Apple Watchとメンタルヘルス|ウェアラブル指標の見方

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ストレス計測・行動変容|健康経営のKPI設計と研修効果測定

Apple Watchとメンタルヘルス|ウェアラブル指標の見方

この記事では、Apple Watchによるメンタルヘルス関連の生理指標モニタリングに関する研究レビューを取り上げます。ストレス管理の基本は「ストレス管理(Self-Management)とは」で紹介しています。

同じストレス管理でも、本記事はApple Watchの導入可否や機種選びを判断する内容ではありません。心拍数、心拍数変動、睡眠、活動量などのウェアラブル測定値を、健康経営や職場のメンタルヘルス支援でどう扱うかに焦点を当てています。

この記事は、測定機器の優劣を決めるための記事ではありません。人事総務・健康経営担当者の方が、ウェアラブルの数値を読みすぎず、本人の体感、勤務状況、睡眠、休憩、研修後の変化と合わせて見られるように紹介します。

Apple Watch研究を職場の健康経営で読む前提

Apple Watchは、心拍数、活動量、睡眠、心拍数変動など、日常生活の中で多くの身体情報を記録できるウェアラブル機器です。

こうしたデータは、メンタルヘルスやストレス状態を考える手がかりになる可能性があります。たとえば、睡眠不足の日に疲労感が強い、活動量が落ちている、心拍やHRVに変化が出るといった形です。

ただし、ウェアラブルの数値だけで「この人はメンタルヘルス不調です」「この職場はストレスが高いです」と判断することはできません。

健康経営で大切なのは、数値を社員の評価に使うことではありません。従業員が自分の疲れや睡眠不足に気づき、職場として休憩、業務量、相談しやすさを見直すための材料として扱うことです。

研究レビューの目的

今回取り上げる文献レビューは、Apple Watchがメンタルヘルスに関係する生理指標をどこまで測定できるのか、またその精度や検証状況がどの程度あるのかを確認する目的で行われました。

対象になったのは、Apple Watchとメンタルヘルス、生理指標に関する公開文献とグレー文献です。レビューでは、Apple Watchのセンサー能力や、メンタルヘルス支援への応用可能性が検討されています。

研究レビューで見た内容 主な指標 健康経営での読み方
心拍数測定 心拍数 疲労や緊張の手がかりとして見る
心拍数変動 HRV ストレスや回復の補助情報として扱う
活動量 歩数、身体活動 活動低下や生活リズムの変化を見る材料にする
睡眠関連情報 睡眠時間、睡眠推定 回復不足に気づくきっかけとして使う
心房細動検出 不整脈関連の検出 医療領域の情報として、職場判断とは分ける

人事総務の担当者がここで見るべきことは、「Apple Watchで何でも分かる」という話ではありません。どの指標がどこまで参考になり、どこから先は専門職や医療領域に任せるべきかを分けることです。

心拍数は比較的見やすいが、動きの影響を受ける

レビューでは、多くの研究でApple Watchは心拍数をおおむね測定できることが示されています。一方で、動きがある場面では誤差が増えやすいことも示されています。

これは職場でウェアラブルデータを見るときにも重要です。会議中、通勤中、作業中、運動中では、身体の動きや装着状態が変わります。

そのため、心拍数が高く出たからといって、すぐに「ストレスが高い」と判断するのは危険です。階段を上がった直後、急いで移動したあと、体調が悪い日、睡眠不足の日にも心拍は変わります。

心拍数で見えること 見えないこと 職場での注意点
身体が反応している可能性 本人の正確な気持ち 数値だけでストレスと決めない
運動や緊張による変化 職場要因のすべて 業務内容や場面と合わせて見る
日々の傾向 医療的な診断 必要時は専門職につなぐ

HRVはメンタルヘルス関連指標として注目される

HRVは心拍数変動のことで、心拍と心拍の間隔のゆらぎを見る指標です。ストレス、回復、感情調整、自律神経の働きと関係する指標として研究で扱われています。

レビューでは、Apple WatchによるHRV測定にはデータの欠けや課題がある一方で、軽度の精神的ストレスを検出できる可能性が示されています。

ただし、HRVだけでメンタルヘルス状態を決めることはできません。HRVは、年齢、睡眠、体調、運動、飲酒、薬、測定時間、装着状態などの影響を受けます。

健康経営でHRVを見る場合は、社員の状態を判定するためではなく、本人が疲労や回復不足に気づくための補助情報として扱います。

睡眠データは回復を見る材料になるが、断定には使わない

睡眠は、メンタルヘルスやストレス管理を考えるうえで重要な要素です。睡眠不足が続くと、疲労感、集中力低下、気分の落ち込み、イライラにつながりやすくなります。

Apple Watchのようなウェアラブル機器は、睡眠時間や睡眠中の身体反応を記録することがあります。ただし、睡眠データは、実際の睡眠状態を完全に表すものではありません。

ベッドで横になっているけれど眠れていない時間、夜中に目が覚めた時間、装着状態の乱れなどによって、睡眠推定にはズレが出ることがあります。

職場で見る場合は、「睡眠時間が短いから問題」と決めつけるのではなく、本人が朝に回復できていると感じているか、勤務負荷や休憩不足が続いていないかを合わせて確認します。

活動量や歩数は、職場での行動変化を見やすい

活動量や歩数は、ウェアラブル機器で比較的確認しやすい指標です。レビューでも、ステップカウントを用いた活動量の監視は良好な一致を示したとされています。

ただし、活動量が多いことが必ず良いとは限りません。立ち仕事や移動が多い職場では、歩数が多くても疲労が強い場合があります。反対に、デスクワークでは歩数が少なくても、精神的な負担が高いことがあります。

健康経営で活動量を見る場合は、社員を比較するのではなく、研修後の行動変化を見る材料にします。

見る項目 確認したいこと 次の対応
歩数や活動量 座りっぱなしが続いていないか 短い歩行や休憩を入れやすくする
休憩時間 忙しい日ほど休憩を飛ばしていないか 管理職から休憩を促す
研修後の変化 軽い運動を取り入れたか 続けやすい行動にする
本人の体感 身体が軽く感じるか、疲れていないか 数値と体感を合わせて見る

エネルギー消費量や心房細動検出は、健康経営では慎重に扱う

レビューでは、エネルギー消費量の測定は多くのウェアラブルにとって難しいとされています。Apple Watchは他の機器と比べて良い結果を示す場合があっても、過大評価の課題があるとされています。

この点は、健康経営で重要です。消費カロリーの数値をもとに社員の努力や健康状態を評価することは適切ではありません。

また、心房細動の検出は医療に近い領域です。Apple Watchなどの機器が不整脈に関する通知を出す場合があっても、人事総務がその意味を判断するべきではありません。

職場では、測定値を医療診断の代わりにしないことが重要です。気になる症状や通知がある場合は、本人が医療機関や専門職に相談できるようにすることが現実的です。

ウェアラブルデータは記憶に頼らない記録として役立つ

ウェアラブルの利点の一つは、本人の記憶だけに頼らず、日常生活の中で継続的に情報を記録できることです。

人は、忙しかった日や疲れていた日のことを正確に思い出せないことがあります。睡眠時間、活動量、心拍の変化などを振り返ることで、「この週は休憩が少なかった」「夜遅くまで働いた翌日は疲れが残っていた」と気づきやすくなります。

ただし、記録があることと、正しく判断できることは別です。数値を見て終わりにするのではなく、本人の体感や職場の状況と合わせて考える必要があります。

職場でApple Watchデータを扱うときの注意点

Apple Watchを含むウェアラブルデータは、個人の健康情報に関わります。健康経営で扱う場合は、本人の同意とプライバシー保護が前提です。

  • 本人の同意なくデータを集めない
  • 心拍数やHRVで社員を比較しない
  • 数値の上下だけでメンタルヘルス状態を決めつけない
  • 評価、査定、配置判断に使わない
  • 少人数部署では個人が特定されないようにする
  • 睡眠、業務量、休憩、本人の声と合わせて見る
  • 気になる症状がある場合は専門職につなぐ

ウェアラブルデータは、社員を監視するための数字ではありません。従業員が自分の疲れや回復不足に気づき、職場として無理をため込みにくい働き方を考えるための材料です。

タニカワ久美子の企業研修で伝えていること

タニカワ久美子の企業研修では、Apple Watchやウェアラブルの数値を「良い・悪い」と判定するためには使いません。

研修では、参加者が自分の疲労感、睡眠不足、呼吸の浅さ、身体のこわばり、緊張した場面、休憩の取り方を振り返れるようにしています。数値がある場合も、社員の評価ではなく、自分の変化に気づく材料として扱います。

研修の現場では、「数字を見ると分かりやすいけれど、数字だけでは自分の状態は分からないと感じた」「忙しい日は休憩を飛ばしていたことに気づいた」「短い運動でも身体が少し楽になると分かった」という声が出ることがあります。

人事総務の担当者からも、座学だけではなく、全員で実際にできる軽い運動がある点を評価されています。ウェアラブルの数値を説明するだけでなく、翌日から職場でできる小さな行動に変えることが大切です。

人事総務が見るべき研修後の変化

Apple Watchやウェアラブルデータを健康経営で扱う場合、人事総務の担当者は、機器の精度だけを見る必要はありません。研修後に、従業員の行動が変わったかを見ることが重要です。

見る項目 確認したいこと 次の対応
睡眠の振り返り 回復不足に気づけたか 長時間労働や夜間対応後の働き方を見直す
休憩行動 短い休憩を取りやすくなったか 会議前後や午後に休憩を入れやすくする
軽い運動 無理なく続けられそうか 座ったまま、短時間でできる形にする
管理職の声かけ 部下の疲労サインを見られているか 早めの声かけや業務量確認につなげる
職場の会話 体調や疲労について話しやすくなったか 相談しやすい空気づくりに活かす

健康経営では、測定値を集めることが目的ではありません。測定値をきっかけに、休憩、睡眠、軽い運動、相談しやすさといった行動につながるかを見ることが大切です。

医療的な対応が必要な場合

この記事は、Apple Watchによるメンタルヘルス関連の生理指標モニタリングを、職場のストレス管理の視点から扱ったものです。医学的な診断や治療を行うものではありません。

強い不眠、動悸、息苦しさ、めまい、強い疲労感、出勤困難、気分の落ち込み、仕事や日常生活に支障が出ている状態が続く場合は、自己判断せず、医療機関や専門職に相談してください。

職場では、管理職や人事担当者が診断をする必要はありません。以前との違いに気づき、本人が相談しやすい状態を作り、必要な相談先につなぐことが重要です。

まとめ:Apple Watchの数値は、職場を見直す手がかりとして使う

Apple Watchは、心拍数、HRV、活動量、睡眠など、メンタルヘルスに関係する可能性のある生理指標を記録できます。

ただし、ウェアラブルの数値だけで、社員のストレス状態やメンタルヘルス状態を決めつけることはできません。測定値は、装着状態、活動、睡眠、体調、生活習慣、本人の感じ方によって変わります。

人事総務・健康経営担当者の方は、Apple Watchの数値を社員の評価に使うのではなく、休憩、睡眠、業務量、相談しやすさ、研修後の行動変化を見直す材料として活用することが大切です。

ウェアラブルデータは、職場を管理するための数字ではありません。従業員が自分の疲れや回復不足に気づき、無理をため込む前に行動を変えるための手がかりです。

参考文献

  • Lui GY, Loughnane D, Polley C, Jayarathna T, Breen PP. The Apple Watch for Monitoring Mental Health–Related Physiological Symptoms: Literature Review. JMIR Ment Health. 2022;9(9):e37354. doi:10.2196/37354.

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