EEGとGSRによるストレス評価研究|1チャンネル測定の可能性

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EEGとGSRによるストレス評価研究|1チャンネル測定の可能性

このストレス管理カテゴリーでは、職場のストレス対策や健康経営に関係する研究を、人事総務・健康経営担当者にも読める形で紹介します。

同じストレス研究でも、本記事は健康施策の導入可否を判断する記事ではありません。

本記事では、脳波EEGと皮膚電気活動GSRを組み合わせた、1チャンネル型ストレス評価研究を紹介します。

ストレス研究の分野では、日々新しい測定技術や分析方法が報告されています。

その中でも近年注目されているのが、複雑な多チャンネル装置ではなく、少ない測定点でストレス状態を推定しようとする研究です。

今回紹介する研究は、脳波EEGと皮膚電気活動GSRを組み合わせ、1チャンネルで精神的ストレス状態を評価しようとしたものです。

通常、脳波を測定する研究では、頭部に複数の電極を取り付け、脳の複数部位からデータを集めます。

しかし、この研究では、測定点を絞り、より簡便で使いやすいストレスモニタリングの可能性を検討しています。

この記事では、研究の内容、測定方法、結果、限界点を、職場のストレス管理や健康経営に関心を持つ方に向けて整理します。

EEGとGSRによるストレス評価研究を紹介するメンタルヘルス予防研修プログラム画像


紹介する研究の概要

今回紹介するのは、Abdul Kader らによる「One-Channel Wearable Mental Stress State Monitoring System」という研究です。

この研究では、精神的ストレス状態をより簡便に評価するために、脳波EEGと皮膚電気活動GSRを組み合わせた1チャンネル型のシステムが検討されました。

研究の特徴は、従来のように多くの測定点を使うのではなく、限られた測定点から得られるデータを用いて、ストレス状態の分類を試みている点です。

ストレス評価では、脳の活動を反映するEEGと、交感神経の反応を反映しやすいGSRを組み合わせることで、単独の指標よりも状態を捉えやすくなる可能性があります。

この研究は、ストレス測定を日常生活やウェアラブル技術へ応用するうえで、装置の簡便さと測定精度の両立を考える材料になります。


EEGとは何か

EEGとは、脳波を測定する方法です。

脳は神経活動によって微弱な電気信号を発しています。

EEGでは、その電気活動を頭部の電極から読み取り、脳の活動状態を考える手がかりにします。

ストレス研究では、精神的な負荷や緊張状態が、脳波の周波数成分にどのように表れるかが検討されます。

たとえば、集中、緊張、リラックス、不安などの状態によって、脳波の特徴が変化することがあります。

ただし、EEGは測定環境や電極の装着状態の影響を受けやすい指標です。

そのため、日常生活で使いやすいストレス評価に応用するには、測定点を減らしても意味のある情報が得られるかが重要になります。


GSRとは何か

GSRとは、皮膚の電気的な変化を測定する方法です。

日本語では、皮膚電気活動や皮膚コンダクタンス反応として説明されることがあります。

人は緊張やストレスを感じると、交感神経が働き、汗腺活動が変化します。

皮膚表面の汗の状態が変わると、皮膚の電気の通りやすさも変わります。

この変化を測るのがGSRです。

GSRは、感情の揺れや緊張反応を捉えるうえで使われることがあります。

ただし、皮膚の状態、室温、汗のかきやすさ、装着状態などの影響を受けるため、数値だけでストレスを断定することはできません。


なぜEEGとGSRを組み合わせるのか

EEGとGSRは、見ているものが異なります。

指標 主に見ている反応 ストレス評価での意味
EEG 脳の電気活動 精神的な負荷や認知的な反応を考える手がかりになる
GSR 皮膚の電気的変化 緊張や交感神経反応を考える手がかりになる

ストレスは、脳だけで起こるものでも、体だけで起こるものでもありません。

精神的な負荷、感情反応、自律神経、身体反応がつながって表れます。

そのため、1つの指標だけでは捉えきれない場合があります。

EEGとGSRを組み合わせることで、脳の反応と身体の反応を合わせて見ようとするのが、この研究の考え方です。


研究の対象者と測定方法

この研究では、20名の参加者からデータが収集されました。

参加者には、精神的ストレス状態を引き起こす課題が設定され、その際のEEGとGSRのデータが記録されました。

EEGでは、特定の測定点から脳波データを取得し、周波数成分の特徴が分析されました。

GSRでは、皮膚の導電性の変化を測定し、緊張やストレス反応の指標として用いられました。

その後、得られたデータは機械学習分類器によって処理され、ストレス状態の分類に使われました。

研究では、EEGのみを使った場合と、EEGとGSRを組み合わせた場合が比較されています。


研究結果のポイント

この研究で注目されるのは、EEGとGSRを組み合わせた場合に、分類精度が高まった点です。

原稿で示されている研究内容では、EEGのみを使った場合の最大分類精度は70.3%でした。

一方で、EEGとGSRのデータを組み合わせた場合、分類精度は84.6%に向上したとされています。

これは、ストレス状態を評価するときに、脳波だけを見るよりも、皮膚電気活動のような身体反応を合わせて見ることで、状態を捉えやすくなる可能性を示しています。

ただし、この数値をそのまま職場のストレス測定に当てはめることはできません。

研究環境で得られた分類精度と、日常の職場環境での測定精度は同じではないからです。

この研究は、職場ですぐに使える完成済みツールの紹介ではなく、簡便なストレスモニタリング技術の可能性を示す研究として読む必要があります。


1チャンネル型システムの可能性

1チャンネル型の測定システムには、いくつかの可能性があります。

  • 装着が簡単になりやすい
  • 測定にかかる負担を減らしやすい
  • 装置のコストを抑えやすい
  • 日常環境への応用可能性を考えやすい
  • ウェアラブル技術との接続を検討しやすい

従来の多チャンネルEEG装置は、測定精度の面では有用ですが、装着や運用に手間がかかります。

職場や日常生活でストレス状態を捉えようとする場合、測定者にも参加者にも負担が少ないことが重要です。

その意味で、1チャンネル型の研究は、ストレスモニタリングをより身近にする可能性があります。

ただし、簡便であることと、十分な判断材料になることは別です。

少ない測定点で得られるデータには、解釈上の限界もあります。


研究の限界点

この研究には、読み手が注意すべき限界点があります。

限界点 読むときの注意
参加者数が限られている 20名の研究であり、結果をそのまま一般化するには慎重さが必要
研究環境での測定である 実際の職場環境では、騒音、動き、装着状態、業務内容などの影響が入る
1チャンネル測定である 測定点が少ないため、複雑なストレス状態を細かく見るには限界がある
GSRは皮膚状態の影響を受ける 汗、室温、体質、装着状態によって測定値が変わる可能性がある
分類精度は運用精度とは違う 研究上の精度を、職場での判断精度と同じものとして扱わない

研究紹介記事では、成果だけでなく限界点を一緒に読むことが重要です。

特に、健康経営や職場のストレス管理に応用する場合、研究結果をそのまま施策判断に使うのではなく、考え方を理解する材料として扱う必要があります。


職場のストレス管理にどう読むか

この研究から職場のストレス管理に活かせる視点は、測定技術そのものよりも、ストレスを複数の反応から見る考え方です。

ストレスは、本人の気持ちだけでなく、脳の反応、皮膚の反応、自律神経の反応、行動の変化として表れます。

そのため、職場のストレス管理では、次のような視点が重要になります。

  • ストレスを本人の主観だけで判断しない
  • 身体反応もストレス理解の手がかりになる
  • 測定値だけで不調を決めつけない
  • 研究上の精度と職場での運用を分けて考える
  • 測定結果は支援や教育の材料として扱う

この研究は、ストレス測定が今後さらに簡便になっていく可能性を示しています。

一方で、簡単に測れるようになるほど、測定結果をどう説明し、どう扱うかが重要になります。


タニカワ久美子の研修でこの研究をどう扱うか

タニカワ久美子の企業研修では、このような研究を「すぐ職場に導入しましょう」という話にはしません。

研究紹介として扱う場合は、ストレスが心だけでなく、脳や自律神経、皮膚反応にも表れることを理解する材料として使います。

研修現場では、社員さんが「ストレスは気持ちの問題」と考えていることがあります。

しかし、脳波やGSRの研究を紹介すると、ストレスは気合いや性格だけの問題ではなく、体の反応としても表れるものだと理解しやすくなります。

一方で、人事総務の担当者には、研究結果をそのまま社員管理や評価に使わないこともお伝えします。

研究は、職場での見方を広げる材料です。

社員を測定で分類するためではなく、ストレスを多面的に理解し、早めのセルフケアや相談につなげるために活かします。


この研究紹介で押さえたいポイント

本記事で押さえたいポイントは、次の3つです。

  • EEGとGSRを組み合わせることで、脳と身体の両面からストレス状態を捉えようとしている
  • 1チャンネル型の測定は、低負担で使いやすいストレスモニタリングにつながる可能性がある
  • 一方で、参加者数、測定環境、皮膚状態、職場応用には慎重な解釈が必要である

この研究は、ストレス測定の未来を考えるうえで興味深い内容です。

ただし、研究成果を読むときには、可能性と限界を分けて理解する必要があります。


まとめ|EEGとGSRによるストレス評価研究の可能性

今回紹介した研究では、脳波EEGと皮膚電気活動GSRを組み合わせた1チャンネル型のストレス評価システムが検討されました。

EEGは脳の反応を、GSRは皮膚の電気的変化を通じた身体反応を捉える指標です。

この2つを組み合わせることで、ストレス状態をより多面的に理解できる可能性があります。

1チャンネル型の測定は、従来の複雑な装置に比べて、低コストで使いやすいストレスモニタリングにつながる可能性があります。

一方で、参加者数の少なさ、研究環境と実際の職場環境の違い、GSRが皮膚状態の影響を受ける点など、限界もあります。

健康経営や職場のストレス管理に活かす場合は、研究結果をそのまま評価や判断に使うのではなく、ストレスを脳と身体の反応として理解するための読み物として扱うことが重要です。

けんこう総研では、ストレス研究の知見を、企業研修や健康経営の現場でわかりやすく伝えています。

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参考文献

  • Abdul Kader, L., Al-Shargie, F., Tariq, U., & Al-Nashash, H. (2024). One-Channel Wearable Mental Stress State Monitoring System. Sensors, 24(16), 5373.

文責:タニカワ久美子

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