚、支援、裁量、回復の有無によって変わります。

良いストレスが職場にもたらすもの

良いストレスは、適切に働くと、行動や成長を後押しします。

職場では、次のような変化につながることがあります。

  • 集中力が高まりやすい
  • 準備行動が促される
  • 達成感が得られやすい
  • 自己効力感が高まりやすい
  • 新しい経験を学習につなげやすい
  • 仕事への意味や意欲を感じやすい

ただし、良いストレスは放置してよいストレスではありません。

適度な緊張が成果につながるためには、休息、支援、振り返り、裁量が必要です。

これらが不足すると、良いストレスとして始まった負荷も、時間とともに悪いストレスに変わることがあります。

悪いストレスが続くと職場にサインが出ます

悪いストレスが続くと、心身の回復力が低下します。

短期的には、イライラ、不安、疲労感、集中力低下として現れます。長期化すると、睡眠不調、胃腸不調、頭痛、肩こり、気分の落ち込み、バーンアウトなどにつながることがあります。

影響領域 起こりやすい変化 職場で見えやすいサイン
身体面 疲労、頭痛、肩こり、胃腸不調、睡眠不調 表情が硬い、休憩が増える、体調不良の訴え
心理面 不安、焦り、落ち込み、無力感 発言が減る、反応が薄い、悲観的な発言
行動面 回避、先延ばし、ミス、欠勤 報告遅れ、確認漏れ、遅刻・欠勤の増加
対人面 イライラ、孤立、相談減少 口調が強くなる、チーム内の摩擦
仕事面 意欲低下、達成感低下、バーンアウト 仕事への関心低下、成果の停滞

悪いストレスの対策では、本人にリラックスを勧めるだけでは足りません。

業務量、役割、支援、職場の雰囲気、管理職の関わりを確認する必要があります。

良いストレスと悪いストレスを見分けるポイント

良いストレスか悪いストレスかを見分けるには、次の視点が役立ちます。

確認ポイント 良いストレスに近い状態 悪いストレスに近い状態
対処できそうか 大変だが、何とか対応できそう どうにもならない、逃げ場がない
意味を感じられるか 成長や学習につながると感じる ただ消耗するだけだと感じる
支援があるか 相談できる人や協力者がいる 一人で抱え込んでいる
調整できるか 進め方や優先順位を調整できる 責任だけ重く、調整できない
回復できるか 終わった後に休める 休んでも疲れが抜けない
残る感覚 達成感や学習が残る 疲労、不安、無力感が残る

この表で悪いストレス側に偏る場合は、セルフケアだけではなく、職場環境や業務設計の見直しが必要です。

職場で良いストレスを活かす条件

健康経営では、ストレスをすべて減らすことだけを目標にすると、成長の機会まで失われる場合があります。

重要なのは、社員を消耗させる悪いストレスを減らし、成長につながる良いストレスを安全に設計することです。

職場で良いストレスを活かすには、次の条件が必要です。

  • 目標が明確である
  • 本人の経験や状態に合った負荷である
  • 相談できる上司や同僚がいる
  • 一定の裁量がある
  • 失敗を学習につなげられる
  • 休息と回復の時間がある
  • 成果だけでなく過程も振り返る

これらが整っていない状態で「挑戦だから良いストレス」と言うと、過重な負荷を正当化する危険があります。

人事総務・健康経営担当者は、良いストレスを増やす前に、支援と回復の条件があるかを確認する必要があります。

管理職が注意したい声かけ

管理職が「良いストレス」という考え方を使うときは、言い方に注意が必要です。

良いストレスは、部下にプレッシャーをかけるための言葉ではありません。

本人が対応できそうと感じ、支援と回復があるからこそ、成長につながります。

避けたい声かけ 問題点 望ましい声かけ
これは良いストレスだから頑張って 本人の負担を軽く見てしまう 今の負荷は対応できる範囲ですか
成長のためには我慢も必要 過重労働や不調を正当化しやすい 成長につなげるために、どんな支援が必要ですか
プレッシャーがあるほうが伸びる 人による違いを無視している どの部分に一番プレッシャーを感じていますか
みんな通ってきた道だから 相談しにくくなる 一人で抱えず、調整できる点を確認しましょう

管理職に必要なのは、良いストレスを押しつけることではありません。

部下が挑戦を安全に経験できる条件を整えることです。

タニカワ久美子が企業研修で見てきたこと

タニカワ久美子の企業研修では、良いストレスと悪いストレスの違いを、単なる用語としては扱いません。

現場では、「成長のため」「本人のため」という言葉で、負荷が増えていることがあります。管理職に悪気はなくても、部下が相談できず、休めず、一人で抱えている状態では、その負荷は良いストレスではなくなります。

一方で、すべての負荷を避けてしまうと、社員が新しい仕事に挑戦する機会や、達成感を得る機会まで少なくなります。

研修では、良いストレスと悪いストレスを、支援・裁量・回復の有無で見分けるように伝えています。社員には自分のストレスサインに気づくことを、管理職には「今の負荷は本人にとって挑戦になっているのか、消耗になっているのか」を確認する声かけを扱います。

人事総務の担当者からも、「良いストレスという言葉を、部下に頑張らせるためではなく、支援の条件を見直す言葉として使えるようになった」と評価されています。

良いストレスとユーストレスの関係

良いストレスは、専門的にはユーストレスと呼ばれます。

ユーストレスを理解するうえで重要なのは、ストレスを「あるか、ないか」だけで見ないことです。

適度な緊張、明確な目標、支援、対処できそうという感覚があると、ストレスは集中や成長につながることがあります。

一方で、負荷が長く続き、支援や回復が不足すると、同じストレスはディストレスに変わります。

ユーストレスの意味、ディストレスとの違い、職場での活かし方については、ユーストレス(良性ストレス)とは|職場で活かすストレス資源の全体像で詳しく紹介しています。

まとめ|良いストレスと悪いストレスは条件で変わります

良いストレスとは、緊張や負荷があっても、集中、成長、達成感につながるストレスです。専門的にはユーストレスと呼ばれます。

悪いストレスとは、負荷が強すぎたり、長く続いたり、支援や回復が不足したりして、心身を消耗させるストレスです。専門的にはディストレスと呼ばれます。

同じ出来事でも、本人の受け止め方、支援、裁量、経験、体調、回復時間によって、良いストレスにも悪いストレスにもなります。

職場で重要なのは、社員に「ストレスに強くなれ」と求めることではありません。

悪いストレスを減らし、良いストレスとして働く条件を整えることです。

職場のストレス管理研修への活用

けんこう総研では、企業・介護施設・教育機関向けに、ユーストレス、ディストレス、ストレス反応、管理職ラインケア、ストレスチェック後の職場改善を含めたストレスマネジメント研修を行っています。

良いストレスと悪いストレスの違いを理解すると、職場のストレス対策を「ストレスをなくす」だけでなく、「成長につながる負荷」と「健康を損なう負荷」を見分ける視点で設計できるようになります。

社員のパフォーマンスとメンタルヘルスを両立させるストレス管理研修を検討している場合は、以下のページをご覧ください。


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参考文献

  • Gong, W., & Geertshuis, S. A. (2023). Distress and eustress: an analysis of the stress experiences of offshore international students. Frontiers in Psychology, 14, 1144767.

文責:タニカワ久美子

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