健康経営
ストレスを生産性に活かす方法|職場の力みを整える視点
職場でストレスがあると聞くと、すぐに「減らさなければならないもの」と考えられがちです。
もちろん、強すぎるストレスや長く続くストレスは、社員の心身に負担をかけます。しかし、すべてのストレスを悪いものとして扱うと、仕事への集中や成長につながる適度な緊張まで見えにくくなります。
この記事では、ストレスを生産性に活かすために、人事総務・健康経営担当者が見ておきたい「身体の力み」「姿勢」「呼吸」「集中力」の関係を紹介します。
ストレスはすべて悪いものではない
ストレスは、もともと外から力がかかったときに生じる反応を表す言葉です。
職場でも同じように、締切、責任、慣れない仕事、新しい役割、人間関係などによって、心と身体に圧がかかります。
この圧が強すぎたり、長く続いたりすると、疲労、不眠、イライラ、集中力低下、メンタルヘルス不調につながることがあります。
一方で、適度な緊張感は、集中力や行動のきっかけになることもあります。新しい仕事に挑戦するとき、発表前に少し緊張するとき、責任ある業務に向かうときなど、ストレスが仕事への集中を支える場合もあります。
このような「力に変えられるストレス」の考え方は、ユーストレス(良性ストレス)の考え方にもつながります。
問題はストレスそのものより力みすぎにある
職場で注意したいのは、ストレスそのものよりも、ストレスを受けたときに身体が力みすぎている状態です。
慣れない仕事をしているとき、社員は無意識に肩に力を入れたり、呼吸が浅くなったり、背中や腰を固めたりします。
本人は集中しているつもりでも、身体には余分な力が入り続けていることがあります。
この状態が続くと、疲れやすくなり、視野が狭くなり、確認漏れや判断の遅れにもつながりやすくなります。
| 職場で見える状態 | 身体に起きやすい変化 | 仕事への影響 |
|---|---|---|
| 慣れない仕事を任された | 肩や首に力が入りやすい | 疲労感が強くなり、集中が続きにくくなる |
| 締切や責任が重い | 呼吸が浅くなりやすい | 焦りや確認漏れが出やすくなる |
| 人前で発表する | 背中や顔まわりが緊張しやすい | 表情や声が硬くなりやすい |
| 長時間デスクワークをする | 腰や肩が固まりやすい | だるさや眠気が出やすくなる |
| 一人で仕事を抱え込む | 全身の力が抜けにくくなる | 視野が狭くなり、相談が遅れやすくなる |
ストレスを生産性に活かすには、社員に「もっと頑張りましょう」と伝えるのではなく、まず余分な力みに気づけるようにすることが大切です。
慣れない仕事では力みが起きやすい
新入社員や異動直後の社員は、慣れない仕事に一生懸命取り組みます。
上司から言われたことを間違えないようにする。周囲に迷惑をかけないようにする。早く覚えようとする。その姿勢は大切ですが、同時に身体には強い緊張が入りやすくなります。
慣れない仕事では、頭だけでなく身体も力んでいます。肩に力が入り、呼吸が浅くなり、座り姿勢が崩れ、気づかないうちに疲労がたまります。
その結果、仕事に集中しているつもりでも、余分な力を使いすぎてしまい、かえって生産性が上がりにくくなることがあります。
人事総務・健康経営担当者は、新入社員や異動者に対して、業務知識だけでなく「疲れに早めに気づく方法」も伝えておく必要があります。
力を入れるより力を抜くほうが難しい
身体は、力を入れることより、余分な力を抜くことのほうが難しい場合があります。
研修でも「力を抜いてください」と伝えると、本人は抜いているつもりでも、肩や首、背中には力が残っていることがあります。
これは珍しいことではありません。仕事中は、無意識に力が入り続けていることが多いからです。
大切なのは、全身の力を抜くことではありません。姿勢を支えるために必要な力は残し、肩や首、腰、顔まわりの余分な力みに気づくことです。
職場で使いやすい表現にすると、「だらんと脱力する」のではなく、「仕事に必要な力だけを残して、余分な力を抜く」ということです。
体幹の安定は姿勢と呼吸を整える支点になる
元記事では「腹筋はメンタルヘルスの支点」という表現がありましたが、このままだと少し強く聞こえます。
企業向けの記事では、腹筋だけでメンタルヘルスが改善するような印象を避けたほうが安全です。
ここでは、体幹の安定が、姿勢と呼吸を整える支点になると考えます。
お腹まわりに軽く意識を置くと、背中が丸まりにくくなり、肩の力みに気づきやすくなります。姿勢が整うと、呼吸も浅くなりにくくなります。
その結果、長時間のデスクワークでも、肩や腰の負担に早めに気づきやすくなります。
これは「腹筋を鍛えればすべて解決する」という話ではありません。職場でのセルフケアとして、姿勢、呼吸、肩の力みを短く確認することが大切です。
ストレスを生産性に変えるための職場セルフケア
ストレスを生産性に活かすには、社員が自分の状態に気づき、仕事に戻りやすい状態をつくる必要があります。
そのためには、長い運動や特別な場所は必要ありません。デスク周りで短くできるセルフケアから始められます。
| 場面 | 見直したいこと | 職場でできるセルフケア |
|---|---|---|
| 仕事を始める前 | 肩や首に力が入っていないか | 肩を軽く回し、息を細く吐く |
| 集中が切れたとき | 同じ姿勢が続いていないか | 立ち上がって背中を伸ばす |
| 緊張する業務の前 | 呼吸が浅くなっていないか | 吐く息を少し長くする |
| 慣れない仕事の後 | 身体に余分な力が残っていないか | 首、肩、腰の力みを確認する |
| 一人で抱え込みそうなとき | 相談が遅れていないか | 業務量や不安を短く言葉にする |
ストレスを活かすとは、無理を我慢することではありません。
適度な緊張を仕事への集中に変え、過剰な力みや疲労に早めに気づくことです。
人事総務が見るべきサイン
ストレスが生産性につながっているのか、それとも社員を疲弊させているのかは、職場で見えるサインからも確認できます。
| 職場で見えるサイン | 考えられる状態 | 人事総務が確認したいこと |
|---|---|---|
| 頑張っているのに成果が出にくい | 余分な力みや焦りが強い | 業務量、期限、相談状況に無理がないか |
| 肩こりや腰痛を訴える社員が多い | 長時間座位や緊張が続いている | 休憩の取り方や姿勢の見直しができているか |
| 確認漏れや小さなミスが増える | 疲労や集中力低下が起きている | 一部の社員に負荷が集中していないか |
| 「大丈夫です」と言う社員が多い | 無理を言い出しにくい可能性がある | 管理職が具体的に声をかけているか |
| 会議後にぐったりしている | 緊張や気疲れが残っている | 会議時間、休憩、発言しやすさを見直す |
このようなサインがあるときは、社員本人の努力不足として片づけないことが重要です。
身体の力み、職場の負荷、相談しにくさ、休憩の取りにくさを合わせて見ることで、ストレスを生産性に活かすための支援がしやすくなります。
タニカワ久美子の企業研修で伝えていること
タニカワ久美子の企業研修では、ストレスを「悪いもの」と決めつけず、仕事に必要な緊張と、心身を疲れさせる力みを分けて考えることを大切にしています。
研修の現場では、「力を抜いているつもりだったけれど、肩に力が入っていました」「呼吸が浅くなっていることに気づきました」と話される社員さんがいます。
また、慣れない仕事や責任ある仕事をしている社員ほど、頑張っている自覚はあっても、身体が緊張していることには気づきにくい場合があります。
人事総務の担当者からも、座学だけではなく、全員で実際にできる軽い運動がある点を評価されています。ストレスを生産性に活かすには、知識だけではなく、自分の身体の状態に気づく時間が必要です。
管理職には、「頑張っている社員ほど、力みや疲労を見せないことがあります。成果だけでなく、表情、姿勢、呼吸、相談の遅れも見てください」と伝えています。
ストレスを活かす職場づくりで注意したいこと
「ストレスを活かす」という言葉は、使い方を間違えると、社員に無理を求める表現に聞こえることがあります。
そのため、人事総務・健康経営担当者は、次の点に注意する必要があります。
| 避けたい伝え方 | 理由 | 安全な伝え方 |
|---|---|---|
| ストレスは成長のために必要です | 我慢を求めているように聞こえる | 適度な緊張と、危険な疲労を分けて見ましょう |
| ストレスを乗り越えましょう | 本人の努力だけに見える | 無理が小さいうちに気づき、相談できるようにしましょう |
| 腹筋を鍛えればメンタルが安定します | 効果を言い切りすぎている | 姿勢と呼吸を整えるために、お腹まわりを意識しましょう |
| 成果が出ないのは力みすぎです | 本人を責めているように聞こえる | 力みや疲労が仕事に影響していないか、一緒に見直しましょう |
| 頑張れば慣れます | 過重負荷を見落とす | 慣れるまでの負荷と休息を確認しましょう |
ストレスを生産性に活かす職場づくりでは、社員に我慢を求めないことが前提です。
適度な緊張を仕事の集中に変え、過剰な力みや疲労を早めに見つけることが、健康経営としての支援になります。
ストレスを生産性に活かすには力みを見直す
ストレスは、すべてをなくせばよいものではありません。適度な緊張は、集中力や行動のきっかけになることがあります。
ただし、身体に余分な力みが入り続けると、疲労、集中力低下、確認漏れ、相談の遅れにつながります。
人事総務・健康経営担当者は、社員のストレスを「あるかないか」だけで見るのではなく、そのストレスが仕事への集中につながっているのか、疲労として蓄積しているのかを見ることが大切です。
姿勢、呼吸、肩や首の力み、休憩の取り方、管理職の声かけを合わせて見直すことで、ストレスを生産性に活かしやすい職場づくりにつながります。
ストレスを生産性に活かす職場セルフケアを研修で扱いたい方へ
けんこう総研では、社員が自分のストレスや身体の力みに気づき、職場で実践しやすいセルフケアにつなげるストレスマネジメント研修を行っています。