ストレス管理
ストレスと上手に向き合う方法|比べないストレス対処法
このストレス管理カテゴリーでは、職場で起こる心身の反応を、社員の不調予防につなげる視点で扱っています。本記事の焦点は、ストレスを完全になくす方法ではありません。周囲の人とストレス解消法を比べて、かえって苦しくならないための向き合い方を取り上げます。人事総務・健康経営担当者が、社員一人ひとりの違いを尊重しながら、無理なく話せる研修づくりに活かせる内容です。
ストレスと上手に向き合う方法は、比べないことから始まる
ストレスと上手に向き合うために大切なのは、無理にストレスをゼロにしようとしないことです。仕事をしていれば、責任、締め切り、人間関係、顧客対応など、何らかの緊張は起こります。
問題は、ストレスがあることそのものではありません。周りの人と比べて、「自分はうまく発散できていない」「自分だけ対処法がない」と感じてしまうことです。
ストレス解消法は、人によって違います。話すことで楽になる人もいれば、一人で静かに過ごすことで落ち着く人もいます。運動が合う人もいれば、身体を休めることが必要な人もいます。誰かに合う方法が、自分にも合うとは限りません。
企業研修で見えた「自分だけ違うのでは」という不安
タニカワ久美子の企業研修では、参加者同士でストレスとの向き合い方を話す時間を入れることがあります。そこでよく見えてくるのが、「自分には立派なストレス解消法がない」と感じてしまう社員さんの表情です。
ある研修で、参加者の一人が「私はそこまでのストレスレベルじゃないんですけど……」と小さく話したことがありました。強く困っているわけではない。でも、ほかの人が運動や趣味、家族との時間などを話しているのを聞くうちに、「自分は何もできていないのでは」と感じたようでした。
その場で大切なのは、すぐに正解を教えることではありません。「ストレス解消法がないことも、おかしいことではありません」と場を整えることです。社員さんは、正しい答えを出そうとすると緊張します。けれども、「自分はこういうときに少し疲れやすい」「休むと少し戻る」「人と話すより一人の時間が必要かもしれない」と言葉にできると、表情が少しゆるみます。
この変化は、研修の現場でとても大切です。ストレス対策は、明るく前向きな方法を発表する場ではありません。自分の状態に気づき、ほかの人と違っていても大丈夫だと感じられることが、職場での不調予防につながります。
人事総務・健康経営担当者にとっても、この視点は役立ちます。社員に「ストレス解消法を持ちましょう」とすすめるだけでは、答えられない人がかえって黙ってしまうことがあります。タニカワ久美子の研修では、社員が比べて苦しくならないように、発言の上手さではなく、安心して自分の状態を話せる空気を大切にしています。
ストレス解消法がない人もおかしくない
ストレス研修では、「あなたのストレス解消法は何ですか」と聞く場面があります。すると、すぐに答えられる人もいれば、なかなか答えられない人もいます。
このとき、答えられない社員が悪いわけではありません。ストレス解消法を言葉にしたことがない人もいます。自分では気づいていないだけで、休む、寝る、歩く、音楽を聴く、家族と話すなど、自然に行っている行動がある場合もあります。
また、ストレスが強い時期には、何をしても楽になった感じがしないこともあります。その状態で「解消法を持ちましょう」と言われると、かえって負担になることがあります。
人事総務・健康経営担当者が注意したいのは、ストレス解消法を持っているかどうかで社員を評価しないことです。
他人の対処法を聞くと焦りが生まれることがある
研修でほかの人の話を聞くことは、多くの場合、よい気づきになります。「そんな方法もあるのか」「自分にもできそうだ」と感じることがあります。
一方で、比べてしまう人もいます。あの人はうまく切り替えている。自分はうまくできていない。周りは前向きなのに、自分だけ何もできていない。そう感じると、ストレス対策の時間そのものが新たなストレスになります。
だからこそ、研修では「正しいストレス解消法を発表する場」にしないことが大切です。参加者が安心して、自分の状態を言葉にできる場にする必要があります。
「ストレス解消がないのが一番」という声かけ
その研修では、「私はそこまでのストレスレベルじゃない」と話した方に対して、別の参加者が「ストレス解消がないのが一番」と声をかけました。
この一言で、場の空気が少しやわらぎました。
ストレス解消法をたくさん持っていることが良いとは限りません。大きな不調がなく、日常の中で自然に気分を切り替えられているなら、それも一つの状態です。
大切なのは、誰かの方法に合わせることではありません。自分にとって無理のない方法で、心身の負担に気づけることです。
自分は自分、人は人でよい
ストレス対策では、「自分は自分、人は人」という感覚が大切です。
同じ職場で働いていても、ストレスの感じ方は違います。人前で話すことが負担になる人もいれば、黙って一人で作業することがつらい人もいます。にぎやかな職場で元気になる人もいれば、静かな時間がないと疲れてしまう人もいます。
その違いを比べ始めると、自分に合わない方法まで取り入れようとしてしまいます。すると、ストレスを減らすはずの行動が、かえって疲れにつながります。
ストレスと上手に向き合うには、自分に合う方法を探すことが必要です。他人と同じ方法でなくても、自分が少し楽になれるなら、それで十分です。
ストレスフリーを目指しすぎない
「ストレスフリー」という言葉は魅力的に聞こえます。しかし、職場でまったくストレスのない状態を目指すのは現実的ではありません。
仕事には、期限、責任、相手との調整、判断、変化への対応があります。これらをすべてなくすことはできません。むしろ、ほどよい緊張があることで、集中できたり、成長につながったりすることもあります。
大切なのは、ストレスをゼロにすることではありません。強すぎるストレスを早めに見つけ、疲れがたまりすぎる前に回復できるようにすることです。
研修では、うまく話すことより安心して話せることを大切にする
ストレス研修では、参加者が「よいことを言わなければ」と感じると、本音が出にくくなります。特に真面目な社員ほど、周囲の発言を聞きながら、自分の答えが合っているかを気にしてしまいます。
タニカワ久美子の研修では、ストレス解消法を競わせるような進め方はしません。運動が合う人もいれば、静かに休む方が合う人もいます。人に話すことで楽になる人もいれば、話すこと自体が疲れる人もいます。
大切なのは、社員が「自分の感じ方でよい」と思えることです。その安心感があると、普段は言いにくい疲れや困りごとも少しずつ言葉になります。職場のストレス対策は、正解をそろえることではなく、社員が早めに不調のサインに気づける状態をつくることから始まります。
人事総務が注意したい研修中の空気
ストレス研修では、内容だけでなく場の空気も重要です。参加者が「うまく話さなければならない」「前向きなことを言わなければならない」と感じると、本音を出しにくくなります。
人事総務・健康経営担当者が見ておきたいのは、誰かの発言が正しいかどうかではありません。参加者が無理に合わせていないか、発言しにくそうな人がいないか、ほかの人と比べて苦しくなっていないかです。
研修は、社員に負担を増やす場ではなく、安心して自分の状態に気づく場にする必要があります。
社員に伝えやすい声かけ
ストレスとの向き合い方を考えるときは、社員に「こうしなさい」と押しつけないことが大切です。次のような声かけなら、本人の状態を尊重しながら話を進めやすくなります。
- ほかの人と同じ方法でなくても大丈夫です
- 自分が少し楽になる方法を探してみましょう
- ストレス解消法がすぐに思いつかなくても問題ありません
- 無理に前向きにならなくても大丈夫です
- 疲れているときは、対処法を増やすより休むことが必要な場合もあります
- 今の自分に合う方法を一つ見つけられれば十分です
このような声かけは、社員を励ますだけでなく、比べなくてもよいという安心感をつくります。
ストレスと上手に向き合う職場をつくる
ストレスと上手に向き合う方法は、特別なことをすることではありません。他人と比べず、自分の状態に気づき、必要なときに休む、話す、距離を取る、助けを求めることです。
職場では、社員一人ひとりの違いを認めることが大切です。全員に同じストレス解消法を求めるのではなく、それぞれが無理なく取り入れられる方法を見つけられるようにすることが、不調予防につながります。
ストレス対策を本人任せにせず、社員が安心して自分の状態に気づける研修を行いたい場合は、ストレスマネジメント研修をご確認ください。