ストレス管理
デスクワーカーのストレス軽減|座りっぱなしを防ぐ職場対策
デスクワークが多い職場では、長時間座りっぱなしになりやすく、体の疲れだけでなく、気分の落ち込みやストレス感にもつながることがあります。
ストレス対策というと、「ストレスを減らすこと」ばかりに目が向きがちです。けれども、仕事をしている以上、ストレスを完全になくすことはできません。
そこで大切になるのが、ストレスを受けても、心と体を立て直しやすい状態をつくることです。
その方法の一つが、無理のない身体活動です。激しい運動でなくても、立ち上がる、歩く、肩を回す、深く呼吸するなど、短い動きが気分転換になることがあります。
この記事では、デスクワーカーの座りっぱなしによるストレス感を、短時間の身体活動で軽くする考え方を見ていきます。人事総務・健康経営担当者が、職場で無理なく使える施策として考えるための記事です。

座りっぱなしの職場では、短時間の身体活動を取り入れることがストレス軽減の入口になります。
デスクワーカーにストレスがたまりやすい理由
デスクワークは、一見すると体への負担が少ない働き方に見えます。
しかし実際には、長時間同じ姿勢で座り続けることで、肩こり、腰の重さ、目の疲れ、眠気、集中力の低下が起きやすくなります。
また、パソコン作業が続くと、会話が少なくなったり、休憩のタイミングを逃したりすることもあります。その結果、体だけでなく、気持ちも疲れやすくなります。
人事総務や健康経営担当者が見るべき点は、「社員が運動不足かどうか」だけではありません。座りっぱなしになりやすい仕事の流れ、休憩の取りにくさ、声をかけにくい雰囲気がないかを見ることが大切です。
身体活動はメンタルヘルスに役立つ可能性がある
身体活動は、うつ、不安、心理的なつらさの軽減に役立つ可能性があります。
2023年に発表されたBen Singh氏らの研究では、身体活動とうつ、不安、心理的苦痛に関する多くの研究結果が検討されました。その結果、身体活動は幅広い成人のメンタルヘルスに良い影響を与える可能性が示されています。
ただし、この研究を職場で使うときに大切なのは、「運動すれば必ずメンタル不調が改善する」と言い切らないことです。
運動の効果は、本人の体調、仕事の忙しさ、運動経験、持病、疲労の状態によって変わります。職場で使う場合は、社員に運動を押しつけるのではなく、無理なく体を動かせる選択肢を用意することが大切です。
座りっぱなしを減らすだけでも始めやすい
デスクワーカー向けのストレス軽減では、最初から本格的な運動プログラムを考える必要はありません。
まずは、座りっぱなしの時間を少し減らすことから始められます。
- 1時間に1回、立ち上がる
- コピーや資料確認のついでに少し歩く
- 会議前に肩や首を軽く回す
- 昼休みに5分だけ外の空気を吸う
- 長い会議では途中で姿勢を変える時間を入れる
このような小さな行動でも、体のこわばりをゆるめ、気分を切り替えるきっかけになります。
大切なのは、「やらなければならない運動」にしないことです。社員が自分の体調に合わせて選べる形にすると、取り入れやすくなります。
短い身体活動がストレス軽減に役立つ理由
体を少し動かすと、呼吸が深くなり、血流が変わり、こわばっていた筋肉がゆるみやすくなります。
また、「少し動けた」「気分が変わった」という小さな達成感も生まれます。この感覚は、ストレスが続いているときに大切です。
ストレスが強いと、人は「自分ではどうにもできない」と感じやすくなります。そんなとき、短いストレッチや散歩でも、「自分のために一つ行動できた」と感じることができます。
この小さな感覚が、心を立て直す助けになります。
職場で運動をすすめるときの注意点
運動はストレス軽減に役立つ可能性がありますが、すすめ方を間違えると、かえって負担になります。
特に注意したいのは、次のような場合です。
- 参加しない社員を「健康意識が低い」と見てしまう
- 体力差を考えずに同じ運動を求める
- 忙しい部署にイベント参加を強く求める
- 順位づけや競争を強めすぎる
- 腰痛、持病、疲労がある人への配慮がない
健康経営の目的は、社員を一律に動かすことではありません。社員が自分の状態に気づき、自分に合った回復方法を選べるようにすることです。
そのため、職場で運動を取り入れるときは、「強制しない」「比べない」「短時間でできる」を基本にする必要があります。
デスクワーカー向けに使いやすい職場の工夫
デスクワーカーのストレス軽減では、仕事の合間に自然に入れられる工夫が向いています。
たとえば、次のような取り組みです。
- 朝礼前の1分ストレッチ
- オンライン会議前の深呼吸
- 昼休みの自由参加ウォーキング
- 肩こり・目の疲れ対策のミニ研修
- 長時間座位を減らすための声かけ
- 睡眠・疲労・ストレス反応と組み合わせた健康研修
大がかりな制度をつくる前に、社員が「これならできそう」と思える小さな入口を用意することが大切です。
特に人事総務や健康経営担当者は、全社員に同じ方法を求めるのではなく、職種や年齢、体力、勤務形態に合わせて選べる形にすると、現場に入れやすくなります。
ユーストレスとして考えるデスクワーカーの短時間運動
ユーストレスとは、心や体に負荷はかかるけれど、その負荷が回復や成長につながるストレスのことです。
デスクワーカーにとって、短い身体活動はユーストレスのわかりやすい例です。
立ち上がる、歩く、伸ばす、呼吸する。こうした動きは、体に軽い負荷をかけます。しかし、その負荷が本人に合っていれば、気分転換、集中力の回復、肩こりの軽減、達成感につながります。
反対に、強すぎる運動、強制される運動、人と比べられる運動は、ディストレス、つまり悪いストレスになることがあります。
つまり、職場で大切なのは「運動量を増やすこと」だけではありません。その人に合った軽い負荷を、無理なく選べるようにすることです。
職場で起きやすい困りごとに置き換えて考える
デスクワーカーの運動不足は、個人の生活習慣だけの問題ではありません。
職場では、次のような困りごととして表れます。
- 集中力が続かず、午後に作業効率が落ちる
- 肩こりや腰の重さで疲労感が強い
- 休憩を取りにくく、気分転換ができない
- 会議やパソコン作業が続き、体を動かす時間がない
- ストレス対策が個人任せになっている
このような状態では、「各自で運動してください」と伝えるだけでは十分ではありません。
社員が立ち上がりやすいタイミング、短時間でできる動き、参加しやすい声かけを職場の中に用意することが必要です。
人事総務や健康経営担当者は、運動を特別なイベントとして考えるだけでなく、毎日の仕事の中に小さく入れられる工夫として考えると、現場で使いやすくなります。
タニカワ久美子の企業研修での扱い方
タニカワ久美子の企業研修では、デスクワーカーのストレス軽減を「運動不足を解消しましょう」という一般論では扱いません。会議が続いて席を立てない、昼休みもパソコン作業が残る、肩や首のこわばりに気づかないまま午後の仕事に入ってしまう。こうした職場の流れを前提にして考えます。
研修では、社員に大きな運動目標を求めるのではなく、仕事の区切りで立ち上がる、肩を回す、深く息を吐く、数分だけ歩くといった小さな回復行動を扱います。
人事総務の担当者からは、座学だけではなく、全員で実際にできる軽い運動がある点を評価されています。短時間で体を動かす経験を入れることで、ストレス管理を知識ではなく職場で使える行動に変えやすくなります。
ユーストレスの全体像はこちら
本記事で紹介したデスクワーカーの短時間身体活動は、ユーストレスの一つの具体例です。
ユーストレスの意味、ディストレスとの違い、職場での活かし方については、ユーストレス(良性ストレス)とは|職場で活かすストレス資源の全体像で紹介しています。
けんこう総研が大切にしている考え方
けんこう総研では、ストレスを「悪いもの」と決めつけるのではなく、働く人が無理なく回復し、前向きに働き続けるための力として考えます。
大切なのは、社員に「もっと頑張って運動しましょう」と求めることではありません。社員が自分の体調に気づき、自分に合った回復方法を選べる職場をつくることです。
まとめ|デスクワーカーのストレス軽減は、小さな身体活動から始められる
デスクワークが多い職場では、座りっぱなしによる体の疲れや気分の落ち込みが起きやすくなります。
その対策として、短時間の身体活動は、心と体を立て直す身近な方法になります。
ただし、運動を強制したり、社員同士を比べたりすると、健康施策そのものが負担になることがあります。
人事総務や健康経営担当者に必要なのは、社員に運動を押しつけることではありません。社員が自分に合った回復方法を選べる職場をつくることです。
けんこう総研では、ユーストレスとディストレスの考え方をもとに、社員のセルフケア、管理職の声かけ、ストレスチェック後の職場改善につながるストレスマネジメント研修を行っています。
出典
- Singh, B., Olds, T., Curtis, R., Dumuid, D., Virgara, R., Watson, A., Szeto, K., O’Connor, E., Ferguson, T., Eglitis, E., Miatke, A., Simpson, C. E., & Maher, C. (2023). Effectiveness of physical activity interventions for improving depression, anxiety and distress: an overview of systematic reviews. British Journal of Sports Medicine, 57(18), 1203–1209.
文責:タニカワ久美子