ストレス・セルフケアを組み合わせた健康経営研修

価値観ワークでストレス対処を行動に変える職場研修

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ユーストレス(良性ストレス)

価値観ワークでストレス対処を行動に変える職場研修

ストレス対処の研修を行っても、翌日の職場で行動が変わらないことはありませんか。

「気分転換をしましょう」「一人で抱え込まず相談しましょう」「休息を取りましょう」と伝えることはできます。

けれども、社員が実際の職場に戻ると、忙しさ、周囲への遠慮、評価への不安、責任感が先に立ち、学んだ対処法を使えないことがあります。

研修中はうなずいていた社員が、現場に戻るとまた「大丈夫です」と言って抱え込む。管理職も「声をかけているつもり」なのに、部下の仕事量は変わらない。

このような場面では、ストレス対処を知識として伝えるだけでは足りません。

本人が何を大切にしているから無理をしやすいのか。どの場面で断れなくなるのか。どの小さな行動なら職場で試せるのか。そこまで研修の中で扱う必要があります。

価値観ワークは、ストレスを無理に前向きに考える方法ではありません。

自分が大切にしていることに気づき、ストレスを感じた場面で、今できる小さな行動を選びやすくするための研修ワークです。

このページでは、人事総務・健康経営担当者に向けて、価値観ワークを職場研修で安全に扱い、ストレス対処を職場行動へ戻す視点を見ていきます。

ストレス対処を学んでも、職場で使えないことがあります

ストレス研修では、セルフケア、相談、休息、気分転換、問題解決などがよく扱われます。

どれも大切な対処法です。

ただ、研修で知ったことと、職場で実際にできることの間には距離があります。

たとえば、社員は「相談した方がよい」と分かっていても、上司が忙しそうにしていると声をかけにくくなります。

「休んだ方がよい」と分かっていても、自分が休むと同僚に迷惑がかかると思い、無理を続けることがあります。

「気分転換が大切」と分かっていても、退勤後も仕事の段取りが頭から離れないことがあります。

研修で学ぶこと 職場に戻ると起きやすいこと 研修ワークで扱いたい視点
相談しましょう 忙しい上司に声をかけられない 誰に、いつ、何を相談するかを具体化する
休息を取りましょう 休むと迷惑をかけると思い込む 休むことが、自分と職場を守る行動だと見直す
気分転換しましょう 退勤後も仕事が頭から離れない 仕事を終える小さな区切りを決める
無理をしないようにしましょう 責任感が強く、断れない 大切にしたいことを守るための調整を考える
前向きに考えましょう つらさを言いにくくなる 前向きさではなく、今できる行動に戻す

人事総務の方からも、「研修アンケートではよかったと書かれるけれど、その後の行動につながっているか分からない」という相談を受けることがあります。

ここで必要なのは、知識を増やすことだけではありません。

社員が自分の職場場面を思い出し、明日できる小さな行動まで落とし込むことです。

価値観ワークとは、自分が大切にしていることを行動に戻すワークです

価値観ワークとは、自分が大切にしていることを言葉にする方法です。

ここでいう価値観とは、「自分にとって大切な考え方」「守りたいもの」「こうありたいと思う姿」のことです。

価値観は、普段はあまり意識されません。

けれども、ストレスを感じる場面では、価値観が強く関係しています。

仕事への責任感を大切にしている人ほど、頼まれた仕事を断れないことがあります。

信頼を大切にしている人ほど、相手の期待に応えようとして無理をすることがあります。

健康を大切にしたいと思っていても、職場では「休むと言い出しにくい」と感じることがあります。

価値観の例 ストレスにつながりやすい場面 職場行動へ戻す視点
責任感 頼まれると断れず、抱え込む 責任を果たすために、早めに共有する
信頼 期待に応えようとして無理をする 信頼を守るために、期限や負荷を相談する
健康 疲れていても休めない 働き続けるために、回復時間を確保する
成長 できないと言えず、一人で悩む 成長するために、質問や確認を早めに行う
誠実さ 相手の期待を優先しすぎる 誠実に続けるために、無理な約束を避ける

価値観ワークの目的は、立派な答えを書くことではありません。

自分が何を大切にしているから苦しくなっているのかに気づき、その大切なものを守るための小さな行動を選ぶことです。

価値観ワークは、前向き思考を求めるものではありません

職場で価値観ワークを扱うときに避けたいのは、「前向きに考えれば乗り越えられる」という使い方です。

価値観ワークは、つらい状況を美化するためのものではありません。

過重労働、ハラスメント、慢性的な疲労、強い不安、休めない状態がある場合は、本人の考え方ではなく、職場側の調整が必要です。

価値観ワークで見るのは、「この人はもっと頑張れるか」ではありません。

大切にしたいことを守るために、どの行動を減らすのか。どこで相談するのか。何を一人で抱え込まないようにするのか。

ここを職場行動に戻していきます。

誤った扱い方 職場で起きる危険 研修での扱い方
価値観があるなら頑張れると考える 負荷を正当化しやすい 大切なことを守るために、何を調整するか考える
前向きに考えましょうで終える つらさを言いにくくなる 今できる小さな行動に戻す
個人の内面を深く掘る 心理的な負担が強くなる 職場で扱える範囲にとどめる
ワーク内容を上司が見る 本音を書けなくなる 共有は任意にし、評価と切り離す

研修で大切なのは、社員の内面を深く掘り下げることではありません。

安全な範囲で気づきを持ち、職場で使える小さな行動へ戻すことです。

研修ワークで扱うのは、職場に戻った瞬間のつまずきです

ストレス対処が職場で使えないのは、社員の理解が足りないからとは限りません。

多くの場合、職場に戻った瞬間に、行動を止める条件が出てきます。

「相談しよう」と思っても、上司が会議続きで捕まらない。

「今日は早く帰ろう」と思っても、同僚が残っていると帰りにくい。

「無理です」と言いたくても、責任感や評価への不安で言葉が出ない。

「休みたい」と思っても、休んだ後の仕事量を考えると怖くなる。

こうした場面を研修の中で扱わないと、ストレス対処は知識のままで止まります。

価値観ワークでは、「自分は何を大切にしているから、この場面で無理をしやすいのか」を見ます。

そのうえで、「明日、職場でできる小さな行動」を一つ選びます。

たとえば、次のような行動です。

  • 頼まれた仕事にすぐ返事をせず、「今の業務量を確認してから返事します」と伝える
  • 退勤前に、明日やることを3つだけ書いて区切りをつける
  • 相談する内容を、感情ではなく「期限・量・優先順位」に分けてメモする
  • 休憩を取る時間を、予定表に先に入れておく
  • 完璧に終わらせる前に、途中で一度確認を入れる

小さく見える行動でも、職場で実際にできる形まで落とすと、研修後の変化につながりやすくなります。

価値観ワークとユーストレスの関係

ユーストレスとは、成長や前向きな行動につながる良性のストレスです。

価値観ワークは、ストレスをユーストレスとして扱える条件を考えるときにも役立ちます。

人は、自分にとって意味のある目標や大切な価値観と結びついているとき、負荷をただの苦痛ではなく、取り組む理由のある課題として受け止めやすくなります。

ただし、価値観があるからといって、どんな負荷でも耐えられるわけではありません。

ユーストレスとして働くには、意味、選べる感覚、本人に合った負荷、相談先、休息と回復が必要です。

条件 職場で見ること
意味がある 本人にとって、その仕事の目的が見えているか
選べる感覚がある 進め方や相談のタイミングを自分で選べるか
負荷が合っている 本人の経験や体調に対して、過重になっていないか
相談できる 困ったときに、誰に何を相談できるか見えているか
回復できる 退勤後や休日に、仕事から離れる時間があるか

ユーストレスの定義やディストレスとの違いについては、ユーストレス(良性ストレス)とは|職場で活かすストレス資源の全体像で紹介しています。

職場研修で価値観ワークを扱うときの注意点

価値観ワークは、職場研修でも活用できます。

ただし、進め方を間違えると、参加者に負担をかけることがあります。

価値観や大切な人に触れるワークは、個人の深い経験に関係する場合があります。

そのため、職場では安全な範囲を守って行います。

注意したいこと 理由 研修での扱い方
強制しない 個人的な内容に触れるため 書ける範囲でよいと伝える
発表を求めない 評価や人間関係に影響する可能性があるため 共有は任意にする
正解を作らない 価値観は人によって違うため 良い・悪いで評価しない
評価と切り離す 本音を書きにくくなるため 人事評価や上司評価とは無関係に行う
つらい経験を書かせすぎない 感情的な負担が強くなる場合があるため 安全な範囲で、今できる行動に戻す

研修で行いたいのは、参加者を深く掘り下げることではありません。

自分にとって大切なことを確認し、ストレス時に取れる小さな行動を見つけることです。

管理職が扱うときは、部下を頑張らせる材料にしないことです

管理職が部下に価値観ワークを使う場合は、さらに注意が必要です。

部下の価値観を聞くことは、信頼関係がなければ負担になります。

また、価値観を聞いたあとに「それならもっと頑張れるね」と負荷を増やしてはいけません。

避けたい声かけ 部下が受け取りやすい意味 確認につながる声かけ
あなたの価値観なら頑張れるはず 負荷を正当化されたと感じる 大切にしたいことを守るために、何を調整しましょうか
前向きに考えよう つらさを軽く扱われたと感じる 今一番負担になっていることは何ですか
書いた内容を共有してください 本音を書きにくくなる 共有できる範囲だけで大丈夫です
それは仕事にどう活かせますか 評価面談のように感じる 今の働き方で大切にしたいことはありますか
責任感があるなら任せても大丈夫ですね 断れなくなる 責任を果たすために、減らす仕事も一緒に見ましょう

管理職に求められるのは、部下の価値観を利用して働かせることではありません。

部下が大切にしていることを守りながら働けるように、負荷、期限、相談先を一緒に整えることです。

人事総務・健康経営担当者が見ておきたいこと

価値観ワークを健康経営に取り入れる場合、個人ワークだけで終わらせないことです。

社員が自分の価値観を確認できても、職場の負荷が過重で、相談できず、休めない状態であれば、ストレス対策にはなりません。

見ておきたいこと 見落とすと起きやすいこと
ストレス対処が知識提供だけで終わっていないか 研修後の行動が変わりにくい
社員が自分の状態を振り返る時間があるか 忙しい職場ほど、疲労や抱え込みに気づきにくい
ワーク内容が評価や人事情報と切り離されているか 本音を書けなくなる
管理職が、部下の価値観を押しつけずに聴けるか 価値観を利用した負荷増加につながる
職場環境に原因がある場合、業務調整につながるか 個人の受け止め方だけに戻ってしまう
研修後に、相談行動や職場改善へつながる流れがあるか 一度の研修で終わってしまう

価値観ワークは、社員に「考え方を変えなさい」と求めるものではありません。

社員が自分の状態に気づき、必要な支援や小さな行動を選びやすくするためのものです。

タニカワ久美子の企業研修での扱い方

タニカワ久美子の企業研修では、価値観ワークを深い自己開示の場にはしません。

職場で扱う以上、個人の内面を掘り下げすぎることは避けています。

研修では、価値観の言葉を選び、自分がストレスを感じやすい場面と結びつけ、今日できる小さな行動に戻す形で進めます。

研修現場では、知識としては「相談が大切」と分かっていても、実際には「上司が忙しそうで言えなかった」「迷惑をかける気がして頼めなかった」と話す社員がいます。

また、管理職からは「声をかけているつもりだったが、仕事量を変えていなかった」「相談してと言うだけでは足りないと分かった」という反応が出ることがあります。

ここに、研修ワークの意味があります。

価値観ワークでは、「責任感があるから抱え込む」「信頼を大切にするから断れない」「健康を大切にしたいのに休めない」といったズレを、本人を責めずに言葉にしていきます。

そのうえで、明日できる小さな行動へ戻します。

たとえば、「早めに共有する」「期限を相談する」「休憩を予定に入れる」「途中で一度確認する」といった行動です。

また、座学だけで終わらせず、呼吸、肩回し、姿勢リセットなどの軽い実技も組み合わせます。

ストレスを頭で理解するだけではなく、身体のこわばりや呼吸の浅さにも気づけるようにするためです。

過去に実施したセミナーでも、全員参加型の軽い運動を取り入れることで、「肩に力が入っていた」「呼吸が浅くなっていた」「自分の疲れを後回しにしていた」と気づく社員がいました。

この低いハードルのワークと実技が、ストレス対処を職場で使える行動に戻します。

人事総務の担当者からも、座学だけではなく、全員で実際にできる軽い運動がある点を評価されています。

管理職には、「部下の価値観を利用して頑張らせるのではなく、大切にしたいことを守るために何を調整できるかを一緒に考えてください」と伝えています。

価値観ワークを研修で使いやすくする工夫

職場研修では、書くことが苦手な人、深く考えることに抵抗がある人、個人情報を出したくない人もいます。

そのため、ワークは一つの方法に固定しないことが大切です。

  • 言葉を選ぶだけの形式にする
  • 書く量を少なくする
  • 個人で考える時間を短く区切る
  • 発表は任意にする
  • 職場で言いやすいテーマに限定する
  • 最後は「今日できる小さな行動」に戻す

書ける人だけが評価される研修にしないことです。

参加者それぞれが、自分の範囲で気づきを持ち帰れる設計にします。

まとめ|価値観ワークは、ストレス対処を職場行動に戻すための研修ワークです

価値観ワークは、自分にとって大切なことを言葉にする方法です。

ストレスを感じる場面には、自分が大切にしているものが関係していることがあります。

ただし、価値観ワークは、ストレスを本人の考え方だけで解決させるものではありません。

職場で扱う場合は、強制しない、評価と切り離す、つらい経験を書かせすぎない、必要に応じて業務量や支援を見直すことが欠かせません。

ストレス対処を知識で学んでも、職場行動に戻せないことがあります。

そのときに必要なのは、社員が自分の大切にしたいことに気づき、明日できる小さな行動を選びやすくする研修設計です。

人事総務・健康経営担当者に求められるのは、個人ワークと職場環境の両方を見ることです。

社員が自分のストレスを確認し、管理職が安全に支援できるように、研修の進め方を整えていきます。

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文責:タニカワ久美子

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