ポジティブな心理的ストレスとは|良い出来事でも疲れる理由

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ポジティブな心理的ストレスとは|良い出来事でも疲れる理由

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ポジティブな心理的ストレスとは|良い出来事でも疲れる理由

昇進、異動、新しい仕事への挑戦など、前向きな出来事でも、心と体にはストレス反応が起こります。

「うれしいことなのに疲れる」「楽しみにしていたのに、終わったあとにぐったりする」という経験は、多くの人にあります。

これは、その出来事が悪いからではありません。環境の変化、新しい役割、期待、準備、人間関係の変化に、心と体が対応しようとしているためです。

職場でも同じです。昇進した社員、新しい部署へ異動した社員、新しい仕事を任された社員は、前向きに見えても、内側では強い緊張や疲れを抱えていることがあります。

この記事では、ポジティブな心理的ストレスと感情の関係をもとに、人事総務・健康経営担当者が職場で見落としやすい社員の疲れを見ていきます。

ポジティブな心理的ストレスとは

ポジティブな心理的ストレスとは、本人にとって前向きな意味を持つ出来事によって起こるストレス反応です。

たとえば、昇進、異動、新しい仕事、資格取得、旅行、結婚、恋愛、引っ越しなどは、喜びや期待を伴う出来事です。

けれども、これらの出来事には同時に負荷もあります。

  • 新しい環境に慣れる必要がある
  • 期待に応えようとして緊張する
  • 人間関係が変わる
  • 準備や手続きが増える
  • 生活リズムが変わる

つまり、前向きな出来事であっても、心と体には一定の負担がかかります。

職場では、この負担が見えにくくなることがあります。本人が「大丈夫です」と言っていたり、周囲が「昇進したのだから喜ばしいこと」と受け止めていたりすると、疲れや不安が表に出にくくなるからです。

良い出来事でも疲れる理由

人は、悪い出来事だけで疲れるわけではありません。

楽しい旅行でも、移動、予定の調整、人との関わり、環境の変化が重なると、終わったあとに疲れを感じることがあります。

昇進や新しい役割も同じです。本人にとって成長の機会であっても、責任が増え、周囲からの期待が高まり、判断する場面が増えると、心身の負荷は大きくなります。

人事総務の担当者が気をつけたいのは、「良いことだから疲れないはず」と見てしまうことです。

前向きな出来事でも、疲労や緊張はたまります。むしろ、本人が喜ばしい出来事だと感じているほど、弱音を言いにくくなることがあります。

ポジティブ感情は心を支える力になります

ポジティブ感情は、心の回復や人との関係づくりに役立つと考えられています。

うれしい、楽しい、ありがたい、やってみたいといった感情は、行動を起こす力や、人と関わる力を支えます。

また、前向きな感情があると、困難な状況でも「どうすればよいか」を考えやすくなることがあります。

職場でも、達成感、感謝、学び、成長実感があると、社員は仕事を単なる負担としてではなく、自分の力を発揮する機会として受け止めやすくなります。

ただし、ポジティブ感情があるからといって、疲労がないとは限りません。

「やりがいがある」と感じている社員でも、仕事量が多すぎる、相談できない、休めない状態が続けば、疲れは蓄積します。

ポジティブなストレスとユーストレスの関係

ポジティブな心理的ストレスは、ユーストレスを理解するためのわかりやすい入口になります。

ユーストレスとは、心や体に負荷はかかるけれど、その負荷が成長、集中、達成感、前向きな行動につながるストレスのことです。

たとえば、新しい仕事に挑戦するときの緊張は、本人にとって負荷です。

しかし、相談先があり、仕事の目的がわかり、終わったあとに達成感や成長実感があるなら、その負荷はユーストレスになりやすくなります。

一方で、同じ挑戦でも、支援がなく、失敗だけが責められ、休む時間もない場合は、ディストレスになりやすくなります。

職場の状態 ユーストレスになりやすい場合 ディストレスになりやすい場合
昇進 役割説明があり、相談先もある 責任だけ増え、支援がない
異動 新しい職場に慣れる時間がある すぐに成果を求められ、孤立している
新規プロジェクト 目標が明確で、周囲の協力がある 本人任せで、休む時間もない
研修や発表 準備時間があり、終わったあとに振り返れる 準備が個人任せで、失敗だけが責められる

同じ出来事でも、支援と回復があるかどうかで、良いストレスにも悪いストレスにも変わります。

職場で見落としやすい前向きなストレス

人事総務や健康経営担当者が注意したいのは、「前向きに見える社員ほど疲れていない」と決めつけないことです。

たとえば、次のような場面です。

  • 昇進した社員が、期待に応えようとして無理をしている
  • 新しい部署に異動した社員が、周囲に気を使いすぎている
  • 新規プロジェクトの担当者が、やりがいを感じながらも休めていない
  • 研修や発表を任された社員が、準備で睡眠不足になっている
  • 「大丈夫です」と言う社員ほど、相談しにくくなっている

前向きな出来事でも、負荷が重なれば疲労につながります。

職場では、本人のやる気だけで判断せず、仕事量、休憩、相談先、周囲の支援を合わせて見ることが大切です。

人事総務・健康経営担当者が確認したいこと

ポジティブな心理的ストレスを職場で見るときは、次の点を確認しておきたいところです。

  • 新しい役割を任された社員に、相談先があるか
  • 挑戦している社員が、休憩や睡眠を確保できているか
  • 昇進や異動のあとに、フォロー面談があるか
  • 「やりがいがある仕事」だからといって、負荷を見落としていないか
  • 成果だけでなく、努力や工夫も見られているか

前向きなストレスを活かすには、社員に「頑張って」と言うだけでは足りません。

挑戦しやすく、相談しやすく、回復しやすい職場を整えることが必要です。

特に、昇進や異動の直後は、本人が自分から「つらい」と言いにくい時期です。周囲が喜ばしい出来事として見ているほど、本人は弱音を飲み込みやすくなります。

ポジティブなストレスが悪いストレスに変わるとき

ポジティブなストレスも、強すぎたり長く続いたりすると、悪いストレスに変わることがあります。

特に注意したいのは、次のような状態です。

  • 期待に応えようとして休めない
  • 責任が増えたのに、支援が増えていない
  • 本人が「断れない」と感じている
  • 達成感より不安のほうが大きくなっている
  • 疲れているのに、前向きなふりをしている

このような状態が続くと、ユーストレスではなくディストレスに傾いていきます。

良いストレスを活かすには、負荷だけでなく、回復と支援をセットで考えることが重要です。

タニカワ久美子が企業研修で見てきたこと

タニカワ久美子の企業研修でも、前向きに見える社員ほど疲れを言い出しにくい場面を多く見てきました。

新しい役割を任された社員は、周囲から「期待されている人」と見られます。そのため、本人も「ここで弱音を言ってはいけない」「任された以上、頑張らなければ」と抱え込みやすくなります。

管理職側も、やる気のある社員にはつい多くの仕事を任せがちです。本人が明るく受け止めているように見えると、疲れや不安に気づくのが遅れることがあります。

研修では、ユーストレスを「前向きな気持ちで頑張ること」とは伝えません。良い負荷には、相談先、休憩、仕事量の調整、終わったあとの回復が必要だと、職場の場面に置き換えて伝えています。

人事総務の担当者からも、「昇進や異動後のフォロー面談で、確認する視点が増えた」と評価されています。

ユーストレスの全体像はこちら

本記事で紹介したポジティブな心理的ストレスは、ユーストレスを考えるときの一つの具体例です。

ユーストレスの意味、ディストレスとの違い、職場での活かし方については、ユーストレス(良性ストレス)とは|職場で活かすストレス資源の全体像をご覧ください。

まとめ|前向きな出来事でもストレス反応は起こります

昇進、異動、新しい仕事への挑戦など、前向きな出来事でも、心と体にはストレス反応が起こります。

ポジティブな感情は、行動する力や人との関係づくりを支える一方で、環境の変化や期待の高まりによって疲労がたまることもあります。

職場では、やる気がある社員、前向きに見える社員、新しい役割に挑戦している社員ほど、負荷を見落とされやすいことがあります。

人事総務・健康経営担当者に必要なのは、前向きなストレスを否定することではありません。

挑戦を支えながら、相談しやすさ、休憩、仕事量、周囲の支援を整えることです。

この視点を持つことで、ストレス対策は「悪いものを減らす」だけでなく、社員が無理なく力を発揮できる職場づくりにつながります。

けんこう総研では、ユーストレスとディストレスの違いをもとに、社員のセルフケア、管理職の声かけ、ストレスチェック後の職場改善につながるストレスマネジメント研修を行っています。

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参考文献

  • 山崎勝之. ポジティブ感情の役割1―その現象と機序. パーソナリティ研究. 2006;14(3):305–321.

文責:タニカワ久美子

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