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感情労働という働き方改革|見えない感情負担を職場改善につなげる視点

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ストレス管理

感情労働という働き方改革|見えない感情負担を職場改善につなげる視点

本稿では、感情労働を「接客業だけの問題」ではなく、日本の職場で広く進行する“働き方改革の盲点”として再定義する。
感情労働とは、組織が求めるふるまい・態度・共感・沈静化を実現するために、労働者が感情の調整・抑制・配慮を継続的に遂行する労働である。
日本では、同調圧力、空気読み、ハラスメント回避、顧客対応、評価面談などにより、業務遂行とは別に「感情を扱う作業」が恒常化しており、この負荷は生産性・離職・メンタルヘルスの主要因になり得る。

感情労働は「第3の労働形態」ではなく「職場設計の課題」である

肉体労働・頭脳労働に並ぶ第3の労働形態

(Hochschild1983,石川他訳2003)
感情労働=労働者が感情を社会的、組織的に適切な形へと作り変える職種

感情労働の種類(方略)

1.対人サービスで、「適切な感情の表出のみを変化させる方略」=表層演技(surfaceacting)、Goffaman理論
2. 対援助サービスで「経験による心理的側面を適切な感情の表出へと導く方略」=深層演技(deepacting)

両者は、どちらか一方が常に用いられているわけではなく、社会環境や状況によって、また労働者のパーソナリティ特性によって導きだされる。

感情労働は「個人の接遇力」ではない。
組織が要求する感情規則(feeling rule)を実現させるための、職場設計・管理の問題である。

表層演技(surface acting)

表情・声・態度など「表出のみ」を調整する。

深層演技(deep acting)

感じ方そのものを組織に適合させようと内面を調整する。

両者は職種ではなく、職場の管理様式(監視、裁量、支援)と個人条件によって選択されやすさが変わる。
したがって感情労働は、個人教育だけで解決しない。

感情労働研究の知見が一貫しない理由は、調整変数の存在だけではない。
「感情労働」の概念規定が研究者間でずれたまま運用され、実務側もそれを“接遇の問題”として誤解してきたことが、職場改善を遅らせている。

メンタルヘルス影響:感情的不協和→情緒的消耗→バーンアウト

表層演技の多寡ではなく、感情的不協和を処理できる“職場の回路(支援・裁量・言語化)”があるかが、バーンアウトを左右する。

 

働き方改革の“生産性

深層演技を「美徳」や「プロ意識」で押し通す職場は、短期的にサービス品質を上げても、中長期的に人材の持続性を損なう。
感情労働は、働き方改革の“生産性”と“人材定着”の両方に関わる設計課題である。

定義(日本型・社会実装)
日本型感情労働とは、明文化されにくい感情規則(feeling rule)が職場に埋め込まれ、業務遂行とは別に感情の調整・配慮が恒常的に要求されることで、個人の努力では吸収できない負荷が組織内に蓄積する状態を指す。

▶ 理論的基礎論文へのリンク 日本型感情労働ストレスの理論的定義と感情社会学的背景 ▶ 健康影響モデルへのリンク 感情労働が抑うつ・不活発化・認知機能低下へ至る健康影響モデル

本稿は、Hochschild(1983)を起点とする感情社会学と、心理学研究の知見を踏まえ、日本の職場における感情労働を「働き方改革の実装課題」として再定義したものである。
参考:榊原良太(2011)ほか

文責:タニカワ久美子

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