ストレス計測・行動変容
ストレス管理で「モニタリング」は何を見ればよいのか
―― 最新研究から読み解く、職場で役立つ測定と判断の考え方
ストレス管理において、なぜ「モニタリング」が重要なのか
健康経営に取り組む企業が増える中で、
ストレス管理におけるモニタリングは、
最新研究でも繰り返し重要性が指摘されているテーマです。
ここで言うモニタリングとは、
「本人の感覚」だけに頼るのではなく、
- 生理的な反応
- 行動の変化
- 主観的な状態
を継続的に把握し、判断材料として活用することを指します。
本記事では、
ストレス研究の最新知見をもとに、
職場でモニタリングを考える際に、何を見るべきか、どこで誤りやすいか
を整理します。

最新研究が示す「モニタリングの本質」
今回参照する研究は、
大学生アスリートを対象にしたストレス管理に関するレビュー研究です。
一見すると、
「スポーツの世界の話」に見えるかもしれません。
しかしこの研究が扱っているのは、
高い成果が求められる環境で、人がどのようにストレスを受け、
それをどう把握すべきかという普遍的なテーマです。
この点は、
業務負荷や成果責任を伴う企業の職場とも重なります。
研究が注目した2つの測定の視点
この研究では、
ストレスを把握する方法として
主観的な測定と客観的な測定の両方が検討されています。
主観的な測定とは
- 自己評価アンケート
- 疲労感や心理的負担の自己申告
本人の感覚を直接把握できる点が強みですが、
その日の気分や状況に左右されやすい側面もあります。
客観的な測定とは
- 心拍変動(HRV)
- コルチゾールなどの生理指標
データとしての信頼性は高い一方で、
「なぜそうなっているのか」という背景までは示しません。
研究が示した重要な結論
この研究が一貫して示しているのは、
どちらか一方だけでは不十分であるという点です。
- 主観的な測定だけでは、気づきに偏りが出る
- 客観的な測定だけでは、意味づけができない
そこで提案されているのが、
主観的な評価を軸にしつつ、必要に応じて客観的なデータを組み合わせる
という考え方です。
これは、
職場におけるストレス管理にもそのまま当てはまります。
職場で起こりやすいモニタリングの誤解
人事・総務の現場では、
次のような誤解が起こりがちです。
- 数値がある方が「正しい判断」ができる
- データがあれば、早期対応が自動的に進む
- モニタリングは技術の問題である
しかし研究が示しているのは、
モニタリングは“測る行為”ではなく、“読み取るプロセス”である
という点です。
測定結果は、
そのまま対策につながるものではなく、
対話や調整のきっかけとして機能します。
モニタリングを「管理」にしないために
ストレスのモニタリングは、
使い方を誤ると、
- 監視されている感覚
- 評価に使われるのではという不安
を生むリスクがあります。
そのため、職場で活用する際には、
- 何のために測るのか
- 誰が、どの範囲まで扱うのか
- 結果をどう共有するのか
といった点を、
事前に整理しておくことが不可欠です。
本記事で整理している視点
本記事は、
特定のツールや手法を勧めるものではありません。
目的は、
- ストレス管理において
- モニタリングがどのような役割を持つのか
- 何を過度に期待してはいけないのか
を理解することにあります。
主観的な状態 × 生理的な反応 × 職場環境
この3つを切り離さずに捉えることが、
ストレス管理戦略の前提になります。
次に人事・総務が考えるべきこと
ここまでを踏まえると、
次に検討すべきなのは、
- どの段階で、どの情報を使うのか
- 管理職はどこまで関与するのか
- 学習や対話の場をどう組み込むのか
といった 運用前の判断です。
次の記事では、
こうしたモニタリングを
職場の施策として無理なく機能させるための設計視点を、
人事・総務の立場から整理していきます。