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良いストレスと悪いストレスを職場で誤用しない判断基準

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ユーストレス(良性ストレス)

良いストレスと悪いストレスを職場で誤用しない判断基準

「良いストレスなら、社員にもう少し頑張ってもらってもよいのでしょうか」と迷うことはありませんか。

人事総務・健康経営担当者の方から、ストレス対策を考える中でこのような相談を受けることがあります。

たしかに、ストレスには、集中や成長につながるものがあります。適度な緊張、やりがいのある目標、新しい仕事への挑戦、達成感につながる負荷は、社員の行動を後押しすることがあります。

一方で、同じ負荷でも、相談できない、休めない、断れない、失敗が責められる状態では、心身を消耗させる悪いストレスに変わります。

つまり、良いストレスと悪いストレスの違いは、出来事そのものだけでは決まりません。

大切なのは、その負荷に支援があるか、仕事の進め方に裁量があるか、終わったあとに回復できるかです。

この記事では、「良いストレス」という言葉を職場で誤用しないために、人事総務・健康経営担当者が確認したい支援・裁量・回復の条件を見ていきます。

良いストレスと悪いストレスの違いを職場で考えるイメージ

良いストレスと悪いストレスの違いは、出来事そのものではなく、支援・裁量・回復の有無によって変わります。

良いストレスという言葉が職場で誤用される場面

良いストレスという言葉は、職場で使いやすい一方で、使い方を間違えると危険です。

たとえば、管理職が「これは成長のためだから」「良いプレッシャーだから」と声をかける場面があります。

管理職としては、部下を励ましたい気持ちがあります。新しい仕事に挑戦してほしい。少し難しい役割を経験してほしい。そう考えること自体は自然です。

けれども、部下の側では違う受け止め方をしていることがあります。

「期待されているなら断れない」「できないと言ったら評価が下がるかもしれない」「相談しても仕事量は変わらない」と感じている場合、その負荷は良いストレスとは言い切れません。

良いストレスは、社員に我慢を求めるための言葉ではありません。

良いストレスとして働くのは、負荷に対して支援があり、本人に進め方の余地があり、終わったあとに回復できるときです。

良いストレスと悪いストレスの違い

良いストレスとは、緊張や負荷があっても、本人が「何とか取り組めそう」「成長につながりそう」と感じられるストレスです。

悪いストレスとは、負荷が強すぎたり、支援がなかったり、休んでも回復できなかったりして、心身を消耗させるストレスです。

項目 良いストレス 悪いストレス
専門用語 ユーストレス ディストレス
受け止め方 大変だが、取り組めそう どうにもならない、逃げ場がない
職場条件 相談先、裁量、回復時間がある 孤立、過重負荷、休めない状態がある
管理職の関わり 期待と同時に、調整できる余地も伝えている 「期待している」「成長のため」で終わっている
残る感覚 達成感、学び、次への意欲が残る 疲労、不安、無力感が残る

ここで大切なのは、良いストレスと悪いストレスを、出来事の種類だけで分けないことです。

同じプレゼンでも、準備時間があり、相談できる上司がいて、本人が成長機会と受け止められるなら、良いストレスになりやすくなります。

一方で、準備不足のまま強い責任だけを負わされ、失敗への不安が強い場合は、悪いストレスになりやすくなります。

良いストレスは、支援があるから成り立ちます

良いストレスは、単に「前向きに考えれば生まれるもの」ではありません。

緊張や負荷があっても、本人が対応できそうと感じられること。困ったときに相談できること。仕事の進め方に一定の裁量があること。終わったあとに回復できること。

この条件がそろっているとき、負荷は集中や成長につながりやすくなります。

たとえば、次のような場面です。

  • 重要な発表に向けて準備を進める
  • 新しい仕事に挑戦して、終わったあとに成長を感じる
  • 適度な期限があることで、優先順位を決めやすくなる
  • 責任ある役割を任され、相談しながら進められる
  • 困難を乗り越えた後に、達成感が残る

良いストレスは、楽な状態ではありません。

緊張もあります。不安もあります。少し背伸びをする感覚もあります。

それでも、支援と回復があるから、社員はその負荷を「挑戦」として受け止めやすくなります。

悪いストレスは、逃げ場がないと強くなります

悪いストレスは、心身を消耗させるストレスです。

負荷が強すぎる。長く続く。相談できない。仕事の進め方を選べない。休んでも回復できない。

このような状態では、ストレスは成長ではなく、疲労や不安につながります。

職場では、次のような状態が見られることがあります。

  • 長時間労働が続いている
  • 業務量が多すぎて終わりが見えない
  • 相談しても支援が得られない
  • 失敗を強く責められる
  • 人間関係の緊張が続いている
  • 休んでも疲れが取れない
  • 仕事への意欲や達成感が下がっている

悪いストレスは、本人の我慢や気合いで処理させるものではありません。

人事総務や管理職が見るべきなのは、本人の弱さではなく、業務量、役割、支援体制、相談しやすさ、回復できる時間です。

同じ出来事でも、良いストレスにも悪いストレスにもなります

良いストレスと悪いストレスを見分けるときに迷うのは、同じ出来事でも人によって意味が変わるからです。

たとえば、管理職への昇進は、ある社員にとっては成長の機会になります。

けれども、支援がなく、業務量が多すぎて、家庭の介護や育児も重なっている社員にとっては、大きな負担になることがあります。

出来事 良いストレスになりやすい条件 悪いストレスになりやすい条件
新しい仕事を任される 目的が明確で、相談先があり、学習機会がある 説明不足で、責任だけが増え、支援がない
プレゼンを担当する 準備時間があり、練習でき、評価基準が明確 急に任され、失敗への圧力が強い
管理職になる 役割教育と上位者の支援がある 部下対応も業務責任も一人で抱える
繁忙期を迎える 期間が限定され、応援体制と休息がある 慢性的に続き、終わりが見えない
異動する 期待役割と引き継ぎが明確 孤立し、相談先がなく、成果だけ求められる

ストレスの良し悪しは、出来事そのものではなく、本人の受け止め方、対処できそうという感覚、支援、裁量、回復の有無によって変わります。

良いストレスとして働くための3つの条件

職場で良いストレスを活かすには、負荷だけを見ないことです。

良いストレスとして働くには、少なくとも次の3つが必要です。

1. 支援があること

支援のない挑戦は、社員を孤立させます。

「困ったら言ってね」と伝えるだけでは、支援としては弱いことがあります。

誰に相談してよいのか。どの時点で相談してよいのか。相談した後に、業務量や期限を調整できるのか。

ここまで見えていると、社員は挑戦を抱え込みにくくなります。

2. 裁量があること

責任だけが増えて、進め方を選べない仕事は、悪いストレスに変わりやすくなります。

本人が優先順位を考えられること。相談のタイミングを選べること。進め方に工夫の余地があること。

この裁量があると、同じ負荷でも「やらされている」感覚が減り、自分の仕事として受け止めやすくなります。

3. 回復できること

良いストレスであっても、回復する時間がなければ疲労につながります。

集中して働いた後に休めること。退勤後に仕事を引きずらないこと。休日に気持ちを切り替えられること。

この回復がないまま負荷が続くと、良いストレスとして始まった仕事も、悪いストレスに変わっていきます。

管理職が注意したい声かけ

管理職が「良いストレス」という考え方を使うときは、言い方に注意が必要です。

良いストレスは、部下にプレッシャーをかけるための言葉ではありません。

本人が対応できそうと感じ、支援と回復があるからこそ、成長につながります。

避けたい声かけ 現場で起きやすい受け止め 確認につながる声かけ
これは良いストレスだから頑張って 負担を軽く見られたと感じる 今の負荷は対応できる範囲ですか
成長のためには我慢も必要 つらさを言いにくくなる 成長につなげるために、どんな支援が必要ですか
プレッシャーがあるほうが伸びる 人による違いを無視されたと感じる どの部分に一番プレッシャーを感じていますか
みんな通ってきた道だから 相談しにくくなる 一人で抱えず、調整できる点を確認しましょう
期待しているよ 断れない圧力になることがある 期待している仕事と、減らす仕事を一緒に分けましょう

管理職に必要なのは、良いストレスを押しつけることではありません。

部下が挑戦を安全に経験できる条件を整えることです。

専門職でも迷うポイント

良いストレスと悪いストレスを分けるとき、専門職でも迷う場面があります。

それは、本人が前向きに見えるときです。

責任感の強い社員ほど、「大丈夫です」「やります」「問題ありません」と答えることがあります。

管理職から見ると、任せられる社員に見えます。人事総務から見ても、すぐには問題が見えにくいことがあります。

けれども、研修現場では次のような声が出ることがあります。

  • 「期待されていると言われると、断れない」
  • 「相談してよいと言われても、仕事量が変わらないなら言いにくい」
  • 「休んでいいと言われても、休んだ後の仕事が怖い」
  • 「自分が引き受ければ早いと思って、抱えてしまう」

この状態は、外から見ると前向きに見えるかもしれません。

けれども、退勤後も仕事が頭から離れない、相談が減っている、確認漏れが増えている、表情が硬くなっている場合は、悪いストレスに近づいている可能性があります。

本人が前向きに見えるときほど、仕事量、相談先、裁量、回復時間まで見ていきます。

社内で動かす難しさ

良いストレスと悪いストレスを社内で扱う難しさは、定義を覚えることではありません。

難しいのは、人事総務、管理職、社員本人、社内支援者が、同じ負荷を別の角度から見ていることです。

人事総務は、健康経営やストレスチェック後対応として見ます。

管理職は、成果、納期、人員不足、育成の必要性として見ます。

社員本人は、「迷惑をかけたくない」「期待に応えたい」「弱いと思われたくない」と感じて、負荷を隠すことがあります。

社内支援者や専門職は、疲労、不眠、不安、休職リスクを見ます。

それぞれの見方は、どれも間違いではありません。

ただ、同じ言葉で話せていないと、職場改善に進みにくくなります。

たとえば、管理職が「期待している」と声をかけたとき、人事総務は育成的な関わりと受け取るかもしれません。

しかし、本人がその言葉を「断ってはいけない」と受け止めている場合、同じ声かけが負荷を強めることがあります。

相談で拾ったサインを、本人の気持ちの問題で終わらせるのか。業務量、期限、声かけ、相談体制の見直しに戻せるのか。

ここが、健康経営施策としての分かれ目になります。

タニカワ久美子が企業研修で見てきたこと

タニカワ久美子の企業研修では、良いストレスと悪いストレスの違いを、単なる用語としては扱いません。

研修現場でよく見えるのは、「成長のため」「本人のため」という言葉で、負荷が増えている場面です。

管理職に悪気はありません。むしろ、部下に期待しているからこそ任せています。

けれども、部下の側では「期待されているなら断れない」「できないと言ったら評価が下がる」と受け止めていることがあります。

また、管理職からは「励ましているつもりだった」「良い経験になると思って任せていた」という反応が出ることがあります。

一方で、社員側からは「相談しても仕事量が変わらないなら言いにくい」「大丈夫ですと言うしかなかった」という声が出ることがあります。

このズレは、資料を読むだけでは見えにくいものです。

タニカワ久美子の研修では、良いストレスと悪いストレスを、支援・裁量・回復の有無で見分けるように伝えています。

社員には自分のストレスサインに気づくことを、管理職には「今の負荷は本人にとって挑戦になっているのか、消耗になっているのか」を確認する声かけを扱います。

人事総務の担当者からは、「良いストレスという言葉を、部下に頑張らせるためではなく、支援の条件を見直す言葉として使えるようになった」という声をいただくことがあります。

良いストレスとユーストレスの関係

良いストレスは、専門的にはユーストレスと呼ばれます。

悪いストレスは、ディストレスと呼ばれます。

ただし、この記事では用語の詳しい説明よりも、職場で誤用しないための見方を中心に紹介しています。

ユーストレスを理解するうえで大切なのは、ストレスを「あるか、ないか」だけで見ないことです。

適度な緊張、明確な目標、支援、裁量、回復時間があると、ストレスは集中や成長につながることがあります。

一方で、負荷が長く続き、支援や回復が不足すると、同じストレスはディストレスに変わります。

ユーストレスの意味、ディストレスとの違い、職場での活かし方については、ユーストレス(良性ストレス)とは|職場で活かすストレス資源の全体像で詳しく紹介しています。

まとめ|良いストレスは、条件がそろって初めて良いストレスになります

良いストレスとは、緊張や負荷があっても、集中、成長、達成感につながるストレスです。

悪いストレスとは、負荷が強すぎたり、長く続いたり、支援や回復が不足したりして、心身を消耗させるストレスです。

同じ出来事でも、本人の受け止め方、支援、裁量、経験、体調、回復時間によって、良いストレスにも悪いストレスにもなります。

職場で大切なのは、社員に「ストレスに強くなれ」と求めることではありません。

悪いストレスを減らし、良いストレスとして働く条件を整えることです。

良いストレスという言葉を使うなら、仕事量、相談先、裁量、管理職の声かけ、回復時間まで一緒に見ていくことが欠かせません。

職場のストレス管理研修への活用

けんこう総研では、企業・介護施設・教育機関向けに、ユーストレス、ディストレス、ストレス反応、管理職ラインケア、ストレスチェック後の職場改善を含めたストレスマネジメント研修を行っています。

良いストレスと悪いストレスの違いを理解すると、職場のストレス対策を「ストレスをなくす」だけでなく、「成長につながる負荷」と「健康を損なう負荷」を見分ける視点で設計しやすくなります。

社員のパフォーマンスとメンタルヘルスを両立させるストレス管理研修を検討している場合は、以下のページをご覧ください。


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参考文献

  • Gong, W., & Geertshuis, S. A. (2023). Distress and eustress: an analysis of the stress experiences of offshore international students. Frontiers in Psychology, 14, 1144767.

文責:タニカワ久美子

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