ストレス認知とは|受け止め方とコーピングを職場支援に活かす方法

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ストレス認知とは

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ストレス認知とは

同じ出来事でも、強いストレスになる人と、あまりストレスにならない人がいます。

たとえば、上司から新しい仕事を任されたとき、「期待されている」と感じる人もいれば、「失敗したらどうしよう」と不安になる人もいます。
この違いに関係するのが、ストレス認知です。

ストレス認知とは、出来事そのものではなく、その出来事を本人がどのように受け止めるかという心の働きです。

職場のストレス対策では、業務量や人間関係だけでなく、社員がその状況をどう受け止めているかを見ることが重要です。
ただし、ストレス認知を「本人の考え方の問題」として扱ってはいけません。
受け止め方には、業務量、経験、支援、裁量、体調、職場の雰囲気が関係します。

本記事では、ストレス認知の意味、ラザルスの考え方、職場での声かけと支援の方法を、人事総務・健康経営担当者向けに整理します。

ストレス認知とは

ストレス認知とは、ある出来事を本人がどのように意味づけるかということです。

同じ出来事でも、「自分にとって大きな脅威だ」と感じる場合と、「大変だが何とか対応できそうだ」と感じる場合では、心身の反応が変わります。

職場では、次のような場面でストレス認知の違いが出やすくなります。

  • 新しい仕事を任されたとき
  • 上司から注意を受けたとき
  • 納期が近づいているとき
  • 異動や昇進があったとき
  • 職場の人間関係に変化があったとき
  • ストレスチェック後に面談を受けるとき

大切なのは、「気にしすぎ」「考え方の問題」と片づけないことです。
本人の受け止め方には、業務量、経験、支援、体調、過去の失敗経験、職場の雰囲気が関係します。

ラザルスの認知評価の考え方

ストレス研究で知られるラザルスは、ストレスを出来事そのものだけで決めるのではなく、本人の受け止め方と、対処できそうかどうかで考えました。

職場に置き換えると、社員は出来事に直面したとき、無意識のうちに次のような確認をしています。

確認していること 本人の中で起こる判断 職場での例
自分に関係があるか これは自分にとって重要なことか 異動、評価、納期、上司からの指摘
脅威か、挑戦か 危険なのか、成長機会なのか 新しい業務を任される
対応できそうか 自分に対処する力や支援があるか 相談先、経験、時間、裁量があるか

この受け止め方によって、ストレスは大きくも小さくもなります。

ただし、ここで重要なのは、ストレスを本人の考え方だけに押しつけないことです。
「対応できそう」と感じられるかどうかは、職場の支援や業務設計にも左右されます。

ストレス認知を職場で見る意味

職場でストレス認知を見る目的は、社員に「前向きに受け止めましょう」と求めることではありません。

本人が何を脅威と感じているのか、何が不安なのか、どの支援があれば対応しやすくなるのかを確認するためです。

本人の受け止め方 職場で起こりやすい反応 必要な支援
失敗したら終わりだと感じている 不安、確認過多、先延ばし 期待水準と完了基準を明確にする
自分には対応できないと感じている 相談回避、報告遅れ、意欲低下 相談先、手順、支援者を明確にする
成長機会だが負荷も大きいと感じている 集中、緊張、疲労の両方が出る 挑戦を支えつつ、回復時間を確保する
何を求められているか分からない 混乱、ミス、確認漏れ 目的、役割、優先順位を整理する

ストレス認知を確認すると、本人の弱さではなく、職場側が整えるべき条件が見えやすくなります。

自覚できるストレスと気づきにくいストレス

ストレスには、自分で気づきやすいものと、気づきにくいものがあります。

「不安だ」「緊張している」「つらい」と自覚できる場合は、周囲に相談したり、休息を取ったりしやすくなります。

一方で、責任感が強い人や、忙しさに慣れている人は、自分のストレスに気づきにくいことがあります。

状態 本人の自覚 職場で見えやすいサイン
自覚できるストレス 不安、緊張、疲労、焦りを言葉にできる 相談、体調不良の訴え、面談での発言
気づきにくいストレス 大丈夫と思っているが疲労がたまっている ミス、報告遅れ、表情の硬さ、相談の減少
慢性化したストレス 疲れている状態が普通になっている 意欲低下、欠勤、孤立、反応の鈍さ

人事総務や管理職は、本人の「大丈夫です」という言葉だけで判断しないことが重要です。
表情、勤務状況、ミス、相談の減少、睡眠や疲労の訴えも合わせて確認します。

ストレス認知は職場環境で変わる

ストレス認知は、本人の性格だけで決まるものではありません。
同じ仕事でも、職場の支援があるかどうかで受け止め方は変わります。

職場条件 ストレスが強まりやすい状態 ストレスを扱いやすくする対応
目標 何を求められているか分からない 目的、期限、期待役割を明確にする
裁量 責任だけ重く、進め方を選べない 優先順位や進め方を相談できるようにする
支援 困っても相談できない 上司・同僚・専門職への相談導線をつくる
評価 失敗だけが責められる 過程や学びも振り返る
回復 休めない、緊張が続く 休憩、勤務間隔、繁忙期後の回復を確保する

このように、ストレス認知を支えるには、本人への声かけだけでなく、職場環境の調整が必要です。

コーピングとは

コーピングとは、ストレスに対処するための行動や考え方のことです。

職場で使いやすいコーピングには、次のようなものがあります。

種類 内容 職場での例
問題に働きかける対処 ストレスの原因に直接対応する 業務量を調整する、優先順位を決める、相談する
気持ちを整える対処 不安や緊張を和らげる 休憩、呼吸、気分転換、話を聞いてもらう
受け止め方を見直す対処 出来事の意味を整理する 何が不安なのか、何を大切にしたいのかを書き出す
支援を使う対処 一人で抱え込まない 上司、同僚、人事、産業保健スタッフに相談する

コーピングは、本人に努力を求めるためのものではありません。
本人が自分の状態に気づき、必要な支援につながるための方法です。

ストレス認知とユーストレスの関係

ストレス認知は、ユーストレスを理解するうえでも重要です。
ユーストレスとは、成長や前向きな行動につながる良性のストレスです。

同じ負荷でも、本人が「対応できそう」「意味がある」「相談できる」と感じられる場合、そのストレスは集中や達成感につながることがあります。

一方で、「逃げ場がない」「失敗できない」「誰にも相談できない」と感じる場合、同じ負荷でもディストレスになりやすくなります。

ユーストレスの定義やディストレスとの違いについては、
ユーストレス(良性ストレス)とは
で詳しく整理しています。

管理職が注意したい声かけ

ストレス認知を扱うとき、管理職の声かけは重要です。
ただし、言い方を間違えると、本人のつらさを軽く扱ってしまいます。

避けたい声かけ 問題点 望ましい声かけ
考え方を変えれば大丈夫 本人のつらさを軽く扱ってしまう どの部分が一番負担になっていますか
前向きに受け止めよう 職場側の問題を本人の受け止め方に押しつけやすい 仕事量や相談先も一緒に確認しましょう
気にしすぎでは 相談しにくくなる そう感じる理由を一緒に整理しましょう
みんな同じだから 個人差や状況差を無視してしまう 今の状況で支援できることを確認しましょう

管理職に必要なのは、部下の受け止め方を変えさせることではありません。
部下が状況を整理し、必要な支援や調整につながれるようにすることです。

人事総務・健康経営担当者が確認したいこと

ストレス認知を健康経営で扱う場合、個人研修だけで終わらせないことが重要です。
社員に「認知を変えましょう」と伝えるだけでは、職場改善にはつながりません。

次の点を確認してください。

  • ストレスチェック後、職場ごとの負荷を確認しているか
  • 管理職が、部下の受け止め方を決めつけずに聴けているか
  • 相談しやすい導線があるか
  • 業務量や役割のあいまいさを見直しているか
  • 社員が自分のストレスに気づく機会があるか
  • 研修後に、面談や職場改善へつながっているか

ストレス認知は、本人の考え方だけの問題ではありません。
本人の受け止め方と、職場の支援体制を合わせて見ることが大切です。

タニカワ久美子の企業研修ではどう扱うか

タニカワ久美子の企業研修では、ストレス認知を「考え方を変えましょう」という精神論としては扱いません。
出来事をどう受け止めているかを確認し、その受け止め方の背景にある業務量、支援、裁量、回復状況まで整理します。

社員本人には、自分が何を脅威と感じているのか、何があれば対応しやすくなるのかを見直す視点を伝えます。
管理職には、部下の受け止め方を否定せず、必要な支援や調整につなげる声かけを伝えます。

現場では、本人が「自分の考え方が悪い」と思い込んでいても、実際には仕事量が多すぎる、役割があいまい、相談先がない、休めないという職場条件が背景にあることがあります。
この整理ができると、ストレスチェック後の面談、管理職ラインケア、社員向け研修を実務につなげやすくなります。

まとめ|ストレス認知は職場支援とセットで見る

ストレス認知とは、出来事を本人がどのように受け止めるかという心の働きです。
同じ出来事でも、「挑戦」と感じる場合もあれば、「脅威」と感じる場合もあります。

その違いには、本人の経験、体調、支援、裁量、職場の雰囲気が関係します。

人事総務・管理職に必要なのは、社員に「考え方を変えなさい」と求めることではありません。
本人が何を負担に感じているのかを確認し、必要な支援、業務調整、相談導線につなげることです。

ストレス認知を理解すると、ストレスチェック後の面談、管理職ラインケア、社員向け研修を実務につなげやすくなります。

職場のストレス管理研修への活用

けんこう総研では、企業・介護施設・教育機関向けに、ストレス認知、コーピング、ユーストレスとディストレスの違い、管理職ラインケアを含めたストレスマネジメント研修を行っています。

研修では、社員に「前向きに考えましょう」と求めるのではなく、ストレスの受け止め方と職場条件を整理し、必要な支援や行動につなげる方法を扱います。

ストレスチェック後の面談、管理職研修、社員向けセルフケア研修を見直したい場合は、ストレスマネジメント研修をご覧ください。

参考文献

  • Lazarus, R. S., & Folkman, S. (1984). Stress, Appraisal, and Coping. Springer.

文責:タニカワ久美子

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