ライフステージ別健康支援
女性社員のインポスター症候群|自己否定感を職場で支える
女性社員が成果を出しているのに、「自分にはそこまでの力はありません」「たまたまうまくいっただけです」と受け止めてしまうことがあります。周囲から評価されていても、本人の中では不安や自己否定感が強く、次の挑戦を避けてしまう場合があります。
この記事では、女性社員に起こりやすいインポスター症候群による職場ストレスを、健康経営の中でどう支えるかを考えます。人事総務・健康経営担当者が、研修や管理職の声かけに活かしやすい視点で見ていきます。

評価されても自信を持てない女性社員を支えるには、本人の努力だけでなく、職場の声かけや評価の伝え方も大切です。
インポスター症候群とは何か
インポスター症候群とは、成果を出していても、自分の力を正当に受け止められず、「自分は本当はできていない」「周囲をだましているように感じる」と不安になる心理状態を指します。
医学的な診断名として使うのではなく、職場では、自己評価の低さや評価不安を理解するための言葉として扱うとよいでしょう。
たとえば、次のような反応が見られることがあります。
- 成果を出しても「運がよかっただけ」と考える
- 上司や同僚からの評価を素直に受け取れない
- 新しい仕事を任されると「自分には無理」と感じる
- 失敗を極端に恐れて、挑戦を避ける
- 周囲に相談せず、ひとりで準備や確認を抱え込む
- 褒められても、すぐに否定してしまう
こうした状態は、本人の性格だけで起こるものではありません。職場の評価の伝え方、性別役割への思い込み、過去の経験、周囲との比較、失敗を許しにくい雰囲気が重なることで強まりやすくなります。
女性社員にインポスター症候群が起こりやすい場面
インポスター症候群は、男女を問わず起こります。ただし、女性社員の場合、職場で少数派になりやすい場面や、期待と遠慮が同時にかかる場面で強まりやすくなります。
人事総務の担当者が注意したいのは、本人が「困っています」とはっきり言わない場合があることです。むしろ、まじめで責任感が強く、周囲に気を配る社員ほど、自分の不安を隠してしまうことがあります。
次のような場面では、自己否定感や評価不安が高まりやすくなります。
- 女性管理職候補として名前が挙がったとき
- 初めてリーダー役や発表を任されたとき
- 男性が多い部署で意見を求められたとき
- 育児や介護と仕事を両立しながら評価されたとき
- 周囲から「女性代表」のように見られていると感じるとき
- 後輩女性のロールモデルを期待されているとき
このような場面で、本人に「もっと自信を持って」と言うだけでは、支援にならないことがあります。自信がないことを本人の問題として扱うのではなく、安心して挑戦できる職場の土台をつくることが必要です。
インポスター症候群が職場ストレスになる理由
インポスター症候群が強い社員は、表面上はよく働いているように見えることがあります。成果を出そうとして努力し、ミスを避けるために準備を重ね、周囲に迷惑をかけないように動くからです。
しかし、その内側では大きなストレスがかかっています。
自分の成果を認められないため、達成感を得にくくなります。周囲から評価されても安心できず、「次は失敗するかもしれない」と考え続けてしまいます。その結果、挑戦を避けたり、必要以上に確認作業を増やしたり、休むことに罪悪感を持ったりします。
人事総務・健康経営担当者が見落としやすいのは、こうした社員が「問題社員」ではなく、むしろ責任感の強い社員として見られている点です。
本人が頑張り続けているうちは、周囲も支援の必要性に気づきにくくなります。だからこそ、インポスター症候群はメンタルヘルス不調の前段階として、早めに職場で理解しておきたいテーマです。
女性活躍推進だけでは解決しにくい理由
女性活躍推進では、管理職登用、キャリア形成、研修機会の提供、制度整備などが進められます。これらは重要な取り組みです。
しかし、制度が整っていても、本人が「自分にはその資格がない」「期待に応えられなかったらどうしよう」と感じている場合、制度を使うこと自体がストレスになります。
たとえば、女性リーダー研修に選ばれた社員が、表面上は参加していても、内心では「なぜ私が選ばれたのだろう」「もっと優秀な人がいるのに」と感じていることがあります。
この状態で、ただ成功事例を見せたり、キャリアアップを促したりすると、本人にはプレッシャーとして伝わる場合があります。
健康経営の視点では、女性活躍推進を「登用する」「育成する」だけで終わらせず、本人が安心して力を出せる心理的な支援まで含めて考える必要があります。
職場でできるインポスター症候群への支援
インポスター症候群への支援では、本人に自信を持たせようと急ぐよりも、成果を正しく受け止められる関わりを増やすことが大切です。
1. 評価を具体的に伝える
「すごいですね」「優秀ですね」だけでは、本人が受け取りにくいことがあります。抽象的な褒め言葉は、「そんなことはありません」と否定されやすいからです。
管理職や人事担当者は、成果のどこがよかったのかを具体的に伝えることが重要です。
- 「資料の構成がわかりやすかったです」
- 「会議前に関係者へ確認していた点が助かりました」
- 「相手の反応を見ながら説明を変えていたところがよかったです」
- 「期限前に共有してくれたので、チーム全体が動きやすくなりました」
具体的に伝えることで、本人は「自分のどの行動が役立ったのか」を受け止めやすくなります。
2. 挑戦と相談をセットにする
新しい役割を任せるときは、「期待しているから頑張って」だけで終わらせないことが大切です。
挑戦を促す言葉と一緒に、相談できる道筋を明確にします。
- 「任せたい仕事があります。進め方は途中で一緒に確認しましょう」
- 「一人で抱え込まなくて大丈夫です」
- 「困ってからではなく、早めに相談してください」
- 「最初から完璧でなくてよいので、途中経過を見せてください」
このような言葉があると、本人は「期待に応えなければ」だけでなく、「相談してもよい」と受け止めやすくなります。
3. 謙遜を美徳として扱いすぎない
職場では、控えめであることや謙虚であることが好印象につながる場合があります。もちろん謙虚さは大切です。
ただし、女性社員が成果を過度に否定している場合、それを「謙虚でよい」と受け止め続けると、本人の自己評価の低さが固定されてしまいます。
「そんなことありません」と本人が否定したときも、無理に説得する必要はありません。代わりに、「今回の成果として、ここは事実として確認しておきましょう」と、行動や結果に戻して伝えることが有効です。
1on1ミーティングで確認したいこと
インポスター症候群の傾向がある社員には、1on1ミーティングが役立つ場合があります。ただし、単に定期面談を増やせばよいわけではありません。
評価面談のように感じられると、本人はさらに緊張してしまいます。1on1では、成果の確認だけでなく、負担の見え方、相談しにくさ、次の挑戦への不安を扱うことが大切です。
管理職が使いやすい問いかけには、次のようなものがあります。
- 「今の業務で、ひとりで抱え込んでいることはありませんか」
- 「任されている仕事の中で、不安が大きいものはありますか」
- 「周囲に相談しにくいと感じる場面はありますか」
- 「次の仕事に向けて、先に確認しておきたいことはありますか」
- 「最近、休む時間は取れていますか」
このような問いかけは、本人の性格を評価するものではありません。仕事の進め方や負担を確認する言葉なので、社員も受け止めやすくなります。
タニカワ久美子の企業研修で大切にしていること
タニカワ久美子の企業研修では、インポスター症候群を「自信のない女性の問題」として扱いません。
研修の現場では、周囲から信頼されている女性社員ほど、自分の力を低く見積もっていることがあります。発表やリーダー役を任されても、「私でよいのでしょうか」「もっと適任の人がいるのでは」と口にする方もいます。
人事総務の担当者からも、「女性社員にもっと挑戦してほしいが、無理に背中を押すと負担になりそう」「管理職の声かけがプレッシャーになっていないか心配」「自信のなさを本人の性格で片づけたくない」という相談を受けることがあります。
そのため研修では、自己肯定感という言葉だけで終わらせず、職場で実際に使える声かけ、評価の伝え方、1on1での確認方法まで扱います。本人が安心して成果を受け止められること、管理職が支援しやすいこと、人事総務が社内施策として説明しやすいことを大切にしています。
研修で扱うべきインポスター症候群の内容
女性社員のインポスター症候群を研修で扱う場合、本人向けのセルフケアだけでなく、管理職や職場側の関わり方も含める必要があります。
1. 本人が自分の反応に気づく
まずは、成果を否定してしまう癖や、過度に不安を抱える反応に気づくことが大切です。
「自信を持ちましょう」と言われても、すぐに変わるものではありません。自分がどの場面で不安になりやすいのか、どのような言葉を受け取ると身構えるのかを知ることが第一歩です。
2. 管理職が評価の伝え方を学ぶ
管理職研修では、抽象的な期待や励ましだけでなく、具体的な行動評価を伝える練習が必要です。
「期待している」「頑張って」だけではなく、「この行動がチームに役立った」「この判断がよかった」と伝えることで、社員は成果を受け止めやすくなります。
3. 職場全体で挑戦しやすい空気をつくる
インポスター症候群を個人の問題として扱うと、本人はさらに「自分が弱いのだ」と感じてしまいます。
職場全体で、途中相談を歓迎する、失敗を責めすぎない、成果を具体的に確認する空気をつくることが大切です。これは女性社員だけでなく、若手社員や管理職候補の支援にもつながります。
人事総務が研修導入前に確認したいこと
女性社員のインポスター症候群を研修で扱う場合、人事総務・健康経営担当者は、次の点を確認しておくと導入後のずれを防ぎやすくなります。
- 対象者を女性社員本人にするのか、管理職も含めるのか
- 女性活躍推進の研修にするのか、ストレス管理研修にするのか
- 自己肯定感だけでなく、評価の伝え方まで扱うか
- 受講者が「自信がない自分が悪い」と感じない設計になっているか
- 1on1や面談で使える言葉まで研修に含めるか
- 研修後に相談窓口や上司面談へつながる流れがあるか
特に大切なのは、研修名や社内案内文の出し方です。
「自信をつける研修」と前面に出すと、本人が参加しにくくなる場合があります。一方で、「成果を安心して受け止めるためのストレスケア」「新しい役割に向き合うための職場支援」のように伝えると、受講者が自分を責めずに参加しやすくなります。
まとめ:インポスター症候群は職場で支えられるストレス課題
女性社員のインポスター症候群は、本人の自信のなさだけで片づけられるものではありません。成果を出していても評価を受け取れない、挑戦を避ける、相談せずに抱え込む状態が続くと、職場ストレスとして蓄積していきます。
人事総務・健康経営担当者ができることは、本人に「もっと自信を持って」と言うことだけではありません。評価を具体的に伝え、挑戦と相談をセットにし、管理職の声かけを整えることです。
女性社員が安心して成果を受け止め、次の仕事に挑戦できる職場は、女性活躍推進だけでなく、健康経営としても重要な取り組みになります。
女性社員の自己否定感や評価不安を、職場全体で支えたい企業様へ
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